新世紀エヴァンゲリオン takeⅡ   作:周小荒

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第2話 再会

 

 ゲンドウが宣言すると共に国連軍幹部達は発令所を退室した。

 幹部達が退室した後で冬月がゲンドウに声を掛けた。

 

「碇。エヴァを動かすにもパイロットが居ないぞ」

 

「問題ない。既に予備のパイロットが届いている筈だ」

 

 ゲンドウは、そう言い残すとケイジに向かった。

 

「実の息子も物扱いか」

 

 冬月は発令所を出た男の胸中を考えたが途中で止めた。窃盗犯が強盗犯の事を考えるのと大差がないからである。

 冬月は益の無い思慮に拘るより、目の前の責務に集中する事にした。

 

「総員、第一種戦闘配置!」

 

 そして、ゲンドウから物扱いされた息子は既にケイジに到着していた。

 

「シンジ君に見て欲しかったのは、これさ!」

 

 日向の合図でケイジ内の照明が点灯すると巨大な顔が出現する。シンジは自身の母と再会をした。

 

(母さん。今度は必ず皆を守るからね)

 

 シンジが無言で初号機に語り掛けているのを見て、日向にはシンジが驚きのあまりに声も出ない様に見えた。

 

「これが、人類最後の秘密兵器。汎用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン初号機!」

 

 シンジの反応が無いので、日向は説明を続けた。

 

「建造は極秘裏に行われた、僕達、人類の最後の切り札さ」

 

 日向はシンジに向き直り、シンジの両肩に手を置き目線をシンジと同じ高さにする。

 

「シンジ君。君がこれに乗り、外の怪獣と戦うんだ」

 

「ちょっと、日向君。越権行為よ!」

 

 今まで、場の仕切りを日向に委ねていたミサトが慌て気味に日向を制止する。

 

「葛城さんは黙っていて下さい。男同士の話です」

 

 一瞬だけ頭に血が上ったミサトだったが、遅かれ早かれシンジに告げる必要な事だと納得した。

 

「子供の君に戦わせるのは、本当に心苦しい。でも、エヴァは操縦する人間を選ぶんだ!」

 

 日向は基本的に民主国家の軍人である。民主国家の軍人は市民を守るのが義務と日向は信じていた。

 故に、中学生のシンジに戦わせる事は断腸の思いであったのは事実であった。

 

「大丈夫。君が死ぬ時は、ここに居る皆と一緒だから寂しくは無いよ!」

 

 シンジが日向の言葉を聞いて俯いて小さく肩を震えさせたので、ミサトはシンジが怯えて搭乗を拒否するのではと心配になった。

 

「シンジ君!」

 

 日向も自分の説得が失敗したかと焦っていた。

 

「日向さん」

 

「何だい?」

 

「それ、説得になっていませんよ!」

 

 シンジは日向の説得以前に初号機で戦うつもりであったが、日向の説得に笑いの感覚を刺激されてしまったのだ。

 

「日向さんが真剣に話すから、笑ったら駄目だと我慢したけど、僕が死んだら、ここの人達も一緒だから大丈夫って、説得になっていませんよ」

 

 シンジは我慢が出来ずに笑い出してしまった。それに連れてミサトも笑い出す。

 

「日向君。横で聞いていた私も理解に苦しむ理論よ」

 

 日向も自身の理論の無茶苦茶さを理解したようで赤面する。

 

「シンジ君も、そんなに笑ったら駄目よ」

 

「ミサトさんだって、笑っているじゃないですか」

 

 ケイジ内で作業していた職員達も日向の大穴が空いた理論と笑い続けているシンジとミサトに誘われて笑い出す。

 

「楽しそうだな。シンジ」

 

 ケイジの上階からゲンドウが笑いの発作を起こしたシンジに声を掛けた。

 

「あっ、父さん」

 

 笑いを残した顔で自身を見上げる息子にゲンドウは言葉を続ける。

 

「久しぶりだな」

 

「うん!」

 

 余程、ツボに嵌まった様で、笑顔を残した息子に多少困惑しながらもゲンドウは指令を発した。

 

「出撃!」

 

「了承!」

 

 あっさりと了承するシンジに意外さを感じ絶句するゲンドウであった。

 

「赤木さん。発進準備は大丈夫ですか?」

 

 日向がケイジ内のLCLのプールに叫ぶと、オレンジ色の水面から潜水服を着た人物が親指を立てた手を上げて返事をする。

 

(リツコさん。あんな所に居たんだ)

 

「エヴァンゲリオン、発進準備!」

 

 リツコの合図を確認したミサトが叫ぶとケイジ内が急に慌ただしくなる。

 ケイジ内の職員達も使徒が自己修復中の今がチャンスだと理解していたのである。

 

「シンジ君は発進準備が出来るまで、日向君に説明を受けてね」

 

「はい」

 

 ミサトはシンジの相手を日向に任せる事にした。日向なら中学生のシンジにも理解しやすい説明が出来るだろうと判断した。

 

「では、簡単な説明をするから、シンジ君は此方に」

 

「はい」

 

 日向の説明は簡単であった。

 

「エヴァは基本的にパイロットの脳波を読んで動くんだ。だから、操縦自体は簡単だから安心してほしい」

 

「はい」

 

「それから、操縦席はオレンジ色の水で満たされるけど、溺れる心配は無い。肺まで入ると酸素を血液の中に直接に取り込んでくれる」

 

「はい」

 

「操縦席は水で満たされるから衝撃を受けてもダメージは少ないから大丈夫だ。生卵を振っても中の黄身が壊れないのと同じ理屈だよ」

 

「はい」

 

「それと、エヴァはパイロットの脳波を読むと同時にエヴァが受けた感覚もフィードバックするから耐えられない時は言ってくれたら、此方でカットする事も出来る」

 

「はい」

 

「本当に簡単な説明だけど、今は時間が惜しい」

 

「はい」

 

 シンジは今更の事なので質問をする事も無いが、それ以上に日向と同じく時間が惜しかった。

 

(とにかく、戦うのが街中でなかったら、トウジの妹さんも怪我をする事は無くなる)

 

 シンジがネルフ本部に急いだ理由がトウジの妹の事があったからである。シンジには既にトラウマ化していた事なのである。

 

「それから、これを髪に着けてくれ。これはシンジ君の脳波をエヴァが読む為の道具だ」

 

「はい」

 

 差し出されインターフェイスを装着するとシンジは初号機パイロットとして、これから始まる使徒との戦いに没頭していった。

 

(あまり派手な戦い方は出来ないが、二週間後の使徒との戦いに影響しない勝ち方をしないと)

 

 シンジはゲンドウやネルフの上層部を信用していなかった。シンジが逆行した人間と判明した途端に殺される可能性もあると考えていた。

 シンジの脳裏には戦自に殺されかけた記憶が甦っていた。

 

(僕だけじゃない。ネルフの人達や世界中の人達も殺したんだから)

 

 シンジにはミサトが教えてくれた人類補完計画の意義を全く理解が出来なかった。理解する気も無いのが本音である。

 

(トウジやトウジの妹さんを犠牲にした連中と一つになるもんか!)

 

「シンジ君。僕は発令所に戻るけど、何か有れば言ってくれ。それから、発進した後は葛城さんが指示を出してくる。あの人は意外と優秀な人だから」

 

 考えに没頭している間にエントリープラグの前まで来ていた。

 

「はい。では、宜しくお願いします」

 

 シンジは発令所に戻る日向を見送るとエントリープラグに入り再び思考の海に没頭するのであった。

 

 

「意外と素直に乗ってくれたな」

 

 冬月がシンジが初号機への搭乗を簡単に了承した事に軽い驚きを持っていた。

 

「ふむ。それについては、日向君の功績だな」

 

「そうか。これからは日向君にシンジ君の事を頼んだ方が良いだろうな」

 

「ああ」

 

「葛城君とは所詮は上司と部下だからな」

 

 冬月とゲンドウが話をしている間にも眼下では初号機の発進準備が進んでいる。

 

「主電源接続」

 

「全回路動力伝達」

 

「第二次コンタクト開始」

 

「A10神経接続異常なし」

 

「初期コンタクト全て異常無し」

 

「双方向回線開きます」

 

「シンクロ率39.8%」

 

「ハーモニクス全て正常値」

 

 次々と進められる準備の間、シンジは懐かしい安堵感に包まれていた。

 

(そうか。エヴァに乗ると落ち着いていたのは、母さんが居たからなんだ)

 

 シンジは久しぶりの母との再会に感慨にふけていく。

 

(今度は、皆を守りたいから協力してね)

 

 シンジが初号機に眠る母に語り掛けている間にもケイジ内では発進準備は進められていく。

 

「あれ!」

 

 発令所でマヤが小さな驚きの声をあげた。

 

「マヤ、どうしたの?」

 

 リツコがマヤの声を聞いて質問する。

 

「先輩。これを見て下さい」

 

 リツコがマヤに言われて見たモニターにはシンジのシンクロ率が緩慢に上がっていた。

 

「先輩。こんな事があるんでしょうか?」

 

「現実として起きている現象よ」

 

(シンジ君が搭乗した事にユイさんが反応しているの?)

 

 リツコにも疑問の範囲でしかない。エヴァについてはリツコにも謎だらけなのである。

 

「エヴァ初号機発進準備完了!」

 

 リツコの困惑と別に既に初号機は射出口に移動していた。

 

「構いませんね?」

 

 ミサトがゲンドウに確認を取る。

 

「もちろんだ。使徒を倒さねば我々に未来は無い」

 

 ミサトはゲンドウから最終確認を取ると発進の号令を掛ける。

 

「エヴァンゲリオン初号機発進!」

 

 ミサトの声を聞きながら冬月もゲンドウに小声で確認する。

 

「碇。本当にいいんだな?」

 

 ゲンドウは冬月の質問に答えもせずに、人知れず眼前に組んだ手で北叟笑むのであった。

 ゲンドウの反応を横目に冬月はゲンドウとユイ、ゼーレの歪んだ関係に自身の罪を自覚した。

 

(シンジ君。死ぬんじゃないぞ!)

 

 シンジの生存を願う事だけが、冬月に出来る唯一の贖罪であった。

 

 

 

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