「戦車女子には二種類の人間がいるわ」
「一つは“西住まほと一緒に戦いたい”と思う人」
「もう一つは“西住まほに勝ちたい”と思う人」
「オレンジペコ? 私がどちらの人間なのか、知っていて?」
「……そう、私は後者の人間。それも恐らく、誰よりも情熱をもって西住まほに勝とうとしてきた人間だと自負しているわ」
「小学校の低学年のとき」
「私が戦車に乗るということがどういうことなのか、少しずつ分かりはじめていたころ」
「あのとき全国大会でパンターを駆る西住まほの姿を見たときから、そればかり考えてきたのだもの」
「自分の作戦能力の未熟さを痛感した私は、研究のために戦史・戦術の学術書や、マキャベリ・韓非子のような本も読み尽くしました」
「人の上に立つ者としても負けていました。ですから必要だと思った学問……哲学、心理学、経営学、歴史学、文学、果てにはプロ野球選手の本まで読み漁りましたわ」
「戦車の特性も調べ直しましたし、車長以外のポジションをやってみたりもしました」
「この聖グロリアーナ女学院に入学してからもそう」
「さきほど言ったようなことを続けるのはもちろん、新たに隊長としての立ち居振る舞いを学び、磨きくこともしてきました」
「それだけではないわ」
「お小言の多いお姉さま方を説得してクロムウェルを導入したのも」
「GI6を再整備して情報収集力を強化したのも」
「アッサムに付きっきりで黒森峰の情報収集にあたってもらったのも」
「先日、黒森峰に大洗女子が廃校になるという情報を流したのも」
「全てはこのため」
「まるで恋のような、この思いを実現するため」
「私にとったら戦車道とは恋そのものと言えるかもしれないわ。みんなはどうかしら? この思い、わかってもらえるかしら?」
「どう、アッサム?」
「アールグレイ?」
「ルフナ?」
「エリヤ?」
「……そう、ありがとう。セイロン、ルクリリ、キャンディ、ケニア、オレンジペコ、ジャワ、ローズヒップ、バニラ、ニルギリ、グランベリー、貴方たちはどうかしら?」
「………フフッ、みなさん血の気の多いこと」
「でも、そういうことなら、みなさんにも私の恋が成就するのを手伝ってもらいましょう」
「戦車道とは、武道なんていう生易しいものではない」
「まして遊びなんて妥協が許されることでもないでもない」
「それを黒森峰の方々に見せてさしあげましょう」
「戦車道とは恋」
「恋とは戦争よ」
「そして聖グロリアーナの生徒は、その二つで手段を選ばない」