俺はずっと好きでいる   作:とりがら016

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家庭訪問?

 あの後。俺の通報によりショッピングモールは一時的に閉鎖され、ヒーローと警察が捜査にあたるもやはり見つからず。俺は結局何も買わないまま警察署に連れていかれ事情聴取を受けた。アロマシガレット……。

 

「会話内容つっても、俺……アー、僕が敵連合に誘われたくらいですかね?」

 

「えぇ……」

 

 警察は敵連合に対して特別捜査本部を設置しているらしく、その捜査に加わっている塚内さんから死柄木との会話内容を聞かせてくれと言われたので、素直に喋ったら呆れられてしまった。そういえば色々衝撃があって混乱していたが、敵連合に誘われるってものすごいことなのかもしれない。いや、ものすごいことだ。職場体験で脳無に襲われたこともつながるし、あの時から俺は狙われていたということになる。

 

 理由は、多分被身子がいるからだろう。

 

「うーん、それはなんというか、大問題だね。逆を言えば殺されることはない、ということなんだろうけど……」

 

「俺雄英生ですしね。敵連合側に行っちゃったら雄英の信用ガタ落ちですよ」

 

「君は君自身の心配をした方がいいとも思うけど……」

 

 そういうのは大人が考えることだ、と返されては何も言うことができない。俺としては俺なんかで信用落としてほしくないんだけどなぁ。俺を見つけてくれた相澤先生にも申し訳ないし。正直、敵連合に誘われてるのは私情が大分絡んでる、気がするし。

 

 ……やっぱり、被身子のこと言っといた方がいいよなぁ。

 

「えっと、それでなんですけど」

 

「ん?」

 

「敵連合に新しいメンバーがいまして……渡我被身子って言うんですけど……」

 

「……それが本当だとしたら、敵連合は勢力を拡大しつつあるのかもね。なんで渡我被身子のことを知ってるかは聞いても?」

 

 やっぱりそうなるよな。被身子は未成年だから名前とかは伏せて報道されてるし。俺は被身子のことが好きすぎるからわかったけど、被身子のことを知ってたらおかしいって思うのが普通だ。……被身子に好意を持ってるってことは伏せよう。

 

「いや、小さい頃一緒にいたことがありまして。向こうもそれを覚えていたみたいで、多分敵連合に誘われたのもその関係ですかね?」

 

「へぇ。それはいつ頃?」

 

「小学校にも通ってなかったかと」

 

「へぇ。随分前の事を覚えてるんだね。若さの証かな」

 

 塚内さん俺のことめっちゃ疑ってない?いや、俺が敵だと疑ってるわけじゃなくて、何か情報を隠してるってことに気づいてる、みたいな。そりゃ警察の人だから察しがよくて当然か。でも、被身子が好きだって言うのは、ねぇ。ほら、僕も思春期の男の子ですから。

 

「……まぁ、いい。とりあえずありがとう、久知くん。君が冷静でいてくれたおかげで被害はゼロだった」

 

「死柄木に先手取られたわけですから、ヒーローとしてはどうなんだって気もしますけど」

 

「はは。その辺りは君の先生にお願いしようかな」

 

 事情聴取を受けていた部屋から出て、警察署の出口へ向かう。先生に説教されるのかなぁ。俺結構一生懸命やったぜ?死柄木に触れられる前にぶっ飛ばそうにも、個性の使用許可下りてないし。一般人としては大正解の行動だろ。

 

 まだ先生と会ってもいないのに心の中で言い訳しながら警察署を出る。目の前に相澤先生がいた。塚内さんを見た。

 

「ほら、先生には連絡しないと」

 

「子どもを殺す気ですか?」

 

「お前は俺をなんだと思ってる」

 

 相澤先生はいつものように俺を睨みつけて、ため息を吐いた。ここは「無事でよかった」とか言うところじゃない?相澤先生そんなキャラじゃないけど、キャラじゃないからこそ言うことでギャップが生まれて、更に俺の心を惹きつける、みたいな。

 

「お前が敵と遭遇したとなれば、すぐに会って話を聞いた方がいいからな。脳無に襲われたこととつながりがあってもおかしくない」

 

「あ、俺敵連合に勧誘されたんですよ」

 

「合宿地は変更だな」

 

「やっぱりそうなります?」

 

 今回は偶然だったのかもしれないが、少なくともUSJは計画的だった。ここで予定通りの合宿先に行けば、また敵連合の襲撃を受けかねない。今回俺が勧誘を受けたから尚更だ。本来なら中止にした方がいいのだろうが……その辺りは大人の事情があるのだろう。

 

「ま、最悪の事態にならなくてよかったよ。正直お前は危なっかしいからな」

 

「はっきり言いますね?」

 

 危なっかしいから敵連合に狙われたんだろうけど。そう考えると俺は敵に向いてるってこと?いや、相澤先生がヒーローに向いてるって言ってくれたからそれはないはずだ。

 

「先生。今お伝えしておきたいことがあるのですが」

 

 はたして俺は本当にヒーローに向いているのかと悩んでいると、塚内さんが相澤先生に「実は、久知くんの幼い頃の知り合いが敵連合にいたらしく」と言ってしまった。相澤先生は俺と被身子の関係を知っているので、これは察したな。相澤先生めっちゃ俺見てるし。

 

「……心配なので、私も家までついていきます」

 

「そうですか。そうしていただけると助かります」

 

 これ、うちで延長戦するパターンだな、とどこか諦めに似た感情を抱きつつ相澤先生から目を逸らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「渡我被身子が、敵の組織に所属していたようで、本日想くんと接触しました」

 

 俺を迎えに来た両親と相澤先生とともに家へ帰った俺は、リビングで相澤先生の隣に座り、両親と向かい合っていた。相澤先生は以前にもうちにきたことがあり、その時に俺と被身子の関係について話している。関係と言っても、俺が被身子を捕まえたいという話をしただけだが。

 

「そう、ですか」

 

 母さんが猫かぶりモードで真面目な表情で俯いている。この話題はうちであまり触れられない。そもそも両親が俺のためを思って被身子から離したのに俺が被身子を追っているものだから、両親は俺の気持ちを考えてなかったと自分たちを責めてしまう。俺からすれば正常な判断だと思うから、別に気にしなくてもいいのだが。

 

「想。あの子の様子はどうだったんだ?」

 

「抱き着かれた。めっちゃいい匂いしたし柔らかかった」

 

 三人が目を丸くして俺を見た。そんなに驚かなくても。

 

「いやー両想い?みたいな?いよいよ俺にも春がきたというかなんというか。ずっと好きでいてよかったというか。色々障害があるんだけども、よりヒーローになる決意が固まったというか」

 

「……幸せそうでなによりだな」

 

 今度は呆れられた。相澤先生にはわかんないかもしれないけど、両想いってものすごく嬉しいことなんですよ。しかも長年想い続けてきた子と両想い。これで舞い上がらない男がどこにいる?……少々関係性は特殊だけど。

 

「ヒーローになるというところは一貫しているみたいだな。なら心配ない。俺の息子は俺をも上回るヒーローになるに決まってるからな!」

 

 父さんを上回るのはあと何年後のことだろうか。正直オールマイト級の化け物だと思っている。トップ10に入っていないのは単に知名度的な問題で、実力的にはトップ2、3くらいには入っているだろう。それくらい強い。第一生身でも強いし。

 

「ここからが本題で、想くんは敵組織から勧誘されました。もちろんこちらでもお守りしますが、正直今想くんは非常に危険な状態です」

 

 笑っていた父さんとほほ笑んでいた母さんが揃って俺を見た。仲がいいなと場違いなことを考えつつ、相澤先生に同意するように小さく頷く。

 

「それに伴って合宿地は変更します。予定通りの場所に行くのはあまりにも危険。その上でお聞きしますが、合宿への想くんの参加許可を頂けませんでしょうか」

 

 言って、相澤先生が頭を下げた。

 

「あ、いいですよ」

 

 それと同時に父さんが軽く返す。

 

 え?

 

「……?」

 

 相澤先生が珍しく間抜けな顔をしている。そりゃそうだ。普通の親なら絶対にダメだって言ってる。子どもが狙われていて、そんな状況で合宿なんて気が気じゃない。というか、うちの両親はダメだって言うと思ってた。だって、実際に小さい頃被身子と距離を置かせたし。

 

 相澤先生と一緒に間抜けな顔をしていると、母さんが小さく微笑んだ。

 

「決めていたんです。あの子を追い続ける息子を見て、これからは息子の意思を尊重しようって。本音を言えば絶対に行ってほしくないんですけど、この子、おとなしくさせればさせるほど危なっかしくなるので。あの子を追うためにかはわかりませんが、タバコも吸っていましたし」

 

「気づいてたのかよ……」

 

「親ですから」

 

 父さんが「吸ってたの!?」みたいな顔してるけどそこのところどうなの?

 

「ですから私たちからは、どうか息子をお願いします、としか言えません」

 

「攫われても息子が余計なことをしない限り殺されはしないでしょう!」

 

「……必ず、想くんはお守りします」

 

 言って、相澤先生はまた頭を下げた。なんか、ここまで俺のことを考えてくれてたんだと思うと恥ずかしくなってくる。あとタバコ吸ってたのもバレてたし、色々恥ずかしい。同時に、俺は被身子を追ってもいいんだという安心感。心のどこかで両親への遠慮があったのかもしれない。そりゃ、いつまでも親に心配はかけたくないから。

 

 でも、ここまで言ってくれるなら俺を信じてくれる両親に応えるしかない。必ず無事に帰ってきて、どうだ!と胸を張る。それが俺にできることだ。

 

 俺は、相澤先生と同じように頭を下げた。今までと、これからの感謝を込めて。

 

 頭を下げるときに一瞬見えた、両親の握った拳が印象的だった。


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