そんなこんなで週末は土曜日。
僕はマリアさんを自宅へと招待した。
「二回目のデートで、まさか家に誘われるとはね…」
なんだかマリアさんは苦笑い。
「言っておくけど、不埒なこととか考えてないでしょうね?」
そんな滅相もない! 取りあえず上がって下さいよ。
「では、お邪魔しましょう」
マリアさんは真っ白なブーツを脱いで家に入ってきた。
ハンガーを渡すと、それにコートを脱いで掛けている。
…改めてみると、モデル顔負けの凄いプロポーションだ。
薄手のセーター生地は胸の部分が素晴らしく盛り上がっていて―――僕は慌てて視線を逸らして咳払い。
ご、ごほん。今日は、マリアさんにご馳走しようと思って準備しました。
「あら、そうなの? …ひょっとして、カレーかしら?」
あ、お見通しですか。
「切歌と調が褒めていたわ。その節は、ご馳走さまね」
あの二人、マリアさんと家族だと言っていただけに、色々と情報は共有しているらしい。
そんな氏も素性も違う君たちがどういう経緯で一緒の家族になったの? って尋ねたら、調も切歌も何だか困った顔になって言葉を濁していた。
たぶん国家機密に抵触するんだな。
ピンときた僕は、それ以上追及しなかったけれど。
「それで? どんなカレーをご馳走してくれるつもりなのかしら?」
マリアさんが望むカレーです。
「…わたしの?」
はい。なんでも大丈夫ですよ、多分。
冷蔵庫には考えうる限りの野菜を取りそろえ、肉だって牛、豚、鳥の三種をそれぞれ部位ごと。
各種スパイスよし。ご飯も普通の炊き立てからサフランライスまで揃えている。パンもナンも買ってきていた。
結構細かいところまでオーダーしても大丈夫ですよ。
「とは言っても。わたし、それほどカレーは詳しくないのよね」
だったら、ふわっとした感じでも大丈夫です。こんなの食べたいかなーって感じの。
「そうね…」
人差し指を形の良いアゴに添えて考えることしばし。
「それじゃあビーフカレーをお願いしようかしら。甘めで、うんとコクのあるヤツ」
承りました。
恭しく頷き、僕はさっそく調理を開始。
あ、牛肉は、バラ肉とブロック肉、どちらがお好みで?
「お任せするわ」
なら、半分ずつ入れてみましょうか。
牛肉を室温に戻しつつ、使わない豚肉は冷凍庫にしまっちゃいましょうね。
入れ違いで冷凍庫から取り出したのは玉ねぎ。
既に細かく切ってありますので、マリアさんの前でボロボロ涙を零すという無様な格好を晒さずにすみます。
これを熱したフライパンで、バターで炒めていきましょう。
冷凍したのを使うと、生より凄い湯気が出るけれど、ほっこりと甘い匂いがもう食欲を刺激してきて、正直たまらんです。
「あら、美味しそうな匂いね」
マ、マリアさん? 座って待ってて下さいよ。
「ただ待っているだけじゃ退屈なんだもの。それに、今日はデートってこと忘れてない?」
え?
「わたしに手伝えることはないかしら?」
え、えーと、それじゃあ、まずはエプロンをどうぞ。
予備のエプロンを手渡すと、颯爽と装着するマリアさん。
…なんだろう、素敵なんだけど、似合いすぎてお母さん感が半端ねえ。
じゃ、じゃあ、すみません。マッシュルームの石突きを落として、お好みでニンニクとショウガも切っておいてもらっていいですか?
「OK、分かったわ」
肉叩きで牛肉を伸ばしている僕の横で、マリアさんの包丁を操る手際は素晴らしい。
ますますオカン臭が…いやいや、そういや調が「マリアは大抵のことは出来る」って言ってたっけ。
「これでいいかしら?」
は、はい、大丈夫です!
―――やっぱり、マリアさんと顔を合わせるのは緊張する。
世界一の歌姫。誰もが知っているスーパースター。
そんなテレビの画面越しに拝むしかない人がすぐ傍にいる。
同じ空間の空気を吸える。
僕の声が届き、彼女も僕に向けて言葉を返してくれる。
おまけに一緒に料理を作っているなんて、これはもう奇跡としか言いようがないんじゃないか?
「…ハルト?」
いけない、ぼーっとしてた。
え、えーと、それじゃスパイスを合わせますね。
慌てて言うと、マリアさんは目を丸くした。
「え? 市販のカレー粉とか使うんじゃないの?」
普段はもっぱら市販のルウですよ。それでも十分美味しいですから。けど、今日は特別ってことで。
「…そうなんだ」
マリアさんが軽く俯いている。どうしたんだろう?
気にはなったけど、僕は小箱から取り出したホールスパイスを鍋へと放り込む。
ぶっちゃけ、この時点で、人によっては薬品臭いとか思うかも知れない。
鍋にはひたひたのサラダ油を入れ、熱くなったらマリアさんの切ってくれたマッシュルームとニンニク、ショウガも入れて炒めていく。
今日はカルダモンを少し多めにしてみますね。
「え、ええ…」
マリアさんの了解を得て多めに入れたカルダモンが、太く膨れていく。
すみません、そっちのフライパンの玉ねぎをとってもらえます?
受け取ったフライパンから玉ねぎを投入。
一緒になじませるように炒めると、ホールスパイスの青臭い匂いが消えていく。
よし、そこに百%のトマトジュースをドボドボと。ほんとはトマトピューレがいいんだけどね。
水気がなくなるまでしっかり炒めて弱火に戻し、ここでパウダースパイスの投入です。
ターメリック、ガラムマサラ、クミン、コリアンダー。
これを小匙でだいたいの目分量。ゆっくりと炒めていけば、みなさんお馴染みのカレーの匂いがしてくる。
さらにここで牛肉を投入。
じっくりとスパイスと混ぜ合わせていく。
あとはもう少し色々と入れて煮込んでいけば完成ですかね?
「へえ。意外と簡単なのね」
あ、すみません、マリアさん。冷蔵庫にチキンブイヨンがあるんで出しておいてもらえますか?
「OK」
僕はリビングのサイドボードを漁る。あったあった、赤ワインがあった。
コルク抜きで栓を抜き、鍋へ中身を心持ちどぼどぼっと。
今日はコクのあるカレーってことでしたからね。
「ハルト、それ、ラ・キュベ・ミティークじゃないの?」
へ? 有名な銘柄なんですか? お袋が結構飲まないで溜めこんでいるから、時々勝手に使っているんですけど。
「これ自体は結構出回ってて、そこそこの値段で美味しい銘柄よ」
へえ…。
「でも、これはその銘柄のスペシャル・エディションね。4000円くらいはするんじゃない?」
げ。
お袋ったら、適当に瓶を積んで埃かぶせてるんだもん。僕は悪くねえ!
まあ、開けちゃったものは仕方ないよなー。
「ところで、この瓶に残ったぶんはどうするつもり?」
そうですねー、明日以降のカレー作りで使いましょうかね。
「もしよければ、わたしが頂いていいかしら?」
それは構わないですけど…。マリアさんはここまで車で来たんじゃ?
「電車を使って、最寄駅から歩いてきたわよ」
マジっすか? それって周囲にバレて騒がれたりしませんでしか?
「気配を殺して小さくなってれば、意外と人目にはつかないものよ?」
そういうもんですか。
そういえば、駅ビル前の待ち合わせで目の前を通られても、僕は一目でマリアさんで気づかなかったなあ。
そんなことを考えていると、マリアさんの視線が食器棚あたりを彷徨っているのに気づく。
あ、はいはい、ワイングラスはこっちです。
硝子棚ではなく、引出しに仕舞ってあったワイングラスを渡す。
それじゃ、あとは僕が煮込んでいるんで、そちらでワインを飲んでいてください。
「うふ、ありがと」
灰汁を取りながら鍋を煮る。赤ワインのアルコール臭が消えたところでチキンブイヨンを投入。
あとは更に灰汁を取りながら煮込んでいけば、ほぼほぼ完成だ。
そうだ、チキンと言えば。
マリアさん、ちょっと待っていて下さいね。
さっそくワインを口に運ぼうとしていたマリアさんにそう告げて、僕は急いで冷蔵庫からタッパーを取りだす。
中身はリクエストがチキンカレーって時に使おうと思っていた鳥もも肉。軽くスパイスも混ぜたヨーグルトに馴染ませておいた。
いま、おつまみを作りますから。
表面のヨーグルトを拭って、塩コショウと残っていたパウダースパイスを擦り込む。
それからブツ切りにして、オリーブオイルを引いたフライパンで焦げ目がつくまで一気に焼き上げた。
火を止めて、あとは5分くらい余熱で蒸し焼き。
その間に、カレーばかりだとバランスが悪いので、レタスをむしり、トマトをサイコロに切ってサラダも作る。
はい、マリアさん。なんちゃってタンドリーチキンとサラダです。ドレッシングはお好みで。
ひゅー♪ っとマリアさんは口笛を吹いてくれた。
「悪いわね。わたしばかり飲んじゃって」
どうせ僕は飲めませんから、ごゆっくり。
笑って僕はレンジの前に戻る。
鍋の按配を見ながら、マリアさんの様子も伺う。
チキンを上品そうに齧り、ゆっくりとワイングラスを傾けている。
嬉しそうな表情を浮かべているのにホッとして、同時に、何をしても絵になる人だなと思う。
本当に、綺麗だ。本当に…。
って、やばいやばい、鍋が煮詰まるところだったぜ。
慌ててガス台からおろし、仕上げにバターを入れて混ぜ溶かす。
よし、出来ましたよ、マリアさんッ!
スプーンと皿を取りだしながら尋ねた。
マリアさんは普通のご飯にします? それともサフランライスで?
「まずは普通のでお願いするわ」
お、お代わりする気満々ですね。
たくさん食べてもらえれば僕も嬉しいです。
大皿二つにそれぞれの分をたっぷりよそい、お盆に乗せてリビングのテーブルまで運ぶ。
僕の分のサラダ、それと二つのコップ。冷蔵庫から水の入ったペットボトルを持ってくる。
おっと、追いがけの調味料も準備して、これで夕食は完成だ。
「うわあ、美味しそうね」
感嘆の声を上げてくれるマリアさん。
ご期待に添えるといいんですけど…。
一応謙遜して見せたけど、僕的には会心の出来だった。匂いだけで分かる。
「それじゃあ、頂きます」
頂きます。
二人して両手を合わせスプーンで頬張る。
熱く、甘い風味が口の中いっぱいに広がる。噛めばそこに牛肉の肉汁と、ご飯のまろやかな甘さまで加わり、陶然となってしまう。様々なスパイスが織りなす後を引く辛さも、これぞカレーって感じで最高だ。
うわあ、口の中が桃源郷や~。
「本当、美味しいわ。今まで食べたことがないくらい…」
しみじみとマリアさんが言う。今まで食べたことがないってのは大袈裟だろうけど、笑顔なのが嬉しい。
「ワインにも合うわね」とたちまち平らげてくれたマリアさんに、僕も同じタイミングでお代わりだ。
二杯目はサフランライスで、気持ち小盛りにして。
「サフランライスと組みあわせると、また食べ味が違うのね」
よければ、追いがけで味の調整もどうぞ。
僕はテーブルの上を指し示す。
ソースに醤油、ケチャップ、マヨネーズも準備している。
物足りないと思ったとき、それらを少しずつ混ぜて楽しむのが僕のジャスティスだ。
「ふーん…。ハルトのおススメはどれ?」
僕のおススメは、これです。
それを指さすと、マリアさんは驚きの声を上げる。
「なぜここに、胃薬ッ!?」
え? 知らないんですか? 胃薬の生薬って、カレーのパウダーと大分かぶっているんですよ?
「そ、そうなの? でも、だからって、まさかかけて食べるわけじゃないわよね?」
普通にかけて食べますよ、もちろん。
「…………」
まあ、騙されたと思ってかけてみてください。さすがにかけてルウと少し混ぜないとメンソール臭いから注意です。
「…………」
…無理しなくてもいいですよ?
「ま、招かれた以上、ホストに奨められて断るのはマナー違反よねッ」
そういって、胃薬の封を切るマリアさん。
ざざざーっと皿の縁へ顆粒を積み上げ、ぐるぐるとスプーンでルウと一緒にじっくりとかき回している。
それから、意を決したようにスプーンを頬張ると、
「……バカなッ!? 確かに味に深みが増しているッ!?」
叫ぶような声を出すマリアさん。
「しかも美味しいッ!?」
はい、名言頂きましたー。
…いや、何が名言なのか僕もよくわかんないけどさ。
「すっかりご馳走になっちゃたわね…」
カレーを平らげ、食器は流しへ運び、食後のコーヒーでブレイクタイム。
あ、そういえば、カレーにコーヒーを入れてもコクが増して美味しいんですよ。
「本当にハルトはカレーが好きなのね」
ええ。自分でも信じられないくらい。
「どうしてそんなに好きなの?」
問われて考え込む。
好きなものは好きじゃあ、駄目なのかな?
常々そう思っている僕だけど、ソファーに座り、コーヒーカップに両手を添えてこちらを見てくるマリアさんに、そんなありきたりな答えを口にしたくなかった。
彼女が失望するようなことは言いたくない。
ようはカッコつけたいんだよな、僕。
だからといって何か気の利いたことなんて…。
与えられた短い時間で散々悩んでこねくり返して。
僕はゆっくりと答える。
カレーを好きな人に悪い人はいない、なんてことは言えません。
「うん」
でも、カレーは、どんな悪い人でも笑顔にすることが出来ると思うんですよ。
「…ぷっ」
ぷ?
「ふ、ふふふふっ、うふふっ、ごめんなさい」
マリアさんは笑っていた。
…そんなおかしなこといったのかな、僕?
少し憮然としていると、笑いを治めたらしいマリアさんの優しい声。
「いいえ、ハルト、あなたの言ったことは真理よ。確かにあなたのカレーには、悪人だって笑顔にしてしまう素敵な力があるわ」
…そうでしょうか?
「本当よ。現に、わたしだって笑ってるじゃない」
え? で、でも、マリアさんは悪人ってわけじゃあ…。
「あら、もう9時近いわね。そろそろお暇させてもらうわ」
スクッと立ったマリアさんは掛けてあったコートを掴んでいる。
あ、なら僕、駅まで送りますよ。
慌てて僕も立ち上がっている。
「大丈夫よ。そんな気を使わなくても」
いえ、僕もバイトがあるんで。
「今から?」
ええ、交通整理のですけどね。
目を丸くするマリアさんを横目に、僕も自室からジャケットを持ってくる。
だから気にしないで、一緒に駅まで行きましょうよ。
肩を並べてマンションを出る。
夜なので人通りも少なく、気を使う必要もない。
こうやって一緒に歩けるだけで、僕は天にも昇る夢心地だった。
なのに、隣を歩くマリアさんはなぜか神妙な表情。
…ひょっとして、今日のデートが上手くいってなかったらバイトを口実に逃げちゃおうなんて思っていたのを見透かされたのかな…?
そんな風に僕がドギマギしていると、出し抜けにマリアさんは言った。
「…もしかして、今日は余計なお金を使わせちゃったのかしら?」
え? どういう意味です。
「さっき、冷蔵庫の中をみたら、色々な食材が準備してあったじゃない? あれって、今日のわたしのリクエストに応えるために用意したんでしょう?」
ええ、その通りですけど。…ああ、残ったのもいずれカレーにして食べちゃうんでご心配なく。
「そうじゃないわ。今日のバイトは、わたしのためにお金を使っちゃったから…」
そこでようやく僕はマリアさんの言わんとしていることに気づく。
あ、今から行くバイトは、別にお金が足りないから行くわけじゃないですよ?
「…え?」
少し混乱気味のマリアさんに、僕はゆっくりと語りかける。
去年の年末の、世界中にでっかい塔みたいなのが生えた事件。
生えてきたときの衝撃は地震並みで、家や道路は倒壊するわ、ほぼ東京都全域に避難命令が出るわで散々だった。
気がついたらあの塔は全部綺麗さっぱり無くなっていたけど、もちろんそれでめでたしめでたしじゃあない。
インフラはほぼ壊滅状態で、僕たちは避難所でかなり不自由な生活を強いられた。
段階的に復旧がなされ、避難所の待遇も改善されては行ったけど、家に戻っていいという許可が出るまでは長い時間が必要だった。
そんな避難所暮らしも、ただ食って寝ているだけじゃない。
怪我をしていない男性、特に若者は、復旧作業に駆りだされていた。
僕と同年代の連中は、大抵が不平不満を鳴らすだけだったけれど、僕はその作業自体は嫌いじゃなかった。
ゴミを集め、瓦礫を取り除き、少しずつ復旧していく街を眺めるのが好きだった。
鉄とコンクリートの塊が取り除かれ、人の手によって街が生き返っていく過程は、雄々しく、そして誇らしく僕の目には映る。
やがて電気が通り、水が流れるようになったけれど、その影には不眠不休で作業をした人たちがいるはず。
そんな人たちを少しでも助けたいと思った。
誰もが前の暮らしに戻れるための手助けがしたいと思った。
だから、僕は。
一応、首都機能は回復したことになってますけど、一歩裏路地へ入れば、いまだに手付かずの場所があるんですよ。
「………」
だから僕は、少しでもそういう復興の手助けをしたいんです。まあ、学校も始まっちゃったから週末限定ですけど。でも、お金も貰えるから一石二鳥かなー、なんて…。
突然マリアさんが足を止めて、僕にむかって手を伸ばしてきた。
驚いて固まっていると、頬をそっと撫でられる。
「…あなたは、本当に」
…あの? マリアさん?
「ううん、なんでもないわ。なんでもない」
頬に柔らかい感触が残っている。
ぼーっとしている僕に、マリアさんが言う。
「少し冷えるわ。ハルト、コーヒーを一本奢ってくれない?」
は、はい!
もう駅前に来ていたので、自販機を探し回る必要はない。
適当に目についた自販機で、ホットコーヒーを一本買ってマリアさんに届ける。
お待たせしました。
「ありがとう」
ぷしっと蓋を開けて、マリアさんはコーヒーを一口。
それから僕を見て笑った。
「今日はとっても楽しかったわ。次のデートはわたしから連絡するわね?」
は、はいッ!
直立不動で返事をしてしまう僕に、マリアさんはコーヒーを手渡してくれた。
「それじゃあ、バイト頑張って」
いい置いて、キビキビとした足取りで行ってしまう。
その後ろ姿は、たちまち駅の中へと見えなくなった。
…次のデートの約束か。
つまりは今日のデートは合格点ってことだよね?
嬉しすぎて、心臓がタップダンスを踊っている。
テンションが上がりすぎて、その場で踊りだしたい気分だ。
いやあ、もう、今日のバイトも頑張るぞー!
結果として、僕は無意識で手にもったコーヒーを口に運んでいたらしい。
仄かなカレーの味に、熱い液体が喉を流れて行く。
しみじみとコーヒーのラベルを眺めながら、ようやく気付いた。
…これって間接キスじゃん!