新世紀エヴァンゲリオン takeⅡ   作:周小荒

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第30話 第十四使徒ゼルエル

 

 第十三使徒戦から二日目の朝である。シンジは珍しく朝からシャワーを浴びていた。

 

(今日は最強の使徒が来る。ここまでは何とかやってこれたけど、今日の使徒だけは、結局対策が思いつかなかった)

 

 第十四使徒だけはシンジも記憶が無い。後から聞いた話によると、初号機の暴走で倒したようだ。

 

(また、初号機を暴走させるべきなのか?)

 

 都合よく暴走するとは限らない。シンジが逆行してから、一度も暴走していないのだ。

 よしんば暴走して勝てたとしても、初号機が凍結されてしまう。

 

(前回よりは敵の攻撃方法が分かっている程度なんだけどなあ)

 

 第十三使徒戦が終了してからも三人で何度も相談したが対策が出来ないままであった。

 

「何の為に帰ってきたのか」

 

 思わず口に出してしまった。我ながら予想通りの行動に苦笑してしまう。

 

(やっぱり、口に出したか。保険を掛けてシャワーを浴びて良かった)

 

 シンジがシャワーを出た後にレイが入り、レイが出た後にアスカが入る。

 全員が同じ気持ちで同じ行動を取った事に苦笑してしまった。

 朝食時にニヤニヤ笑う子供達に、ミサトは頭上にクエスチョンを浮かべたのは言うまでもない。

 食事が終わった後で全員でネルフ本部に向かう。

 幸いな事に、急遽実施される事になった機体互換試験の為、ネルフ本部にパイロットが集結したので、ゼルエルの地上迎撃が間に合うだろう。

 そして、パイロット四人がプラグスーツに着替えた時に警報がなった。第十四使徒ゼルエルの来襲である。

 

「試験中止!パイロットは担当機体に乗りケイジに!」

 

「あのう。僕もですか」

 

 ヒロシがミサトに質問する。

 

「ヒロシ君も参号機に乗って。戦況によっては参戦してもらうわ」

 

「はい」

 

 走り去るヒロシの背中を見送った後にリツコがミサトをからかう。

 

「本当に貴女って、甘いわね」

 

「仕方ないでしょ。エヴァの中が一番安全なんだから」

 

 ミサトとリツコが発令所に入ると三機のエヴァは出撃準備を終了していた。

 

「エヴァンゲリオン発進!」

 

 ミサトの号令で三機のエヴァが出撃する直前に使徒の攻撃で18枚の特殊装甲が破られていた。

 

「敵は遠距離戦タイプと思われるわ。近接戦闘で行くわよ。武器を用意するから、自分に合ったものを使って!」

 

 三機のエヴァが地上に到着するのとゼルエルが地上に降り立つのは同時であった。

 三機のエヴァはゼルエルの正面を避ける様に囲みながら、少しずつ距離を詰めて行く。

 初号機と弐号機が左右から迫り、零号機が背後から忍び寄る。

 ゼルエルは、三機を無視する様に自身が開けた穴を目指して前進する。

 

「シンジ君。アスカ。敵のジオフロント侵入を阻止して!」

 

 ミサトは、シンジとアスカの連携を信用し、具体的にゼルエルの前進を阻止する方法までは指示しなかった。

 初号機と弐号機が駆け寄ると、ゼルエルは両手とも言える折り畳み式の触手で襲い掛かった。

 ゼルエルの攻撃手段を知っている二人は身を屈めて切れ味抜群の触手の攻撃を避ける。

 

「アスカ!」

 

「シンジ!」

 

 初号機と弐号機は、伸ばされた触手が戻る前にゼルエルの懐に入り、前面に回し蹴りを同時に炸裂させる。

 ユニゾン攻撃を受けたゼルエルは後方に吹き飛ぶ。

 ゼルエルが後方に吹き飛んだことで、初号機と弐号機は結果的に使徒の正面に立つ形となる。

 ゼルエルが、前進を邪魔した二機に対して、18枚の特殊装甲を貫いたビームを放とうとした寸前、後方から忍び寄っていた零号機に組付かれた。ジャーマンスープレックスである!

 ゼルエルが放ったビームは大空へと吸い込まれた。

 

「ナイス、レイ!」

 

 倒れたゼルエルに、初号機と弐号機のエルボードロップが炸裂する!

 しかし、ゼルエルは三機の連続攻撃を物ともせず、三機が取り付いてきても、それさえ跳ね除けた。

 

「エヴァ三機を!」

 

 ミサトの表情に焦りの色が拡がり始める。遠距離では特殊装甲18枚を貫いたビーム攻撃の、中間距離では鋭利な刃物の様な触手の餌食になる。

 近接戦闘では不死身と言える耐久力を持っている。

 

(使徒と違いエヴァは人間が操縦している。いずれはパイロット達の体力と気力が尽きるわ!)

 

「うぐっ!」

 

 ミサトの懸念は現実となった。零号機がビームの餌食になった。零号機は左腕をビームで切り落とされた。

 腕を切り落とされて、一瞬だけ怯んだ零号機にゼルエルが止めの一撃を食らわそうとする。

 

「綾波ィィ!」

 

 初号機の体当たりで、攻撃は逸れて零号機の背後にあった山の頂上部分が爆発する。

 

「ミサトさん。僕も戦線に参加させて下さい。勝てなくったって、先輩たちが休憩する時間くらいは作れます!」

 

 ヒロシがミサトに進言するが、彼女の権限では参号機の凍結を解くことはできない。

 

(ヒロシ君と参号機で、本当に時間を稼げるかしら?)

 

 ミサトからすれば、参号機は時間稼ぎどころか、足手まといになる危険性がある。

 スクリーンの中では、弐号機がビームを避けるのを見越して、待ち伏せていた触手が……!

 弐号機は肩のウェポンラックを犠牲にして難を逃れた。

 その光景を見たミサトは決断をした。

 

「碇司令。参号機の凍結の解除と参戦を要請します!」

 

 ミサトと同様にゲンドウも戦況の推移を見て迷っていたが、ミサトの進言でゲンドウも決意した。

 

「現時刻を以て、エヴァ参号機凍結の一時解除及び出撃を認める」

 

「ありがとうございます。司令」

 

「礼を言われる事ではない。使徒の殲滅がネルフの使命だ」

 

 ゲンドウにしたら使徒に敗れる事は、ゼーレの人類補完計画どころか自身の計画も潰えてしまうことと同義である。

 故に、眼前の使徒を殲滅する必要があるのだ。

 

「ヒロシ君。凍結解除と参戦が認められたわ。出来るだけ敵の注意を引き付けて逃げ回って」

 

「はい。逃げる事は得意ですから任せて下さい!」

 

 自慢にならない自慢である。

 

「エヴァ参号機出撃準備!」

 

 参号機の出撃準備がされてる間も、地上ではゼルエルとの苛烈な戦いが続いている。

 コアは硬い瞼の様な殻で守ったとはいえ、N2兵器の直撃にもダメージを受けなかった使徒である。倒したのは初号機の暴走であり、シンジも暴走時の記憶は無い。

 初号機の暴走も偶然の結果である。今は三機のチームワークで使徒を地上に足止めするのが精一杯なのである。

 それも、そろそろ限界に達している。エヴァ自体は問題無いが、操縦しているパイロットの体力と気力が限界を迎えようとしていた。

 

(体力的に、綾波がまずい)

 

 シンジは焦るも、意図的に暴走を起こす事が出来ない。

 もし、起こせても、その前に零号機や弐号機…レイやアスカに万が一の事が有れば意味が無いのである。

 そして、二人もシンジの心理を読んでいた。

 

(碇君。馬鹿な事は考えないで!)

 

(バカシンジが馬鹿な事やらかす前に倒さないと、レイが爆発するかもしれないわね…)

 

 それぞれが仲間の事を考えて焦りを自覚していた。

 

「皆、聞こえる?今から参号機も参戦します。参号機が時間を稼ぐから、一息ついて!」

 

 ミサトの恥も外聞も無い指示に三人は苦笑する。

 パイロットに出した指示とは別に、ミサトは発令所内だけの指示も出していた。

 

「何時でも出来る様に、参号機パイロットの神経接続カットとエントリープラグ強制射出の準備を急いで!」

 

「ちょっと、ミサト!貴女、参号機を犠牲にする気なの!?」

 

 慌てるリツコに、顔も向けず、ミサトはスクリーンを直視しながら応える。

 

「そんなに気前がいい筈ないでしょ。最新鋭機を簡単に捨てる気は無いわ。それでも、パイロットの命よりは安いけどね」

 

 地上に現れた参号機は、ラミエル戦で使われる事のなかった盾を手にしていた。

 

「安保反対!」

 

 若い理工系エリート集団のネルフ職員には、ヒロシの渾身のギャグは残念ながら理解されなかった。

 唯一、理解していた正副の司令達は、冬月は「盾を持っている方が言われる台詞だ!」と真面目に小声でツッコミを入れていた。

 ゲンドウは何時もの様に顔の前で手を組むポーズをしながらも、自身の立場を弁えて声を出さずに笑った。

 大人も理解しないギャグに先輩パイロット達も頭上にクエスチョンを浮かべながら参号機の行動を見守っていた。

 参号機は見事なまでに盾に身を隠すとゼルエルに向かって突撃を始めた。

 それを発令所から見ていたミサトがヒロシを制止する。

 

「ヒロシ君。無茶をしちゃあ駄目!」

 

 参号機はミサトの制止にも応じずに突撃を続ける。

 

(ちょっと!?自殺する気でネルフに来たの!?)

 

 ミサトは内心の声とは別に口に出したのはパイロットの命を守る指示であった。

 

「参号機のエントリープラグを強制射出して!」

 

 しかし、日向の返答は…

 

「駄目です。参号機側からロックされています!」

 

 

「なんですって!」

 

 スクリーンの中ではゼルエルの目が光を宿して強烈無比のビームを発射していた。

 

 

 

 

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