新世紀エヴァンゲリオン takeⅡ   作:周小荒

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第46話 悲劇

 

 ゲンドウがゼーレに宣戦布告を出した10分後には、MAGIに対して世界5ヶ国から同時にハッキングが行われた。

 

「MAGIによるMAGIに対してのハッキング。それも同時に5ヶ所から!」

 

 焦る冬月とは対照的にゲンドウは落ち着き払っている。

 内心は別にして、動揺しない司令官は部下達を安心させるのである。

 

「問題無い。想定の範囲内だ」

 

「しかし、碇。MAGIの占拠は本部のそれと同義だぞ!」

 

 冬月の言葉は事実であった。ネルフ本部のセキュリティ設備から、地上の電気、ガス、水道のインフラ設備まで、全ての設備はMAGIにより管理運営をされている。

 

「赤木君。対処を頼む」

 

「任せて下さい。所詮は偽物。オリジナルには勝てませんわ」

 

 リツコは、ゼーレの人類補完計画とは別に、科学者として、更に言及すれば一種の職人として挑戦を受けたと思っていた。

 

(赤木さんが燃えている!)

 

(リツコがスーパーサイヤ人になっている!)

 

(先輩、凛々しいです!)

 

 その場の人間の感想は様々であったが、MAGIシステムの第一人者であるリツコの出陣は発令所の士気を上げたのであった。

 

「赤木博士、時間が有りません。指示を願います!」

 

 マヤの言葉にリツコは会心の笑みを浮かべ、彼女が科学者を志してから、一度は言ってみたかった台詞を口にする。

 

「こんな事も、あろうかと用意していたわ!」

 

 残念ながら、リツコが満を持して口にした台詞の正しい意味を理解したのはゲンドウのみであった。

 

「リツコ。何を用意していたの?」

 

 ミサトの無理解に傷心しながらも説明をする。

 

「MAGIのコピーが出来た時に同型機による攻撃なんか想定済みよ。既に対抗プログラムは用意しているわ!」

 

 リツコはポケットから端末を取り出すと第666プロテクト、別名「Bダナン型防壁」を展開した。

 

「非常手段は、使う時に簡単に使えないと意味がないのよ」

 

「そ、そうね」

 

 簡単にハッキング攻撃を防いだ事にミサトも毒気を抜かれていた。

 ミサトは毒気を抜かれる程度であったが、防がれたゼーレとしては面白い筈も無い。

 

「ネルフは此方のハッキングに対して第666プロテクトを展開した。出来うるだけ穏便に事を運びたかったのだが、致し方あるまい」

 

「碇も罪な事をする」

 

「日本政府に通達!ネルフ本部施設の直接占拠を行う様に!」

 

 キールの通達は直ぐに実行された。通達を受けた日本政府は戦自一個師団の派遣を総理権限で決定した。

 

「ネルフの真の目的がサードインパクトだったとはな」

 

 総理はゼーレから通達の内容に驚きが隠せないでいた。

 

「第三新東京市の被害が甚大になりますが、どう対処しますか?」

 

 官房長官が後の利権について遠回しに質問をした。

 

「勿体ないが、二十年は放置区域に指定するしかないだろう」

 

「惜しいですな。折角、血税を注いで作ったものを」

 

「ふん。その時に再び、国民から吸い上げればよい!」

 

 ゼーレやゲンドウとは別次元で下劣な会話がなされる中、部屋の外が騒がしくなる。

 

「何の騒ぎだ?」

 

「さて?」

 

 部屋の扉が開くと数人の男達が立っていた。

 

「何だ、君達は?」

 

「私は警視庁特命捜査課の神代警視正です。総理、貴方を殺人教唆及び公務員職権濫用罪で逮捕します!」

 

 神代警視正が逮捕状を総理に突きつける。

 

「なんだと!?」

 

「官房長官。貴方も同罪で逮捕状が出ています」

 

「どういう事だ?」

 

 

 

「未成年の殺害も指示をしておいて……逮捕されるのは当然ですな」

 

 実は加持が与党内の対立派閥に情報を流した結果であった。

 加持の予想通り、対立派閥の長は狂喜して加持が持ち込んだ情報を活用した。

 故に裁判所も異例の早さで逮捕状を発行したのである。

 しかし、加持にとって予想外の事が起きた。命令を受けた戦自は総理逮捕の報を受けても進軍を取り止めなかったのである。

 加持が想像したよりも、戦自はサードインパクト阻止の使命に燃えていたのだ。

 

 総理官邸で現職の総理が殺人教唆で逮捕されるという前代未聞の事態が発生していた頃、第三新東京市から逃げ出す人間がいた。

 通称ターミネーターと呼ばれる女性である。

 第三新東京市の異変に気づけてもMAGIの監視がある為に逃げ出せなかったが、MAGIがクラッキング攻撃を受けている僅かな時間を察して第三新東京市から逃げ出していたのである。

 

「どうやら、ネルフと依頼主が殴り合いを始めたみたいだな」

 

 自分を追う者同士が戦うのだから、皮肉なものである。心情としてはネルフを応援するが、当のネルフは迷惑と感じるだろう。

 苦笑しつつも、逃亡用に隠していたモトクロスバイクまで、復活したであろうMAGIの監視システムの死角を移動する。

 

「何だ、あれは?」

 

 裏道を戦自の小隊が警戒しながら偵察しているのを発見した。

 MAGIの死角での移動となれば限られるので不思議ではない。

 

「殴り合いから戦争にまで発展したか!」

 

 ネルフと戦自では勝負にならない。セカンドインパクト後に対人実戦を経験した戦自と技術集団のネルフでは、人の数も質も装備も大差がある。

 

「しかし、そこまでするかね?」

 

 最初は組織同士の小競合いだと思っていたが、軍を動かす程の争いとは思っていなかった。

 

「ネルフに義理は無いが、意趣返しはさせてもらうか」

 

 第二師団は都市防衛型部隊である。麾下には普通科連隊、特殊車両連隊、戦車大隊、飛行部隊、化学防護隊等から編成されていて、兵員七千四百名を抱えている。

 師団長は森下陸二将である。指揮を執る指揮車は冷房が利いている。

 これは、別に幹部の特権ではなく、常時、各部隊から送られる情報を処理する為に大型コンピューターを搭載しているが故である。

 

「師団長。総理が逮捕されたそうですが、如何なさいますか?」

 

 幹部の一人が今後の行動について質問する。

 

「総理が逮捕されても、我々に出された命令が撤回された訳ではない。我々は職務を遂行するだけだ」

 

「既に全部隊は予定された配置についています」

 

「うむ。それでは作戦を開始する。目標は敵の人型兵器とパイロットである。敵の司令官の身柄は無視して宜しい」

 

「了解しま……」

 

 幹部達は最後まで言葉を言い終わる事は永遠に出来なくなった。

 指揮車の燃料タンクをマグナム弾で撃ち抜かれたのである。

 爆発炎上する指揮車の消火作業を行われる間に、第二師団の悲劇は続くのであった。

 総理逮捕の報告を受けて、動揺する兵士を落ち着かせる為に幹部達が師団長の元に集まったのが致命的であった。

 各部隊は帰って来ない上司を待っている間に通信装備を破壊されてしまった。

 

「駄目です。司令部が応答しません!」

 

「司令部のある方向で爆発を確認しました!」

 

「直ぐに伝令を出せ!」

 

 各部隊は情報手段を断たれて孤立してしまったのである。

 各部隊にも総理逮捕の報は届いており、兵士達に動揺が走るなか、幹部士官が今後の行動の確認を取る為に司令部に出向いたことで、各部隊に不安が拡がる。

 

「兵器の破壊は分かるがパイロットも殺せとは流石に不味いだろ」

 

「それよ。パイロットって、中学生だろ」

 

「幹部連中も、それで揉めているのか?」

 

 若い兵士の中には中学生の弟や妹が居る者もいた。

 また、年輩の古参の兵士の中には中学生の子を持つ者もいた。

 命令に忠実だった幹部士官が居なくなると、兵士や下士官の間には作戦に対する疑問が膨らんでいく。

 

「大変だ!部隊長と師団長が死んだ!」

 

「敵襲か!?」

 

「ネルフの連中に出来る事か?」

 

 司令部と幹部を失った師団は退く事も進む事も出来ずに立ち往生するだけであった。

 その原因を作った張本人は民間人を装い、図々しい事に戦自に保護されて安全地帯へ逃亡していた。

 

「食中毒で動けない間に取り残されるとは災難でしたね」

 

 第二新東京市までの護送を命じられた新人兵士は心から同情していた。

 

「はい。歩く事も出来ずに車の中で寝込んでいました。途中で何回も救急車を呼んだのですが、繋がらずにバッテリーが切れてしまいました」

 

「もう安心です。我々が第二新東京市まで送りますので」

 

「日本の皆さんには感謝します」

 

 美女に感謝されて喜ばない男性は稀であろう。

 まさか、目の前の美女が司令部を全滅させて、各部隊の通信設備を破壊した凶悪なテロリストとは想像もしなかった。

 

 その頃、ネルフでは、既に第三新東京市が包囲されていることは分かっていたが、包囲したまま戦自が沈黙している事に困惑していた。

 

「何が目的なの?」

 

 軍人であるミサトも戦自の意図が分からずにいた。

 まさか、パイロット達を襲撃した殺し屋が戦自の司令部を全滅させて、連絡手段を断ち、立ち往生させていると誰が想像出来るであろうか。

 

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