俺はずっと好きでいる   作:とりがら016

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二学期開始

 色々濃かった夏休みを終え、始業式。校長のクソ長い話を適当に聞き流し、ぼーっと過ごしているといつの間にか始業式が終わっていた。爆豪に「何の話してたんだ?」と聞くと、「お前退学だってよ」という冗談。笑いながら「冗談だろ?」と聞くとまったく答えが返ってこなかった。え?ほんとに?

 

 退学になるようなことしたかなぁと考えながら教室に戻り、席につく。みんなが俺に何も言ってこないってことは爆豪の冗談なんだろうけど……なんかムカついてきたな。今度アイツの部屋のドアノブにガム貼り付けてやろう。

 

「じゃあまぁ、今日から通常通り授業を続けていく。今日は座学のみだが、後期はうっかり死んじゃうくらいキツイ訓練あるから気を付けて」

 

 生徒を殺してしまう訓練……?ダメだろ雄英。ただでさえ今世間からの評価悪いのに。ここで生徒の中から死人だしたら終わりだぞ。死ぬとしたら多分俺だし。

 

「ごめんなさい、いいかしら先生」

 

 遠くない未来迫ってくるであろう死の恐怖に震えていると、蛙吹が礼儀正しく挙手した。俺なら挙手せずにべらべら喋っちゃうのに、優等生はやはり違う。見とけよ爆豪。あれが優等生ってやつだ。

 

「始業式でお話に出ていたヒーローインターンってどういうものか聞かせてもらえないかしら」

 

「ヒーローインターン?そんなこと言ってたのか」

 

「……」

 

「ひえぇ……」

 

 うっかり口が滑ってしまったのを相澤先生に聞かれ、睨まれてしまう。べ、別にいいじゃん。相澤先生も学生時代は多分聞かなくていい話は先生の話も聞かなさそうだし。俺と同じだ。俺と同じか?ヒーローインターンってめちゃくちゃ重要そうだけど……いや、優等生の蛙吹がインターンの詳細を聞いている以上、詳しい話はしていなかったはず。よって聞かなくてもよかった。俺の勝ちである。

 

「……それについては後日説明する予定だったが、まぁ、今やる方が合理的か。聞いとけよ、久知」

 

「なんで名指しなんですか?」

 

「心当たりがないなら個人的な指導がいるな」

 

「すみませんでした」

 

 相澤先生に個人的指導をやってもらえるのは嬉しいが、同時に苦しい。辛い。林間合宿のときの補習組も死にそうな顔してたし。始業中、授業中の相澤先生の前でふざけるのはやめておこう。

 

「簡単に言えば、以前行った職場体験の本格版。体育祭で得たスカウトをコネクションとして使う、生徒の任意で行う活動だ。元々は各事務所が募集を出す形だったんだが……雄英生徒引き入れのためにいざこざがあってこのような形になったそうだ」

 

 体育祭で得たスカウトをコネクションとして、ということは体育祭でスカウトがなかった人はインターンの参加自体が難しいってことか。……インターンの時期がわからないが、父さんの回復は間に合うのだろうか。

 

「仮免を取得したことでより本格的、長期的に活動へ加担できる。ただ1年での仮免取得は例がない。敵の活性化も相まってお前らの参加は慎重になっているのが現状だ。体験談も含め、後日ちゃんとした説明と今後の方針を示す」

 

 「じゃ、待たせて悪かったな」と相澤先生が教室の入り口に向かって言うと、マイク先生がやかましく騒ぎながら入ってきた。目覚ましにちょうどいいから一限目は毎日マイク先生がいいな。うるさいけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕方。久しぶりの授業が苦痛に感じたが天才である俺はそつなくこなし、予習をしておらず授業で置いていかれた切島たちを優越感に浸って見下ろしつつソファにふんぞり返る。人の上に立っているという感覚は気分がいい。

 

「ウーン、予習をしていないとは雄英生として自覚が足りないんじゃないか?なぁ爆豪」

 

「予習しなくても一回見りゃわかんだから必要ねぇ」

 

「オイ!せっかく俺が珍しくお前と仲良く他を見下してやろうとしたのによ!」

 

「男らしくねぇなぁ」

 

「俺最近、爆豪より久知のがクソなんじゃねぇかって思ってんだ」

 

「は? ……」

 

「返す言葉なくなってるじゃん」

 

「でも爆豪くんと違ってあんまり感じ悪くないよねー!」

 

 仲良くしようとした爆豪に見放され、切島と砂藤に責められ、耳郎が隣に座りながらとどめを刺しに来たところに葉隠のフォロー。いいやつだな葉隠。こういう優しさが必要だと思うんだよ、俺は。例え思ってもいないとしても。聞いてるか。ソファの背もたれに座って俺の頭に手を置いてる爆豪。いつでも爆破できるぞっていう脅しか?

 

「久知はインターンどうすんの?まだ詳しいことわかんないけど」

 

「アー、まぁ、父さんのとこかな」

 

 耳郎が俺的ぐっとくる仕草ベスト5くらいに入る『前のめりになって覗き込みながら聞いてくる』を披露し、それにドキッとしながら冷静を装って返す。俺は被身子が好きだが、別に他の女の子に反応しないというわけではないのだ。恋愛対象ではまったくないけど。ごめんな耳郎。

 

「ノーリミットか!アツいヒーローだよな!男!って感じだぜ!」

 

「ノーリミット!僕も見てたよ!あの人がヒーロービルボードチャートのトップ10に入っていないのがおかしいくらいにすごかった!特にオールマイトを彷彿とさせる単純な強さ、劣勢に立たされながらも民衆に与える安心感。まさにヒーローって感じでめちゃくちゃ感動しちゃったよ。僕としては次のヒーロービルボードチャートでかなり上位にランクインするんじゃないかなって思ってるんだけど、久知くん的にはどう思う?実力的にはかなり上位だけど、事件解決数はどうなのかな。国民支持率はあの一件で結構集めただろうし」

 

「長ェよクソデク!ンな長尺で親父の話されるやつの身にもなれや!」

 

「わ、ごめんかっちゃん!久知くんも!」

 

「あぁいや、いいって。父さんを褒めてもらえんのは素直に嬉しいしな」

 

 ノーリミットの名前が出た途端一瞬で緑谷が現れ、べらべら喋り出したことに驚きつつも、父さんがちゃんと評価されているのが嬉しい。職場体験の時も思ったが、あの人は一つの地域で収まるような人じゃないと思っている。きっと父さんにも理由があって活動範囲を広げていないのだろうが、もう国民は父さんを放っておかないだろう。緑谷の言っているように、ヒーロービルボードチャートのトップ10に名を刻んでもおかしくない。

 

「でもお父さん大丈夫なの?」

 

「普通に喋れるくらいには元気になってるけど、インターンに間に合うかどうかはわかんねぇなぁ」

 

 あの人なら間に合わせそうだけど。ただ、あんなとんでもない戦闘をしたんだから普通なら回復には大分時間がかかる。はず。この前病院に行った時はもうすぐ退院できるって本人が言ってたのは冗談だと思いたい。あんな大怪我を一か月以内で治すってとんでもない化け物だ。……あの歳になって個性と体が成長しているならおかしくもない、のか?『限界突破』ってもしかして治癒能力も限界突破しちゃう感じか?

 

「つってもインターンに行って勉強についていけるかどうかなんだよなぁ」

 

「あー、それね。ウチも不安なんだよね……そもそも行けるかどうかもわかんないけど」

 

「成績上位のやつらに教えてもらえばいいんじゃね。八百万とか飯田とか俺とか緑谷とか轟とか」

 

「オイ……ンで俺を抜いた……?」

 

「教えんの下手くそじゃん。なぁ切島」

 

「お?あ、まぁ……」

 

「言い淀んでんじゃねぇぞ男らしくねぇ!」

 

 だって実際下手だし。切島が「勉強についていけるかどうかわかんねぇから、もし無理だったら爆豪、頼むぜ!」と言わなかったのは爆豪が勉強を教えるのが下手くそだからだ。俺に頼まなかったのはきっとインターンに行くって言ったから気を遣ってくれたんだろう。そうに違いない。

 

「確かに男らしくなかった!ワリィ爆豪!お前下手くそだから、教えてもらうのは久知のがいいわ!」

 

「いい度胸じゃねぇかテメェ!教え方完璧にしたるわ!」

 

「この向上心見習いたいよな」

 

「向上心っていうのかな……」

 

 完璧にする、と言ったからには完璧にするのだろう。爆豪はそういうやつだ。……これ以上完璧になられると困るので、邪魔してやろうと思う。このままでは教え方を極めすぎて将来先生になりかねない。未来の子どもたちのためにも全力で阻止せねば。

 

 未来を守る決意を胸に、俺はその日の晩爆豪の部屋に突撃した。教え方を教えろと言われて嬉しかったので教えてしまった。は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 インターンの説明があってから。クラスの中ではインターンの話で持ち切りだった。どこに行くか、受け入れてくれるか、勉強との両立はできるか。俺は言ってしまえばコネでインターンにいけるのでその悩みはあまり理解できない。コネであろうと個性的に父さんのところが一番いいのは事実だが。

 

「久知!」

 

「夜嵐」

 

 そんなインターンの説明があった翌日。授業を終えて寮に戻り、共同スペースでだらだらしていると夜嵐がやってきた。学校で見かけたらちょくちょく話す中ではあるが、こうして訪ねてくるのは珍しい。

 

「どうした?」

 

「インターンのことっス!できればノーリミットのとこ行きたいからな!」

 

「なるほど」

 

 嬉しいことに、夜嵐も父さんのところに行きたがってくれているらしい。職場体験のコネを使うなら正しい選択だが、夜嵐の個性なら他に相応しいヒーローがいそうなのに父さんを選んでくれるとは。

 

「神野のノーリミット!スゲーカッコよかった!あんなスゲー人にしごいて貰ってたんスね!」

 

「そうだろ。父さんはすごいんだ」

 

「お父さんのことになると久知って可愛くなるよね」

 

「いつもはクソなのにな」

 

「耳郎、可愛くなるってのはやめてくれ。上鳴はあとで前衛的なオブジェにしてやる」

 

「耳郎!助けて!」

 

「ウチも手伝うよ」

 

「味方がいねぇ!」

 

 上鳴はなぜ懲りないのだろうか。爆豪を煽っても暴言が飛んできて、俺を煽っても暴言が飛んでくるのに。構ってもらえるのが嬉しいのだろうか。見た目チャラいし、きっと人と関わるのが好きなのだろう。

 

「それで、ノーリミットの容態はどうっスか!?」

 

「信じられんことに、もうすぐ退院できるらしい。前は発動するだけで一か月は動けなかったって聞いてたんだけどな」

 

「流石ノーリミットっス!」

 

 ついさっきメールで「インターン!!」とだけ送られてきた。恐らくインターンにこい、ということだろう。父さんは大体一行でメールを済ませてしまうが、家族だからこそ察することができる。流石に家族以外にこんなメールしてないよな?

 

「じゃあまた一緒になれそうだな!」

 

「つってもあの食事にトレーニング。それに加えてもっとハードな活動があるんだろ?耐えられっかな俺」

 

「……あの頃より成長してるからヨユーっスよ!多分!」

 

 あのポジティブな夜嵐が一瞬詰まるほどだ。アレは大分キツイ。今でも普通の食事じゃ足りないなと感じてしまう程だ。でも、アレのおかげで体力は大分ついたと思う。アレの前と後じゃ個性の反動が結構違ったし。

 

「父さんには俺から伝えとくわ。インターンの詳細出てねぇからまだ伝えねぇけど」

 

「よろしく!」

 

 言って、夜嵐は嵐のように去っていった。そうか、今思ったがあの飯をまた食わなきゃいけないのか……。

 

「爆豪、父さんのとこくる?」

 

「ア?俺ァ別で行くとこあんだよ」

 

 通りすがりの爆豪を道連れにしようと思ったが、フラれてしまった。一回食いすぎて吐く爆豪を見たかったのに。


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