「こんな格言を知ってる?」
「『目的は手段を正当化する』」
紅茶の香り漂う園。
そこで紅茶を口に運びながら、少女はテーブルを共にする二人に言った。
唐突にも思える言葉。
しかし隣に座っている少女は慣れた様子で継ぐ。
「『“何か”が目的を正当化する限りは』と続く、ソ連の政治家レフ・トロツキーの言葉ね」
はあ、いつもはオレンジペコの役割なのだけど。
そう呆れたように言いつつ、彼女はパソコンに落としていた視線を上げて、少女に問いかけた。
「それで、この作戦に“何か”はあるの?」
その視線には少しばかり非難の色が見える。
しかし、先ほどの少女は自信に満ちた優雅な笑みと共に、こう答えた。
「西住まほに勝ちたい。それ以外に“何か”が必要かしら?」
隣の少女は、それで納得したようだった。
「……なるほどね」
そう言うと、再びパソコンに視線を落とした。
その画面には『GI6に対する指示書』と表示されている。
GI6とは、聖グロリアーナ女学園が誇る諜報機関だ。
この機関の諜報力、情報力は戦車道を行っている全ての高校で最高とも言われている。
この機関の力がある故に、強力な戦車をもたない聖グロが長年、四強の一角に居座れるのだ、とも。
そして少女がEnterキーを押しさえすれば、この指示書がGI6に届く。
指示書が届くなり『黒森峰女学園』に潜入している諜報員が動き出すことになっている。
「子供の頃からの、あなたの夢ですものね」
少女がEnterキーを押した。
間髪入れずに既読の通知がつく。
これで諜報員は仕事を果たすだろう。
キーを押した後、少女はハァと息をついた。
彼女は自分の隣に座っている少女が、それにどれだけの物をつぎ込んできたか知っていた。
その彼女がやるといっている。
なら、砲手である自分は協力しなければならないだろう。
もう一度、彼女は「ハァ」と溜め息とも何ともつかない長い息を吐く。
それを見て口火を開いた少女は微笑んだ。
視線だけで「ありがとう」と礼を言った。
「はぁ」という溜め息が「いいわ」と返事する。
それにもう一度礼を言って、視線をテーブルを共にする三人目に向けた。
「加えて、友人の学校がなくなろうとしているのよ? それを守ろうとしている友人が『責任は負うから協力してほしい』とまで頼み込んできている。“何か”が必要だとしても、これで十分すぎるくらいだと思わない? ……ね? 角谷さん?」
最後の少女はツインテールを揺らして、悪戯っぽくニッと笑った。