Bonta-kun Stratos   作:王子の犬

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ネタです。ふもふもしたかったんです。


Bonta-kun Stratos

【タバネ、ボン太くんを拾う】

 私こと織斑千冬は友達のタバネと篠ノ之神社の裏山に来ていた。

 裏山にはいろいろなものが落ちている。冷蔵庫やテレビ、時には車が落ちていた。車のなかに靴がそろえておかれ、白い便せんが置かれていたときはびっくりして大人を呼んだ。その後山狩りが行われてお手柄小学生などと地元では少しだけ有名になったこともある。

 

「ちーちゃん。見てみて。着ぐるみが落ちてるよー」

 

 タバネが呼んでいる。私はランドセルを背負ったまま一緒になって、ゴミ山から着ぐるみを引きずり出す。

 掘り出した着ぐるみは犬だかなんだかよくわからない頭に、大きな耳と丸い瞳を持っていた。緑色の帽子と赤い蝶ネクタイと身に着けた、どこかのマスコットに思えた。

 愛らしいのだが、妙にもっさりとして所々ほつれていた。

 タバネが着ぐるみをひっくり返し、名札を見つける。

 

「ボン太くんって言うんだね」

 

 名札を読み上げるタバネの目がきらきらと輝いていた。

 

 

 

【タバネ、ボン太くんに箒を入れる】

 私こと織斑千冬は篠ノ之家の離れに遊びに来ていた。

 

「ちーちゃん、ちーちゃん! 助けて! 箒ちゃんが息してない!」

 

 箒は今年で4つになるタバネの妹だ。タバネから目つきの悪さと生意気さを取り除いたような愛くるしい女の子だった。

 私があわてて離れに行くと、この前拾ったボン太くんがぐったりと倒れ伏していた。タバネが助け起こそうとするが、ボン太くんはふたりがかり運んだだけあって重かった。

 

「うわああああん。箒ちゃああああん」

「……え、この中に妹を入れた?」

 

 おろおろして涙目になるタバネをしかりつけ、ボン太くんを裏返す。

 

「バカ! 早く外に出せ! 早く!」

 

 ファスナーを開け、箒の背中に触る。Tシャツが汗でぐっしょりとなっている。

 

「頭を外せ! そうだ、すぐ!」

 

 ボン太くんの中から出てきた箒は、全身汗だくになって失神していた。だが幸い息がある。

 

「熱中症だ……。タバネはおばさんに救急車を呼んでもらって! 私は応急処置をするから」

 

 とにかく冷やすことが大切だ。箒の服をゆるめ、扇風機を最大にして彼女の体に風を当てた。

 

 

 

【タバネ、ボン太くんを強化する】

 私こと織斑千冬は篠ノ之家の離れに遊びに来ていた。

 篠ノ之家の離れまでは顔パスなのだ。

 

「入るぞ」

 

 引き戸を開けると、玄関にボン太くんが立っていた。あいさつしているような雰囲気だが、私はとっさのことに反応できなかった。

 

「ふもっふ!」

「……すまん。何を言ってるかわからない」

「ふもぉ……ふもふも……ふもっふ」

 

 ゴソゴソと頭をひねる。スポン、と音がして、中からヘアバンドをつけたタバネの頭部が出てきた。

 

「ちーちゃん、ちーちゃん。ボン太くんの熱中症対策が終わったよ! これで箒ちゃんを入れても大丈夫だよね!」

「ふーん」

 

 タバネの妹が救急車で運ばれた一件以来、箒はタバネとボン太くんを恐れるようになってしまった。今では離れにすら近づこうとしないのだ。

 

「ボン太くんを着ても快適! 体調管理機能を付けたんだよ! まだ体温と脈拍しか取れないんだけどね!」

 

 話を聞くと吸湿速乾素材を使って夏は涼しく、冬は暖かいらしい。

 

「通信機能もつけたんだよ。電源はボイスチェンジャーと共通化して小さくまとめました。ちーちゃんも試しなよ! 絶対気に入ると思うんだ!」

 

 

 

【タバネ、ボン太くんとIS技術を世界に発表する】

 私こと織斑千冬は篠ノ之家の離れに遊びに来ていた。タバネの部屋にはパソコンがいっぱいあって、ファンの音でうるさい。いらないパソコンをもらって並列化したとかなんとか。

 

「ふもっふ。ふもも、ふもっふ」

 

 ボン太くんの中にはタバネが入っている。何でもインターネットでマルチパワード・スーツ「ボン太くん」とその核を成す「インフィニット・ストラトス」技術を発表したらしい。

 

「ふも……ふももふもも、ふもっふー!」

 

 小学生でも大人以上の力を発揮できる、とタバネが豪語している。パワーアシスト機能に耐火・耐弾機能、嘘か本当か知らないが、核・生物・化学兵器防御機能と飛行機能をつけ、将来ボン太くんが量産された暁には相互に意思疎通が可能だとか。

 

「タバネ、ふもふもうるさいぞ。切ってくれ」

「……ふも」

 

 タバネがしょぼんと肩をすくめる。

 ボン太くんの頭に手をかけてゴソゴソとひねった。スポン、と音がしてヘアバンドとタバネの頭が出てきた。

 

「ボイスチェンジャーを無効にすると電源が落ちちゃうんだ。ボイスチェンジャーを外すとISコアがへそを曲げちゃうんだよね。だからあきらめてね。ちーちゃん」

「ボン太くん語なんか設定するからだ!」

 

 私は大声を出した。力の源であるISコアはボン太くん語を理解する。タバネが楽をするために自己進化機能を取り付けたら、ISコアの音声出力はボン太くん語以外受け付けなくなってしまった。

 

 

 

【タバネ、拉致される】

 マルチパワード・スーツ「ボン太くん」発表後、宣伝デモ「空飛ぶボン太くん」が動画投稿サイトで注目を浴び、製作者であるタバネは現役美少女中学生ということもあって一躍時の人になった。

 ふもふもランドと提携し、空飛ぶボン太くんを使ってCMを撮影したらあまりの反響に、タバネはご満悦だった。

 しかし、インフィニット・ストラトス技術に対する世界の反応は渋いものだった。タバネの論文が規定の書式に則っていなかったことが主な原因である。

 私が離れに遊びに行くと、箒が舌足らずな声で「ボン太くん」を身に着けるように頼んできた。ボン太くんの中の人はいない、ということになっているので、私が表舞台に立つことはなかった。今年で六歳になる弟がテレビの前で「ボン太くんだー!」とはしゃぐのを見て、何だか嬉しくなってくるのがせめてもの救いだ。

 

「ふもっふー!」

 

 ボン太くんとしてお客さんの前に立つべく、篠ノ之家の廊下を進む。今日のボン太くんは中世の騎士風に白い鎧を身に着けることで、「ナイト・ボン太くん」と呼び名を改めている。竹光を用意する(ちょろまかす)時間がなかったので段ボールで作った剣を差した。タバネを迎えに通学路を走る。

 歩くたびにぷにゅぷにゅっ、と音を立てた。ふもふもランドの純正ボン太くんと同じく、ファンシーな音が出るように調整されている。

 

「ふも?」

 

 何だ?

 白いワゴンが下校中のタバネの側に止まった。中から男が出てきて道を尋ねている。

 

「ふもっふ……」

 

 突然タバネの口がふさがれ、無理矢理ワゴンの中に押しこまれてしまった。

 

 

 

【ダイ・ハード】

 タバネを乗せたワゴンが走り去った。

 どうする? うわわわわわ……。私は突然の出来事に混乱し、頭の中が真っ白になりそうだった。私のゴースト(冷静な部分)が「タバネの言葉を思い出せ」とささやく。

 

〈ボン太くんにはGPSがついてるんだよ! はいろーみっくちゅだね!〉

 

 IS技術にはハイパーセンサーなる多機能センサーが存在する。主に迷子センサーとして大活躍しているのだが、タバネは別途GPSも追加していたのだ。

 

「ふもっふ。ふも、ふもぅ」

 

 欠点は電源が一元化されているため、ボイスチェンジャーを起動しなければならないことだ。さらに性能向上のためISコアと直結しているので、ボン太くん語の音声認識が必須だった。

 私は迷子(タバネ)発見機を起動する。

 

「ふもっふ! ふもっふ! ふもっふ!」

 

 すぐに呼び鈴が鳴る。タバネを発見した。迷子探知機はタバネとその妹、私、弟の四人しか探知できない。けれど、それが今とても役に立っている。

 タバネが拉致されてから数分が経過した。

 私はいても立ってもいられず、ボン太くんの飛行機能を起動した。ボン太くんなら文字通りひとっ飛びだ。

 

「ふも~~~っ!!」

 

 速すぎる。

 思いのほか出力が強すぎて加減を誤ってしまったらしい。

 タバネ曰く、斥力場を作って物体の抵抗をゼロにしている、とのことだ。原理はよくわからないが、今の私にはボン太くんが一番速いという事実に感謝した。

 

「ふも~~~っ!!」

 

 一夏と近所のガキ共がボン太くんを見て喜んでいる。一夏にいたってはボン太くん(私)の後を追いかけてきた。

 

「ふもっ!?」

 

 一夏が転んで、足を擦りむいた。構ってやりたかったが、今は非常事態だ。

 白いワゴンを見つけた。ナンバープレートにも見覚えがある。追い越して両手を広げて道をふさぐ。

 

「ふもっふ!」

 

 止まれ! 止まるんだ! ちょっと止ま……。

 白いワゴンは止まらなかった。

 

「ふもっ……!」

 

 とんでもない衝撃が走って目の前がグルグル回った。ワゴンにはねられたと悟って、私はボン太くんの安全機能のひとつを使った。念じるだけで愛らしいボン太くんが直立不動の姿勢になる。

 私が顔をあげたとき、白いワゴンは路肩に乗り上げ、郵便ポストを根本からへし折って壁に突っ込んでいた。

 タバネを助けなければ!

 

「ふもぉ……ふもっ、ふもっ」

 

 私はボン太くんパンチでガラスを突き破り、衝突のショックで気を失ったタバネを引きずり出した。

 

 

 

【お手柄、ボン太くん!】

 篠ノ之タバネ拉致未遂事件は実行犯の全員逮捕で幕を閉じた。

 地方新聞の三面に「お手柄、ボン太くん」という見出しで一連の記事が掲載された。地元のニュースを扱ったワイドショーにも取り上げられ、ボン太くんに取材が来たほどだ。

 ピースサインを強調しながら走り回る一夏たちガキ共。ちゃっかりテレビに映っていて驚いた。

 そして、この話には続きがある。

 私は一日署長として地元の警察署の控え室にいた。隣で澄ました顔のタバネはボン太くんの通訳として一緒にいる。

 

「ボン太くん、出番ですよ!」

「は……」

 

 私はとっさに口をつぐんだ。ボン太くんは中の人なんていないことになっている。

 タバネが警察の制帽縫い付けを終える。

 

「ちーちゃん、メッ」

 

 そう言うや、タバネは私の頭にボン太くんの顔パーツをかぶせる。

 瞬時に投影モニターが起動し、ボン太くんに搭載されたISコア・白騎士が「ようこそ」画面を眼前に映し出す。

 無数の窓がボン太くんの死角を補う。今にも張り裂けそうな……パッツンパッツンな警察官の制服が目に入る。

 ふも! とボン太くん警官仕様が完全起動を果たした。

 私は気を取り直して、扉の向こうに聞こえるよう元気よく返事をしていた。

 行きます!

 

「ふもっふ!」

 

 

 




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