俺はずっと好きでいる   作:酉柄レイム

55 / 80
戦闘訓練 (3)

 勝負は一瞬だった。俺が飯田の蹴りを防いでワンパンでぶっ飛ばし、その瞬間に爆豪が常闇を爆破で仕留め、峰田が障子に向かって「この二人に勝てると思ってんのか!」と叫び、実際に俺たち二人で障子を倒して終わった。飯田が俺を舐めて正面からきたから勝てたが、もっと警戒してくれていたら違った結果になったかもしれない。

 

「あとはデクのとこと半分野郎のとこだけか」

 

「あこ二つがヤなんだよなぁ。単純に強ェわ」

 

「凍らされたら助けてくれるよな? な?」

 

「助ける暇がねぇから、凍らされんじゃねぇ」

 

 それには俺も同意する。俺と爆豪は氷を砕けるが、峰田にはそれができない。でも、峰田が凍らされると爆豪の目標である3人残って勝利が達成できなくなるため、どうにかして凍らされる前に助けてくれるのだろう。それを峰田にこっそり伝えると、「ウソだ」と真顔で言われてしまった。爆豪どんだけ信用されてねぇんだよ。じゃあ俺が助けると言っても「ウソだ」って言われたし、信用されていないのは俺たち二人らしい。

 

 流石の爆豪も休憩が必要なのか、歩きながら他のチームを探す。位置は前に爆豪、爆豪の左後ろに俺、右後ろに峰田。この位置、爆豪が危なくなったら俺がフォローしなきゃいけないし、峰田が狙われたときも俺がフォローしなきゃいけないから俺への負担がすごい。「テメェならできんだろ」と言われた瞬間に「任せとけ!」って言っちゃったのがマズかった。

 

「デクのことだから、どうせ耳に頼んで俺たちの位置を探ってんだろ」

 

「多分俺たちと轟のチームがやり合わない限り出てこねぇよな」

 

「漁夫の利だ! 漁夫の利!」

 

 緑谷の位置に俺がいたら俺でもそうしたと思うけど。上鳴は長時間の戦闘に向かない。戦い方を工夫すればいけるはずだが、本人はまだ成長途上。戦闘中に上鳴を活かせるほど指揮能力もない。それで耳郎がいるのだから、潜伏して最後に漁夫の利を狙うってのが一番合理的だ。

 

「ただ、轟のチームが今まで戦闘してねぇってのが不思議なんだよな」

 

「怖気づいてんだろ」

 

「轟が……? ないない」

 

 俺もないと思う。恐らく緑谷チームを警戒したんだろう。轟チームは轟が反応できなければ上鳴の放電を防ぐ術がない。戦っている間に放電されたら一気に終わり、みたいなこともありえる。それは俺たちにも言えることだが。

 

「轟からしても耳郎を追うのは無理だ。こっちが見つける前に逃げられちゃ追いつけない。だから多分、俺たちを先に見つけて奇襲するつもりなんじゃねぇの」

 

「だろうな。半分野郎にしろ、しょうゆ顔にしろ、見てから反応できっから問題ねぇが……」

 

「芦戸の酸、それか瀬呂のテープを避けさせて、避けたところに氷結。もしくはその逆か」

 

「それされるとメンドクセェからやられる前にぶっ殺してェが……クソヤニ、音は?」

 

「聞こえねぇ。そもそも近くにいないか、近くにいるけどじっとしてるか、だな」

 

「お前らが冷静に話してると逆にこえぇよ……」

 

 結局俺たちが怖いだけじゃねぇか。

 

 周りを警戒しながら大通りを歩く。警戒する場所は多く、路地裏、ビルの窓、ビルの屋上。聴覚が強化されているため近くで物音がたてばすぐに反応できるが、まったく音がしない。これは、近くにいない……。

 

「爆豪、右!」

 

 爆豪に右からくると伝え、「え?」と呆けている峰田をひっつかみ回避行動に移る。右の方から微かに「いくぞ」と声が聞こえた。アレは瀬呂の声、のはず。右からくるであろうテープを警戒し右から離れながら路地裏、ビルの窓、屋上を見ていると、一足早く回避行動に移っていた爆豪が俺に向かって叫んできた。

 

「半分野郎はテメェが対処しろ! 玉はクソヤニと一緒にいたら邪魔になっから俺とこい! 左!」

 

「左……! なるほど」

 

 左、と聞いて音が聞こえた方とは逆側を見ると、路地裏から炎があふれ出てきていた。それを見た瞬間峰田を爆豪に向けて投げ飛ばし、爆豪がキャッチしたのを確認せず路地裏に向かって『風虎』を放つ。すると、路地裏から弧を描くような氷結が伸び、轟が俺の前に着地した。

 

「失敗か」

 

「爆豪がいなきゃ危なかった……普通、奇襲で炎出してくっかね?」

 

「お前らなら大丈夫かと思ってな。わりぃ」

 

「わりぃじゃねぇっての!」

 

 爆豪なら大丈夫だとは思うが、あいつの相手は拘束力の高い瀬呂と、単純に個性が強い芦戸。どちらも動きがキレており、A組内での実力で言えば上位に食い込むであろう二人だ。無策で奇襲をかけてくるわけがないから、爆豪がしてやられてもおかしくない。

 

 となれば、早めにケリをつけるべきだ。上限解放40なら近接戦闘を主体としているやつでもない限りごり押しで勝ちきれる。注意すべきは氷結だ。至近距離で炎をくらっても無理やり耐えれるが、凍らされたらその時点で終わり。いくら上限解放できるとは言え、意識が薄れてしまえば無理だ。だから、狙うのは左側。

 

「って」

 

 そう考えて轟の左側に移動しようとした時、炎が地を這った。これを跳んで避けると身動きがとれない空中で凍らされて終わる。かといってここで離れたら爆豪を攻撃される。それなら、もう一発!

 

「『風虎』!」

 

 威力を抑えた『風虎』は地を這う炎を吹き飛ばしながら轟を襲う。『風虎』を氷結で防げないことは仮免試験でわかっている。轟はこれを避けるしかなく、避けるとしたら氷結を使うしかない。

 

「ってことはこっち側!」

 

「!」

 

 轟は自身の右側で凍らせ、左側で燃やす。なら、咄嗟に回避するならどうしても左側に回避してしまうはずだ。氷結で自分の体を押し出すようにすればいいだけだから。その予測は当たっており、あらかじめ轟の左側に移動していた俺は、轟の腹を拳で捉えることに成功した。が、

 

「あっっ、づァ!?」

 

 カウンター気味に轟が炎を纏った拳で俺の頬をぶん殴り、なくなるんじゃないかというくらいの熱と痛みが一気に襲ってきた。超反応が過ぎる。爆豪と同じくらいの反応速度だったぞ、今。

 

 殴られた頬を抑えつつ轟が吹っ飛んでいった方を見ると、苦しそうに膝をついているがまだ動けそうではある。上限解放40の攻撃くらってまだ意識があるなら上等だ。流石クラス上位を張るだけはある。

 

「いってぇなオイ! クラスメイトの顔を炎でぶん殴るやつがあっか? アァ!?」

 

「げほっ、それ言うんなら、クラスメイトの腹思いきりぶん殴るやつがいんのか?」

 

「俺ァ手加減したぜ」

 

「奇遇だな、俺もだ」

 

 どうやら俺たちは手加減がへたくそらしい。俺からすればゲロ吐くくらい思いきり殴らなかったことを感謝してほしいくらいだ。やろうと思えば肉抉れるくらいの強さで殴れるんだから。そんなことを言えば、轟も俺を焼死体にできるくらいの火力は出せるのだろうが。

 

 ……さて、ここからどうするか。俺はさっきの一撃で決めるつもりだったが、まだ意識がある。轟は動かなくても個性が使えるからタチが悪い。遠距離では轟に分があると見て間違いないだろう。俺は今の状態ではダメージを負いながらでしか遠距離攻撃ができない。となると、轟が爆豪の邪魔をしないように立ち回って、爆豪があいつらを倒すのを待った方がいいだろう。他力本願に見えるかもしれないが、これはチーム戦だ。頼って悪いことなんて何もない。

 

「っと!」

 

 考えている隙をついて氷結が伸びてきたので、力任せにぶん殴って氷を砕く。もうちょっと考える時間くれてもいいだろうに、そんなに緑谷チームが怖いか?

 

 ……ここで邪魔されたら俺も困るから、できれば俺も早くケリをつけたい。ってなると、もうそろそろ使うしかないだろう。上限解放60。

 

「! 緑谷たちが来てからやると思ってたが……」

 

「俺がそんなにお行儀よく見えたのか?」

 

 見えねぇな、と返されたときには俺はもう轟の隣に立って拳を振り抜いていた。咄嗟に放たれた炎が体を焼くが、『玄岩』で振り払ってから回復を始める。

 

「……お前、ちょくちょく自信なさげにしてるが、普通に強ぇよな」

 

「どうかねぇ。大怪我と仲良しの個性だし、単純に強いとも言えねぇかもな」

 

 『玄岩』でエネルギーを鞭のようにしならせて轟に向かって振るいながら距離を詰める。上限解放60を使った以上速攻で終わらせなければならない。かなり重ね掛けをしてるから、『玄岩』で回復し続けてもどでかい反動がくることは間違いない。つまり、この10分間でこの戦闘訓練自体を終わらせるのがベスト。

 

 轟は『玄岩』の鞭を避け、俺に向かって炎を放つ。段々容赦がなくなってきたことに笑ってしまいつつ、鞭を戻して体を覆うようにエネルギーを固めた。これで体が焼けることはないが、普通に熱は感じるためめちゃくちゃ熱い。このまま燃やされ続けたら普通に負けるので、体を覆っているエネルギーを一瞬爆発させ、炎を吹き飛ばした。

 

「!」

 

 炎を吹き飛ばすと、突如爆風が俺を襲った。確か、『膨冷熱波』だったか。俺が知る限りで轟の最大威力を誇る必殺技。なるほど、俺が『玄岩』を防御に使っていない隙を狙ってきたか。これだから優等生は嫌になる。

 

 俺は吹き飛ばされながらエネルギーで体を覆い、回復に集中した。そして、このままだと追撃を仕掛けられれば無理やり対処するしかないため、爆豪たちの戦闘状況を確認し、助けを求める。どうやらちょうどよかったらしい。

 

「爆豪!」

 

「ハッ、吹っ飛ばされんなよ、ザコ!」

 

 吹き飛ばされながら戦闘状況を確認したとき、爆豪が手榴弾型の籠手についているピンに指をかけているのが見えた。射線上には瀬呂、芦戸、そして轟。瀬呂と芦戸の周りに峰田の玉が設置されており、瀬呂のテープも峰田の玉に固定されていた。オイ、めちゃくちゃやるじゃねぇか峰田。

 

「死なねぇ程度に収めてあっから、安心しろ! んじゃ」

 

 そして爆豪が籠手のピンを抜いた。

 

「死ねェ!!」

 

「死なねぇ程度じゃねぇのか……?」

 

 受け身をとりつつ瀬呂と芦戸を飲み込む暴力を見て冷や汗を浮かべる。アレで抑えめの威力って、くらったらタダじゃ済まなさそうだけど。煙であいつらの姿見えないし。

 

『……瀬呂、芦戸、脱落』

 

「瀬呂と芦戸だけ……?」

 

 距離が離れていたから轟には避けられたのか。それとも、あの爆撃を受けてなお意識を保ったのか。もしそうだとしたら化け物過ぎる。ただ、これで轟を倒せば……。

 

「久知ィ! 後ろだ!」

 

「っ」

 

 爆豪が叫ぶのと同時に後ろを見たその時には、俺たちの立っていた地面が砕けていた。バランスを崩し、慌てて態勢を立て直そうとした時、地面を崩した耳郎の後ろから上鳴が飛び出してきた。

 

「イイトコとっちゃうようでワリィけど、全員まとめて!」

 

「ま、っず!」

 

「俺がいただくぜ!」

 

 放電か。でもそれじゃ耳郎も巻き添え食らうだろと思って耳郎を見ると、緑谷がお姫様抱っこして離脱していた。いーいご身分だなコラ!

 

 一瞬して、上鳴が痛いぐらいに発光した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。