俺はずっと好きでいる   作:酉柄レイム

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インターン承諾

「まぁこんな感じなんだよね!ちんちん見えないよう努めたけど、ごめんね女性陣!」

 

 男にも謝ってほしいと思ったが、気にしないようにしよう。ちんちんどうこうより全員一気に倒された方が気になるし。

 

「俺の個性強かった?」

 

「俺の個性のがつえぇわ!」

 

「張り合うな張り合うな」

 

 さっき納得したと見せかけてまだ納得していなかったのか、爆破しながら目を吊り上げる爆豪を抑えにかかる。確かに個性で言えば爆豪の方が強いかもしれないが、今はミリオさんの時間だ。変に流れを変えてしまっては申し訳ない。

 

 しかしミリオさんは「そうなんだよね!」と俺たちにぐりん、と顔を向けた。

 

「君たち二人ならもう察してると思うけど、個性が強いんじゃなくて強くしたんだよね!」

 

 察してないけど。攻撃を透かせて一瞬で移動できるなら、それはめちゃくちゃ強い個性だと思うが……強くしたということは何かしらデメリットがあるのだろう。

 

「俺の個性は『透過』!個性を発動するとあらゆるものをすり抜ける!地面もね!地中に落ちたときに個性を解除すると質量のあるものが重なり合うことはできないらしく、弾かれてしまうんだよね!」

 

 それはまぁなんとなく察しはついていた。爆豪もわかっていたことを説明されたからか、つまらなさそうに腕を組んでいる。態度悪いぞお前。態度悪くなかったら爆豪じゃないみたいなとこあるけど。

 

「ただし、発動中は酸素を肺に取り込めないし、目も見えないし耳も聞こえない。全部透過してるからね。だから地中に落ちているときは質量を持ったまま落下の感覚があるということなんだ。そんなんだから壁一つすり抜けるのにもいくつか工程がいるんだよね」

 

 頭が悪かったらすぐにミスりそうだ。個性の解除方法がわからず延々と落下することもあり得る。怖すぎだろ透過。訓練するのも命がけだ。俺も命がけと言えば命がけだが、ベクトルが違う。俺は透過をうまく扱える気がまったくしない。

 

「この個性で上に行くには遅れだけはとっちゃダメだった!何より予測!が必要だった!その予測に必要なのは経験!経験則から予測を立てる!」

 

 緑谷もそういうタイプだ。分析が得意で、誰がどういう攻撃をするのかということが頭に入っていても不思議じゃない。現に、爆豪は緑谷にクセを掴まれている。逆もまた同じだが。俺もどちらかというとそのタイプだろうか。自分じゃわからん。

 

「これが手合わせをした理由!言葉よりも経験で伝えたかった!インターンに行くとお客さんじゃなくて一人のサイドキックとして扱われる!これは恐いよ……何せ人の命を預かるってことだからね。けれど恐い思いも辛い思いもすべて学校じゃ手に入らない経験値!俺はインターンで得た経験値でトップを掴んだ!だから、怖くても行くべきだと思うよ1年生!」

 

 努力でトップを掴んだ……父さんが好きそうな人だ。というよりみんなが好きそうな人だ。最初は疑っていたが、今はトップだと言われても頷ける。話し方もプロっぽいし。めちゃくちゃ笑顔だし。笑顔は本当に見習うべきところだと思う。もう無理かなと思って諦めかけてるところはあるけど。

 

 しかし、お客さんか……職場体験の時はそんな感じじゃなかった気がする。もしかしたらアレは父さんなりのおもてなしなのかもしれない。ヒーローになったらこんなもの優しい方だぞ、みたいな。そんなわけないだろ。

 

 その後、全員でお礼を言って教室に戻った。要するに、上に行こうと思うならインターンに行け、ということだろう。父さんのところに行けば間違いなく強くなれる。多分あの化け物はもうすぐ退院するから、あとは頼むだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな、こんなところにきてもらって」

 

「俺も何の信頼も得ていない奴を本拠地に呼ぶのはごめんだからな。我慢するさ」

 

 目の前にはオーバーホール。簡単に言えば、ヤクザの若頭。そいつがいた。少し前にトゥワイスから「今からいいやつ連れてくぜ!」と連絡があり、場所を指定して待っていたらこれだ。随分大物を連れてきたものである。

 

「誰ですか?弔くん」

 

 俺の隣に立つトガがオーバーホールを見て首を傾げている。本当に想くん以外興味ないんだなこいつは。日陰でこそこそ生きていくなら知っていてもおかしくないだろうに。

 

「ヤクザだ。死穢八斎會の若頭」

 

「私たちと何か違うんですか?」

 

「そうだな……敵予備軍として監視されてる団体ってとこか」

 

 あまり説明してもすぐ忘れるだろうから、適当にすませておく。どうせ聞いちゃったから適当に質問しておけ、っていうノリだろう。いちいち本気で相手していたら疲れるだけだ。

 

「極道!初めて見たわ!危険な香り!」

 

「……」

 

 オーバーホールはテンションが上がっているマグネを見て微妙な表情をしている。悪い。でも受け入れてくれ。別に取って食おうっていう話じゃないんだから。

 

「で、何の用だ」

 

「早い話、俺の傘下に入れってことだ」

 

「断る」

 

 なんだくだらない。なんで俺がお前みたいなヤクザの傘下に?日陰で過ごし過ぎて頭がおかしくなったのか。俺ですらそんなにおかしくなっていないのに。

 

「俺が支配者になる計画の遂行には金がいる。ただ、名もないやつに貸してくれるお人よしはいないんだ。だが、名の売れたお前たちなら別。悪い話じゃないだろう?どうせお前ら、すぐ終わるんだ」

 

「無意味に煽るなァ。別に、傘下になんのが嫌なだけで、手を組みたくないとは言っていない」

 

 あの自分が上だと思い込んでいる言い方、目が大分鬱陶しいが、ここで争ってもなんの意味もない。単身……かはわからないが、見た目単身で俺たちのところにくるほどだ。実力は相当なものなんだろう。連合の誰かが動かないようあらかじめ俺が前に出ておく。

 

「手を組む?」

 

「お前らは敵連合の名前が、俺たちは更に名を売れる。傘下に入る気はない。お互い納得できるところを探していこう」

 

「……思っていたよりも大人なんだな」

 

 思っていたより?俺の何を知っていて思ったよりって言ってるんだコイツ。俺はずっと大人だ。

 

「えー、私やだ。ヤクザ、なりたくないです」

 

「想くんに会える」

 

「なります!」

 

「オーバーホール。まず一人だ」

 

「……想定と違うな。まぁいい。お前らが冷静なやつらなら、もっと落ち着いた場所で話そうか」

 

 オーバーホールは俺たちに背を向けて、「ついてこい」と俺に言った。どうやら本拠地に案内してくれるらしい。わざわざ不利になるようなところに行く必要はないと思うが、あれだけ大口叩くやつなら何かいいものでも持っていそうだ。ノって損はない。

 

 黒霧に連絡を入れてから、オーバーホールの後ろをついていった。ついてこようとしたトガはお留守番。今すぐ行って想くんに会えるわけじゃないから、おとなしく待ってろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれだけ受けたインターンの説明だが、職員会議で多くの「やめとけ」の声が上がったらしい。全寮制になった経緯を考えればそりゃそうだが、あれだけ説明しといてそれはないだろう。ただ、インターン受け入れの実績が多いヒーロー事務所に限り、1年生のインターンを許可する方針らしい。

 

「で、そこんとこ聞きたいんだけど」

 

『あぁ、それなら問題ないだろう。そこそこ実績はあるからな』

 

 父さんのところに行くつもりなのでそれを聞いた放課後、寮に戻ってから電話してみると、どうやらオッケーなようだ。電話の向こうから元気な父さんの声が聞こえてきて、ほっと胸を撫でおろす。これで無理って言われたら俺はどこに行けばいいんだって思っていたから安心した。あとは退院できるかどうかだが……。

 

「父さん。怪我の調子は?」

 

『あぁ、退院した!』

 

「は!?」

 

 いきなり大きな声を出したからか、共同スペースにいるみんなから一気に注目された。なんとなく誇らしくなって手を振り返すと数名は手を振り返してくれたがあとは全員無視。ひどすぎる。

 

「大丈夫なのか?まだ一か月も経ってないだろ」

 

『なんか回復したからな。大丈夫、二、三日は家で休むさ。活動は週末に再開するからその時にきてくれ』

 

「大丈夫なら……あ、あと夜嵐も行きたいって言ってたんだけど」

 

『むしろ連れてこい!』

 

 どうやら既に面倒を見る気だったようだ。これで俺と夜嵐はインターン参加決定である。……またあのご飯食べなきゃいけないのかぁ。あれだけ勘弁してくんねぇかなほんと。訓練は身になるからむしろありがたいけど、あの量のご飯だけはほんとにダメだ。許してほしい。

 

「んじゃ、頼むわ」

 

『おう!任せておけ!』

 

 そんじゃ、と言って電話を切り、ソファに向かう。あそこに座るのがクセになってしまっている。なんかこう、あそこでみんなと喋ってだらだらできる時間がいいんだ。あそこでアロマシガレットを吸えたら最高。

 

「誰に電話してたんだ?」

 

「父さん。インターンについてな」

 

「行動早ぇなぁ。で、どうだって?」

 

「いけるってさ。週末に夜嵐と行ってくるわ」

 

「マジかよ!俺も行きてー!」

 

 ソファに座って上鳴と話す。どうやら上鳴も父さんのところに行きたいらしい。それはよかった。だったら内容を話しておいてやろう。心構えができているといざその時に直面しても衝撃はマシになる。

 

「食事は毎回大量のおかずにどんぶり三杯。んで戦闘訓練毎日。俺はこれを職場体験でやった。恐らくインターンはもっとキツイ。よし、一緒に行くか?」

 

「あ、遠慮します……」

 

 嫌がられてしまった。まぁ嫌だと思うけど。俺だって嫌だし。むしろこようとしたらやめとけって言おうと思っていた。アレ耐えれるの切島か爆豪くらいだろ。多分。

 

「まぁ増強系個性なら体作んのは必須だからな。そうじゃなくてもやって損はない」

 

「でも大量のおかずにどんぶり三杯は無理だぜ?」

 

「俺も無理だと思ってた」

 

 あのいつも笑顔の夜嵐でさえ死にかけてたんだ。アレは相当だぞ。このままいけば父さんのサイドキックになるだろうが、その時には体を作り終えてあの飯は遠慮したい。……いや、食い続けないと維持できないのか?

 

 とりあえず、夜嵐にメールで『インターン、オッケーだって』と送り、ここ数日は食事の量を増やそうと決意した。あの地獄に耐えるために。

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