森久保乃々は静かに暮らしたい   作:たんすP

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遅くなりました


[ウィーザー]森久保乃々

 その後、承太郎さんと合流し、先程が嘘のように落ち着いた女性――十時愛梨さんの話を聞き出します。

 

「君が森久保を追っていた理由は何だ?」

 

「あれっ、そういえば私、どうしてこんなことしてるんでしょう?」

 

 しらを切っている風でもなく、毒気の一切ない表情で首を傾げます。

 さっきまでのことを考えるととても信じられるものではないのに、どうしてか彼女が嘘をついているとは思えませんでした。

 

 承太郎さんもそう思ったのか、「森久保、耳を貸せ」と告げます。

 

「は、はい」

 

 う……承太郎さんの低音、耳に振動が伝わってくすぐったいぃ……ご、拷問です……

 でも、かろうじて内容だけは聞きこぼしませんでした。褒められても、いいと思いますけど……

 

「わかりました……」

 

 そして、彼は十時愛梨さんへと向き「改めて聞くが」と仕切り直します。

 

「君は女性で合っているか?」

 

「んー? もしかして、男の人みたいに見えてました? そんなこと絶対ないと思うけどなぁ」

 

 その返答を聞き、承太郎さんはこちらに向けて首を横に振りました。今ではない、ということなのでしょう。

 失礼にあたる質問のようでしたが、そうは思いませんでした。承太郎さんの考えがあってのことなので。

 

「身長はいくつだ?」

 

「身長ですか〜? えーと、161センチです」

 

 そして、承太郎さんがもりくぼに目で合図し、それと同時にリスさんが力を使います。

 

「ではもう一度聞くが、なぜ森久保を追っていた?」

 

「ごめんなさい、ぼんやりしちゃってよく覚えていないんです。乃々ちゃんや承太郎さんには迷惑かけちゃって……そのことはほんとにごめんなさい〜っ」

 

「あ、謝らないでください……もりくぼは、迷惑かけられて当然の存在ですし、ぜ、全然迷惑だなんて思ってませんし……そ、その……愛梨さんのせいじゃないかもしれないじゃないですか。ね? ね、承太郎さん?」

 

 もりくぼ、頭を下げられて動揺してしまいました。しかし話を合わせてくれたように承太郎さんは頷き、以前に触手を生やしたような肉片を埋め込まれた人の話をしてくれました。

 

 肉片が脳神経に影響を及ぼして思考等を操作する、なんてとても恐ろしい話ですが今回は似たような……洗脳系のスタンドの能力で操られていたのではないかと承太郎さんは言います。

 

「だが、まだ信用できたわけじゃあない。森久保、今度は逆を頼む」

 

「え、逆……? は、はい。やりますけど……」

 

 逆……って、スタンドのことですよね……つまり、そういうことでしょうか……?

 

「次の質問は、できる限りありもしないことを答えてほしい」

 

「ありもしないこと、ですか〜?」

 

「ああ。可能な範囲で構わない」

 

「わかりました〜」

 

 承太郎さんの考えはもりくぼじゃ分かりませんが、迷惑がかからないように頑張ります……

 リスさんの力は確かですが、なにしろもりくぼなので、自信はないですけど……

 

「朝起きてまず行うことは何だ?」

 

「あ、もしかして大喜利ですか? えーと、生クリームを泡立てる……とか? あんまりうまくないですかね〜。あっ、生クリームは甘いですけど」

 

 い、いいんでしょうか……? あ、承太郎さんが良いと目で語っています。ええと、さっきの逆ですから……『事実ではない話をする心』を維持すれば……

 

「次は特に何も意識せずに答えてもらっていい。君の身長は161cmで合っているな?」

 

「えっと、その……実は2メートルあるんですっ。あ、あれ? ごめんなさい、こんな変な嘘つくつもりじゃなかったんですけど。あれ?」

 

 成功です。ひとまず、安心……です。愛梨さんの心の状況では「どうにか頑張って」嘘をつくという心の維持までしかできませんでしたが。

 

 あぁ、つまり承太郎さんは十時愛梨さんが嘘をついているかどうかを暴こうとしていたんですね。承太郎さんとリスさんは尋問官……いいコンビになれそうです。

 もりくぼは……机の下でお休みしてます。その、机はなるべくたたかない方向で……

 

「森久保のスタンドの精度はどうやら高いらしい。おかげで君の疑いも晴れた」

 

「乃々ちゃん、ありがとうございます」

 

「い、いえ……もりくぼは何も……」

 

 承太郎さん曰く、リスさんの力がどの程度精神に作用するのか確認していたそうです。リスさん、かなり優秀な方らしいので、こんなもりくぼのスタンドになってしまって申し訳ないですけど……

 

「だが危惧すべきは彼女が森久保を追うために派遣された一人でしかなかったということだ」

 

 少なくとも相手が集団組織であると見積もっておくべきで、そうなると今後ももりくぼの身がその手の者に危険に晒される、承太郎さんはそう続けます。

 

「も、もりくぼ、これ以上なにもできないですけど……そもそも、リスさんは戦うスタンドじゃないんですよね……? もし、スタンドを授ける神様がいるなら、絶対こんなこと望んでないと思いますけど……」

 

「そうだとしても、戦わなければなんの解決にもならない」

 

「うぅ……戦うなんてむぅーりぃ……」

 

「手を加えること全てが戦うことではない。意味もなく恐れる前にまず相手に目を向けること、これも立派な戦いだ」

 

「もりくぼにはそれさえハードルが高いので……」

 

 やっぱり逃げましょう……! え、暴力的なことは代わりに引き受ける……? あ、愛梨さんまで……

 

 そしてスタンド使いを相手取るなら日本でのスタンドによる事件を調査しながらの方がいいという結論に至り、杜王町という所へ行くことに。

 なんだか、もっととんでもないことに巻き込まれている気が……。

 

 

「ところで森久保、矢に貫かれたことはあるか?」

 

「……な、なんでそのことを?」

 

「実際に見たもんでな。その後の姿を、だが。そしてやはり森久保が記憶を失ったのはそれより以前の話だ。スタンドが発現していたなら、闘病中に記憶を失うことはないからな」

 

 そういえば、もりくぼが寝ていたのって知らずにリスさんの力を使っていたからなんですよね。なら、記憶だけ維持できていないなんてこともないのでしょう。

 

「えっと、つまりどういうことでしょうか……」

 

「推測に過ぎないが、君が記憶を失った原因は彼女と同じ場所にあるのかもしれない。それは、記憶を辿ればわかるだろう」

 

「……思い出せませんけど」

 

「ある人物を紹介しよう。そのためにまずは杜王町へ行く。死亡率が平均よりかなり高い、イカれた町だがな」

 

 えっと、わざわざそんなところ行かなくてももりくぼは密かに暮らしていければ……あ、はい……ついていきますけど。

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