天人様の言うとおり   作:青二蒼

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久々の更新。
ええ感じに絡んでるはず……
と言うか久々過ぎて、自分でも分からん。
話の展開ではありませんよ?
こっちは3人称で書いてるので、書き方の問題がですね……

まあ、楽しんでいってください。
パワーバランスどないしよ……それがちょっと測りかねてます。




天人二人、紅き翼と邂逅する

 そんなこんな、と簡単に済ませて良い訳ではないが。

 幻想郷の危機を調査に来た天人二人は、異世界の戦場に降り立つ事となった。

 聞く人が聞けば訳の分からない説明だ。

 ただ一文だけみれば、前後に何の関連性も無い。

 異世界である魔法世界(ムンドゥス・マギクス)――この世界に存在するグレート=ブリッジと呼ばれるおおよそ三百キロにも及ぶ巨大な橋のような建造物がある。

 その近くの都市『トリスタン』の郊外に存在する関西呪術協会の野営地の一室では――

「どうぞ」

 と、蒼天が何かを譲る。

「む、なかなか堅いな……」

 しかし、それに対して一条は手を顎に当てながら呟いて考える。

「何をやってるんですか、あなた達は?!」

 障子をスパーンと開き、部屋に飛び込んできたメガネを掛けた堅い雰囲気の女性――葛葉(くずのは) 刀花(とうか)が声を上げて入って来た。

「飛車で……アカンか、久々に攻めあぐねるな」

「聞けーーっ!」

「刀花はんか、今ちょっとええ所やから……」

「何を子供みたいな事言ってるんですか!?」

 どうやら思考に集中する感じの人らしい一条は刀花を一瞥し、すぐに将棋盤の上に目を落とす。

 その態度に刀花はヒクヒクと頬を引きつらせている。

 様子を見かねた蒼天はすかさずに言った。

「一度中断しましょう。勝手に駒は動きませんし」

「む……しゃあないな」

 蒼天の一言に渋々と言った感じに一条は居住まいを正す。

 自分の時は貸す耳を持たなかったのに、蒼天に対しては素直に聞いたことに刀花は不服を覚えた。

「なんで仲良くなってるんですか!?」

「逆に仲良くしたらあかんのかいね?」

「いや、そう言う訳ではないですが……」

 むしろ、ギスギスした関係になるのではと刀花は思っていた。

 突然に現れた新人。

 しかし、詳しいことは詮索するなと言うのだから不満が出るのも当たり前だろう。

「あのな、刀花はん。確かに怪しさ満点やけど、長に九条はんに幸子はんの署名が書状にあるんや。やから天子はんと蒼天はんを疑うってことは、長たちを間接的に疑ってもうてることと同義や……だからわいは疑いもせんし、事情を話してくれる言うんやからそれまで待てばええだけや。長たちも節穴やない。それに……この人を疑ったらなんか罰当たりな気もするんやな~」

 蒼天はその事について何も反応を示さなかったが、

(別に疑ったところで罰当たりも何もありませんがね、むしろそれが普通の反応ですし)

 と一条の言葉に対して思っていた。

「それはそうと――これでどうや……」

「ならばこう返しましょう」

 パチンと一手打たれたのを蒼天はすぐに返す。

「ぐぬぬ……見た目若いのに出来ますな、蒼天はん」

 再び将棋を再開するも、一条はあっさりと打った手を返されて細い糸目をさらに細める。

 そんな中でまた一人、客が現れる。

「おお、ここにおらはったか。将棋とは、一条はんらしい打ち解け方で」

 丸メガネを掛けたひょろ長の中年――天ヶ崎が刀花が開けた障子からにこやかに入ってくる。

 それから覗き込むように蒼天の後ろから将棋盤を見下ろす。

「うん? もしかして、一条はん負けとる?」

「…………ん~?」

「あかんわ、集中しとる」

 一条から返ってきたのは生返事とも唸り声とも判断のつかない声だった。

 天ヶ崎が一条に話しかけるのを諦めたところで、彼は話を刀花へと振る。

「そう言えば、くずははんは何でここに?」

「そうでした……蒼天さんにお話があってここに来たんです」

 そう言われて蒼天は体を後ろへと向け、刀花へ向き合うように居住まいを正し尋ねる。

「なんでしょう?」

「天子さんを止めてもらえませんか……」

 その刀花の声音は疲れを多分に含んでいた。

 

 

「これはまた……」

 蒼天は短く呟き、刀花に連れられて見えてきたのは、

「さあ、誰でも掛かってらっしゃい!」

 挑発的な天子のセリフ。

『うおおおおおおッ!!』

 直後に響くのは男達の雄叫び。

『ぐああああああっ!?』

 からの絶叫。

 突然に地面が割れ、隆起した大地が牙を剥き、飛び込んだ10人ほどが派手に飛ばされていく。

 まさしく無双。

 しかし、刀花から見れば頭を抱えたくなる光景であった。

「あっさりとやられ過ぎでしょう……」

 刀花は眉間に指を当て、呆れる。

「それでは行ってきますよ」

「ええ、お願いします」

 蒼天は刀花に見送られ、天子に近付く。

 その間に天子は緋想の剣を悠然(ゆうぜん)と掲げ、高らかに宣言する。

「地上の生き物が私に勝つ道理はないわよ」

「貴女が(おご)っていい道理もありませんがね」

 ギクリと天子の肩が反応する。

 面倒なのが来た、と彼女は内心思っていた。

 だが、いつもの調子で天子は対応する。

「あら、蒼天。どうかしたの?」

「どうにかして欲しいと頼まれましてね」

「誰をよ?」

「貴女に決まってます」

 ワザとらしく言う天子に蒼天は呆れながらも、指摘する。

「全く、守る人々に対して何やってるんですか……」

「これは向こうの人たちからのお願いであって私から吹っかけた訳じゃないわよ」

 天子の言い分を聞いた蒼天は、

「と言う事なんですが、真実は如何に?」

 いつの間にか近くにいた立花に聞いた。

 いくら何でも失礼だとばかりに天子は噛み付く。

「何でそこで私を信じないのよ!?」

「目撃者に聞くのが一番ですから」

「当事者である私の話は!?」

「あまり参考になりません」

 バッサリである。

 天子は蒼天の返しに不服な様子で、蒼天に背を向けてどっかりと近くにあった要石に腰を落とす。

 明らかに拗ねてる様子だが、蒼天は最初に話を聞く事にした。

「よろしいのか?」

 立花が気遣うように聞く。

 話もそうだが「天子はいいのか?」と言う事も含んでいる意味合いでもあった。

 蒼天はその事を含めながらもにこやかに返す。

「いつもの事ですので」

「ならいいが……彼女から始めた訳ではない」

「ほら見なさい」

 立花の言葉に乗っかる形で天子が蒼天に顔を向け反応する。

 その顔は「私に言う事があるでしょ?」と言った感じだった。

「疑ってすみませんね。普段が普段ですから」

「なによそれ、普段から私の事はあまり信じてないってこと?」

「私に迷惑を掛けた事と掛けなかった事……どちらが多いですか?」

「…………今日もいい天気ね」

 返答は露骨な話題逸らしの一言である。

 視線は明後日の方向へ。

「雑だな……」

 剣士だからと言う訳ではないが、低い特徴的な声で立花が斬って捨てた。

 人間に言われてか、天子もかなり応えたらしく「うっ」と呻きながらも返す。

「ま、まあ迷惑を掛ける時もあるわよ……」

「そう言う事にしておきましょう」

 と言って蒼天は、話を終える。

 あまり長く説教するのは蒼天は好きではない。そもそも、長ければいいと言うものでもない。

 説教というのは『教えを説く』と言う事だ。

 それを通り過ぎて愚痴や文句になってしまっては本末転倒だし、相手が教えを理解しなければ意味がない。

 幻想郷の閻魔様の説教は長いことで有名ではあるが、彼女の説教は罪が軽くなるので聞いておいて損はないではあろう。ただし、耳を傾けなければ効果は薄いようなので苦行と言っても差し支えはないように思える。

 などと、蒼天は少しばかり脱線した事を考えていた。

 それから話と思考を戻すように蒼天は尋ねる。

「それで、天子に相手をするように頼んだと?」

「私が立ち会い人だ……挑んだ奴らからしてみれば、腕試しと言ったところだろう」

「で、結果があれという訳ですね」

 蒼天は見事に気絶、あるいは戦闘不能になっている者たちを見る。

 無残にも土の上で死体のように転がっている。もちろん、命は落としていない。

 腕試しというのも、ある意味では納得できる話だ。

 書状があるとは言え、突然に現れてきた余所(よそ)者には違いないだろう。

 もしかしたら気に入らなかったのかもしれない。

 が、それを知る必要はないだろう。藪をつついて蛇を出す事もない。

「こちらとしてはもう少し打ち合って貰いたかったがな」

「天子は文字通り"地"を味方につけますからね。それに、残念ながら彼女は剣士ではありませんし」

「同じ土俵で戦うのは仕合だけだ。ここは……この世界が戦場だ。わざわざ対等な状況、ましてや不利な状況で戦う物好きはいない」

 そう呟く立花は、一人の将――いや兵の顔つきであった。

 鋭い双眸(そうぼう)には、蒼天には見えない何かが見えていた。

 しかし、蒼天には彼が見えているモノが分からなくてもこの野営地にいる他の者と同じモノを抱えているという事は容易に分かる。

 それは――無念であろう。

 それから立花が蒼天に真剣な口調で尋ねる。

「彼女は、いやお前達は何者だ?」

「詮索は長の書状から止められていますよ」

「分かってはいる。だが、彼女の強さは並ではない。疑問を持ったまま割り切れるほど器用ではないのだ」

 どうやら、色々とハッキリさせなければ済まない御仁(ごじん)らしい。

 立花の纏う雰囲気が少しだけ、剣呑なものになっている。

 ここではぐらかせば余計な警戒心を与えたりするだけであり、ましてや軋轢(あつれき)を生む可能性もある。

 それは蒼天の望むところではない。

「仕方ありません……正直にお話しましょう。もし、混乱を招くようだと判断したら他言無用でお願いしますよ」

 と蒼天は前置きする。

「あら、話しちゃうの?」

「こっちから話してしまえば、彼らが詮索する必要もないでしょう」

「なるほど、名案ね」

 近くで聞いていた天子は、蒼天の言うことにすぐ納得した。

「なんやらおもろそうな話をするみたいやな」

 そして、機会を伺ってたかのように一条が言いながら緩慢(かんまん)な動きで近付いて来た。

 その隣では天ヶ崎が申し訳なさそうに頭を少し下げながら近付いてくる。状況を見るに、一条に連れられてやってきたようだ。

「こっちが盤上の駒とにらめっこしてる時にいなくなるもんやから、どこに行ったか探すのに苦労したで」

「一条はんが集中しすぎなんや……」

 飄々とした感じに言う一条に天ヶ崎は静かに突っ込む。

 それから一条は糸目を少しだけ目を開き、聞く。

「それで、聞かせてもらえるんやろ?」

 この機会を逃さないとばかりに重圧的である。

 天子は要石から降り、蒼天の隣へと近づきながら呟く。

「面倒な事になったわね」

「誰のせいですか……」

「さあ? 少なくとも私のせいではないわね。腕試しの誘いを断る道理はなかったし、誘われたものを断るのは失礼になるわ」

「断る理由は少なくともあったと思いますがね」

 軽口を叩きながら、蒼天は本題に入る。

「――私と天子は人であって人ではありません」

 

 

「天人、天人なあ……」

 一条は顎に手を置いて、呟く。

 反応してるのは彼だけで、立花は無言、天ヶ崎はどこか納得してるようだった。

 蒼天は簡単に概要を話した。

 自分達の事、幻想郷の事、そして関西呪術協会に来た経緯。それから長から頼まれた事を。

荒唐無稽(こうとうむけい)な話だ」

 話した直後には反応しなかった立花が信じらぬとばかりに一蹴した。

「そうか? ウチは上手く言えんが、妙に納得はしとる」

 天ヶ崎は目の前で助けられたこともあってか、落ち着いた様子で受け入れていた。

「そう言えば、天ヶ崎はんは助けられとったんやな……わいはちょっと整理するのに時間が掛かりそうやわ」

 三者三様の反応である。

 一条は、少しだけ考え込むようにその場に腰を落とす。

「なるほど……長の書状にあったんがそう言う事なら辻褄(つじつま)は合いそうやし、納得もできる。確かにこれは説明を後回しにすんのも頷けるなあ」

 一人ぶつくさと一条は呟くが、周りの者にもその声は聞こえている。

 おそらく彼はこう言う癖があるのだろう。

「よし、この事は一部の者以外は他言無用にしとこう!」

 すぐに結論は出たのか、一条は立ち上がり叫ぶ。

「なぜだ?」

頼宗(よりむね)はん、さっきの話を聞いて信じられへんかったやろ? やったら、信じられへん話は別に広めん方がええ。ここで確証を得るんは難しいし、半信半疑の話を広めたところで不安を増長させるだけや。ましてや今は戦時中、士気にも関わってくるやろう。長の気が狂ったとか思われても困るしな。全く、長も厄介な増援を寄越してくれはったで……あの人、確信犯やろうけどな」

 立花の疑問に答えるように一条はスラスラと説明する。

 そして、『確信犯』と言った事に対して天ヶ崎が反応する。

「一条はん、確信犯て言うのはどう言う……」

「他にも野営地はあるのに、ここに寄越した理由。分かるか?」

「分かりまへん」

「即答かい……まあ、わいがいるからやろうな。ここが一番前線に送り出してる所って言うのもあるやろうけど……わいなら上手く処理できると思うて、ここに案内したんやろ」

「ええやないですか、信頼されてるって事で」

「長からの信頼ってあんまり嬉しくないけどな……腹黒いし」

 どうやら、一条は関西呪術協会の長である彼女の別の一面を知っているらしい。

「ともかく、二人ともそう言う事で構わへんな?」

「ウチは構わへん」「……うむ」

 天ヶ崎は抵抗なく同意し、立花は少し間が空いたが何とか納得したようだ。

 その時だった。

「皆さん、ここにいましたか!」

 刀花が息巻いて、駆けつけてきた。

 その様子は誰が見ても何かがあったと分かる程の慌て様である。

「なんかあったんか?」

「はい一条さん、緊急事態です――」

 彼女は青ざめて報告したことに誰もが震撼した。

 天人二人を除いて。

 

 

 刀花が(もたら)した情報。

 それは、グレート=ブリッジ陥落であった。

 大規模転移を帝国は実戦投入し、完全な奇襲を仕掛けたとの事だ。

 内側から突然に敵が現れる。混乱しない訳がない。

 その隙に後詰の帝国艦隊が内部の艦隊と呼応し、これを陥落させたと言う事だ。それはあっという間の出来事で、グレート・ブリッジにいる駐屯していた兵力を瞬く間に撃退。敗走させた。増援を呼ぶ間もなくである。

 後日に会議として、幹部たちはある一室へと集まった。その中には蒼天たちの姿もある。

「やっこさんらもやってくれたな……こりゃ、いつウチらにお呼びが掛かるかも分からへんで」

 天ヶ崎は疲労困憊(ひろうこんぱい)とばかりに盛大な溜息(ためいき)を吐く。

 そんな中で若き頭脳である一条は将棋盤とにらめっこし、将棋の玉を手で(もてあそ)び、パチンと指す。

「完全に王手掛けられてしもうたな。まだ詰みやないけど、盛り返すにはどれだけの駒が盤上からこぼれ落ちるか分かったもんやない……」

 それから一条は蒼天達に目を向ける。

「蒼天はん、一つ聞いておきたい」

「何でしょう?」

「ここにいる全員を救うことは出来るか?」

「私は一人です。天子と合わせて考えても、文字通り手が足りません」

「それは欲張り過ぎか……」

「手で水を(すく)っても、指の間から水は落ちます。なので全てを救おうと欲張りすぎれば――」

「さらにこぼれ落ちる、か」

 頭をガシガシと書いて、一条は少し苛立ちを表す。

「他の野営地からは?」

「どこも精一杯だ。増援の見込みはない」

 立花は一条に現状を報告する。

 戦場はここだけではないのだ。他を助ける余裕はないのだろう。

「そう言えば蒼天はん達は……何か、特殊な力を持ってるそうやな?」

「ええ、私は『金属を操る程度の能力』そして天子は『大地を操る程度の能力』です」

 一条からの質問に蒼天は淡々と素直に答える。

 その答えに天ヶ崎は驚きながらも尋ねる。

「ほう、そらまた結構なもんやな。天子はん地震とか起こせるんか?」

「ええ、その気になれば地形を変えることも大地を割ることも出来るわ」

「だとしたら結構行けるんとちゃいますか、一条はん?」

 それは多くの人を救えると言う意味で言った天ヶ崎だが、一条は否定を返した。

「あんまり派手にやるのはやめておいた方がええやろ」

「そうね」

 一条が否定した理由が天子は分かったのか、同意する。

 それに対して、天ヶ崎は少し疑問を持つ。

「どうしてや?」

 天子は自信を持って胸を張り、少しばかり上から目線で語る。

「今は戦時中、力を持った兵が最前線に送られるのが道理。私や蒼天がやり過ぎるとあなた達を守るどころか、一緒により危険な場所に送られる可能性があるわ」

「そう言う事や。ましてや魔法使いどもはわいらの戦力を削る事も目的なんやから、あんまり武勲を立て過ぎると余計に面倒な事になりかねん。いや、立てんくても十分に危険な場所に送られるやろうけど。それでも、立て過ぎるよりかはええかもしれん。天子はんもなかなかにキレはりますな」

 と、少し感心したように一条は視線を向ける。

 対して天子は当然とばかりの態度。

「それはどうも。あんまり調子に乗ると蒼天がうるさいから、自制するけど」

「普段から自重してください」

「我慢しろだなんて酷いわね」

「貴女の中で自重は我慢と一緒なんですか……」

 天子と蒼天のいつもの掛け合いが入ったところで、今度は来客のようである。

 (ふすま)の向こうから男性が伺いを立ててくる。

『会議中に失礼。報告があります』

「どないした?」

『青山 詠春殿が訪ねてきております』

「こんな時にか、まあええわ。ちょっくら聞いておきたいこともあるし……通してもらえるか」

『それと、連れがおられるようです。他の方たちはいかがいたしますか?』

「悪いが中には()れられん。今は色々と気が立ってる連中もおるから、変に余所(よそ)のもん入れて刺激せんほうがええ。すまんが外で待ってもらえるよう言ってくれるか?」

『はい、そのようにお伝えします』

 そして、襖の向こうの気配が足音とともに遠ざかっていく。

 それから蒼天は立ち上がる。

「どうやらお客のようですね。私たちは念の為に下がっておきます」

「身内の話やから、そうしてくれるとありがたい。わいからしてみれば蒼天はん達が客みたいなもんやけどな」

「そうでしたね。天子、一旦下がりますよ」

 少し笑顔で蒼天は答えた後、天子に声をかける。彼女はその呼び掛けに「分かってるわよ」と呆れた風に短く答えると蒼天と共に部屋を出る。

 残った幹部三人は、粛々と青山 詠春を待っていた。一条は蒼天との対局を思い浮かべ将棋を指し、立花はどっしりと腰を落として瞑想のように目を閉じていた。そして、そんな二人を天ヶ崎は何を考えているんだろうかと静かに見ている。

 そして――

『青山 詠春です。お目通りをお願いします』

 先程の連絡で来た男性とは違う、若い青年の声が紙の扉の向こうから響く。

 来たかとばかりに天ヶ崎は姿勢を少し正す。

 対して、一条は天ヶ崎の様に姿勢を正さず駒を指す事も止めず、

「ええで、入ってきい」

 いつもの軽い感じで言った。

「はい、失礼します」

 襖が開けられて入ってきたのは、メガネを掛け、少し黒髪が逆立った青年。

 前に少しだけ髪の束が少し垂れており、服装は薄い縦セーターのような物に動きやすそうな長ズボン。

 印象としてはそう、好青年と言う印象を受けるだろう。そんな真面目そうな雰囲気を纏っている。

 そして、正座する彼の(かたわ)らには柄に『夕凪』と達筆な字で書かれた一つの太刀が置かれている。

「人を斬ったか」

 そんな中で静かに見ていた立花は一瞬で見抜き、詠春に切り込んだ。

「ええ……今は戦争ですから」

 重苦しく、伏せ目がちに詠春は返す。

 おそらくは何かしらの葛藤はあったのだろう。それを伺わせるような気の落ちようであったが、既に割り切った事でもあるのかすぐに顔を上げる。

 一条はその瞬間に合わせ、話を切り出す。

「さて、青山 詠春……あんたにおうたら一つ尋ねなあかん事がある」

「私に尋ねたいこと?」

「最近はなんや、『紅き翼(アラルブラ)』ちゅう名前で活動しとるらしいな」

「はい。私の、仲間です」

「なるほど。ま、それはええわ。ただここからが本題や……戦争が始まっとるのに何で戻ってこんのや?」

 いつもの口調ではあるが、威圧感のある言葉が一条から放たれる。

 詠春はその一瞬で察した。

 ここで自分の考えをきちんと返答できなければ、自分は故郷の地に顔向けができなくなると。

 詠春はしっかりと一条に向き合う。

「それは……彼らに付いて行けば多くの人間を助けることが出来るからです」

「ほう? つまり、戻ってこんのは関西呪術協会の同朋よりも異世界の赤の他人を守るのが大事やと……そう言う訳か」

「なっ!? ち、違います! 私はそんなつもりで言った訳では!!」

「悪いけどな詠春。今のはそう言う風に取られてもしゃあないで……もし、同朋が大事やって言うんやったらそんな言葉は出んはずや」

「では見捨てろと言うのですか?! 目の前で傷つけられている人々を!!」

 詠春の必死の弁明に一条は淡々と返す。

 他の幹部二人はそれを黙って見ている。ここは余計な口を挟まないのが懸命だと判断したのだ。

「逆に聞いたるわ。お前は何を守ろうとしてるんや?」

「それは、戦場に巻き込まれた無辜(むこ)の人々を守るために――」

「――青二才が」

 一条は静かに言葉を放つ。

 詠春は言葉を止めた。

「詠春、お前は紅き翼(アラルブラ)である前に関西呪術協会の一員であり青山宗家の子でもあったはずや」

 一条の射抜くような視線が詠春を貫く。

「だったら守るべきは同じ釜の飯を食うた同朋を優先するべき、違うか? それに無辜(むこ)の人々を守るためにと言うたが、それは紅き翼(アラルブラ)におらな出来んことなんか?」

 反論は出なかった。詠春はただ沈黙する。

 一条の言うことに何の間違いもないからだ。

「志は立派やけど、あんたにとっての守るべき『玉』は何なのか……よく考え」

 そう言って一条は詠春に向かって一つの駒を投げた。

 詠春の伏せた視線に見えるように、畳の上を滑って彼の眼前に一つの駒が飛び込んでくる。

 それは将棋の『玉』。

 これで話は終わりとばかりに一条が立ち上がろうとした時だった――

「彼に、いや……彼らと共にいれば戦争は早く終わります」

 詠春が力強くそう答えた。

 疑問に思った一条はすぐに聞き返す。

「そう思う根拠は?」

「ありません。ですがこの戦争を早く終わらせなければならない。それだけは、分かっているつもりです」

「……はぁ」

 視野の狭いことだ、と一条は思いながら溜息(ためいき)を吐く。

 戦争の早期終結が出来るなら多くの同朋、詠春の言う無辜の人々も助かるという説明ができれば一条としては文句はなかったのだが――

 本人は残念ながらそれに気付いてないらしい。

 だが一応は及第点としておき、一条は言葉を発する。

「ならええわ。好きにしい……他の連中にはわいが融通利かせて説明しておく」

 その言葉に天ヶ崎と立花は少し反応するが、口は挟まなかった。

 詠春は詠春で驚いた顔をしている。

「……いいんですか?」

「お前さんは知らんやろうが、頼もしい助っ人が来てくれとるしな」

 それが一番の幸いだろう。

 詠春はその事について尋ねようと口を開きかけた時だった。

 襖が勢いよく開け放たれ、

「――ハァ、ハァ」

 疲れたような息遣いをしながら刀花が姿を現す。

 全員が彼女に注目する中で、一条が何だ? とばかりに聞く。

「どうないしはった……刀花はん。恋人に逃げられたか?」

「叩き斬りますよ!?」

 いきなりの失礼な発言に刀花は反射的に突っ込む。

 だが、すぐに切り替えて話を続ける。

「って、違います! 天子さんと黒い筋肉達磨の人が戦闘を始めてるんです!」

 その言葉に誰もがポカンとする中、詠春だけは頬をヒクつかせていた。

 

 

 一方、詠春と幹部達が話をする前に部屋を出た蒼天達はそのまま外へと出ていた。

「しかし、ここでこんな事をしてて良かったのかしら?」

「天子にしては随分と的を射たこと言いますね」

「貴方、たまに私の事をバカしてるでしょ?」

「珍しいと言うだけですよ」

 などと笑みを浮かべながら言うが……天子からしてみれば胡散臭く見える。

 その瞬間に少しだけ既視感を覚えたので、そのまま蒼天に天子は尋ねる。

「何て言うか、貴方たまに八雲 (ゆかり)と雰囲気が似てるわね」

「失礼な、私は天人ですが地に足はついていますよ。地上にいながら浮いてる妖怪とは違います」

「違うわよ。胡散臭いところがって事よ」

「心外ですが、類は友を呼ぶと言う奴ですかね。まあ、腐れ縁ではありますが……」

「朱に交わって赤くなったんじゃないの?」

(あお)(むらさき)が交わっても赤くはなりませんよ」

 と蒼天が言ったところで、天子は話を戻す。

「それで、結局のところはどうなのよ? こんな所で油を売ってていいのかしら?」

「油は差すものです。潤滑油と言う言葉があるでしょう? それに急がば回れ、ですよ」

 つまりはこのままでいいと言う事だ。

 前にも蒼天は話したがすぐに幻想郷が崩壊すると言う訳でもない。

 頼まれたのは原因の究明であって、それを解決することではないのだ。もしかしたら、なし崩しに解決を頼まれるかもしれないがそれはその時の話だ。今ではない。

 取り敢えず天子はそれ以上聞くことはなかった。

 彼女にとって今は、天界にいた時よりも意義を感じている。

 不謹慎だが、天子の言い方であれば……退屈ではない。その一言に限る。

 そのまま二人は散歩がてらに外へと出る。

 もちろん、近くの人に話は通してある。

 それから門の外に出ると、

「お?」「おや?」

 木の杖を持った赤毛のツンツン髪の少年と、紺色のセミロングの髪に白いローブを身に纏った青年がいた。

 こちらに気付くと赤毛の少年は退屈そうな顔から一転して、笑顔になる。

「おー、お前らここから出てきたって事はこの中に住んでる人なのか?」

 それから馴れ馴れしい感じで蒼天達に近付きながら尋ねてくる。

 見るからに礼儀などには無頓着(むとんちゃく)そうな人だと蒼天は思ったが、それは口に出すことではなく少年の質問に答える。

「私達は客将身分ですよ。正式な一員と言う訳ではありません」

「きゃく……しょう? アル、どう言う意味だ?」

 赤毛の少年にアルと呼ばれた白いローブの青年が答えた。

「つまりは私達みたいなものですよ。正式に軍とかに属してる訳ではありませんが、味方だと言う事です」

「そうなのかー。もしかして、そっちのちっこい女も戦ってるのか?」

「誰がちっこいよ! 貴方の方が小さいじゃない」

「フフ、ナギ。胸の事はあまり(おっしゃ)らない方がいいですよ」

「初対面で喧嘩売ってるのかしら……大地に還すわよ」

 どうやら赤毛の少年はナギと言うらしい。

 そして、アルと言う男の一言に天子は顔をしかめる。何気に気にしているのだ。

 怒気を孕んだその言葉を受けてもなお「おや怖い」と、流した。

 しかしそのまま睨まれ続けたアルは、

「そう睨まないでください。さすがの私も照れます」

 謝罪を返すことはなかった。

 それどころか飄々とした笑顔で華麗に受け流した。

 天子はアルがどう言った人物なのか理解し、突っかかっても暖簾に腕押しだと分かったのでそれ以上は何もしない。

 早くも反応がなくなった事にアルは残念とばかりの表情をする。

 それからしばらく蒼天達を注視してから何かに気づいたように目を細め、

「見たところ貴方達は――」

「おーい、ナギ! あっちに女子風呂があったぞ、覗きに行こうぜ!」

 言葉を紡ごうとした所で(しげ)みから筋骨隆々の肌黒い大男が現れた。

 半袖のジャケットに長ズボンのみと言う格好。

 ちなみにジャケットの下には何も着ていない。

 そんな男らしい男が、いきなり覗き発言をしながら現れたが……天子と蒼天は特に反応を示すことはなかった。

 だが大男の方は違うらしく、蒼天達に興味を示すとアルと同じように何かに気付いた目を彼らに向けながら言う。

「ん? 人間……にしちゃあ妙だな、普通の人間にしては違和感がある」

 初対面だと言うのにいきなりの物言い。

 天子は少し反論する。

「いきなり二人揃って失礼な発言ね。自己紹介もなしに色々と言ってくれちゃって」

「これは失礼しました。私はアルビレオ・イマ、アルと呼んでもらって結構です。こちらの赤毛の少年がナギ・スプリングフィールドであちらの変態筋肉がラカンです」

「おい……俺の紹介だけ雑じゃねえか」

「そう。紹介されたならこっちも言わなくちゃね。私の名前は比那名居 天子」

石守(いしのかみ) 蒼天です。ちなみに天子も私も元人間ですがそう警戒しないでください」

 あっさりと蒼天は人でないことを明言した。

「元人間、ですか……随分と簡単にお話になりますね」

「見抜く人は見抜いてきますからね。取り繕っても意味はありませんし、気付かない人は気付きませんよ。それはそうと皆さんが青山 詠春と言う方と一緒にこられた人達でしょうか?」

「ええ、そうです。色々とお話もしたくて一緒に入りたかったのですが……今は戦時で気が立ってるということで中には入れて貰えませんでしたけどね」

 アルビレオことアルは少し肩をすくめた。この世界で日本の平屋は珍しいので中に興味があったのだろうか。蒼天には残念そうに見えた。

「人間じゃねえのか? どっからどう見ても人にしか見えねえが」

 ナギは蒼天と天子の周りをぐるぐる回りながら呟く。

 見た目通り、まだまだ好奇心に溢れる少年のようだ。

 ラカンはナギの疑問に答えにならない答えを返す。

「俺の場合は長年の勘だな。なんつーか、雰囲気が違う。それと嬢ちゃん」

「誰が嬢ちゃんよ!」

「もう少し色っぽい下着を履いたほうがいいと思うぞ」

「…………ん?」

 謎の一言をラカンから受けて天子は違和感を覚えたように思わず彼女は自分のスカートを見る。

 それから彼女は何かに気付き、ハッとなるとプルプルと震えだす。その顔は羞恥に満ちて、赤い。

 天子は震えながら睨み、ラカンに尋ねる。

「そこの筋肉達磨……脱がしたわね?」

「おう、あまりにも地味だから脱がした」

 対してラカンは見せびらかすようにして一枚の三角の布を出した。

 白い無地の布が無造作に他人の目に晒されている。

「蒼天、さすがに止めないわよね?」

「そこまで私も理不尽じゃありません。ただ、ここでは派手にやらないで――」

「――グホォ!?」

 蒼天が言い終わる前にラカンが天子の要石を腹に受けて叫び、吹っ飛ぶ。

 突然の奇襲だが、天子の攻撃を受けてもラカンは特に負傷した様子はない。

 それどころか、

「おいおい、嬢ちゃん……見かけによらずやるねえ」

 などと言いながら要石を軽く割って悠長に立っている。

 それが天子の琴線に触れ、頬をヒクつかせながら緋想の剣を取り出す。その顔はいかにもラカンを潰すと言う一点に全力を(そそ)ぐ表情だ。

「初対面で本当に失礼ね……! 見た目通り繊細さに欠けるのはどうかと思うわよッ」

「何気に傷つくな――うおッ!?」

 ラカンの足元の大地が隆起し、岩石が波になって襲いかかる。が、ラカンはそれを難なく(かわ)し、砕く。

 天子はラカンが砕いて出来た岩の隙間から飛び出した。そのまま緋想の剣を振り下ろす。しかし、ラカンはそれにも反応して両刃の剣で受け止める。

 その間にラカンは別の違和感を抱いていた。

(地の魔法? じゃねえな……だったら俺が気付かないハズがねえ。魔法使い特有の魔力の発生を微塵も感じなかった。アーティファクトでもねえし、一体どんな手品だ?)

 と、大地が突然に隆起した事について考えていた。

 そんな事を彼が考えている間にも天子は攻め立てる。

 何度か斬り結び、二度目の鍔競り合いとなったところで天子はラカンの頭上に要石を即座に落とす。

 だが、ラカンは頭上に迫り来る影にすぐ気付き――片腕で落ちてきた要石を砕いた。

 その瞬間に天子は足踏みを一つする。すると今度はラカンの両脇から隆起した大地の壁が迫る。

「やべっ!」

 そう声を発した時にラカンの足元に地割れが起き、迫っていた大地と共に襲い掛かられ埋まった。

 静まる空気。

 終わったように見えた。しかし、天子が一旦大きく後ろに下がるとラカンが大地を割って飛び出してきた。

「あぶねー……死ぬかと思ったぜ」

 土(まみ)れだが、ラカンはピンピンしている。

 そんなラカンに天子は疑いの目を向ける。

「随分とタフね。貴方、本当に人間?」

「おう、正真正銘の人間だぜ。それはそうとお嬢ちゃん、今の本気じゃねえよな?」

「痴話喧嘩で本気になるほど短気じゃないわよ。そう言う貴方も本気じゃないでしょ?」

「まあな」

「だったら一発で充分よ。それでもピンピンしてるのが腹立つけど……あと、私の物を返してくれる? 痴女とか言われたくないのよ」

「仕方ねえな」

 ラカンはそう言って天子から盗った物を返す。

 どうやら、今度こそ終わったようである。

 アルやナギと一緒に傍観していた蒼天が天子に近付きながら話す。

「立場を忘れたかとヒヤヒヤしましたよ」

「そこまで私は傍若無人じゃないわよ」

 といつもの軽口を交わしたところで、別の客人が来たようである。

「ラカン! 何をしているんだ!?」

「おー、詠春。話は終わったのか?」

「貴様のせいで中断してきたんだ!! 全く、少し待つ事も出来ないのかっ?!」

 詠春がラカンに詰め寄るがラカンは「悪かった悪かった」などと言いながら笑って、あまり反省してない様子。

 どうやら詠春は苦労人のようだと蒼天はすぐに察した。

 そして、詠春と共に来たらしい一条が蒼天の傍に近寄る。

「なんや、ちょっとやりはったそうで」

「ええ、まあ。痴話喧嘩みたいなものです。下着を取られれば誰だって困るでしょう?」

「なるほどな。そらしゃあない」

 蒼天の遠回しな口ぶりに一条は納得した。

 それから彼は周りを少し見渡す。

 蒼天もそれに倣って見る。周りの土は派手に掘り返されているような(あと)が残っている。地震でも起きたかのような惨状だが、大きな被害は特にない。

「そういう話を本人の目の前でするのやめてくれる?」

 天子は二人の会話に少し嫌悪感を交えて突っ込む。

 そんな三人の会話に入り込むように一人、アルがにこやかな顔で近寄る。

「お話し中、失礼」

「ん? あんさんは……詠春のお連れさんかいな?」

「ええ、アルビレオ・イマと言います。アルと呼んで結構ですよ」

「ほうか。わいは関西呪術協会の幹部、一条 吉明(よしあき)や。詠春の上司の一人やと思ってくれ」

「おや、詠春の話だと東洋の術師にはもっと嫌悪されてると思ったのですが」

「それを分かってて聞いてくるあたり、あんさん随分とええ性格しとるみたいやな」

「よく言われます」

 一条の皮肉にアルは笑顔で返す。一条と似たような何を考えているか分からない笑み。

 類は友を呼ぶ、その言葉が今ここに成っているようだった。

「ま、嫌悪してるんはあんたらと違う連中やからな。もっとも、下の連中はそうもいかんけど」

「なるほど。それで、天子殿と蒼天殿おっしゃいましたね。貴方達に質問があります」

 アルはそう前置きする。

 そして、二人が許可する前に矢継ぎ早に言葉を紡いできた。

「貴方達はどこから来られたのでしょうか?」

「あら? 何者かと聞くでもなく、かと言ってさっきの大地の隆起について聞く訳でもない。まさか私達が来た場所を知りたいなんて、予想外ね」

「お答えしにくいようでしたら別に答えなくても構いませんよ。個人的な興味ですから」

 と、アルは逃げ道を用意するように言った。

 天子は蒼天に振り向く。

「蒼天、答えてもいいかしら?」

「どうぞ」

「そう。じゃあ、私達がどこから来たかというと――」

 天子は指で上を指し言った。

「――天よ」

「ほう。天からですか」

「あら……こんな荒唐無稽な話を間に受ける物好きもいるものね」

「いえ、貴方達には普通の人とは違う存在感がありますから。それが何よりの証拠ですよ」

 どうやらアルはそれだけで満足したらしい。

 それ以上は何も聞いてくる様子はない。

 随分と変わった人だと蒼天は思ったが、一つ気になっていた事を彼はアルに投げ掛けた。

「貴方も、少し人と違うようですね」

「分かりますか?」

「ええ、私の方も経験と勘ですけどね」

「では私と同様に見た目通りの年齢ではありませんね。歳を聞いても?」

「さて、どれほどの時が過ぎたか……数えていませんが1000以上とお答えしておきます」

「なるほど、そちらのお嬢さんは?」

 と、アルは天子に聞くが返したのはジト目。

「貴方、女性に年を聞くのがどう言う事か分かって聞いてるでしょ?」

「フフ……バレましたか?」

「食えない人ね。それに蒼天も貴方も胡散臭いし」

『心外ですね』

 異口同音。

 全く同じ反応が二人から帰ってきた。

(蒼天の周りには似たようなのが自然に集まってくるわね)

 天子は内心、そう思わざるを得なかった。

 紫と言い一条と言い、目の前にいるアルビレオと言い……例には事欠かない。

 

 

 それから詠春はナギ達と共に帰って行った。

 それを見送るように一条は蒼天と共に門の前に立っている。

「アレが『紅き翼(アラルブラ)』な……化物ぞろいやな~」

「私としては、あんな力を持った人間を見るなんて久方ぶりですがね」

「なんや? 昔にはあんなのがゴロゴロ生きとったんか?」

「いいえ、そんなにいませんでしたが。今よりは多かっただけの話です。昔は妖怪が跋扈(ばっこ)していましたからね」

「なるほどなあ……それはそうと蒼天はん、ここらがわいらの踏ん張り所や」

「ええ、最善を尽くさせて貰いますよ。道子さんとの約束ですからね」

 一条の決意を固めた言葉に蒼天は力強く答えた。

 

 グレート=ブリッジ奪還作戦まで残り一週間。

 




うーん、ちょっと展開が雑だったかな?
なるべく自然な流れにするようにしてますが……
ちなみに魔法世界の話はあと2、3回くらいで終わらす予定です。
それからまあ、戦後の関西呪術協会の話と青山 詠春が近衛 詠春になって長になる話だったり、幼少期の近衛木乃香や桜咲刹那との絡みの話であったり……そんな感じです。

問題はちょくちょく書き続けてどれだけの日が掛かることか……
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