森久保乃々は静かに暮らしたい 作:たんすP
「あの……そ、その、もりくぼ、おうちに帰りたいんですけど……」
恐る恐るそう口にしましたが、全く取り合ってもらえそうにありませんでした。というかそもそも日本語が通じてません。
いくすきゅーず? あーゆーおーけー?
えっと……こういう時、なんて言えばいいんでしょう。日本語でさえあんまりなのに、英語で話せだなんて……もりくぼ、異国の地で溶けてしまいますけど……
というか、この作業服とキャップの方達は一体誰なんでしょうか。警察ってわけでも無さそうですし、衣服にはSPEED-WAGONと書かれていますが……
スピードワゴン? 運送業者か何かでしょうか。
とりあえず、食事とか衣服とか個室を与えてもらえるそうなのでもりくぼは黙りますけど。
ここに来てから色んなことがありましたが、一向に帰らせてもらえる気配がありません。砂漠のウサギくぼ、寂しすぎてしんでしまいます。……ここは、ただの部屋ですけど。
部屋にはピンク色の壁紙が張られ、可愛らしい小物が机や本棚のあちこちに見られました。
「かわいい部屋……でも、もりくぼには広いし眩しすぎます……うぅ、帰りたいぃ……」
でもここから出るにはあの人たちに会わないといけないし……そもそも何の目的でもりくぼを閉じ込めておくんでしょうか。
はっ……! もしかしてこれって、新手のいぢめ……? こんなもりくぼだから、無理矢理にでも人とコミュニケーションとらせようと……
ひいぃぃっ! そ、そんなことされたら、もりくぼは尚のこと閉じこもりますけど……!
……引っ張り出されました。き、急に知らない人たちに囲まれて……ひぅっ! 目が、目が怖いんですけどぉ……!
健康診断、ですか? もりくぼ、病気か何かだと思われているんでしょうか。
「あ、あの、もりくぼはどこも悪いところはないので、そっとしてもらえると……あ、通じませんよね、そうでした……」
熱とか食欲とか記録しただけで、すぐに波は去りました。頭は元々痛くありませんし、用意されたものは日本食だったため問題なく食べられています。
で、でもこれで終わりなわけないですよね。これ以上は……たくさんの視線を向けられるなんて、考えるだけでも……むぅーりぃ……
ひっ! ……な、なんでしょう、またドアが開いて……忘れもの、ですか……?
「失礼する」
音の方へ振り向くとお腹が視線の先にありました。あ、いえ……椅子に座っていましたし、その人がかなりの長身だったもので……
見上げるほどの、おそらく180cmは優に超える男性は、体格の差はあれどまるでお相撲さんのような圧力を感じます。……実際に相対したことはありませんけど。
「少し話を伺ってもいいだろうか」
英国風の顔立ち。ハーフの方でしょうか。物腰は柔らかですが眼光は鋭く、森の小動物でしかないもりくぼには隠れるほかありません。
机の下に逃げ込んだもりくぼを見てその人は呆れたように「やれやれ」とため息をつきました。その後に続けて、「スタンド使いには妙なやつが多くて厄介」とも。
なぜもりくぼは初対面の人に腫れ物扱いされなければならないのでしょうか。そして身を隠すための椅子が取られてしまい、代わりに彼が腰掛けます。
その人は、自身を空条承太郎、と名乗りました。これは……私も名乗らないといけない流れでしょうか……
「もりくぼはもりくぼですけど……いえ、森久保乃々と、言いますけど」
それが、私と空条承太郎さんとの最初の出会いでした。
ノノの奇妙な冒険開幕です。
森久保にこんなことさせる作者を森久保Pは殴ってもいい。