あーだこーだと私情を片づけて、メインである緋弾の方を執筆していたら御覧の有様ですよ。
並行して定期的にいくつも執筆してる人は、すごいと素直に思う瞬間です。
実は言うと(単行本は全部あるけど)ちょっと原作の展開を忘れ気味。
と言うか、見てくれてる人いるのか? と、色々と心配です。
天人である蒼天と天子が、関西呪術協会の一員となってしばらく。
早くも季節が移り変わる頃となった。
天人と言う……普通に聞けば
が、人間は慣れる生き物である。
誠意を持って話せば、心を開いてくれるものもいるであろう。
天人――人ならざる者と言う事もあって遠慮しがちな者もいたが……そんな態度も
そんなある日、親についての悩みを持っているという青年が蒼天の所へと来て相談を持ちかけ、それに対して蒼天は答えていた。
「良いですか? 人の生き方は十人十色、その者の生き方と言うモノがあります。血の繋がった肉親であろうとも結局は自分とは違う人間なのです」
「……はい」
「意見がぶつかる事もありましょう。しかし、だからと言って自分の意見を通さずにいれば、親も貴方を理解しないでしょう。先程も言ったように肉親であろうとも自分とは違う人間。心を読む事などできません。私から言える事は、それだけです」
「では、どのようにすれば……」
「自らの考えを主張する事です。全てを伝える事は難しいでしょうが、話を聞くに……不徳な親と言う訳でもないようですし、その息子である貴方の言葉を、
「――分かりました。ありがとうございます」
答えたと言っても、実際にどのようすればいいのかは本人しだいである。
あくまで天人がするのは忠言。
強制はしない。
あくまでどのような行動をすればいいのかを指し示し、導く。
自分の使命はそう言うものだと蒼天は思っている。
青年は蒼天にお礼を言って、部屋を出た。
「……随分と楽しそうね」
「まあ、これが天人としての本分ですからね」
「忠言と言うよりは説教みたいな感じに見えるんだけど……」
「紙一重ですし」
入れ替わるように部屋に入って来た天子に対して彼はそう返す。
このように、蒼天に忠言を頂こうと言う者が徐々にだが増えて来た。
「幻想郷以外でこうして天人としての役目を果せるとは、思ってもいませんでしたね……」
「天人と言っても、今を生きてるし未来を見通せる訳でもないしね」
「ま、
「こうして言わないと、話をちゃんと聞いてるのか疑われそうだし」
「
天子に向かって、蒼天がそう言うと同時に部屋が開けられる。
またしても忠言をして欲しいと言う者であろうかと、そちらを見る。
「失礼いたします。長から話があるとの事で、会議の間に集まって欲しいと……」
「分かりました。すぐに行きましょう」
連絡にきた巫女に蒼天はすぐに返す。
そのまま巫女は一礼して、襖を閉めて去って行く。
「行ってらっしゃい」
「一緒に行くんですよ」
「……許してくれる訳ないわよね」
蒼天に掴まれて天子は連れて行かれる。
「かの魔法世界――ムンドゥス・マギクスで戦争が始まった」
道子は前置きも無しに、集まった幹部を見てそう言った。
それについて、幹部十二席の二人は焦る事も驚く事もなかった。
「とうとうか……向こうの状況はどないなっとる?」
「使者からの話を聞くに、宣戦同時攻撃やそうや。前から小さな争いは絶えへんかったそうやし、こうなるのは時間の問題やった」
「そうか、詠春は?」
「武者修行でこんな事になるとは思うてなかったみたいで、ウチらが戦争に参加する口実にされた事を悔やんどる。ま、その事について話をしとる暇もない」
幸子の質問に、道子は答える。
「修行に行った事に関しては、事前に神鳴流のモンらで話して合意の上やったんやろ? ある意味、巻き込まれたのはしゃあないとも取れるが……」
「ともかく、詠春については後回しや。魔法世界に行った者らの状況は?」
兼基の言葉に少し同意しながらも、幸子は話を変える。
「うーん、宣戦同時攻撃や言うてもいきなり戦闘になった訳やない。心配しとらん訳……でもないけど、今の所被害報告は無しや」
長である彼女の顔も言葉も、真剣なモノだが、心配している事には変わりは無いだろう。
「蒼天はんはどう見る?」
道子は、蒼天に尋ねる。
相談役と言う名目上、組織の今の状況、そして情勢は一通り聞かされている。
「戦とは、傭兵でもなければ個人で行うものではありません。ましてや国、組織ともなれば、何かしらの利がなければ動かないでしょう。それに争う理由はいくらでもあります。土地、人、資源、宗教、民族の違い。この戦争で誰が何を得るのかを考えれば、分かる事はあるでしょう」
「ああ、そうやな。その事については色々と分かってる。そもそも、魔法世界にいる詠春の坊主をわざわざ探し出して口実にするくらいやしな」
「ならば考えられるのは、関西呪術協会の戦力を削るため」
蒼天は兼基の言葉を補足するように付け足す。
魔法使い達の狙いとしては、あわよくばこの極東の島国を乗っ取ろうと言う事だろう。
「はあー……」
怒りを通り越して呆れ、息を吐いて兼基は毛の少ない頭を掻く。
幹部達が全員いた時の話で分かってい事でもあった。
だが改めて言われて、戦争が始まり、実感が湧いたのだろう。
「色々と面倒ねぇ」
「天子はん、一言で片付けんといてください」
幸子はそうツッコむ。
実際に面倒なのは事実でもあるために、間違いではない。
「ともあれ、現状維持やな……一応、兼基はんは念のために食糧やらの支援物資は確保しといて欲しい。幸子はんは他の支部に連絡してくれる? 蒼天はんらは……相談があります」
「分かったわ」「うむ」
幸子、兼基の順番で頷き、会議の間を出て行く。
日が浅いとはいえ蒼天や天子を、長である道子と一緒にする事に何も言わない辺り、ある程度の信頼は得ている証拠だろう。
「して、相談とは?」
「――魔法世界に行って、ウチの同朋を護って欲しい」
これ以上なく真っ直ぐに、蒼天に向かって彼女は言って来た。
「別に構いませんが?」
「え?」
その蒼天の言葉に、道子は驚愕の声を上げた。
いかにも意外だと言わんばかりの顔である。
「まあ、あくまで護るだけで一緒に戦ってくれと言う事でしたら、お断りしましたけど」
「そ、その……ええのんか? てっきり、そんないざこざに介入したらあかんとか何とか言うもんやと……」
「そうですね。人災である戦争……介入する必要は無いのですが、義を見てせざるは勇無きなり。今は私も客将身分とは言え組織の一員ですからね。護る事ぐらいは出来るでしょう」
「相変わらず、堅苦しいわね」
最後に天子がそう言うが、その通りだろう。
「仕方ないでしょう。天人が人間の庇護にいるなど知れたら、私以上に口うるさい天人に何を言われるかも分かりませんし」
「自分で口うるさいのは認めるのね」
「どこかの閻魔様よりはマシでしょう」
「どうだか……あの人と口論する物好きなんて貴方ぐらいでしょう?」
天子はほとほとに呆れている。
蒼天から口に出た『閻魔』と言う単語を聞いて、道子は内心では驚きながらも話を続ける。
「護るだけならやってくれるんやな?」
「ええ、護るだけなら。最初の話では、客将……もとい相談役としてと言う話でしたので、今回の話は最初の話とは違うと言う事になります。問題は……」
「――対価か?」
「すみませんね。今となっては
蒼天の言葉に、道子は考えるような顔をしてすぐに、
「分かった。ある程度の物ならすぐに揃える。なんならウチ自身でもええよ?」
笑顔でそう答える。
「いや、
「冗談と言えば冗談やし、もし対価に求められるんやったらそれでも良かったけど?」
カラカラと笑いながら道子は蒼天に答える。
本人は笑っているが、それほどの覚悟があったのだろう。
『天に縋りたい程の心境』――彼女の言葉に偽りなどなかったのだ。
「ま、いいじゃない。いずれにしても魔法使いとやらについて知るいい機会よ」
「天子の言う通りなんですが、
的を射るような蒼天の言い方に、天子は「……う」と言って動揺する。
「どっちにしても、ウチにとってはありがたい事やからね。それで、何を対価に望むん?」
「神鏡や霊剣と言った物があれば、それでお願いいたします」
「私はお酒で」
蒼天、天子の順番で言うが、望む物に差があるのは性格の違いだろう。
天子の要望に関して、蒼天は突っ込まない。
対価としてはあり得る話である。
お
道子は頷く。
「分かった。すぐに、とは行かんけど用意させるわ」
「ただ、一つだけ注意してください」
「なにかな?」
「天人と言えども全知全能ではなく――全てを救える訳ではありません」
言葉を飾らずに蒼天は言った。
元から天人でもない限り、大体の天人は人間からのなり上がりである。
そして、完璧な人間など存在しない。
その完璧でない人間からなった天人も、また完璧とは言えない。
そもそも、この世に完全な存在や完璧な存在などありはしないと言うのが、蒼天の考えである。
だからこその注意の言葉である。
「それでも、よろしいのですか?」
暗に犠牲が出ると言ってるようなものだ。
蒼天の言葉に道子は少し眼を閉じ、一呼吸を置いてすぐに口を開いた。
「構わへん。その代わりに一人でも多く救うって、約束して欲しい」
「分かりました」
確かに蒼天はそう言った。
道子と別れ、天子と共に蒼天は庭へと出る。
「随分と肩入れするのね」
「肩入れと言うほどでもありませんよ。昔はよく、と言うほどではないですが……こう言うのはありましたからね」
「あら、そうなの?」
「昔と言っても、いつだったか……1000年か2000年、それ以上前にも何度かありましたし」
「貴方、本当に何年生きてるのよ」
「前にも言ったでしょう? 自分でも分からないほどに生きてますよ。と言うか、幻想郷で生きた年数を気にする者がどれだけいる事か……」
蒼天の言葉に、天子は少し考えて、
「あんまりいないわね」
否定した。
「でしょう?」
蒼天は同意するように笑顔で言った。
そもそも、妖怪に限らずに人外の者と言うのは長生きである。
100年、200年などほぼ当たり前。
中には1000年以上生きてる者もそれなりにいる。
なので、生きた年数を聞いたところであまり自慢にもならず、気にする者もあまりいないだろう。
だが、天子としては改めて蒼天について気になり、尋ねる。
「ところで、本当の所としてはどれだけ生きてるのよ?」
「どうでしょうね。
「――え?」
「何ですかその意外そうな顔は……」
「いや、いやいやいや……普通にいくらなんでも驚くわよ」
「そうですか? 私以上に長く天人でいる者なんてそれなりにいますよ」
自慢する事もなく蒼天はそう言うが、天子にとっては衝撃の事実であった。
「しかし、奇妙な事になりましたね。魔法世界などと言う異界に行って人間を助ける事になろうとは」
「私としては貴方の人生の方が奇妙に思えるわ」
蒼天の言葉に同意せず、どこか違う事を天子は言う。
それから二人はそのまま静かに部屋へと戻って行った。
こうして二人の天人は奇妙な運命により、魔法世界に行く事となったのだった。
――後日。
関西呪術協会の者の手を借りてゲートポートを通り、かの魔法世界へと天人二人は降り立った。
その魔法使いについて蒼天はある事を思い出していた。
「そう言えば、幻想郷にもいましたね……。魔法を使う者が」
「そうなの?」
「ええ。もっとも、私は会った事はありませんが……紫の話を聞くに魔法使いではなく魔女との話でしたが」
「それってどう違うのよ?」
「魔法を使う人間が魔法使いであって、魔女と言うのは種族的のものを指すらしいです」
「つまり、人じゃないと言う事ね」
天子はそう言って簡単に納得する。
「えーと、天人様達。ちょっとよろしいですか?」
「なんでしょう?
蒼天が目を向けて答えたのは、30前後の女性。
名前を葛葉
メガネをしており、少しばかり堅いめの性格をしている。
彼女は蒼天達に少し
「着きましたよ?」
「みたいですね」
「なにか、驚きとかはないんですか?」
「興味深くはありますが、あんまり表だって驚く事でもありませんし」
「………………」
初めての異世界だと言うのに、蒼天は冷静に返す。
その冷静さに対して、刀花は何とも言えない表情を向ける。
「蒼天~。貴方もこっちに来なさいよー」
子供のようにはしゃぎながら、天子が遠くから呼ぶ。
蒼天は呆れながら天子を見てから、刀花に話しかける。
「すみませんが、入国手続きとやらをお任せしてもよろしいですか?」
「失礼を承知で言いますけど、天人には見えません……」
「天人と言っても、別に完全に悟りを開いてる訳ではありませんからね。それに、欲が全く無い訳でもないですから人間臭く見えるのも仕方のない事です」
「そうですか……初めて知りました。それはそうと、ここは私に任せて比那名居様の所に行ってやってください」
「感謝します」
そう言って蒼天は、天子の所へと行く。
「何やってるんですか、
開口一番に蒼天は、天子に向かって
「どうやらあっちに外を見渡せる所があるらしいわ」
しかし、天子は話を聞かずに話を勝手に進める。
蒼天は思った。
(幻想郷にいる者は、大概話を最後まで聞こうとしないんですよね……)
この事については、蒼天としても諦めがついている。
重要な話でもない限りはこちらが折れた方が早いと、そんな結論に至っていたりもする。
「分かりましたよ。ここがどんな所なのかを先に見に行きましょう」
「さすが蒼天ね」
嬉々とした笑顔で、天子は返す。
そのまま天子へとついて行き、階段を上がる。
見えてきたのは、いくつもの円柱状の建造物。
さらには柱のような岩の上にも同様の建物が存在する。
まさしく都市と言う感じの街並みであり、鉄のクジラや魚を模した物が空に浮いている。
「ふむ、これはまた興味深い所ですね」
「幻想郷の外のさらに外にはこんな世界があったのね」
蒼天、天子の順番でそんな感想を口に漏らす。
「今はゆっくりと見て回る訳にも行きませんがね。それに、戦時ですから気が立っている者もいるでしょう」
「私としてはケンカを売られれば望む所だけど」
「……もう貴女は地上に残っておきなさい」
「冗談よ……」
天子は涙目ながら蒼天に訴えるように言う。
蒼天としても、天子の言い分は分からないでもない。
せっかく外の地上に来たとは言え、それほど外を見て回っていない上にほとんど話し合いだったため、これほどまでに退屈しているのだろう。
彼は溜息を吐き、天子に言う。
「仕方ありませんね。荒事は基本的に貴女に任せますよ」
「貴方って融通がきかない訳じゃないのよね……」
「柔軟に生きるのは難しいですけどね。もちろん、融通がきくと言っても甘やかす訳ではないんですけど」
「ですよね」
蒼天の言葉に天子は肩を落とす。
「お二人さん、終わりましたよ」
途中から来た刀花によって二人は景色を眺めるのを中断し、彼女の後に続いて行く。
「……空を飛ぶのって変な感覚ですね」
刀花は空中に浮きながらそう言う。
彼女の案内によって、蒼天たちは
と言っても彼女はどちらの方に行けばいいかを口で言っているだけで、実際は蒼天たちと並んで飛んでいる。
「あら、貴方達も飛んでるじゃない。あんな風に」
天子は目に映った、箒に乗って飛んでいる人達を示す。
それに対して刀花は首を振る。
「いや、私達は飛んでると言うよりは
「そう言えばそうだったわね。
「ええ、なのでこう言う風に飛ぶと言うのは浮遊術でも覚えていないと味わえないのですが……」
天子に答えながら刀花は蒼天を見る。
「浮いてると言うよりは私が浮かしてるのですけどね」
ツッコミを入れるようにして、蒼天は刀花を見て答える。
刀花の両手両足には鉄の輪が付いており、それを蒼天の『金属を操る程度の能力』で浮かしている。
天子が言った虚空瞬動での移動でもいいのだが、少なからずとも『気』を消費する。
能力を使えば、体力もそれほど消費せずに済む。
今は戦時で、どこで戦闘が始まるかは分からない。
なので、体力温存のためにも蒼天がこうして能力を使っていると言うことである。
――グオオオオオオっ!!
「今の鳴き声は……」
刀花が冷や汗を流しながら、鳴き声がした右を見る。
蒼天たちもそちらの方に目を向ける。
近づいてくるのは、空中を飛ぶ黒い影。
先程の続きだが、戦闘と言っても人だけではない。
例えば――
「竜やないかーーッ!?」
例えば生息している現地生物などと戦闘する場合もあるのである。
接近する物体の正体を見て刀花は叫んだ。
翼をもった黒い竜が、叫び声を上げながらこちらへと飛んで向かって来ている。
天子は蒼天に話しかける。
「竜なんて初めて見たわね。ところで幻想郷にいる龍神って、あんな感じなの? 蒼天」
「いや、幻想郷でウワサされている龍神とは大分
「なんでそんなに落ち着いてるんですか!? 竜ですよ! 飛竜ですよ!?」
「竜ですねー。いやはや、魔法世界と言う存在を初めて知ってからと言うものの……驚く事が多いですね」
刀花に対して驚いているなどと言いながらも、涼しい顔で蒼天は落ち着いている。
と言うよりも、天人二人はどちらも取り乱してはいない。
「なにを落ち着いてるんですか!?」
そう言って取り乱しているのは刀花一人である。
「ここでも通用するかは分かりませんが、物は試しですね」
「何をする気ですか!? 竜種に立ち向かうなど、余程の腕がなければ自殺行為ですよ!!」
蒼天を呼びとめるように刀花は叫ぶが、蒼天は構わずに前に出る。
その飛んでくる竜に対して、蒼天はかざすように手を上げた。
それを見ている刀花は息を呑みながら刀を持って身構える。
だがしかし、黒い竜は段々と飛んでくる速度を緩め蒼天の目の前で制止した。
「どうなってるんです……」
襲い掛かる勢いだった竜の様子の変わり様に刀花は疑問の声を上げた。
彼女の疑問に答えるように天子が言う。
「ああ、天人の特性みたいのものよ。大概の猛獣は簡単に
「竜を猛獣扱いってどういう事ですか!?」
刀花が驚きながらもツッコむ。
「地上の生物であれば大概は手懐けられますよ。もっとも、価値観を持つ程の知性がある妖獣などには効果はありませんがね」
そう言いながらも蒼天は黒い竜の頭を撫でる。
先程の襲い掛かって来そうな勢いはどこへやら、借りて来た猫のようだと言わんばかりにおとなしい。
それでも興奮状態にいるのは変わらないようである。
「
語りかけるように蒼天がそう言うと、黒い竜は一つ
その様子に刀花はポカンとした表情しか浮かべる事しか出来ない。
が、無理もない話かもしれない。
「少し足止めされましたが……行きましょうか」
そう言って蒼天が向き直り、飛んで行く。
ゲートポートで天人に見えないと刀花は言ったが、
(前言撤回ですね)
などと内心思っていた。
ところどころ飛んで移動し、乗り物を経由して数時間。
蒼天たちはようやく目的地であるグレート=ブリッジの近くにある都市――『トリスタン』へとやってきた。
この都市の郊外に関西呪術協会の拠点があることを、既に道子から聞かされている。
「てっきり現地の建物かと思ったけど……違うのね」
天子が目の前の建物を見ながらそう言う。
なぜなら蒼天たちの眼前に広がるのは、移動中には全く見なかった日本の平屋のような建物だからだ。
「最初からあった……と言う訳ではなさそうですね」
「ええ、色々あって拠点と言うか野営地は自分で用意しろと言う事でしたので」
「余程戦力を削りたいのでしょうね。力を削ぐと言う点では理にも利にも適っていますが」
「なにを感心してるんですか! あの魔法使いどものせいで、戦う意味も無くこんな所にまで借り出されて……」
憎々しげに刀花は吐き捨てるように言う。
理解できない話ではない。
勝手に巻き込まれた挙句に援助は無し、自前で戦に臨めと言うのだから身勝手にも程がある話だろう。
「手を抜けば死ぬのが戦ですしね。適当な戦果を残して退くと言う、器用な事が出来ればいいのですが」
蒼天の言う事がある意味としては最善ではある。
元々の問題として付き合う義理も無い戦いなのだから、文句を言われない程度に戦果を挙げて退ければ、失うものは少ないだろう。
「『出来ればいい』と言う事は、上手く行かないと言う事ですか……」
「ええ、葛葉さん。そもそも今回の相手の狙いが関西呪術協会の戦力を削ると言う点にあるのでしたら……無茶難題を吹っ掛けてくるのは想像に
「
怒りを
「まあ、落ち着きなさい。長である彼女との約束もあります。微力ながら、多くの者を救って見せましょう」
微力などと蒼天は言うが、刀花にとっては先程の竜を手懐けた所を見たので、その言葉が頼もしく見えた。
いざ敷地に入ろうと、そんな時だった。
誰かが後ろから倒れる音がする。
そちらの方を見れば、負傷している二人組の男性。
一方は軽傷だが、もう一人は血を流していていかにも重傷である。
「どうしたんですか!?」
真っ先に心配するように刀花は彼らに駆け寄る。
「く、葛葉さん……どうしてここに……」
「私がここにいる理由は今はいいです! それより何が?!」
「前線のウェスペルタティア王国の辺境で襲撃を受けて……もうすぐ他の人も、転移を繰り返して追手を撒きながらここまで後退してくるでしょう」
「後退してくると言う事は、
「天ヶ崎さんと立花さんらが残って……」
軽傷をしてる方の青年が状況を刀花に説明している。
蒼天たちは、すぐに自分達の出番である事を確信した。
彼は投下に歩み寄り、話しかける。
「早くもお役目のようですね」
「そうですね……行ってくれますか?」
「そのために来たんです。もっとも、場所が分からなければ行きようもありませんが」
「なら、転移した彼らの気の跡を辿って行けば自然に着くはずです。私が案内をします」
刀花は目の前にいる彼らの気の跡を辿るように精神を集中させている。
そんな中、負傷している者は見慣れない蒼天たちを見て尋ねる。
「貴方達は一体……」
「天の助けみたいなものだと思ってください。そう言えば忘れてましたね」
そう言って蒼天は人が数人は通れるような金属の大きな鳥居を作り出す。
その光景に二人組の男性は驚く。
「何のための鳥居よ」
「帰り道ですよ」
天子の疑問に蒼天は簡潔に答える。
「では、行きます」
準備が出来たらしい刀花に連れられるように、
「転移!」
天人二人は戦場へと向かった。
転移を繰り返し、最終的に着いた所はまさしく戦場であった。
森の中で目立たないが空を見上げれば、そこでは
混沌とも言える状況。
だが、そんな中でも蒼天は落ち着いていた。
いや……それどころか何かを思い出しているようだった。
「まるで大昔の神様同士の争いを見ているようですよ」
静かに彼はそう言い、刀花に目を向ける。
「大丈夫ですか? かなり消費しているようですが」
「ええ、長距離転移はさすがに応えます……」
負傷した男性二人ははかなりギリギリの状態であった。
後退の余力を残していたか、もしくは長距離転移が出来る符を持っていたのだろう。
おそらくは後者。
だが、刀花はそうではなく普通の転移符で気を辿るように繰り返して長距離転移をした。
その分の消費は膨大だろう。
蒼天が呆れるように息を吐きながら言う。
「私も少し手助けしましたが……さすがに神通力は人には馴染みませんね」
「では、転移の時に妙な力を感じたのは……」
「ええ、葛葉さんの転移に合わせて私の力を少し渡しました。さすがに自身を含め三人も長距離転移させるのは難しいだろうと思いまして」
神通力――神力とも呼ばれる力は、天人や文字通り神様が使えるモノである。
巫女などと言った者にも神降ろしなどをして、その身に
さすがにただの人間である刀花には荷が重かったようである。
「もし力を渡していなければ、その場で倒れていたかもしれませんね」
「それは……すみません」
その事実に刀花は蒼天に対し謝罪する。
いても立ってもいられなかったのだろう。
「焦るのも分かりますが、あまり無茶をしては足を引っ張ってしまうことぐらい分かるでしょう? それでは元も子もありません」
「はい……って、説教を受けてる場合ではありません!」
「分かってますよ。問題は、上に出れば即座に狙われるでしょうね」
蒼天がそう言って空を見上げれば、何隻もの空を飛ぶ船や何か槍のような物を持って空を飛ぶ人々。
閃光が激しく飛び交い、飛べばすぐに狙われるだろう。
「悠長な事を言っていては、残っている者達が――」
「分かっていますよ。一人でも多く救ってくれと道子殿から仰せつかってますからね」
刀花を宥めるように蒼天は言い、それに対して天子は尋ねる。
「結局、どうするのよ?」
「降りかかる火の粉を払いながら探すしかないでしょう。少なくともこの近辺にいるはずです」
「それはいいわね。とても単純で分かりやすいわ」
緋想の剣を出して、好戦的な笑みを浮かべて天子は蒼天に答えた。
「できれば葛葉さんは、この場から退散したほうが良いかと……さすがに消耗し過ぎていますし」
「そう、ですね……」
さすがにこの状況では足を引っ張るだろうと刀花自身分かっているのか、息を切らしながらも蒼天に答える。
蒼天はすぐに一人分が通れる大きさの金属の鳥居を出現させた。
「この鳥居をくぐれば、拠点に戻れます」
その蒼天の言葉に半信半疑と言った感じに刀花は鳥居を見る。
この状況において蒼天はウソを言っているつもりはない。
刀花もそんな事は何となくだが分かっている。
「あとは、お任せします」
心の残りとばかりに彼女は言って、恐る恐る鳥居をくぐろうとする。
手から入るようにして彼女が鳥居をくぐった瞬間に、光に包まれて彼女は消えた。
「これってどう言う仕組みよ」
「神様が分社に移動する時の応用みたいなものですよ」
「随分とまあ、便利ね」
「説明はあとでにしましょう」
天子の疑問に答えながら蒼天は鳥居を片付け、空を見上げる。
そして、そのまま空を飛び関西呪術協会の者を探す。
魔法の
流れ弾のように魔法が飛び、蒼天たちを掠めて行き、後ろで大地を
その余波が多少なりとも天人二人にも届く。
「こんな中を探すのは苦労するわね」
天子は帽子が飛ばないように抑えながら呟く。
「近くにいるのは確かな事でしょう。周りとは違う力……霊力に似た物を感じます」
「それはさっきから分かってるけど……魔力って言うのがあちこちにあってイマイチ場所が捉えづらいわね」
「実際掻き乱されてますからね。まさしく、力と力のぶつかり合い――おや」
軽い感じで蒼天は飛んで来た炎の矢を
天子もそれに合わせて空中で制止し、蒼天の見ている方へ顔を向ける。
「止まれ、貴様ら何者だ?」
重武装の鎧を着込み、巨大な西欧の槍を持っている男性が見下ろしながら、問いかけてくる。
いつの間にやら同じような格好の者に取り囲まれている。
「天子は口出し無用ですよ」
「……まだ何も言ってないじゃない」
蒼天は先に釘をさした。
間が空いてるあたり何かを仕出かすつもりだったのだろう。
などと思いながら蒼天は、向き直る。
「失礼、私達はしがない増援でして」
「ほう……所属はどこだ」
「関西呪術協会から」
「ふっ、そうか」
顔は見えないが不敵に笑う男性。
そして、
「ならば、貴様らは敵だ!」
槍をこちらへと向け出し、周りの者も同様に構え出す。
「やれやれ……ですね」
蒼天が首を振ると同時に目を細めて、手を静かに上げて下ろす。
「全員、う――!?」
男性が同時に号令を掛けようとした瞬間、
「なんだこれはああああぁぁぁぁぁーーーー!?」
訳も分からないと言った感じで鎧を着ている者、全員が叫びながら落ちて行く。
「あーあ……」
「さて、先を急ぎましょうか。こんな敵も味方も分からないような場所に長居は出来ませんし」
「死んでないのよね?」
「戦場だからと言って私達が殺生をしていい理由にはなりませんし、する訳がないでしょう」
そう言って、蒼天は再び霊力に似た力を感じる方へと進む。
「そりゃそうよね」
天子も一人納得しながら、彼の後を追う。
「ところでさっきあの人達が落ちて行ったのは能力で?」
「単純に鎧を下に動かしただけですけどね。別段、難しい事は何もしてないですよ」
彼らが落ちて行った理由は、至極単純。
蒼天の能力で鎧を下へと動かした。
ただそれだけである。
傍目から見れば、飛行魔法が出来なくて落ちたように見えるだろう。
「相変わらず便利ねー」
「応用できる範囲は狭いんですよ」
二人は戦場とは思えないほどに落ち着いて話をしている。
殺伐とした状況には似合わない事、この上ないだろう。
霊力に似た力を追い掛けて数分――
その短時間で何度か戦闘に巻き込まれたが、全て蒼天が片付けた。
そうして、目的地の周辺に着いたが当然ながらそこには誰もいない。
空中に留まりながらあたりを見回す。
無惨な戦闘の後、死の匂いしかしない。
戦闘の後としては新しいらしく、所々で火が出ている。
「酷いものね……」
「人間上がりの私達からして見れば、さらに気分のよいものではないでしょう。私は見慣れてますが……」
言いながらさり気なく視線を蒼天は倒れている死体へと目を向ける。
関西呪術協会の者とは違う。
おそらくこの世界の住人であろう兵士が何人も横たわっている。
それから再び響く戦火の轟音。
「あちらですね」
蒼天は首を向けた方へと飛んで行く。
天子も後に続き、二人は加速する。
すると、どんどんと音は近くなり次第に巫女装束や宮司の装束をした者達が見えてくる。
「あれね……」
「天子、彼らを守るようにして大地を隆起させてください」
「分かったわ」
段々と戦闘場所との距離を縮めると人の形も見えてきた。
「きばらんか! ここで死んでもうたら、故郷の土が踏めへんぞ!!」
「でも、天ヶ崎さん! 追撃をかけられてる状態での撤退は大きな痛手が!」
「んなもん分かっとる! せやけど、戦力的にはこっちが不利、真正面からぶつかる方がもっと大きな痛手や! 殿は俺らがやる! 若いもんは逃げえ!!」
何やら追い込まれた状況で指導者らしき人物が
若い陰陽師達が文句を言おうとした瞬間、大量の火の矢が指導者と思しき陰陽師に襲い掛かる。
「くっ!!」
護符を構えて、防ごうとするその瞬間だった。
突然、分厚い鉄の壁が彼らの前に出現し火の矢を防ぐ。
何が起こったかと彼らが状況を理解する前に、今度は大地が唸りをあげて盛り上がり、高い土の壁が出てくる。
陰陽師達が敵からの攻撃かと混乱する中、彼らの前に蒼天たちが割り込むようにして降り立つ。
「相変わらず、私の能力は火とは相性悪いですね……」
「でも、すぐに融ける訳じゃないでしょ?」
「そうなんですけどね」
陰陽師達からすればどこか場違いな会話をしながら青年と少女が現れたとしか見えないだろう。
その謎な状況がさらに混乱を招く。
「あんさんらは一体――」
「詮索をする前に為すべき事が貴方がたにはあるんじゃないんですか?」
天ヶ崎と呼ばれたメガネを掛けたひょろ長の彼がセリフを言い切る前に蒼天が言葉を発する。
その言葉に、いち早く彼は反応しすぐに切り替える。
ここは戦場、気を抜けば死ぬと言う事を彼は思い出す。
「お前ら! ぼーっとしとらんとさっさと逃げえ!!」
その一喝に他の陰陽師達もハッとなり、森の奥へと逃げていく。
「誰か知らんけど……恩に着る」
そう言って、彼もすぐに仲間を追うようにして走り去っていく。
「さて、天子……派手に
「仕方ないわね」
緋想の剣を取り出し、彼女は勢いよく地面へと刺す。
すると再び大地が唸り、隆起してさらに山のように高い壁となる。
ある程度の高さまでいくと、その壁が今度は轟音を上げながら崩れる。
「一体どういう事だ!?」
突然の現象に誰かが驚愕の声を上げる。
「これだけ注目を集めれば十分でしょう」
「結局、真正面から戦う事はなかったわね」
どこか残念そうに天子が呟くのを聞いて蒼天は少しばかり呆れながらも、森からでない程度に空中に浮き、陰陽師達が逃げていった方向へと飛ぶ。
そして、置いて行かれないよう天子もその後に続く。
そう遠くに逃げた訳ではなかったのか、陰陽師達はすぐに見つかった。
つまり、追手が混乱から回復すればすぐに追いつくと言う事である。
先程の天ヶ崎が蒼天達に気づき、近づいてくる。
「助けていただき、感謝します。ところであんさんらは……」
「しがない新人ですよ。道子殿に頼まれて増援に来た次第です」
「新人……? にしては、えらい強力なモノを見た気がするが……」
「それよりもここを早く離れましょう。私達の事は後でお話ししますので」
「分かったわ……全員転移の準備に入れ!」
謎の大型新人と言う事で、釈然としない様子の天ヶ崎だがすぐに指示を出した。
ここでのんびりとやってる暇がない事ぐらい分かっているのだろう。
すぐに結界が張り、大規模な転移陣が描かれ、手早く転移へと移る。
そうして光に包まれた瞬間に、蒼天を含め関西呪術協会の者たちは森から姿を消した。
トリスタンの郊外にある関西呪術協会の拠点へと戻って来た。
すぐさま建物の方から何人かが走ってこちらに来る。
慌てた様子で、重傷者から先に運び出すようにして肩を貸したり、担架を持ってきたりしている。
恐らくは彼らは、治癒術師と言った医療に長けた者の類だろう。
「蒼天さん! 天ヶ崎さんも!」
その中に刀花の姿があった。
声を上げてこちらへと走って来る。
「くずははん!? 何でここに……」
「長からの頼みで、彼らの案内を頼まれまして」
「彼らって、この新人か?」
天ヶ崎が視線を蒼天達へと向ける。
「新人で間違いはないのですが……」
刀花は天ヶ崎の問い掛けに、目を泳がせながら答える。
そして彼女は内心、果たして彼らを新人と言う枠組みにいれてもいいのだろうか? と、思っている。
それから刀花はハッと気付き、
「立花……立花さんはどこに?!」
「いや、さっきから新人さんの隣にいはるやろ」
「――あっ」
天ヶ崎に言われて初めて気付いたとばかりに、刀花は声を上げる。
蒼天と天子も隣を見ると、少し強面の中年男性が立っていた。
手には太刀を持っている。
「し、失礼しました!」
「大丈夫だ。慣れている」
刀花の謝罪に対し、彼はどこか悲観的な感情が混じっている低い声で答えた。
そこはかとなく哀愁が漂っている気さえする。
「それより、彼らについての説明はないのか?」
「それについては長より書状を預かっております。他の十二席の方も交えて拝見するようにと……」
「そうか」
刀花の返答に立花は静かに返した。
そして、彼の視線はそのまま蒼天達へと注がれる。
「ほなら、行きましょうか」
「天ヶ崎さんは先に治療に行ってください」
「大丈夫や。ちょっと怪我したんと重傷のメガネだけやから」
「腕から血を出してるのがちょっとな訳ないでしょう。重傷のメガネと一緒に見て貰って下さい」
「……分かった分かった、やからそうけったいな顔しんとき」
天ヶ崎がそう言って渋々と刀花の横を通り過ぎる。
彼女は天ヶ崎を視線で追ってその後ろ姿を見ながら「まったく……」と疲れたように言った。
それから刀花は蒼天達へと向き直り、
「これから他の十二席の方々の所に案内します。立花さんは特に怪我などは?」
「問題無い。主な
「そうですか……これから報告に?」
「ああ、葛葉の言う長からの書状も交えてな」
「分かりました。それでは、行きましょう」
蒼天と天子は少しだけ刀花と立花の背中を見送る。
「なんだか、さらに奇妙な事になっちゃったわね」
「長い目で見て行きましょう。すぐに幻想郷が崩壊すると言う訳でもないですし、今は彼らを護る事だけを考えればいいのですよ」
ひっそりと天子の漏らした言葉に対して蒼天は答え、それから天人二人も刀花の背中を静かに追うのだった。
「失礼します」
刀花がそう一声掛けた後に
そこにいたのは一人ののほほんとした雰囲気の男性。
「おお、刀花はん。そちらの見慣れへん二人が話とった長からの増援かいな?」
「はい、一条さん。男性の方は
どうやら蒼天たちが救出に向かっている時に刀花が説明したようだ。
それから一条と呼ばれた男性は見定めるような視線で蒼天たちを見て、
「ううん、何と言うか……思うてたよりも若いな~。おまけに一方はお嬢ちゃんとは思わんかったで」
「誰がお嬢――」
反論しそうになった天子を蒼天が口を抑えて止める。
その隙に刀花が説明する。
「そう思われるのも無理はないでしょう。なので、長の書状をお持ちしています。他の十二席の方にもお目通りするように言ってください」
「ほいほいっと……あれ?
一条が刀花から書状を受けると同時に隣に気付いたようだ。
そして、一条はあぐらを掻いて座っている立花に疑問を持っている。
「葛葉と一緒にいた」
「ああ、そう……。もうちょっと存在主張してくれな分からへんがな……」
簡潔に答えた立花に対して一条は静かに視線を逸らして呟いた。
それから彼は書状に目を通し始める。
「ふむ、なるほどなー……」
「長は何と?」
「ああ、頼宗はん。どうやら彼らが増援やって言うのは本当みたいや。ご丁寧に九条はんと
それから一条は書状を立花へと渡し、彼は書状に目を落とす。
「そんでもって今の所は暫定的にやけどウチらの一員っちゅう事らしいが……何者かの説明は後回しやそうや」
「この非常時にそんな怪しい奴を一員に認めろと?」
「だからこその暫定的な決定なんやろうな。ま、長に九条はんと幸子はんが認めたんやから少なくとも信用は出来るって事やろ。でなかったら増援にも寄越さへん」
書状に目を通しただけで、一条は確信を持ったように言うと同時に立花の疑問に答える。
(どうやら切れ者のようですね)
そう思うと同時に蒼天は道子に対する人望も
一条も立花も、引っ掛かる部分はあるが一先ず受け入れると言った感じである。
「お揃いのところお邪魔するで」
「天ヶ崎さん、もういいんですか?」
「くずははん、そんな疑わしい顔しながら言うのやめてや。ちゃんと診て貰ったさかい」
「天ヶ崎さんは無茶する癖がありますから、それと私は『くずは』じゃなくて『くずのは』です」
治療された後である腕を差しだすように見せる。
どうやら、メガネも新調したようである。
それから天ヶ崎は蒼天たちに気付き、
「いやー、さっきは助かったで。ほんま、感謝します」
ともうお礼を述べながら和やかに近づいてくる。
「なんや、天ヶ崎はんは早速世話になっとったんかい……」
「突然現れたと思えば助けてくれてな、お陰様でウチらはこうやって帰ってこれましたわ」
「既に貸し一つかー……わいとしては色々と
ぶつぶつと一条は、聞こえるようにして考えられる事を並び立てる。
それから視線を変えて、
「と思うんやけど、刀花はんどないや?」
揺さぶりを掛けるような感じで聞いた。
それに対して刀花はしどろもどろになる。
「両方と言いますか、何と言いますか……自分からは何とも……」
「そうかいな、じゃあ突っ込んだことを聞くんは無しにしよ」
あっさりと一条は諦めた。
「ま、今は忙しい時期やから説明は落ち着いたらって事にして置こうか」
「そうしていただけると助かります。一から説明するには落ち着いた場所が一番ですからね」
「それは同感やなー。ま、ここは一つよろしく頼むで」
一条は軽く手を振って蒼天に答える。
どうやら天人二人のさらなる奇妙な出来事はまだまだ続きそうである。
天人だから寿命をあまり考えずに過去編を回収できます。
色々と展開を考えてますよ。
葛葉刀子の幼少期だったり、誰かの幼少期と絡ませたり。
自分のやんちゃな時期を知ってる人ほど頭が上がらない的な展開をやりたいと言う願望が若干あったりする。
大まかな流れは変えないつもりですよ?
私の力量では、原作を大きく外れて収拾出きる自信がががががggg