新世紀エヴァンゲリオン takeⅡ   作:周小荒

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第47話 人類補完計画

 

 総理逮捕の報はゼーレにも即座に伝わっていた。

 

「あの馬鹿者は何をしているのだ!」

 

 キールが思わずテーブルを叩いた。

 キールにすればゼーレの傀儡となる無能な人間が御し易いと考えて、政治資金を与えて総理に据えたのだが、キールの想像以上に無能だった様である。

 

「何故、命令書にパイロットの殺害を明示するのだ!」

 

 有能なればゲンドウの様に造反し、無能なら指示を出しても遂行が出来ない。

 

「出動した軍は、どうしている?」

 

「それが、司令部が壊滅した様で、立ち往生しています!」

 

「ゲンドウの仕業か?」

 

「いえ、事故かもしれません」

 

 キールは思わず天を仰いだ。

 

「総理が無能なら、軍までも…」

 

「ならば、全て消去しますか?」

 

「止むを得ぬ」

 

 キールが決断を下した頃、第三新東京市では戦自の同士打ちが発生していた。

 

「何が起きているの?」

 

 発令所でのミサトの言葉はネルフ職員全員の代弁でもあった。

 ネルフ職員は困惑するだけで良かったが、当事者の戦自の兵士は困惑と不安と恐怖が入り交じっていた。

 最初に待機していたVTOL機が爆発した事が原因だった。

 敵襲と勘違いした兵士が周辺に威嚇射撃をした事から、他の部隊から反撃を受け、更に反撃をした事で味方同士での戦闘になってしまった。

 既に事態を治める司令部が壊滅した為、一部部隊が撤退を始めると全部隊に波及していったのである。

 

「どうやら、助かったみたいね」

 

 ミサトが安堵したのも束の間、観測所から驚愕するべき報告がなされた。

 

「入間基地より、N2弾道ミサイルの発射が確認されました!」

 

「奴ら、加減という物を知らんのか!」

 

 冬月がゼーレに対して、思わず怒りを爆発させたが、ミサトは冷静に指示を出していた。

 

「エヴァ全機、緊急発進!」

 

「了解!」

 

「皆。聞いての通りよ。四機のエヴァのATフィールドで、この街を守って!」

 

 ミサトがパイロット達に激を飛ばす。

 パイロット達は既に事態に対する対策を考えていた。

 地上に上がったエヴァはパレットライフルで弾幕を作り飛来する弾道ミサイルを空中で爆発させてからA.T.フィールドを展開したのである。

 これは、アスカの発案であった。空中爆発をさせる事で爆発エネルギーの半分を空中に逃がすのである。

 そして、地上に向かう爆発エネルギーをエヴァ四機によるA.T.フィールドで防ぐのである。

 結果的に被害は最小限に抑える事は出来たが、皆無とはならなかった。

 A.T.フィールドに阻まれた爆発エネルギーは横方向に逸れて、撤退中の戦自を背後から襲う形となってしまった。

 兵員輸送車で先頭を走っていた者は難を逃れたが戦車大隊の後方にいた部隊は高蒸気を浴びて全身火傷をしたのである。

 戦車大隊の中には、戦車内にいたことで高蒸気の熱による脱水症状を起こした者もいた。

 

「仲間が完全に撤退していないのを確認もしないとは!」

 

 冬月は呆れていたが、実際は冬月の認識に間違いがあった。

 N2弾道ミサイルを発射した入間基地は国連軍の管轄になっていた。

 セカンドインパクト前は同じ自衛隊だったのだが、セカンドインパクト後には完全な別組織であった。

 

「要らん手間を掛けさせおって!」

 

 逐次届く戦況報告にキールは舌打ちをしていた。

 四機のエヴァを倒した後に、ジオフロントを露出させる為の余計な作業が入るからである。

 キールは既に量産機の勝利を確信していた。四機のエヴァは所詮パイロットが操縦。

 それに比べ、量産機はダミープラグを使用している。四機のエヴァが何度量産機を倒しても直ぐに再起動するが、四機のエヴァは一度でも負ければ後が無い。

 生身のパイロットの心身共に掛かる負担は大きく、中学生が耐えられる事ではないと思っていた。

 キールは十分な余裕を持って量産機と四機のエヴァの戦いを観戦するつもりであった。

 しかし、シンジ達も既に量産機の対策は考えていたのである。

 九機の量産機が第三新東京市の上空をゆっくりと円を描く様に滑空している。

 白い機体に白い翼は遠目に見れば天使を連想させる。

 

「ぎゃ!」

 

 ヒロシの声が通信回路から流れて来た。

 

「ヒロシ君、どうしたの?」

 

 発令所のミサトが心配してヒロシに声を掛ける。

 

「うわっ。こいつらのデザインした人って、どんな趣味してんだ?」

 

 ヒロシの参号機が捉えた映像を発令所のスクリーンに転送する。

 

「な……これは、確かに、酷いわね」

 

 ミサトも発令所のスクリーンを見て納得してしまった。

 

「こりゃ、まるでウナギだな」

 

「ウナギにしては口が下品よ!」

 

 ヒロシの論評にアスカが更に辛辣な事実を口にする。

 

「二人とも、無駄話はしない!」

 

「じゃあ、行くよ!」

 

 レイが二人を注意して、シンジが三人に合図をする。

 零号機と参号機がバレーボールのレシーブの様な態勢を取ると初号機が零号機に、弐号機が参号機に向かい突進する。

 

「あの子達、何する気なの?」

 

 指示も出さない内に行動を起こすパイロット達にミサトは疑問を持つ。その答えは、直ぐに得られる事となった。

 味方に突進した初号機と弐号機は、それぞれのパートナーの手に足を掛けると、中国雑技団の様に空高く舞い上がる。

 

「な、なんて器用な!」

 

 実はパイロット達が学校で休み時間等を使って練習した結果である。

 ヒロシは量産機の話を聞いた時に、量産機が起動する前に破壊する事を考えたが、シンジもレイも量産機が、どの様に戦場に現れたかは知らなかった。

 そこでシンジの「量産機には翼があった」という証言から空から空輸、もしくは自力で飛んで来たと考えたのだ。

 

「エヴァみたいな巨大な物が戦闘機の様な動きは出来ないと思う」と考えたヒロシは、それとなくリツコに質問してみた。

 リツコの返答はヒロシの予想通り、「エヴァに翼があっても鳥の様に飛べずに滑空する程度」というものであった。

 そこで滑空中の量産機を攻撃する事を考えた末に出した作戦がこれである。そして、作戦は見事に成功した。

 初号機と弐号機は滑空中の量産機を捉える事に成功したのである。

 滑空中にエヴァ一体分の重量が加われば量産機は墜落するしかなかった。

 墜落した量産機を下敷きにして、初号機と弐号機は一機ずつ量産機を破壊する事に成功した。

 墜落した場所に零号機と参号機は駆け寄り、量産機の手からロンギヌスの槍を奪うとコア諸共に量産機を両断する。

 他の量産機が地上に着陸した時にはミンチになっていた。

 

「残り七機!」

 

 初号機と弐号機の連係プレーで量産機を倒すと零号機と参号機が倒れた量産機のコアを破壊していく。

 

「残り五機!」

 

 シンジ達は油断しなかった。完全破壊した代わりに自身のエヴァが使われる可能性も考慮した為である。

 

「残り三機!」

 

 初号機と弐号機の連係プレーに量産機が撹乱されている隙に零号機と参号機がロンギヌスの槍で二機葬った。

 

「ラスト一機!」

 

 九機の量産機の完全破壊まで五分と掛からずに決着がついてしまった。

 ゼーレは自分達の人類補完計画が水泡と化した事が信じられなかった。

 キールは量産機の勝利を信じて疑う事はなかった。

 裏死海文書を発見してからの長い年月が僅か五分で無になったのだから、無理もない。

 

「何故だ!何故、こんな結果になった!?」

 

 キールの問いに答えを返す者は、「ゼーレの中では」誰もいなかった。

 そう。他の者が返答したのである。

 

「それは、貴方達の驕りが原因なんですよ。」

 

 その声を合図にゼーレのメンバーの立体映像は消えた。

 キールが後ろを振り向くと数人の兵士が銃を持って部屋に乱入していた。

 

「お久しぶりですね。議長!」

 

「貴様、生きていたのか!」

 

「ええ、日頃の行いのお陰でね!」

 

「まさか貴様が!」

 

 激昂するキールに対して加持は冷ややかに否定する。

 

「残念ながら、このシナリオを書いたのは自分ではありませんよ」

 

「では、碇か?」

 

「まあ。確かに碇には違いありませんけどね」

 

「どういう事だ?」

 

 キールにはシンジの存在などは、眼中になかった様である。

 

「説明するのも面倒臭いんでね、借りは返させてもらうぞ!」

 

 加持の声を合図に兵士達がキールに向けて発砲する。

 たちまちキールは蜂の巣どころか、ミンチになるまで銃撃を受ける事になる。

 兵士達は弾切れになると新しいマガジンを装着して執拗にキール・ロレンツであった肉塊に発砲するのであった。

 彼らもセカンドインパクトで肉親を失った者達であることが窺える。

 

(さて、ゼーレのメンバーは殲滅した。後はシンジ君次第だな)

 

 第三新東京市には、もう一つの補完計画を企んでいる人物がいる。

 そして、その人物との戦いは他人が口を挟めない事を加持は理解していた。

 

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