俺はずっと好きでいる   作:とりがら016

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人命救助訓練……?

「今日のヒーロー基礎学は……人命救助(レスキュー)訓練だ」

 

「爆豪できんの?」

 

「俺ぁなんでもできんだよ!」

 

 なんでもは無理でしょ。学級委員になれてないし。

 

 雄英に入ってからヒーロー科というものに少し慣れてきた頃。少し離れた場所にある訓練場に行って人命救助訓練をするといういかにもヒーローな授業。慣れたとは言ってもできるわけじゃないから結構不安ではある。

 

 ただ、この不安も俺の個性は負担と捉え力にすることができるので、何も悪いことではない。臆病でいつづけることが個性をすぐに使うコツでもある。俺にとっては。

 

「お隣失礼」

 

「座んな」

 

 爆豪の言葉を無視して隣に座る。訓練場まではバスでの移動で、まるで遠足のようだ。というか雄英敷地広すぎじゃない?少し離れた場所に訓練場があるって、どれだけお金をつぎ込めばそんなことができるのだろうか。国の借金とか大丈夫?

 

「人命救助なぁ。俺迅速な人命救助に向いてないんだよなぁ」

 

「テメェいっつも遅いな。クソ個性が」

 

「自覚してる。爆豪もどっちかってーとスロースターターなのに最初からやれること多いよな」

 

 同じスロースターターでもその内容は異なる。俺はゼロからのスタートで、爆豪は元から五十くらいあって、そこから徐々に伸ばしていく感じだ。スロースターターと言っても最初から強い。俺は最初は弱い。しかも個性使ったとしてもしばらく経てば反動でダメージを受けるというクソ。なんで雄英にいるんだ俺は?

 

「だから俺基礎トレがめちゃくちゃ重要なのよ。生身でできること増やさねぇと」

 

「テメェを殺すなら一撃必殺でだな」

 

「それはそうだけど、殺さないでくんない?」

 

 爆豪が言うように俺はダメージを与えると個性を使って巻き返してくるため、倒すなら一撃で気絶させるのが一番いい。あとはダメージを与えて俺が個性を使ったら10分間逃げて、またダメージを与えての繰り返し。そうすれば俺はいつか自滅する。ゴミじゃん俺。

 

「つか、久知の個性って結局なんなん?俺放電耐えられたことだけしか知らねぇんだけど」

 

「あぁ、言ってなかったか」

 

 俺たちの会話を聞いていたのか、上鳴が俺の個性について聞いてきたので快く答える。自分の個性話すのって好きなんだよな。なんとなく。

 

「俺の個性は『窮地』。体の負担を力に変えることができるが、制限時間は10分間。インターバルは3分だが、使用中に重ね掛けできる。ただ、それをすると反動がデカいからあまりやりたくない。しかもただでさえ個性を使うと反動があるからな。イメージは体の中で爆発が起きる感じ」

 

「キツっ」

 

 シンプルな言葉ありがとう。そう、きついんだよ。

 

「でも、ヒーローっぽい個性でいいと思うよ。ピンチをチャンスに変えるなんてまさに。個性の特性上何かしら体に負担がないとダメっていうところを自分で理解して生身でできることを増やそうとしてるっていうのも見習わなきゃなって思うし、そうすることで個性を使ったときの強化の幅が増すし、使い方によればどこまでも強くなれる個性なんじゃないかなって」

 

「俺より俺の個性に詳しそうなやつがいる」

 

「あ、ゴメン!」

 

 いやいや、いいよいいよと手をひらひら振っておいた。緑谷は考えるのが大好きなんだろうな。個性教えたの最近なのにそこまで理解できてるなんて、対個性なら緑谷が一番なんじゃないか?今のところ。相手の個性を瞬時に考察するなんてめったにできることじゃないだろ。

 

「ザコがザコを評価してら」

 

「あ?」

 

「もう着くぞ、いい加減にしとけよ」

 

 相澤先生に喧嘩を止められてしまった。いや、止めてくれていいんだけども。ただここでちょっとだけ怪我をしておくと訓練に有利かなと思っただけで。アレだよな、悩みどころなのは鍛えすぎると疲れるまで時間がかかって、上限解放の最大値を上げにくいってやつ。スタミナありすぎるのも考え物だ。

 

 訓練場に到着し、バスを降りる。するとそこには、まるでテーマパークかと思うような光景が広がっていた。燃えていたり、建物が倒壊していたり、本当に学校の一部なのかと疑うほどである。授業にだけ使うってめちゃくちゃもったいなくないか?

 

「皆さんようこそ!嘘の(U)災害や(S)事故ルーム(J)へ!」

 

 俺たちを出迎えてくれたのは災害救助で活躍しているらしいスペースヒーロー13号。宇宙服のようなものを着ていて、見た目が可愛らしい。女性人気を狙ってるのか?

 

「えー、始める前にお小言を一つ、二つ、三つ……」

 

 なんだろう。まさかバスの中で騒ぎ過ぎだとか?

 

「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性はブラックホール。人を簡単に殺せてしまう個性です。みんなの中にもそういう個性を持った人がいるでしょう」

 

 ちら、と爆豪を見ると、既に爆豪は俺に向けて中指を立てていた。人を簡単に殺せてしまう個性を持ってるし、人を簡単に殺しそうなやつである。

 

「超人社会は一見個性を資格制にし厳しい規制の下で成り立っているようには見えますが、一歩間違えれば容易に人を殺せるいきすぎた個性を持っているということを忘れないでください」

 

 個性を日常的に扱うことになるヒーローだから気を付けなければいけないことだ。俺だって強化の仕方を間違えてしまえば一撃でミンチにしかねないし、逆に自分が死にかねないし、何度か死にかけてるし。個性がいかに怖いものかというのは十分理解しているつもりではある。

 

「相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います」

 

 ……何人か躊躇なく人に向けて個性ぶっ放してたけど。いや、俺は調整の仕方知ってたし?

 

「ですが、この授業では心機一転!人命のために個性をどう活用するかを学んでいきましょう!君たちの力は傷つけるためにあるのではなく、助けるためにあるのだと心得て帰ってください」

 

「できた人だ……」

 

「なんでこっち見んだ、コラ」

 

 いや、別に比較してたわけじゃないです。

 

 しかし、人を助けるための個性の活用法か。単純な増強系はその辺り結構難しそうで、瓦礫の撤去とか体を動かすことにしか向いてない気もするけど、もしかしたら他に活用法があるのだろうか。俺は一歩間違えれば救助される側になるから気を付けなければいけない。

 

「よし、そんじゃあまずは……」

 

 13号のスピーチが終わり、早速訓練を開始しようと相澤先生が声をかける。が、途中で止まり、広場の方を見た。つられてそちらを見ても何もない。……いや、何か黒い渦みたいなものが……。

 

「一塊になって動くな!13号、生徒を守れ!」

 

 相澤先生が焦った様子でゴーグルをつける。入試の時みたいにもう始まってるパターンかと思ったがそうでもないらしい。

 

「アレは、敵だ!!」

 

 ……あの先頭にいるやつ、手つけすぎじゃね?最近の敵って手をつけるだけつけりゃいいって思ってんの?

 

「あーあークソオブクソ。雄英に乗り込んでくるとかどんだけ自信家なんだよ。爆豪かっての」

 

「俺ァヒーローだカス!」

 

 わかってるよ、と返しつつ避難を始める。一人で敵のところに向かった相澤先生が心配だが、加勢に行くと足手まといにしかならないと思うのでここは引いておくのが吉。足手まといにならなかったとしてもめちゃくちゃ怒られそうだし。

 

「はじめまして」

 

「!?」

 

 そんな俺たちの前に、黒いモヤが現れた。さっき見た黒い渦を出した張本人だろうか。だとすると、個性はワープ系?すげぇ厄介じゃん。

 

「我々は敵連合。僭越ながらこの度雄英に入らせて頂いたのは、平和の象徴に息絶えて頂きたいと思いまして」

 

「うーん、でも全身モヤだったらおかしな話だし、本体ありそうなもんだけど。どう思う?」

 

「俺が確かめてやらぁ!」

 

「あ」

 

 行っちゃった。目の前の黒いやつの考察を爆豪と一緒にしようと思ったのに、爆破で一気に距離を詰めた。好戦的過ぎるだろ。

 

「危ない危ない……生徒といえど雄英。優秀なことに変わりはない。散らして、嬲り殺すとしましょう」

 

「あぶなっ!」

 

 と言いながら、俺は黒いモヤに飲まれた。大体「あぶなっ」って言っておけば助かる法則を試してみたんだが、ダメだったみたいだ。今度は「びっくりした」を試してみよう。次があればだけど。

 

「「あつっ!」」

 

 黒いモヤが晴れたかと思えば、目の前に広がったのは炎。どうやら火災ゾーン的なところにきてしまったらしい。重なった声に疑問を持って隣を見てみれば、尻尾の生えた空手着の、

 

「尾白?」

 

「久知!」

 

 よかった、一人じゃないのか。一人だったら詰むところだった。

 

「おぉ、きたきた。エモノが二匹」

 

「見るに、熱耐性はないみたいだな」

 

 だって、目の前にめちゃくちゃ敵いるし。いや、袋叩きにしてくれれば一瞬でひっくり返せやしないかな?

 

 まぁ、それは一人だったときの作戦だ。二人いるなら、時間を稼いでもらえればすぐに個性が使えるようになる。こういういるだけで体力を削ってくれるような環境なら。

 

「尾白」

 

「何?」

 

「俺も普通に戦うけど、初めの方そっちの負担デカくなるかも。いい?」

 

「……個性上、仕方ないよな」

 

 物分かりが良くて助かった。俺と尾白は背中を合わせて構え、拳を合わせる。

 

「ま、尾白が危なくなった時は絶対助けるから、あとは頼む」

 

「その後は頼むよ。どれくらい強くなるか知らないけど、頼りにしてるから」

 

 任せてくれ。俺は、こういうフィールドなら滅法強い。


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