鬼滅の刃ネタ短編集   作:こしあんあんこ

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端的に言えばFate/Zeroの雨生龍之介なるキャラが鬼滅世界で玉壺とお友達になる話。

芸術とはなんたるかの旅に出始める馴れ初め話の一発ネタである。

※読むにあたりの注意

・Fate/Zeroネタバレ若干あり(キャスター陣営、雨生龍之介(うりゅうりゅうのすけ)の死亡シーン)
・龍之介は大正時代に転生しているがヘッドショットを受けたことで解答を得たことを忘れています。多分聖杯のあれこれも忘れているようだ。青髭の旦那は若干覚えている模様
・現代っ子なので大正時代では異質な発言が多い
・玉壺と仲良くなりそうなのでそっち方面と仲がいいです
・なんでも許せる方どうぞ!


一人と壺の二人旅、芸術の旅が始まった

 

 銃の音が聞こえた。その音と同時に感じたのは腹に熱さと重さだった。仰向けに倒れたことで身体が起き上がれない。見下ろせば腹からは穴が一つ空いており、血が噴き出していた。止めどなく溢れるそこを撫でる。赤い血は手をテラテラと濡らし、雨生龍之介(うりゅうりゅうのすけ)は感嘆の声を上げて見入った。

 

――すっげぇ綺麗

 

 ぬるりと濡れる赤い血を見て、目を輝かせた。そして、頭を抱える。灯台下暗しとはこのことだ、ずっと探していたものが俺の腸の中に入っていたなんて。それはあらゆる方法で人を殺してずっと探していたものだった。アスファルトを濡らす血の量から致死量なのは間違いない。流れ出る赤い輝きをずっと見ていたいのに、息が上がってどうしようもない。生の実感と死の実感。紛れもなく探していたモノだった。ああ、なんて心地がいいのだろう。今までが色褪せて退屈だったそれに色が付くようだった。龍之介は満足げに笑った。パン、何処からかまた銃の音がすれば頭に衝撃を受けた。あっという間に意識は真っ暗になって、痛みも苦しみも分からなくなった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 目覚めれば抱き上げられていた。自身を見れば、身体は小さく子供になっていることを自覚する。上げる声も甲高い。だが子供よりも遥かに喋ることが出来ないことからそれより幼いことが分かる。

 

――あれ?……もしかして、俺って今赤ちゃん?

 

 概ね置かれている状況を理解した。大きな屋敷の和室の中だった。見にくい視界を凝らして見れば優しげに笑う女の顔が見える。ああ、すっげぇ殺したい。目を合わせて龍之介の思うことはそれのみだった。だが小さな手では刃物を持つことも腕力でもって殺すことはかなわない。なんと退屈なことだろうか、赤子になったことで龍之介はまた無気力な日々を過ごした。時代が大正時代だろうが退屈なことには変わりはなかった。

 

――子供でも出来ることは少ない、まずは大人にならないとなぁ

 

 そう考えて殺しは遊び相手の子供に留めた。子供は分かりやすく素直だ、容易く聞き入れるモノだから証拠も残ることはなかった。【作品】は部屋に飾っても周りが理解してくれることはないことは前世でも分かっているため最近作った【秘密基地】に隠した。ずっと不思議だったがどうして自分の【作品】は世間に認められないのだろうか、首を傾げても結局結論に至ることはなかった。……理解してくれる相手がいた気もするが、あれは一体誰だったんだろうか。長い間【秘密基地】でしばらく頭を抱えた。【作品】を見れば思い出しそうな気がした。

 

――旦那

 

 それは考え込んでいる内に不意に零した言葉だった。旦那という言葉にピンとくる。ああ、そうだ!俺は旦那と一緒に【作品】を作ったんだった。納得しながらも満たされない思いも強くなる。旦那とまた胸を弾ませる【作品】を作りたい。人間オルガンを更に改良させたいし、人間椅子だってまた作りたいのである。寂しいぜ、旦那。一人空を見ながら顔も忘れた旦那の日々に想い馳せながら年月は過ぎた。

 

 悶々とした子供時代を終えれば龍之介は家の者を全て殺して旅に出た。前世と変わらぬ端正な顔はこの時代でも受けがいい。女が近付けば体の中まで触れ合ったし、子供に笑いかけてついて来れば思いついた拷問を手当たり次第に楽しんだ。この時代はやたら行方不明者が多いから龍之介にとっては最高の時代であるのも言うまでもなかった。今日は大きな街にやって来た。大正時代はこんなものがあったのか、観光がてら龍之介は新たな街に胸を弾ませる。そして夜になった。

 

――お楽しみの時間だねぇ

 

 殺そうと定めた家族の家に侵入する。そんな時だった。入り口が既に嗅ぎなれた血生臭い匂いが香っていた。

 

――えぇ、……嘘だぁ

 

 一人ボヤキながら居間に入れば龍之介のお捜しの一家が全員もれなく死んでいたのである。テーブルの上には両親にあたる頭部が二つ置かれ、中の臓物は綺麗に形よく飾られる。周囲には三人の子供の死体が今か今かと待ちかねて座っていた。眼球は総じてくり抜かれ龍之介が俯いた。俯いた先には壺が見える。ガタゴトと独りでに動き出し、壺から何かが現れた。人外なのは明らかで頭部は両眼にあるべき場所には緑色の唇のついた二つの唇が舌を動かし、額と本来の口のあるべき部分には眼が存在した。人外は「ヒョッ」という奇妙な薄気味悪い声を上げ、饒舌に今宵の作品を口にした。

 

――最期の晩餐と名付けたそれ

 

 贅沢にも五人の人間をふんだんに使った力作であること、テーブルの上の臓物を食卓と見立て、子供たちが食事を待ちかねているのだと力説する姿に、龍之介は震えた。……それは恐怖ではなかった。反応を待ちかねる人外に、龍之介は思った言葉を口にした。

 

「COOL!最高だ!超COOLだよアンタ!決めた!俺はアンタについていく!さあ殺そう!もっともっとCOOLな殺しっぷりで、俺を魅せてくれ!」

 

 両手を力いっぱい握り締め、目を輝かせた。COOL?首を傾げる人外がいるがそんなことはどうでもいい。龍之介は顔に生える手を掴み握手する。握手されて、初めて褒められると気付いたらしい。人外は感極まった様子で文字の刻まれる目から大粒の涙を流す。自己紹介がまだだった。互いに顔を赤らめて、二人は名前を口にした。

 

――龍之介と玉壺(ぎょっこ)の旅が始まった

 

 





主な設定

雨生龍之介
→原作通りの性格。ヘッドショットにより記憶を失って旦那以外の記憶が曖昧である。玉壺と意気投合しそれから二人旅が始まった。めくるめく芸術を追う旅は幸せだったに違いない(被害者は見なかったことにした)

玉壺
→原作通り。何故芸術を理解出来ないのかと一人苦悩するも理解者を得て、二人旅が始まった。

ああ、でもジル・ド・レェの旦那の方が龍之介と合っていますので多分話はこれで終わりなんだろうなって考えた。

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