森久保乃々は静かに暮らしたい   作:たんすP

4 / 6
[アクセプト]十時愛梨+

「うーん、これって森久保乃々ちゃんのスタンドのせいですかぁ?」

 

 女性は疑問を投げかけるように、しかしどこか確信を抱いて首を傾げます。

 うぅ……全部がもりくぼの意思ってわけではないので、そんなに注目しないでもらえると……すみません……

 

 でも、分かりました。あの女性に近づけば、もりくぼが近づきさえすれば、彼女をなんとかすることができます。

 

 うぅ、足が重い……でも、これ以上承太郎さんに迷惑を掛けるわけにも……ここはもう、何も考えずに、や……やけくぼですけどぉっ!

 

「もりくぼ、行きますっ!」

 

 ふふっ、ふふふふっ。もう何もこわくないんですけどっ!

 

 だって、アクセプトさんがもりくぼに何をしようとしても、平気ですからっ! リスさん――っ!

 

 

 

 

――あ、あれっ?

 

 ど、どうして承太郎さんが私の前に……?

 

「やれやれ、どういう心境の変化か知らないが無茶はするもんじゃないぜ。この場を切り抜ける、何かしらの策がなければな」

 

「また弾かれちゃいました〜」

 

 その声を聞きながら私が困惑していると、リスさんが何やら伝えてきます。五感、状態……

 あっ、そ、そうです……私の状態を全て維持するということは、当然目も耳もそのままで、なによりその情報を処理したり考えたりする脳が、維持された……止まったままになりますよね……

 

 えっと、えっと、どうしましょう……やけで飛び出しましたけど、数秒で消火されてしまいました。

 

「不思議な能力ですね〜。硬くするのか、固まらせるのか……でも、ずっとってわけじゃないですよねっ?」

 

 再びこちらへアクセプトさんが走り……承太郎さんのスタンドが立ちふさがりますが……両足で跳び、体重をかけるように着地したアクセプトさんは彼を軽々と跳び越す大ジャンプをしました。棒高跳びの選手も顔面蒼白です。

 

 そして私の後ろへ足をおろしたアクセプトさん。着地の音もさせず、きちんと衝撃を活用することを忘れていません。

 

 か、感心している場合じゃありませんでした。維持を……でも、それだけじゃきっと破られてしまう。

 アクセプトさんの打ち出した拳が、素早く、しかしゆっくりと近づいてきます。感覚だけが時間に取り残されたような……

 

 も、もしかして今なら、今触ったら、アクセプトさんの動きを止められるかも……

 アクセプトさんの出した腕よりも何十倍も遅くですが、もりくぼも手を伸ばします。それと同時に肩から飛ぶリスさん。交わる3本の線。

 

 いえ……! リスさんの飛距離が僅かに足りず、先にアクセプトさんが……!

 

 ブン、と風を豪快に切る音がしました。か弱いもりくぼの体など空気も同じと言うような、力いっぱいの一撃が。

 

 少し遠くに見えるアクセプトさんが張った肩の筋肉を見せます。あれ、景色も一緒に遠くに……もしかして、後ろに下がったのはもりくぼ……?

 

「あまりこちらも余裕がないんだがな」

 

 あ、あぁ……また助けてもらってしまいました。でも、今の一瞬の間にどうやって……? ものすごく速いとか、そういう話ではないのでしょう。もっと、得体のしれない何かを、感じました。

 

 もし、今起こったことをありのままに話すのなら、自分がしていない行動を気がついたらしていた、そういう感じでしょうか……

 

「観察や考察も重要だが、目を向ける相手を間違えれば命取りだ。ましてや森久保、お前は自分自身のことも見えていない」

 

「あ……はっ、はい……!」

 

 そうです、今は承太郎さんではなく、アクセプトさんの動きを見ていないと。でも、自分のことも見えてないって……私はそもそも何ができるのか、ちゃんと分かってませんし。

 自分のスタンドのこともきちんと理解して……相手のことも見逃さずに……あうぅ、頭がわれそう……

 

 頭を抱えようとした私は、ふと違和感を覚えます。リスさんの乗っている腕がぴたりと動かなくなっていました。う、腕だけを維持してる……?

 

 あ、そ、そうですよね……他人にできたことです。他のことだって……例えば体の一部を固めることだってできるはずです。

 

 いえ、固まった手でも……ちゃんと体温を感じます。腕の外側だけが、うまくその形を維持されています。リスさんが咄嗟の判断でしてくれたのでしょう。

 

 リスさんが、ヒントをくれました。これなら……身を守るために周囲が見えなくなるなんてことはなくなるはずです。

 

「あっ」

 

 突然女性が、何かに気づいてアクセプトさんを私のもとへ向かわせます。来る、と身構えましたが、どうやら狙いは私を庇う承太郎さんだったようです。

 

 走りながら両手を勢い良く互いにぶつけ、しかし音はせず、直後には握りこぶしが真っ直ぐに迫ってきました。

 横から承太郎さんがその軌道を逸らそうとスタンドの手を伸ばしますが、突如としてアクセプトさんはその動きをとめ、全身を使って彼に体当たりをしました。

 

 弾けるような衝撃が、二つの体を吹き飛ばします。飛んでいったスタンドは承太郎さん本人を巻き込んで外へと遠くなっていきます。一方でアクセプトさんは建物の壁に当たりますが、当然のように音を消し、何事もないようにその場へ足をおろしました。

 

「せっかく教えてもらったのに、うっかり忘れちゃってました〜」

 

 なによりも、あれだけ激しいぶつかり合いの後にもかかわらず緊張感の抜けた声と表情を浮かべていることに恐怖さえ感じます。

 よほど肝の据わっている人なのでしょうか……こっちを、見ないでくださいぃ……

 

 すると、アクセプトさんはもう一度承太郎さんの方向へ歩き出し、少しして立ち止まります。

 

「空気の粒って、物凄く速く動いているんですよね。今、こうしている間にも、たくさんの粒が私達の体に当たって、そしてアクセプトさんにも……」

 

 その瞬間、地鳴りのような細かい振動が、もりくぼの足元まで響いてきます。あえぇ……今度はなに……?

 

 止まったアクセプトさんはそのまま片膝を地面につかせて、弾くように少し前の床を叩きました。

 今度はもっと大きな揺れが起き、彼がいる場所から先が折れるようにして崩れていきます。

 

 あぁ……こんな、ひどい……

 

「これでしばらくは邪魔が入りませんよねっ」

 

 そう言って笑顔で、彼女はこちらへと視線を変えました。

 

「これで最後ですよ〜、森久保乃々ちゃんっ!」

 

 ゆっくりと、アクセプトさんがひた、ひた、と私に向かって歩いてきます。そして彼の歩いてきた場所は、破裂したような歪な足跡が刻まれていきます。

 

 ちょっと怖すぎませんか……? もりくぼみたいなか弱い生き物に、ここまでしなくてもいいんじゃないですか……?

 

 ああ……ついにアクセプトさんが目の前に……もりくぼは、立ち尽くすだけで精一杯なんですけど……

 

 っ! 素早い拳が……見えるのも、こんなに怖いことなんですね……泣きそうですけど、固まったこの状態じゃ涙もでませんけど。

 

 そのまま彼は拳を私の顔の横から引くことなく、さらに押し込んできます。

 

「これでもう逃げられませんよ〜。その固まった体が溶けるまで、アクセプトさんは止まりませんっ」

 

 ああ……もう、助けてくれる承太郎さんもいません。いえ……迷惑をかけすぎたんです、きっと。

 

 目の前の彼をどうにかする力なんて、もりくぼには残されていません。維持ができるのは一度に一箇所だけ、とリスさんに言われています。アクセプトさんをどうにかする、それは一度私に対しての維持を解かなければなりません。

 

 恐らくですが、それではリスさんと私の速さでは間に合いません。引くことも押すことも、叶いません。

 

 でも、でも……私は、この時を待っていました……!

 

 私は体勢を低くして横へ跳びます。アクセプトさんの拳部分だけがかろうじて小さくなって維持されていた空気、それが次の瞬間に完全に消えます。

 

 勢い余ったアクセプトさんは空を切り、バランスを崩します。チャンスでした、もりくぼ、チャンスを逃しませんでした。リスさんが、もりくぼのちっぽけですが大きな勇気を守ってくれていたから。

 

 だから、アクセプトさんの圧におされても、下半身から維持を少しずつ解いていき抜け出すこともできました。彼の隙を作ることもできました。

 

 私は、身を屈ませてほぼ水平にジャンプします。そしてその速度をリスさんに維持してもらいます。

 あの女性に。私の……私達の力を届けます。

 

 リスさんがくれた勇気……今は、やけではなくて……おかげで少し自信が持てたから……少しだけやるくぼですけど!

 

「わわわっ」

 

 彼女に飛び込み、即座にリスさんにお願いします。彼は、私が何も言わずとも分かっているようでした。

 

『スタンドを扱う心を維持』

 

 リスさんの力は、もっとたくさんのことに使えると気づけたから……!

 今、意表を突かれたその女性にはスタンドのことを考えている余裕は、おそらくないはずです。あったとしても、スタンドに命令したりはもうできません。

 

「や、やりました……!」

 

 私達が、やったんです……!

 

 あ、あれ、やったはずなのに、なんで目の前が真っ暗で……?

 あ、い、息も苦しく……

 

「ふごふご……っ!」

 

 この柔らかさは、まさか――ッ!?

 

 あ、あわわわわ……

 

 色んな意味でもう、駄目です……リスさん、あとはお願いします……

 

 

 消えていく意識の隅で、リスさんが呆れたように肩をすくめる姿が見えた気がしました。




こんな感じでどうでしょうか?(伺い)
ジョジョの世界観や荒木先生の展開の広げ方をできる限り継承したいけど、ううむ、凡人には難しいものだなぁ
尚、森久保視点のためかなりマイルドには仕上がっている模様。

ちなみに全身を維持している時は状態を、とかではなく分子レベルでその位相を維持するとかいうとんでもないことをしています。
これが無意識って言うんだからつよすぎ。森久保だからしょうがないね。

・アクセプト
本体:十時愛梨
破壊力:A
スピード:A
射程距離:D
持続力:B
精密動作性:B
成長性:C

パワー操縦型。『衝撃を移す』能力を持つ。一度に捌くことのできる『衝撃』はその圧力によって異なる。そのため一点に対しての攻撃には最大の防御力を誇る。移動する目標が遠ければそれだけ移すのに時間がかかりロスも大きい。衝撃は全方向に伝う。

ステータスのモデルはクレイジーダイヤモンド。というかそのまま。能力的にアクセプトするどころか弾き返してる点はご愛嬌。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。