鬼滅の刃ネタ短編集   作:こしあんあんこ

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小説版第二弾【片羽の蝶】を読んで切なさを感じた結果、書いたもの。

※注意

・童磨さんはいつも通り
・カナエさんは生存。しのぶさんが死んだ。つまり立場逆転もの。
・鬼滅の刃の小説の第二弾【片羽の蝶】のネタバレあり
・しのぶさんに鬼を憐れんでいることを隠している設定(バレている模様)
・カナエさんの性格は想像でしかない
・殺し合っている童カナもいいじゃない(戦闘は省略するものとする←)
・途中で終わる仕様
・なんでも許せる方、どうぞ




破られた約束

――私たちと同じ思いを、他の人にはさせない

 

 それが胡蝶カナエとその妹である胡蝶しのぶが互いに交わした約束だった。両親を失った、たった二人の約束。二人は同じ思いを抱えながらも、各々がある感情を抱いて鬼殺隊に志願した。妹は憎悪を抱き、鬼を殺さんと勇み、姉であるカナエは悲しみを抱き、鬼を救おうと憐れんだ。両親が殺されてから間もなかった頃、隠の人から聞いた話をカナエは覚えている。鬼が元は人間だという話。……悲しい生き物だ、とカナエは思う。人でありながら人を喰らい、美しい筈の朝日を恐れる。それはどれだけ辛いことなのだろうか。鬼を一体倒せば、その鬼がこの先殺すであろう人を助けることが出来る。

 

――そして、その鬼自身もそんな哀れな因果から解放してあげられる

 

 何かに囚われて執着する鬼が、もう二度と苦しむことがないように。妹にそれを言えば喧嘩になるのは分かり切っていた。忘れられるわけがないと語り、普通に幸せに生きることを拒否した妹の燃えるような怒りを日々感じていた。

 

――甘えん坊の妹は、両親が好きだった

 

 大好きな両親が殺されて、得体の知れない化け物に喰われた恐怖、失った喪失感を忘れることはないだろう。妹は時折夢で両親が殺される夢を見るようで、泣きながら両親を呼んで、叫ぶのだ。その度に大丈夫だと撫でる内に、妹には言えなくなってしまった。……初めてその本心を打ち明けたこともあった。相手は両親を喰らった鬼から私たちを救ってくれた人、私たち姉妹を鬼殺隊に入らせまいと反対した優しい人だったけれど、そのことだけは正気の沙汰ではないと言われてしまった。その言葉の裏には根強く張り巡らされた暗い感情がこもる。……あの方ですら鬼を憎んでいるのだ、鬼殺隊の人間が慈悲を持って鬼を滅することなどあるのだろうか。そう思えば、誰にも言えなかった。

 

――そして、いつしか口を噤み、鬼を切った

 

 時折鬼と話し、仲良くなろうともした。話が分かるのならば、私たちは理解し合える。話し合って仲良くなれば互いに殺すことも恨むこともなくなる。それを信じて話してみるが彼らは嘘や謀りばかりを口にする。信じても裏切られる日々に疲れながら、それでもいつかは人と鬼の境界を超えることを信じて対話を繰り返した。

 

――それは妹にすら言えない、ちっぽけな夢だった

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 【最終選別】を終えて間もなく、妹と再会した。手紙でやりとりした待ち合わせした場所に行けばお揃いの蝶の髪飾りを付けた少女がそこにいた。しのぶ、声を掛ければ目を見開いてカナエ姉さんと大きな声を上げて互いに抱き締め合った。悲鳴嶼さんから妹とは別々の育手に紹介されて何年経ったことだろう、小さかった妹はすっかり大きくなっていて、腕の中でその成長を肌で感じた。

 

――その日からまた姉妹は一緒になった

 

 ……だが妹はやはり鬼殺隊としては筋力が足りず、鬼の頸を切ることが出来なかった。上背がない、たったそれだけのことで妹が切望する力を手に入れることは出来なかった。しのぶの持つ日輪刀は細く、刃の面積は小さい。これでは、切れない。突くことしか、出来ない。

 

――鬼の頸を切れぬ剣士に、何が待っていると思う

 

 いつか悲鳴嶼さんが言った言葉を思い出す。知っていた筈の事実。妹が知るには酷なことだと思い、口から(はばか)られたそれが露呈した。その時の妹の顔は忘れることは出来ない、知っていたことを話せなかったのは私が憶病なだけだった。それでも、妹は奮起した。手先の器用な妹は薬師としての才能が突出しており、鬼に唯一有効な藤の毒をどうにか殺す毒に出来ないかと鬼を殺す別の方法を編み出さんと持てる力を出し尽くした。出来る訳がないと言われていたそれを、馬鹿にされ続けたそれを、妹は見事執念で達成してみせた。やったわと涙ながらに喜ぶ妹を、素直に祝福することは出来なかった。任務先で討ち果たす鬼を実験だと言わんばかりに藤の毒を試す妹を見てきた。その毒で苦しむ鬼も見てきた。

 

――……もはやどちらが悪いことをしているのか、分からなくなった

 

 別の調合を試してみたの、そう笑って話す妹それに苦言を呈した。鬼いえども元は人間なのだと口にすれば喧嘩になった。どうして、と妹は泣きながら怒り出した。

 

――私なりに努力したつもりよ、どうして認めてくれないのよッ!?

 

 姉さんは良いわよね、鬼が狩れるのだから。そう言って私をまくし立てた。ずっと羨ましかったこと、私も上背があれば、悲痛な声は何処までも自身を責めているようだった。一通り言い終えたようで、荒げる息を整え始めた。しのぶの頬にまた一つ雫が落ちた。掛ける言葉が、見つからなかった。ならばせめてと肩を叩こうとした。……姉さんはさ、鬼にも同情しているんでしょ?ポツリと呟いた言葉でその手は止まってしまった。

 

――仲良くしようと鬼との対話を試みているんでしょう?……優しい姉さんのことだもの、知っているわ

 

 呆然とした目に光が宿る。怒りに満ちた鋭い視線がカナエを貫いた。……知って、いたの?そんな言葉を掛ける間はなかった。だけどね、キッと睨みつける妹は更に言葉を発した。

 

――人を殺しておいて可哀想?そんな馬鹿な話はないわ!!

 

 畳みかけて、妹は屋敷を飛び出した。肩を叩く手の行方を失った。カナエはその手を自身の胸に置いた。追いかけることも出来たがしなかった。今行っても逆効果だと、一人にさせた方がいいと、判断した。その日妹が帰ってくることはなかった。その時の判断を、いつまでも後悔し続けた。……妹は、しのぶは、鬼に殺された。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

――妹の訃報はその翌日のことだった

 

 朝日が昇るとともにその一報が鎹鴉(かすがいがらす)と共に飛んできた。嘘だ、と思った。だけど言われるがままその場所に向かえば妹は冷たくなっていた。冷たくなった肌を触れれば慣れ親しんだ感触が肌に伝う。これはきっと悪い夢だと何度も思った。起きて、と凍り付いた髪を撫でるけどやはり反応はない。……死んでいた。頬が熱くなって視界がぐにゃりと歪む。熱い雫が頬を伝って落ちた。目の前ではなく、今度は自身の目の届かぬ所で。残されたたった一人の家族、またしても肉親が死んでしまった。

 

――その日から、私は一人ぼっちになった。

 

 葬儀を終えてから、妹の私室を片付ける。片付けていく中で妹の私物を見ることになった、医学書や薬学の本ばかりが溢れ出しどれだけ読み込んでいたかが分かった。毒の内容を書きまとめた研究書は見慣れた妹の字で埋められており自然とその字を目で追っていく。指でなぞれば妹の筆圧の感触を感じる。ポタリ、何かが落ちて妹の字が滲んでしまった。頬を撫でればようやく自分が泣いていることに気付く。

 

――妹の努力を、否定したかった訳じゃなかったのに

 

 あの時後を追いかけていれば、あの時無理にでも引き留めておけば、妹が死ぬことはなかった。そうすればきっと別の誰かが死ぬだけで済んだ。そんな思考に陥ったことに愕然とした。

 

――まるで妹以外の死を望んでいるようだ

 

 ……私は、こんなにも冷たい人間になれるのか。思わず自嘲して、虚しくなった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 喪に服す期間が過ぎれば任務を告げる鎹鴉(かすがいがらす)が飛んでくる。柱としての任務だった。こんなに長い期間休みを頂いたのはひとえにお館様のおかげだった。ありがとうございますと一人考える時間を下さったお館様に感謝しながら任務へ向かえば、人を喰らう鬼と出くわした。人を喰らい、これは違うのだと命乞いをするそれに初めて嫌悪を抱いた。気付けば日輪刀を突きさして鬼を苦しめる自分が居た。殺してくれと懇願するまで、何度も何度も切りつけて、最後には頸を切り落とした。朝日を浴びれば血に濡れた隊服がやけに重く感じた。鬼を殺すことに胸がすく思いだった。刀を持たぬ手で顔を覆い隠せばぬるりと生温かい血の感触に途方に暮れる。

 

――ああ、きっと私はもう夢を叶えるつもりはないのだと、理解した

 

 何かに憑りつかれたように、妹の遺品を読みふける。何日も眠ることなく内容を頭に叩き込んだ。薬学は苦手だが、努力で苦手なことを補った。日輪刀も妹と同じ作りの細いモノにしてもらう。貴女ならばもっと刀身の面積を増やしてもいいのではと刀鍛冶には勧められたがそれがいいとの一点張りを通して毒を調合出来る構造にした。妹の残した毒で鬼を葬る。血を吐いて苦しむ鬼を看取っていった。

 

――その中で蓄積していく感情に、蓋を閉ざした

 

 いつか会う妹の仇を待ち望み、鬼を屠っていけばある兄妹と出会った。妹を鬼にされて人間に戻す方法を探す少年は、何処までも優しい子供だった。鬼になった妹も人を傷つけることなく、風柱の血でも喰らわない意思を通したのだ。はじめて鬼が人の意思を勝ち取ったのだ。

 

――彼らに、可能性を感じた

 

 もう手遅れな私とは違う少年に夢を託したのは間違いではないのだと信じた。カナヲも少年の影響を受けて感情を出しはじめている。良い傾向なのだと、思う。妹を殺したであろう鬼の情報も手に入れた。アオイたちにも知りうる知識を教え込んだ。……もう、思い残すことはなかった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 上下左右でたらめな重力すら分からなくなる空間、無限城。水辺に浮かぶその空間で女ばかりを喰らう鬼と出会った。上弦弐と刻まれた虹色の眼は喜色を浮かべ、穏やかに喋る鬼は童磨(どうま)と名乗った。良い夜だねぇ、と帽子を取って話し出す。話が分かる様子で、屈託なく笑う鬼の口は血で汚れている。どの口でそれを言うのだと、吐き気がした。そんなカナエの様子を鬼は心配した様子で目を細め、いつの間にか目の前に現れた。大丈夫かい、寄り添うように頬を撫でた。

 

――何か辛いことがあったんだね、話してごらん

 

 カッと頭が熱くなって、日輪刀を突き刺せば鬼は毒で悶え苦しむがあっという間に分解してみせる。ごめんね、と謝る鬼はカナエの追撃を容易く金扇で受け流しううんと悩んだように顎に手を当てて眉間に皺を寄せていた。何処かで会ったかな?そんなことを問いかける。知らないと答えるように鬼の身体を貫けばああッ!と大きな声を上げた。思い出したよ、手を叩くように鬼は子供のように明るく笑った。

 

――君、妹は居なかったかな?

 

 そういう細い刀使っている子、前に見たことがあるよ。そう続ける鬼に心臓がドクリと大きく動いた。……それは、どういうことかしら。カナエは童磨の話に耳を傾けた。久々に、鬼と対話をした気がする。何年か前に泣きながら歩いてる女の子がいてね、そう始まる言葉。嬉しそうに話し出した。流石に放っておけなかったこと、自分を見るなり細い刀で突いてきたから記憶に残っていること、その子も毒を使っていたなと昔の笑い話でもするように鬼は笑う。心臓が、うるさくなっていく。でも切りつけるなんて失礼だよね、俺はこんなに優しいのに頬を膨らませて顔色をわざとらしく変えながら、食べ損なったことを告げた。もう、話は頭に入ってこない。……この鬼の血鬼術は、氷だ。妹も身体中冷え込んでいた、髪も凍りづいてはいなかったか。目の前の鬼は妹の仇なのだと理解した。。

 

――上背がないのに、無駄なことをしていて可愛いかったなぁ

 

 意味なんてないのにね、最後に馬鹿にする物言いで語る鬼の額を貫いた。ああ、そういえば、気にした様子もなく鬼はカナエに笑いかける。君の背丈ならそんな刀じゃなくてもいいよね、なんでそうしないの?世間話でもするように、童磨は額を貫かれながらカナエの眼前に詰め寄った。鬼の血の匂いが、鼻につく。虹色の眼の中には自分自身の姿が映った。怒りに満ちた、自分でも見たこともないそれだった。可愛いねぇ、楽しそうに童磨は笑った。金扇が振り下ろされる。反射的に後ろに下がる。おや残念、童磨はあっさりとそれを見逃した。何処までも馬鹿にしている鬼だ。だが、今まで出会ったどの鬼よりも強い。汗が背筋に伝って気持ちが悪かった。だけどそれでも妹の仇だ。

 

――交わした約束はもう果たせそうにはなかった

 

 この鬼だけは許せない、刀の切っ先を向ければ童磨は何処までも楽しそうに微笑んだ。

 

 




主な設定

胡蝶カナエ
→しのぶを失ったことで復讐の道に走る。殺した張本人と出会って怒りを見せる。鬼とは仲良くなりたいと言う気持ちは本物だが、肉親を全て奪われたことですり切れてしまった。炭治郎に夢を託した。基本的に降伏した鬼にはチャンスを与えている。許す代わりに原作しのぶさんと同じように拷問を受け入れることを勧めている(本編では出せなかった)

胡蝶しのぶ
→基本的に原作通り。喧嘩別れをして一人きりで泣いているところで童磨に出くわして殺された。

童磨
→原作通り、とっととくたばれ糞野郎(誉め言葉)

小説版第二弾【片羽の蝶】を読んで切なさを感じた結果、書き散らした妄想。悲鳴嶼さんとしのぶさんの最後の会話は切なかった……。カナエさんもしのぶさんを失えばそうなってしまうのかなぁという平行世界。

あ、アンケートも取ってますがこれは今後何を書こうかなっていう基準にしてますのでよかったらご協力お願いします。

童磨さんの推しCPは?

  • 最高に変態な童磨さんを嫌がる童しのです
  • 親子みたいな関係がいい、童琴です
  • 童カナに目覚めた
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