俺はずっと好きでいる   作:とりがら016

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仮免試験、結果

「ふぃー。どうなっかなぁ」

 

 仮免試験を終え、結果待ちの時間。結果を待っている全員が……いや、一部を除いて緊張した面持ちだ。俺としてはもう結果を見るだけなので開き直っている。やれることはやった。自信はない。けどいい動きをしたとは思ってる。自信がないのは採点基準が明かされていないからだ。未知のものは人間誰でも怖い。

 

「受かってると思うか?」

 

「あ?受かってるに決まってんだろ」

 

 自信満々なのは爆豪。こいつには聞くまでもなかったか。実際、爆豪は受かってると思う。被害者に対して暴言を吐いてなかったし、対処も俺から見ると適切だった。……いや、暴言を吐いてなかったが口は悪かった。そこで減点されていてもおかしくない。

 

「俺不安だなぁ。結局爆豪と久知と切島についていっただけだし」

 

「それ言うなら俺もだぜ?最後は別行動だったから、そこで巻き返せたらいいんだけどよ」

 

 自信なさげなのは切島と上鳴。俺が指示を出す形になっていたからだろう。ただ、こいつらもこいつらで切島じゃないとダメなこと、上鳴じゃないとダメなことがあったはずで、その役割をきちんとこなせていたのなら受かっているだろう。腐っても雄英生。基本的な動きはできているはずだ。

 

 せっかくだから雄英1-A全員で合格したい。口に出して言うのは恥ずかしいから言わないけど。

 

 ……そういや被身子はどこに行ったんだろう。何かしらの目的を達成して帰っていったのか?士傑が集まっているところには見当たらないから、多分そうだ。どうせならもうちょっと話して……いやいや、それは恋人同士がやることだ。俺と被身子はヒーローと敵。仲良く話してどうする。

 

『えー皆さんお疲れさまでした。これより合格発表を行いますが、その前に一言』

 

 今回の仮免で説明を行っていた目良さんが壇上に立ったのを見て、うじうじした思考を彼方においやって姿勢を正す。みんなも心なしか表情を引き締めて目良さんに注目していた。誰かがつばを飲み込む音がやけに大きく聞こえる。

 

『採点方式についてです。我々ヒーロー公安委員会とHUCの皆さんによる二重の減点方式であなた方を見させていただきました。危機的状況でどれだけ間違いのない行動をとれたかを審査しています』

 

 減点方式。しかも二重。そう聞くと怖すぎる。なんか、加点方式より減点方式の方が緊張する感覚ってわからないだろうか。俺は減点方式の方が緊張する。できている部分より悪い部分の方が注目されるってことだろ?いや、今聞かされたところで取り返せるもんでもないから、今緊張しても仕方ないんだけど。

 

『とりあえず合格点の方は五十音順で名前が載っています。今の言葉を踏まえた上でご確認ください』

 

 目良さんが示した先のモニターに、名前がずらっと表示される。五十音……ひ、ひ……。

 

「お、爆豪もあんじゃん」

 

「何勝手に見つけとんだヤニカス!」

 

「ヤニカスはやめてくれ」

 

 外面は平静を装いつつ、内心めちゃくちゃ安心しながら爆豪に絡む。いつも通り暴言を吐かれて凹みつつ、他のクラスメイトの名前を探す。

 

「全員あんじゃん」

 

「やったぜ久知!」

 

「やったな爆豪!口悪いから受かんねぇと思ってた!」

 

「あ!?やんのかクソ髪コラ!」

 

 合格が嬉しかったのか、上鳴が飛びついてきた。爆豪は切島に肩を組まれている。仲いいよなぁ二人とも。爆豪めちゃくちゃキレてるけど。

 

『えー全員ご確認いただけたでしょうか。続きましてプリントをお配りします。採点内容が詳しく記載されておりますのでしっかり目を通しておいてください』

 

 ボーダーラインは50点。どの行動が何点引かれたかがずらーっと並んでいる。俺は87点。行動はいいが、安心感が足りないらしい。どうやら不安感が透けていたようで、精神的な面でマイナスされていた。一番情けない気がする。

 

「爆豪は……85点。思ったより高いな」

 

「口悪ぃ程度で減点すンなや……!」

 

 やはり口の悪さで減点されていたようだ。しかしその他に目立って悪い点はなく、俺には及ばないが優秀な成績だ。俺には及ばないが。

 

『合格した皆さんはこれから緊急時に限りヒーローと同等の権利を行使できるようになります。すなわち敵との戦闘、事件事故からの救助など、ヒーローの指示がなくとも君たちの判断で動けるようになります』

 

 俺がそれを聞いて思うのは、被身子のこと。緊急時のみだが敵連合は雄英と何かと因縁があり、緊急時になる可能性がかなり高い。俺は敵連合に狙われていたくらいだ。

 

 緊急時になれば、被身子をこっちに引っ張ってくることができる。……ただ、俺は被身子と戦うことができるのだろうか。捕まえるには戦闘は避けられない。俺にとっては敵であり、好きな子でもある。戦う覚悟は決まっているつもりだが、いざその時となると。

 

『しかしそれは君たちの行動一つ一つにより大きな社会的責任が生じるということでもあります』

 

 目良さんがつらつらと、しかし確かな熱を持って語っていく。オールマイトという平和の象徴の不在。それによって増えてくる敵。世の中が大きく変化し、その結果社会の中心は俺たち若者になる。

 

『次は皆さんがヒーローとして規範となり抑制できるような存在とならねばなりません。今回はあくまで仮のヒーロー活動認可資格免許。半人前として考え、各々の学舎で更なる精進に励んでいただきたい!』

 

 今まではタマゴだったが、資格を手にする以上それ相応の覚悟がいる。これからは被身子を迎えに行くのが現実的な話になる。

 

「……黙って変なこと考えてんじゃねぇよクソヤニ」

 

「変なことじゃねぇよ」

 

 小声でつっかかってくる爆豪に笑いながら返すと、舌打ちが返ってきた。何が気に入らないのか聞いてみようと思ったが、聞いたらキレられそうだったのでそっと口をつぐんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試験場から帰り、寮。みんな手に入れた資格を見て各々好きな形で喜びを表現している。俺は両親にメールを送って、先ほど電話で「よかったね!」と母さんからお祝いしてもらった。父さんからはメールで「流石俺の息子だ!」と一行のメール。俺の両親は感情表現がストレートで非常に嬉しい。本当に俺の親か?俺は感情表現へたくそなのに。

 

「久知が87点て意外……いや、意外でもないのか?成績は優秀だもんな」

 

「口は悪いのにな」

 

「上鳴、瀬呂。喧嘩売ってんなら買おうじゃねぇか」

 

「そういうとこだぞ?」

 

 しまった。まさか上鳴に論破されるなんて。まぁ俺も口が悪いことは自覚しているからまだマシだ。自覚しているのとしていないのとでは全く違う。俺は直そうとして口がすべってしまっているだけだ。一番悪いじゃねぇか。

 

「そうか、意外っつったら爆豪だな。あんなクソみてぇな性格してんのに85点だぜ?」

 

「クソみてぇな性格の俺に負けんだから、テメェはよっぽどゴミなんだろうな」

 

「久知!どうにかしてくれコイツ!」

 

「爆豪を煽るから悪い」

 

 上鳴から魂が抜けていった。実際、爆豪を煽ったらやり返されるに決まってるんだから触れる方も悪い。それでも爆豪に構うのは友だちだからだろう。本当にいいやつだ。爆豪みたいなクソ性格に構うなんて。俺も同じくらいクソだけど。

 

 魂が抜けた上鳴をどかし、ソファに座る。結構体がバキバキなので休みたい。このまま部屋に戻ってもいいが、少し仮免取得の余韻に浸りたいのだ。高得点とれて気分がいいし。八百万には負けるけど。なんだよ94点て賄賂でも渡したのか?絶対渡してないだろうけど。

 

「でも爆豪は久知のおかげで受かったみたいなとこありそ!久知って口は悪いけど爆豪のストッパーみたいな役割だし」

 

「一人でも受かっとったわ!」

 

「デフォでこれだもんねー」

 

「そういやいつもの言葉遣いやめろって言ってたな」

 

「ほらー!」

 

 芦戸と葉隠にいじられ、切島がそれに乗っかり、爆豪がブチギレかけている。目が極限まで吊り上がって奥歯がなくなるんじゃないかというほど歯を食いしばって俺を睨みつけていた。なんで俺?何も言ってないじゃん。

 

 でもまぁ、俺が何も言ってなくても爆豪はわかっていたと思う。多分。爆豪は本当に丸くなったし、緑谷に対する当たりも入学当初と比べてキツくない。あの頃はマジでいじめっ子みたいな感じだったし、誰に対しても感じ悪かった。入学当初の爆豪はこうしてみんなと話すことなんて絶対になかった。成長したなぁこいつ。口悪いけど。

 

「チッ、俺より下の点数取っといてごちゃごちゃうっせぇんだよカスども」

 

「わー!またそんなひどいこと!どうにかして久知!」

 

「なんで爆豪のことは全部俺に投げんの?」

 

「切島くんは人がいいから、本当に止められるのは久知くんかなって」

 

「ンでこいつらが俺の保護者みたいになってんだ!」

 

「おう!俺たちはダチだぜ!な?」

 

「そういうことじゃねンだよクソ髪!」

 

 キレつつも友だちだってことは否定しないのね。いやぁ嬉しいなぁ。俺も友だちいなかったし。中学の頃から何かと悪そうな人と縁があるのは気のせいだと思いたい。俺の性格はクソだが、外面はいいはずだ。もう何人かに俺の性格がクソだって見抜かれてるけど。

 

「オイデク。何笑っとんだテメェ……」

 

「え、あ、別に変な意味はないよ!?」

 

「爆豪。お前がいじられてていい気味だってよ」

 

「久知くん!?」

 

 矛先が緑谷に向いたので援護射撃。今の時間から爆豪と喧嘩するのはものすごくカロリーを使うので、緑谷に任せよう。幼馴染だし軽いものだろう。泣きそうな顔で俺に助けを求めているのは気にしないことにする。

 

「いい身分になったもんだなぁ……アァ?」

 

「み、身分とかじゃなくて!ただ、かっちゃんがこうしてみんなと楽しそうにしてるのが、えーっと、嬉しく、て?」

 

「ぶふっ」

 

 緑谷の保護者みたいな発言に思わず噴き出すと、爆豪がぐりん、とこちらに向いた。怖すぎだろ。

 

「よかったねぇかっちゃん。君のことを想ってくれる人がいて。あとみんなといるのが楽しくて!イーッヒッヒッヒ!」

 

「魔女みてぇな笑い方してんじゃねぇよクソヤニ!ぶっ殺す!」

 

「落ち着けって爆豪!久知も無駄に煽んな!」

 

 爆豪が切島に羽交い絞めにされている隙に、俺は共同スペースを後にした。明日から通常授業なので、喧嘩している暇もないだろう。俺は策士である。でも多分関係なく喧嘩売ってくる。まぁ、爆豪は楽しそうだからいいんじゃないだろうか。俺も楽しいし。


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