俺はずっと好きでいる   作:とりがら016

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雄英体育祭(3)

『さぁ最終種目!進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!一対一のガチンコバトルだ!!』

 

 なぜかA組の女子がチアの恰好をして出てきたことは見なかったことにして、最終種目の発表に集中する。どうせ峰田か上鳴が何かしたんだろ。

 

「それじゃあ組み合わせ決めのくじびきしちゃうわよ!これが終わればレクリエーションを挟んで開始だから、レクリエーションへの参加不参加は慎重に決めてね」

 

 俺としては動いていないと個性が発動できないから参加した方がいいのだろうが、疲れ具合を自分で調整しにくいからやめておこう。多分トーナメント参加するやつらは全員参加しないだろ。夜嵐みたいなやつ以外。

 

 1位チームから順にくじを引いて行き、組み合わせが決まった。

 

第一試合

緑谷VS心操

 

第二試合

轟VS瀬呂

 

第三試合

尾白VS上鳴

 

第四試合

飯田VS発目

 

第五試合

芦戸VS夜嵐

 

第六試合

久知VS切島

 

第七試合

常闇VS八百万

 

第八試合

爆豪VS麗日

 

 ……夜嵐と爆豪と同じブロックて。轟と同じブロックいけやお前ら。

 

「一回戦久知とか!よろしくな!」

 

「おぉ。よろしく。俺はこの組み合わせに軽く絶望してるところだ」

 

 切島ももちろん強いだろうし、勝ったとしても夜嵐、奇跡的に勝ったとしても爆豪。で、また奇跡的に勝ったとしても轟。死だろ、死。くじ運悪すぎじゃない?俺何か悪いことしたか?心あたりはあるけど。

 

『よしじゃあトーナメントは置いといて!楽しめ!レクリエーション!』

 

 第一種目と第二種目で個性使わなかった反動がここにきたと思うようにしよう。レクリエーションはスルーで、精神統一だ。精神統一。せっかくここまできたんだから、いい結果は残したいしな。

 

 

 

 

 

 

 

『ヘイガイズアァユゥレディ!?色々やってきましたが、結局これだぜガチンコ勝負!!』

 

 スタジアムの中央にフィールドが用意され、トーナメントの準備が出来上がった。相手を場外に落とすか、行動不能にするか、参ったと言わせれば勝ち。命にかかわるような攻撃はアウト。切島が相手なら参ったと言わせるのは無理だと思っていいだろう。そんなこと言うようなタイプではない。となれば、場外に落とすか行動不能。観客はガチンコファイトで行動不能っていうのが見たいのだろうが、先のことを考えるとガチンコは少し躊躇してしまう。

 

 狙うなら場外。切島は空中で移動できるタイプでもないから、ぶっ飛ばせば場外は狙いやすい。問題はそれまでに疲労をためておかなきゃいけないってことで……。

 

「あれ、どこ行くんだ?」

 

「準備」

 

 初めの対戦相手である切島にそう返して、人目のつかないところに行く。

 

 最初から何もない状態で戦って勝てるような相手でもない。試合が始まるまでにできるだけ疲労をためておいて、即行でケリをつける。次を考えるならその勝ち方が一番だ。戦ってるやつらには悪いが、試合結果はほぼわかりきってるから見るまでもない。わからんのは今やってる緑谷VS心操くらいか。

 

 よし、走るか。勝つために。

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ行くぜ第六試合!5位、2位と地味に優秀!まだ個性を見せていないミステリアスボーイ!ヒーロー科久知想!』

 

 緑谷、轟、上鳴、飯田、夜嵐が勝ち進み、ついに俺の出番がやってきた。ミステリアスと言うと聞こえはいいが、他人の力でのし上がってきただけである。多分何人かにはバレてる。

 

『対するは激アツの男気!仮想敵に下敷きにされようがなんのその!同じくヒーロー科、切島鋭児郎!』

 

 アレの下敷きになって無事ってどんだけ硬いの?個性使わなかったら肉弾戦で絶対勝てないだろ。これが第二種目じゃなくてよかった。

 

『START!!』

 

「行くぜ!久知!」

 

「できればくるな」

 

 突っ込んでくる切島から逃げる。一発でもあたると事故で気絶しかねないので、慎重に見極めつつ回避。麗日のように触れられたら終わりの個性ではないから避けるのはまだ楽だ。だが、こいつ。

 

「油断、してねぇのな」

 

「するかよ!これでも一回コンビ組んでんだ」

 

 部分的に硬化してくれていればまだ楽だったのだが、全身を硬化している。油断してくれていればまだ楽だったのに、初めから全力で倒す気だ。そりゃ俺相手に持久戦って俺の個性を知ってたらありえないしな。

 

『ラッシュをかける切島に、久知は逃げる、逃げる、逃げるー!!』

 

 俺が情けなく見える実況はやめてほしい。一応この逃げも必要なことなんだ。必要以上にダメージを受けず、個性の発動条件を満たすため。ただ無様に逃げ回っているだけじゃない。

 

「クッソ、当たれ!」

 

「当たるか」

 

 避けに徹していれば避けるのはそんなに苦労しない。訓練を積んだやつが相手ならこうはいかないだろうが、雄英ヒーロー科とはいえまだ一年。動きが直線的で避けやすい。あくまで避けに徹していた場合のみで、俺も攻撃していれば普通に何発かもらうだろうが。

 

「って、ぐおっ!?」

 

『ここでこの試合初めてのダメージが久知に通ったー!!』

 

 なんてことを思っていたら避けきれずに肩を殴られてしまった。これが腕とかならまだよかったのだが、肩は重心がずれるから少しマズい。ここは衝撃に逆らわず、一旦距離をとるべきだ。

 

「逃がすか!」

 

「人の動き読めんのかよ!」

 

 てっきりその場で攻撃し続けると思ったんだが、俺が後ろに退くことを読んで詰めてきやがった。あんまり考えるの得意そうじゃないのに。

 

「勘だ!」

 

「いい勘してんな、オイ!」

 

 言いながら振るわれた拳を受け止める。こうやって受け止めちゃうと、次避けんのが難しくなるんだよなぁ。てか受け止めるだけですごく痛い。硬すぎだろ。そりゃ下敷きにされても無事だわ。

 

 切島のラッシュを受け、流し、なんとか避け、精神をすり減らしながらそうし続ける。何回か体に攻撃をくらっているが、致命傷じゃない。大丈夫だ。

 

「ハッ、焦ってるな?」

 

「そりゃな!」

 

 段々切島の表情から余裕がなくなってきた。俺にダメージと疲労が蓄積しているからだろう。……そろそろか。

 

「あっ」

 

「もらった!」

 

 バランスを崩したように見せかけ、わざと隙を作る。この場合、切島がどこを狙うか、だが。俺を確実に仕留めたいはずだから、恐らく。

 

『モロに入っ……てないー!久知、寸前のところで拳を止め、腕ごとガッチリ掴んだー!!』

 

「顎、だよなぁ」

 

「クッソ、相手が久知なんだから怪しむべきだった!」

 

 なんだそれ。まるで俺が騙し討ち上等みたいな言い方。あまり間違ってはないけど。

 

「じゃあ行くぜ切島。恨むなよ!」

 

「え、ちょ、待て!」

 

 俺は切島の腕をガッチリ掴んだまま個性を発動させる。

 

 あの日、緑谷からヒントを得た俺は二週間その練習に励んでいた。内側から爆発させるイメージ。そこで考えたのが、本来強化される10分間の分を一瞬に持ってこられれば、上限解放10程度でもすごい力を出せるんじゃないか?ということ。じんわり爆発させないようにやっていた強化を、瞬間的に。

 

「瞬間解放、10!」

 

 そして、それは成功した。瞬間解放は本来10分間あるはずの制限を5秒間に短縮し、爆発的な力を引き出す諸刃の剣。

 

「じゃあな!」

 

「クッソぉぉおおお!!」

 

 その爆発的な力で切島を場外まで投げ飛ばした。そして5秒の制限時間が終わり、体に激痛が走る。ただ、普通の上限解放なら30くらい出さなければ投げられなかった相手だ。10程度の激痛ですむなら安いもの。……まぁ瞬間解放してその攻撃が失敗すると、単に激痛がくるだけになるが。使いどころが難しい。

 

「切島くん場外!久知くん二回戦進出!」

 

「うっし」

 

『押されていた久知、一瞬で勝負を決めて二回戦進出ー!ただ勝ったのにめちゃくちゃ痛そうだ!』

 

 それが俺の個性なんだから仕方ない。

 

「クッソ、負けた!速攻はよかったと思うんだけどなー」

 

「切島が経験積んでたらどっかでいい一撃もらって俺が負けてたかもな。俺の勝ちも読みがうまく当たっただけだし」

 

「次の試合のこと考えながら戦ってるやつに負けてんだ。完璧な負けだろ、これ」

 

 バレてた。いや、ほら、俺の個性上それは仕方ないというか、ね?しかも相手が相手だし。それは切島にも言えることだけど。

 

「ま、うじうじすんのはらしくねぇ!久知、勝てよ!」

 

「相手が相手だからなー。まぁ頑張る」

 

「そこは勝つ!でいいだろ」

 

 切島と話しながらリカバリーガールのところへ向かう。俺の場合ダメージは残しておいた方がいいが、学生の身だから学校のことも考えて一応行っておかないとな。

 

「次って確か夜嵐?だっけ。あの風がすごいやつ」

 

「あぁ。推薦入試一位だってよ」

 

「マジ?轟より上じゃねぇか!」

 

 だから恐ろしい。飛ばれたらほぼ何もできないし、ほとんどのやつは完封されることだろう。それほど飛べるっていうのは戦闘において大きなアドバンテージなのだ。遠距離攻撃を持っていればまだなんとかなるだろうが、俺はそれを持っていない。勝つ方法は限られているが、それをして勝ったとしても次の試合でまともに動けるかどうか。

 

「俺ん時は勝てたからいいけど、次の試合は余力残して勝とうなんて思うなよ」

 

「んー、でもトーナメントだしなぁ」

 

「それで負けたら意味ないだろ?」

 

「それもそうだ」

 

 でも、できれば余力を残しておきたい。そんなことができる相手だとは思ってないが、それでも。俺の個性、というより俺をアピールするにはそっちの方がいいだろうから。ボロボロになるとしてもまだ動ける程度には。

 

「応援してるぜ!」

 

「ボロ雑巾になったら慰めてくれよ」

 

 勝たなきゃ許さん!というプレッシャーを俺にかけた切島は、清々しく笑った。


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