流刑鎮守府異常なし   作:あとん

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流刑地メモリアル

 のどかな午後だった。

 現在、俺は執務室でソファーにどっかり腰を降ろし、長月の煎れた珈琲を楽しんでいる。

 清霜が入ってから艦娘が七人になって、任務の効率も変わったのだ。

 演習も遠征も六人いればいいので、一人残る艦娘が出てくる。そこで五月雨に秘書艦任務をずっとやって貰うことにしたのだ。今までは五月雨が秘書艦の合間をぬって演習や演習を行っていたが、それが無くなって秘書業務に専念できるのだ。

 おかげで仕事が早く終わった。後は特にやることもないので、俺は可愛い艦娘達とまったり珈琲タイムを堪能しているのだ。

 

「長月ちゃんのコーヒー、美味しいね」

 

「ああ、豆を挽いて作っているからな。時間もあるから色んな豆を試している」

 

 俺の隣には長月、向かいには五月雨が座っている。

 今日の任務も終わったため、長月も肩の力を抜いてゆっくりしている。

 本当にのどかな午後だ。

 俺も今日は気を休めて、羽を伸ばそう・・・・・・

 

「てえへんだ、てえてんだ! 清霜が! 清霜が!」

 

 そんな俺の平穏は焦ってやってきた谷風に壊された。

 

「ど、どうした谷風!?」

 

「き、清霜が・・・・・・と、とりあえず工廠へ来てくれい!」

 

 取り乱している谷風に危機感を覚えつつ、俺たちは立ち上がった。

 彼女の後を追い、外にある工廠まで走って行く。後ろには長月と五月雨も付いてきている。

 外に出て現場に向かうと、そこには信じがたい光景が広がっていた。

 

「な、なんだこりゃ・・・・・・」

 

 我が鎮守府の工廠は裏庭にあるのだが、そこにでっかい三連装砲が鎮座していた。

 それを頑張って持ち上げようとしている艦娘が二人いた。暁と皐月である。

 

「清霜ー! 死ぬなー!」

 

「頑張って清霜ー!」

 

 二人はそう叫びながら、三連装砲を掴んで踏ん張っている。

 

「い、一体何がどうなってるんだ?」

 

 さすがの長月も状況が読めないようだ。

 

「清霜が『大和お姉様の三連装砲を建造するっ』って言い出してな」

 

「私達駆逐艦には無理だろう・・・・・・」

 

「それが何故か出来ちまったんだよ・・・・・・」

 

 げっそりした声で谷風が言った。

 まぁ誕生経緯が特殊だった清霜だから、普通は出来ない建造も出来たのかもしれない。

 

「で、それを装備するってき言い出して・・・・・・自分はいずれ戦艦になるんだから大丈夫って・・・・・・」

 

「まさか・・・・・・清霜はこの下か!」

 

「や、ヤバい! 俺たちもやるぞ、五月雨!」

 

「は、はい!」

 

「承知しました」

 

 すぐに俺たちも三連装砲へ駆け寄った。

 いつの間にか不知火も加わり、皆で巨大な三連装砲を必死で持ち上げる。

 流刑鎮守府の皆が集まって、ようやくこの鉄塊は動いた。

 

「清霜、大丈夫!?」

 

 素早く暁が下に潜り込み、清霜を回収する。

 

「うーん・・・・・・あかつきおねえしゃま・・・・・・きよしもせんかんになったよ・・・・・・」

 

 ぐったりしているが清霜は大丈夫そうだ。さすが艦娘である。

 俺たちは安堵すると、持っていた三連装砲を降ろした。

 

「しかし・・・・・・この三連装砲、大きさが中途半端だな」

 

 本物の戦艦大和がの物よりは遙かに小さいが、艦娘が装備できるような大きさでもない。

 

「ある意味、これも失敗品なのかもな」

 

 長月が苦笑した。

 

「でもコレどうしよう。ハッキリ言って邪魔だし」

 

「うーん。鎮守府防衛用の砲台にでもしようか?」

 

「こんな辺鄙な鎮守府に敵さんがくるかねい」

 

 皆も清霜が無事で一先ず安心したのか、皆も談笑を始めていた。

 

「司令はどうお思いですか?」

 

 不知火が尋ねてきた。

 

「うーん。見た目はいいから飾っておきたい気持ちもあるが・・・・・・こんなの本部のお偉いさんに見られたら事だしなぁ」

 

 以前、別の鎮守府がブラック鎮守府と化して摘発されるという事件があった。それ以降、軍のお偉いさんが抜き打ちで各鎮守府をチェックして回っているらしいのだ。

 

「・・・・・・とりあえず、倉庫にしまっておくか」

 

 長月がそう言って庭の端にある倉庫の方へ目を向けた。

 

「そういえば倉庫なんてあったな。俺は開けたことないけど」

 

 ここに来てから結構経つが、そんなに物も無いため倉庫を使うことはなかった。

 

「そういえばボク達も基本、ここに入ることないしなぁ」

 

「最後に開けたのはいつだっけ?」

 

 皐月と五月雨がそんな事を言いながら、倉庫へと近づいていく。

 

「もしかしたら結構なお宝が出てきたりするかもしんねえな!」

 

 谷風が二人よりも先に進んで、倉庫の扉を開いた。

 

「うお・・・・・・」

 

 そして絶句した。

 

「何だよ谷風。何があったの・・・・・・て、うわ」

 

「わ、埃まみれ・・・・・・」

 

 谷風の後ろから中を覗き見た二人も同じような反応だった。

 

「・・・・・・長月。あの倉庫って掃除したことあるか?」

 

「よく考えると一年くらい前から入っていないな」

 

「そりゃ汚いわな」

 

 覚悟を決めて俺も中を見に行った。

 小っこい駆逐達の上からひょいっと中を覗くと、中には真っ白の埃を被った資料や艤装のパーツが山積みになっていた。

 

「うーむ。田舎のおばあちゃんの土蔵を思い出すぜ」

 

「折角ですから、一度軽く掃除しましょうか」

 

 苦笑しながら五月雨が言った。

 

「あ、ボクちょっと演習が!」

 

「谷風さんは遠征の時間だね!」

 

「逃がしませんよ、二人とも」

 

 咄嗟に逃走しようとした二人の襟首を不知火が捕まえた。

 

「さっさと皆でやるぞ」

 

 俺は上着を脱いで皆と一緒に倉庫の中へ入っていくのだった。

 中は薄暗く、心なしかジメジメして居心地が悪い。

 俺と皐月・谷風が一旦、持てる物は外に出し、中は長月・不知火・五月雨が掃除をする。

 中組が壁の埃を落として濡れた雑巾で軽く拭いていく。その間に外組が持ち出した物の埃をはらって、いる物かいらない物かを判別していくのだが・・・・・・

 

「一応、ここでの決戦も考えているんだな・・・・・・ちゃんと内地用の装備がある」

 

「できればボク達もそんなもの使いたくないけどね」

 

「使うわけあるめぇ。深海棲艦なんてもう何ヶ月も見てねえからねぇ」

 

「悲しいこと言うなよお前達」

 

 そんな僻地を守っている俺たちの存在意義とは一体何なんだろう。

 雑談しながら仕分けをしていた時であった。

 

「ん・・・・・・なんだコレ、アルバムか?」

 

 一冊の古そうなアルバムが見つかった。

 

「ああ、それはボク達のだよ」

 

「懐かしいねえ」

 

 二人が俺を方を覗き込んでくる。俺は表紙の埃を払い落とした。よく見ると日付が書いてある。二年前か・・・・・・

 

「おいお前達、何サボってるんだ」

 

 中から長月がひょこっと顔を出して言った。

 長い髪を後ろで纏め頭には何時の間かバンダナを巻いている。エプロンに箒を持って立つ姿が妙に様になっていた。

 

「すまんすまん。すぐに戻る」

 

 俺たちはアルバムを一旦、横に置いてから作業に戻った。

 それから30分ほど皆で掃除して、倉庫を整理して綺麗にした後、出した物と三連装砲を入れて鍵を閉める。

 服が汚れてしまったので一旦、皆で着替えてから食堂に集まった。目的は勿論、さっきのアルバムを見るためだ。復活した清霜も加わり、流刑鎮守府全員が集結した。気を効かせて長月と五月雨がコーヒーとお茶菓子を人数分、持ってきてくれる。

 

「清霜が来る前の鎮守府がこれに載ってるんだよね?」

 

 俺の横に腰を降ろした清霜が聞いてきた。

 

「ああ。というか俺が来る前の写真もあるだろうな」

 

 そんなことを言いながら俺はページを開いた。そして一枚目の写真を見た俺は思わず目を見開いた。

 

「い、五十鈴! 五十鈴じゃないか!」

 

 写真の場所はおそらくどこかの港だろう。

 そこには五月雨たち流刑鎮守府初期メンバーに囲まれて笑顔を浮かべる五十鈴の姿があった。

 

「五十鈴教官!」

 

「懐かしいー!」

 

 五月雨達が歓声をあげた。

 

「い、五十鈴教官? どういうことだ!? 説明しろ!」

 

「えっと、私達は皆、艦娘養成所の同期なんですけどそこでの教官が五十鈴さんだったんです」

 

「マジか・・・・・・」

 

 五十鈴はかつて俺の嫁艦の一人だった。可愛くておっぱいが大きくて、対潜対空が優秀でおっぱいが大きくて、なによりおっぱいが大きいという艦娘だ。

 

「これは卒業してここに赴任される前に撮った写真だな。初々しい」

 

 長月が懐かしそうに言った。

 

「あの頃は皆、新人だったからね・・・・・・ってどうしたの司令官。神妙な顔して」

 

「いや・・・・・・なあ皐月。五十鈴さんと連絡って取れるか?」

 

「取れるけどどうして?」

 

「うむ。こんなに優秀な駆逐艦達を育ててくれて俺は非常に助かっていると直接お礼を彼女に言いたい・・・・・・痛っ! や、やめろ、皐月! 耳を引っ張るな!」

 

「目的が丸わかりなんだよ、スケベ」

 

 呆れたように皐月が吐き捨てる。

 

「懲りない男だねぇ」

 

「最低だな」

 

「司令。後でお話があります」

 

「暁お姉様、なんで司令官は皆につねられてるの?」

 

「それはね。司令官がおバカさんだからよ」

 

 他の艦娘達の視線も痛い。不知火に至っては殺す気満々の目をしている。

 

「つ、次に行きましょうか」 

 

 五月雨が空気を読んでページを捲ってくれた。俺にも攻撃してこないし、彼女はひょっとして天使なんじゃないだろうか。

 

「おっ! これはこの鎮守府に配属されたときの写真だねぇい!」

 

 谷風が言うとおり、この宿舎をバックに六人が映っている写真であった。

 

「皆、若いねえ」

 

 しみじみ言う谷風だったがハッキリ言って外見はそう変わらないだろう。

 

「これは演習。これは遠征。懐かしいですね」

 

 不知火が様々な写真に指を指していく。

 全員、生き生きとして楽しそうだ。

 

「この頃は提督がすぐ来てくれると思っていましたね」

 

「まあ結局全然来なくて、皆やさぐれちゃうんだけどね」

 

 そう言って皐月がページを捲ると、死んだような目でカメラを睨む皐月と谷風の写真が出てきた。

 

「ヒドイ顔だ」

 

「この頃の谷風さん達はちょっと病んでたからねぇ。ほら、次の写真」

 

 谷風が指した写真には怪しげな祭壇を造って一心不乱に祈る皆の姿があった。

 

「な、何してるんだコレは・・・・・・」

 

「いや・・・・・・何だ。困った時の神頼みというか・・・・・・」

 

「提督が来ますようにって、皆でお願いしたんです・・・・・・」

 

 恥ずかしそうに長月と五月雨が答えてくれた。

 

「こっちは千羽鶴を折ってる時のだな」

 

「結局完成前に挫折しちゃったけどね」

 

「色々やってたんだなお前達・・・・・・ん?」

 

 ふとある写真に目が付いた。暁が黒い子犬? みたいなのを抱いて笑っている。

 

「これは、イヌか?」

 

 俺がそう言って写真を指差すと暁が困ったように笑った。

 

「ああ、雷十太」

 

「らいじゅうた?」

 

「暁が飼っていたペットよ」

 

 ペットか・・・・・・しかし俺が来た時にはこの子はいなかった。一体、どうしたんだろう。

 

「なあ、この子はどうなったんだ。今はいないけど」

 

「あ、えーと」

 

 暁は一瞬、目を泳がせるとページを捲った。

 そこには巨大な熊と対峙する暁達の写真があった。

 

「子犬だと思って育ててたら熊だったの・・・・・・」

 

「熊だったのってお前・・・・・・」

 

「確かにおかしいと思ったんだよね。全然鳴かないし」

 

「いえ、たまに低い声で唸っていたわよ」

 

 冷静に言う皐月と不知火だが、艦娘とは言え小さな娘が巨大な肉食獣に向かい合っている写真は心臓に悪い。

 ノロイを迎え撃つガンバの図を思い出してしまう。しかし・・・・・・

 

「こんな短い時間で熊ってこんなに大きくなるものなのか?」

 

 前の写真では暁が腕に抱いていたのに、次の写真では赤カブトくらいでかくなってる。

 昔と言っても確か一年二年位なのだが、その短期間でここまで大きくなるとは思えないが・・・・・・

 

「この島の動物は不思議なんです」

 

「不思議すぎるわ」

 

 前に見たでっかい鳥といい、マジでこの島の生態系はどうなっているんだ。

 

「結局、この雷十太はどうなったんだ?」

 

「森に帰ってもらったの」

 

「そうか・・・・・・」

 

 まあ、それがお互いの為だろうな。

 これ以上詮索はよそう。そう思って俺は別の写真に目を向けた。

 

「お、なんだこりゃ。皆、浴衣なんか着ちゃって」

 

「ああ、これは谷風ちゃんが貸してくれたんです」

 

「何時も同じ服じゃあ飽きちまうからなあ」

 

 五月雨が答えると、谷風が胸を張って言った。 

 皆が色とりどりの浴衣を着て、写真に写っている。

 普段と違う服装をしていると印象も大分変わるものだ。不思議といつもより可愛く見えるな。

 

「ふふふ、司令官。ボクのおすすめはこの写真だよ」

 

「ほう、どれどれ。おお、不知火か」

 

 皐月の指した写真には、白い生地に紫陽花の刺繍が入った浴衣を着た不知火が映っていた。

 いつもは無表情な彼女だがこの写真では若干、微笑んでいる。

 

「へえ、これは可愛く撮れているなぶべばっ!?」

 

 瞬間、視界が真っ黒に染まり、同時に激痛が襲ってきた。

 

「皐月、今すぐその写真をこちらに渡しなさい」

 

「駄目だよ! これはボク達の大切な思い出なんだから-」

 

 何故か目潰しされた俺の横で不知火がアルバムを奪おうとして、皐月と格闘していた。

 しかし俺は目を潰されるような事をしたんだろうか・・・・・・

 

「すいません提督。不知火ちゃんは恥ずかしがり屋なんです」

 

「は、恥ずかしがり屋ってお前・・・・・・」

 

 そんなレベルじゃないだろう・・・・・・そんな時だった。

 

「いいなぁ・・・・・・皆、写真があって」

 

 清霜がぼそりと言ったのだ。

 

「・・・・・・そういえば俺の写真もないな」

 

「司令官が来てから写真を撮る暇なんて無かったからな・・・・・・」

 

 確かに毎日がハチャメチャで、そんな時間は無かったなぁ・・・・・・

 

「それじゃあ折角だし、皆で写真でも撮るかい!」

 

 谷風がそんな提案をした。

 

「お、それいいね! 皆で集合して撮ろうよ!」

 

 不知火から逃げながら皐月も同調する。さてはこれを利用して逃げ切る気だな。

 

「じゃあ支度をしないとな」

 

「五月雨、カメラを持ってきますね」

 

 皆も乗り気なようだった。

 

「よかったな、清霜」

 

 俺が頭をポンポンと叩くと、清霜は「うん!」と嬉しそうに頷いた。

 

「清霜、こっち来て! 写真撮るんだから、お服整えないと!」

 

「うん!」

 

 暁に呼ばれ、清霜はトテトテ歩いていった。

 さてと。俺も準備するか。そう思って立ち上がった。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

 流刑鎮守府の宿舎の前。

 そこに椅子を置き、俺が座る。その前に清霜が立ち、周りを皆が固めていく。

 

「じゃあ皆、行くぞ」

 

 俺がそう言って手を挙げると、カメラを持った妖精さんがレンズをこちらに向けた。

 

「では・・・・・・敬礼!」

 

 長月のかけ声と共に全員で海軍式敬礼を取る。

 シャッターが切られた。

 流刑鎮守府の歴史がまた1ページ・・・・・・

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

  • 改二になったほうがいい
  • このままでいい
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