新世紀エヴァンゲリオン takeⅡ   作:周小荒

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第28話 第十三使徒バルディエル

 

 前回と同じ様に野辺山にてエヴァ三機はバラバラに配置された。

 戦力分散になるが電源確保の都合なので仕方ない。

 

「まあ。電池を積んでるのが心強い」

 

 これ以上は市街地になるので被害を出さない為にも、ここが決戦の場となる。

 被害を出さない努力をしていたのはシンジ達パイロットだけではなかった。

 

「パターン青。使徒と確認」

 

「緊急活動停止信号を出せ!」

  

「停止信号、受け付けません」

 

「エントリープラグ強制射出!」

 

「駄目です。プラグ排出コードも認識しません」

 

「現時刻を以てエヴァンゲリオン参号機は破棄。第十三使徒と認定。速やかに殲滅せよ!」

 

「しかし、参号機の中にはパイロットが乗っているんですよ!」

 

 日向がゲンドウの命令に疑問形の体裁で抗議する。

 

「我々の使命は使徒の殲滅だ。多少の犠牲は仕方ない。ましてや民間人ではなくパイロットだ。本人も覚悟の上だ」

 

 正論である。故に何も言えなくなる。

 

「日向君。君が葛城君に次ぐ作戦課の先任士官だ。君が指揮を執れ」

 

 言外に自分の指揮でパイロットを救えと言っている事は日向以外の人間にも理解が出来た。

 

「了解しました」

 

 日向は本来のオペレーターとしての業務と兼任する事になる。

 それでも、自身の手で救えるかもしれないのだ。

 

「三人共、聞こえるかい。僕が指揮を執る事になった。レイは参号機の脚を狙って狙撃してくれ。参号機の足を止める」

 

「了解」

 

「日向さん。私は?」

 

「アスカは参号機の足が止まったら、両腕をバズーカで

落としてくれ。その後でエントリープラグを引き抜くんだ」

 

「了解」

 

「シンジ君には、状況に依って、その場で指示を出す」

 

「了解」

 

 レイがスナイパーライフルを構えて足に狙い定めて引き金を引く寸前に参号機が視界から消えた。

 

 それと、同時にバズーカの発射音が辺りに響いた。

 

(敵も勘が鋭い!)

 

 零号機はスナイパーライフルを捨て、ダッシュで弐号機が待機していた場所までダッシュする。

 

「日向さん!」

 

 シンジも日向の指示を請いながらも、ダッシュで弐号機に向かう。

 アスカは事前にシンジ達から参号機の跳躍力を聞かされていたので、参号機が視界から消えた瞬間に上空へ向けてバズーカを連射した。

 バズーカを連射された参号機は空中で身を反らして直撃を避けたが弐号機からは離れた場所に着地する事になった。

 

「チィ、器用な奴!」

 

 参号機は地面に四つん這いになり、再度、跳躍する様に思われたが、アスカは弐号機をバックステップさせる。

 次の瞬間、弐号機が立っていた地面から参号機の腕が飛び出してきた。

 

「何で、装甲まで伸びるのよ!」

 

 突っ込みを入れたアスカだが、パイロットの中では戦闘センスが一番である。

 参号機が伸ばした腕を戻す瞬間に腕よりも早く懐に入り、脳天に浴びせ蹴りを食らわせたのである。

 弐号機の浴びせ蹴りを脳天に食らい地面に頭を潜らせた参号機の背中に、駆けつけた零号機が飛び乗り、馬乗り状態になる。

 零号機は参号機のエントリープラグを守っている装甲を剥がし、引き抜こうとしたが、参号機が暴れた為、背中から振り落とされる。

 

「レイ!」

 

「私は大丈夫!」

 

 零号機が立ち上がると同時に参号機も立ち上がる。

 前後を挟む形になった所で初号機も加わる。

 参号機が完全に包囲された時に、参号機の外部スピーカーから少年の声が流れる。

 

「えっ、此処は?」

 

 参号機のパイロットが目覚めたのである。

 

「ヒロシ君。怪我は無いかい?」

 

 発令所の日向が通信で呼び掛けてみる。

 

「ちょっと、頭が痛いですけど大丈夫です」

 

 映像は出ないが会話は出来る様であった。

 

「中のパイロット。何かに掴まっていなさい。必ず助けてあげるから!」

 

 アスカが通信でヒロシと呼ばれた少年に呼び掛けた。

 

「えっ、何が一体?」

 

 混乱して事態を把握していない様子であった。無理もない事である。

 

「貴方の参号機は使徒に乗っ取られたの」

 

 レイが手短に説明する。

 

「だけど、僕達が必ず助けるから安心して!」

 

 シンジがレイの説明に言葉を添えて落ち着かせる。

 三人がヒロシに語り掛けながら、包囲の輪を少しずつ狭めて行く。

 

「そうか。実験場で暴れたのか。博士達は?」

 

 パイロット達も発令所も誰も返答しなかった。

 中学生に松代実験所で爆発事故を起こしたと告げられる者など、居る筈もなかった。

 関係者が沈黙する中、その沈黙を破ったのはヒロシ自身であった。

 

「今、自爆装置を入れたから、先輩方にはバリアで爆発を最小限にして欲しい」

 

 急に、とんでもない事を言い出した。

 

「待ちなさい。必ず助けるから!」

 

「貴方が死んでも何も解決しないわ!」

 

「死んじゃ駄目だ!」

 

 エヴァパイロット達が説得するのと同時に三機で同時に参号機を押さえ込もうとするが、参号機を乗っ取った第十三使徒バルディエルも参号機の自爆を察した様でエヴァ三機が眼中に無く、その場で転げ回る。

 その様は、野生動物が寄生虫を落とす為に泥浴びをしているのに酷似していた。

 

「レイ、シンジ。ATフィールド全開にして!」

 

「了解!」

 

「アスカ。ちょっと待ってよ!」

 

 了承するレイとは反対にシンジが止めに入る。

 

「自爆装置が起動して参号機が、この有様だと助けられないわ。パイロットの意思を尊重するべきよ」

 

「でも、アスカ!」

 

「シンジ。弐号機パイロットの指示に従え。死ぬべき時に死ねないのは不幸でしかない」

 

 初めてゲンドウがエヴァパイロットに命令を出した。

 

「分かったよ。父さん」

 

 ゲンドウに言われ、シンジも自らの経験でヒロシが死を望む事を理解していた。

 

「私は弐号機パイロット、惣流・アスカ・ラングレー。参号機のパイロット。あんたの名前は?」

 

「僕は宗谷ヒロシ」

 

「そう。いい名前ね。あんたの事は死ぬまで忘れないわ!」

 

「私は零号機パイロット。綾波レイよ。私も貴方の事を忘れないわ」

 

「僕は碇シンジ。初号機のパイロットだよ」

 

「ありがとう。お手数を掛けます」

 

 礼を言った後に、通信装置を切り忘れているのだろう。ヒロシが参号機に語り掛ける声も通信で流れた。

 

「短い付き合いだったけど、最期に敵を道連れに出来たから、本望だと思ってくれよ」

 

 三機のエヴァがATフィールドを全開にして参号機を取り囲む。

 三機のエヴァのATフィールドが同調した時の強力さは既に実証済みである。周辺地域の被害は皆無に近いであろう。

 パイロット三人も顔も知らない新しい後輩との別れに涙が溢れた。

 発令所でも一部の職員はスクリーンから顔を背けていた。

 その一人の中にマヤもいたが、背けた視線の先が自身のモニターだった事がネルフ職員としての義務感だった。

 その義務感が事態を急転展開させる。

 

「パターン青、消滅しています!」

 

 マヤの報告に唖然となる発令所とパイロット達。

 

「参号機パイロットは速やかに自爆装置を解除しろ」

 

 ゲンドウが命令を出すと発令所には参号機からの通信が入る。

 

「解除の仕方が分からない!」

 

「青いボタンを押せば自爆解除が出来る。慌てずに落ち着いて!」

 

 日向が解除方法を伝える。

 

「えっと、これだ!」

 

 暫しの沈黙の後に場違いな声が聞こえる。

 

「アメリカ製って、本当に作りが雑だよな。ボタンの青いカバーが取れかけてやがる」

 

 思わず吹き出してしまう発令所の一同であった。

 

「シンジ君。アスカ。レイ。ご苦労様。後は現地のスタッフに従ってくれ」

 

 日向自身も現地に行きたいがミサト不在のままで本部を留守にする訳にはいかない。

 日向に労いの言葉を掛けられたパイロット三人も予定とは随分と違う手順だが、参号機を健在なまま参号機パイロットを救えた事に満足していた。

 

 頭痛と耳に不快な喧騒がミサトを眠りから一時的に覚醒させた。

 

「私、生きてるの?」

 

「葛城。気がついたか」

 

 横から加持が声を掛けてきた。

 

「加持君。リツコは?」

 

「安心しろ。葛城より軽傷だ」

 

「ヒロシ君と参号機は?」

 

「パイロットと参号機は健在。使徒は消滅した」

 

「そう。安心したわ。加持君。ちょっと眠るわ」

 

「ああ、今は眠るがいいさ」

 

 ミサトが眠りについた頃、目覚めた者もいた。

 宗谷ヒロシは目覚めた時、視界には白い天井、耳にはコオロギの鳴き声が聞こえてきた。

 

「此処は?」

 

「此処は病院よ。救出された後で気絶した事を覚えてる?」

 

 自分のベッドの横には同じ年頃の少女が座っていた。

 

「自爆スイッチを解除した事までは覚えているけど、その後は思い出せない」

 

「無理して思い出す必要は無いわ。それにお腹空いてるでしょ」

 

 少女は立ち上がるとプレートの病院食を差し出した。

 

「今日は、これで我慢してね」

 

「はい。ありがとうございます。その、貴女は誰ですか?」

 

 ヒロシの疑問も当然である。看護婦なら理解が出来るが学校の制服を着た同年代の少女がいるのは理解が出来ない。

 

「ああ、ごめん。私が惣流・アスカ・ラングレーよ。他の二人も来たがったけど、あの二人は精神衛生上、良くないから遠慮してもらったの」

 

「はあ」

 

「取り敢えず、ネルフにようこそ!」

 

 

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