流刑鎮守府異常なし   作:あとん

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前回の続きです


渚の女王様

 太陽も空の天辺に昇る時間になっていた。

 海で溺れてしまった俺は、ビーチパラソルの下で大人しく休んでいた。

 その横では暁が砂遊びに興じている。

 

「見ていて司令官! 司令官が退屈しないように暁が大っきなお城を作ってあげる!」

 

「おう楽しみにしてるぞ」

 

 俺がそう言うと暁は嬉しそうに築城を続けていく。

 さっきまでは五月雨もいたのだが、昼ご飯の準備をするからと長月と共に行ってしまった。

 バーベキューをするらしいから楽しみだ。

 

「お前達も海で遊んできていいぞ。ここじゃ退屈だろう」

 

 俺は近くで腰を降ろしていた皐月と谷風に言った。

 

「だって・・・・・・司令官いないとつまんないし」

 

「それに提督が足をつったのは谷風さんたちのせいだしねぇ」

 

「別に気を使わなくていいって」

 

 ちなみに不知火はバーベキューに使うお魚を釣りにいきました。

 

「そうだ! ボク達も砂遊びしようよ!」

 

 皐月が急に立ち上がってそう言った。

 

「え、皐月も一緒にお城作る?」

 

 暁が顔を上げて言った。

 

「ううん、もっと面白いものだよ。ねえ司令官」

 

「な、なんだ?」

 

「すっかく砂浜にいるんだし。『アレ』、やってみたくない?」

 

「アレ?」

 

「ほら、よくあるじゃん。砂に身体を埋めて、顔だけ出すやつ」

 

「ああ・・・・・・確かに漫画とかでよく見るな」

 

「それをやってみようってことだよ」

 

「確かに面白そうだな・・・・・・で、誰が埋まるんだ?」

 

 無言で皐月は俺を指差した。

 まあ、そうなるか。

 でも動かなくていいから楽かもしれないな。

 そんな風にぼんやり考えていると、皐月と谷風が穴を掘り出した。

 暫くして人一人が埋まるくらいの深さの穴が出来上がる。

 

「ささ、ここに入って! 司令官!」

 

「特等席だぜぃ」

 

 二人のニヤニヤした顔が不安ではあるが、折角掘ってくれたんだし入ってみるか。

 穴に横になり、頭だけ出したような格好になった。

 そこに皐月と谷風が砂をかけていく。ひんやりしていて結構気持ちいい。

 やがてこんもりと俺の身体に土が盛られ、よくある砂盛が完成した。

 

「完成ーっ! どう、司令官?」

 

「おおう、本当に重いなコレ。動けん・・・・・・」

 

「九州の砂風呂みたいだねえ」

 

「司令官の上にもお城建てちゃうのもアリね!」

 

 暁もこちらに寄ってきた。

 

「いや出るときに崩すからやめておきなさい」

 

「そうそう! それよりも暁、もっと面白い遊びがあるのだよ」

 

「面白い遊び?」

 

 首を傾げる暁に皐月は意味深な笑みを浮かべると、そのまま俺が埋まった土の側面に腰を降ろした。

 

「な、何をする気だ?」

 

 何だか不穏な空気を感じた俺は皐月にそう尋ねた。

 だが彼女はニタニタ笑うだけで俺の問いに答えようとしない。

 これはもしかして不味い。

 そう感じた瞬間だった。

 皐月は砂の山の中に腕をズブリと差し込んだ。

 

「な、何してんだお前・・・・・・ひっ!?」

 

 突然、腹部に妙な刺激が走った。

 

「さあ? 一体何をしてるんだろうね? こちょこちょ」

 

 すっとぼけたように皐月は言うと、指を俺の腹に這わせていく。

 

「お、お前・・・・・・ひうっ!!」

 

「提督~油断は禁物だぜぇ」

 

 反対側から谷風が同じように腕を突っ込んで、くすぐってきた。

 抵抗しようにも体が土に埋まって動けないため、抵抗すら出来ない。

 

「司令官、お腹に贅肉がついてるぞ。痩せないと駄目だよ?」

 

「円を描くようにして・・・・・・うりうり」

 

「ぐうううううっ・・・・・・おまえらぁ・・・・・・」

 

 二人にくすぐられるも全く抵抗が出来ない。

 せめて笑わないように我慢するだけだ。

 その時であった。

 

「ぐふっ!」

 

 新たな刺激が下腹部に加わったのだ。

 見れば顔を赤くした暁が、皐月たちと同じように俺のお腹をくすぐっていた。

 

「あ、暁・・・・・・」

 

 俺の呼びかけに暁はこちらに視線を向けたが、すぐに逸らしてくすぐりを続行する。

 

「そ、そんな暁・・・・・・お前までも・・・・・・」

 

 暁は視線を決して合わせずに真っ赤な顔で俺の腹をつんつんしてきた。

 

「ほーら司令官。気持ちいい~?」

 

「ぐ・・・・・・くく・・・・・・」

 

「思いっきり笑っても構わないよっ! それが粋ってもんさ!」

 

「だ。だれが・・・・・・」

 

「しれいかんのおなか・・・・・・えへへ」

 

 三人に体を好き勝手弄ばれるという屈辱。体が埋められている分、黙って耐えるしかないのがより辛い。

 

「くそ・・・・・・覚えていろよお前達・・・・・・」

 

「そんな状態で凄まれても怖くないねぇ」

 

「しれいかんのふっきん・・・・・・ふっきん・・・・・・」

 

「ほれほれ、ここか? ここがええのんか?」

 

 駄目だ・・・・・・もう限界だ・・・・・・そんな時だった。

 

「・・・・・・随分と楽しそうですね」

 

 不知火の冷たい声が聞こえたのは。

 俺を責めていた三人の動きが完全に止まる。

 見ると釣り竿片手の不知火が、絶対零度の眼光で俺たちを見下ろしていた。

 小さいクーラーボックスの中にはさっき釣ったのであろう魚が入っている。

 

「し、不知火・・・・・・」

 

 正直、目がめっちゃ怖いけど俺にとっては救いの女神だ。

 

「コレはどういうことですか、皐月」

 

「え、えーとね・・・・・・コレは」

 

「動けない司令官に無礼を働いているようにしか見えないのですが・・・・・・説明して下さい、谷風」

 

「ちょ・・・・・・ちょっと・・・・・・」

 

 不知火は普段、俺には敬語だが仲間内では結構砕けた言葉使いである事が多い。

 それなのに今は丁寧語。

 背中がぞくりとする怖さを醸し出している。

 

「暁・・・・・・教えてくれないかしら?」

 

「ひっ・・・・・・」

 

 さっきまで赤かった暁の顔が真っ青になった瞬間だった。

 

「にげろっ!」

 

「退散!」

 

 皐月と谷風が一目散に駆け出した。

 だが不知火も瞬時に荷物を砂浜において、後を追っていく。

 そのあまりのスピードに三人の姿は遠くへ消えてしまった。

 

「・・・・・・暁」

 

「ふえっ!? な、何、司令官・・・・・・」

 

「出してくれたら・・・・・・俺は何も言わないよ」

 

 暁は無言で土を掘り起こして、俺を外に出してくれた。

 遠くから皐月と谷風の断末魔が聞こえてきた気がするが、俺は無視した。

 すると今度は五月雨が水着にエプロンという姿でこちらにやって来た。

 

「提督ー、ご飯の準備が出来ましたよー・・・・・・ってあれ? 皐月ちゃんと谷風ちゃんは?」

 

「二人はな、海に・・・・・・そう、母なる海へと帰っていったんだよ」

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

 熱々の鉄板には刻んだ野菜やお肉、不知火が釣ってきた魚が並んでいた。

 じゅううじゅうとそれらが焼ける音と香ばしい臭いが鼻孔をつき、食欲が刺激されていく。

 

「不知火ちゃんが採ってきた魚美味しいです!」

 

 五月雨が塩焼きを頬張って言った。

 

「長月が焼いたお肉も美味ね」

 

 当の不知火は肉を美味しそうに咀嚼していた。

 

「いやー外で食うバーベキューとビールは最高だな!」

 

「司令官、あまり昼から飲み過ぎるなよ」

 

 長月が苦笑しながら言った。

 

「分かってる分かってる。ほら、五月雨食え食え」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

 俺が五月雨の皿に焼けた肉やら野菜やらを入れていく。

 いっぱい食べて欲しいしな。

 

「たまにはこういうのもいいな」

 

 ポソリとそんな言葉が漏れた。

 今までは海なんてほとんど来たことは無かったが、こんなに楽しいモノとは思わなかった。

 まあ鎮守府のメンバーと来ているのか一番の理由だと思うけど。

 

「また皆で来るか」

 

 心から俺はそう思い、ビールを流し込むのであった。

 

 ちなみに皐月と谷風は海に立てられた丸太に括り付けられている所を、夕方になって保護された。

 

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

  • 改二になったほうがいい
  • このままでいい
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