流刑鎮守府異常なし   作:あとん

2 / 73
サブタイトルはノリと思いつきでつけてます。
基本、何かしらのパロディですが、本編とは一切関係ありません


太陽と五月雨がいっぱい

 目を開くと照りつける太陽が視界に飛び込んできた。

 呆れるくらい真っ青な空に純白の雲。

 ・・・・・・こんな晴天なんて何年ぶりに見ただろうか。

 仕事中は上を向く余裕なんかないし、休みの日は殆ど家に閉じこもっていたからな。

 背中が痛い。

 どうやらずっと横になっていたらしい。これまた久々の地面の感触・・・・・・いや、これは砂浜か?

 波の音が聞こえる。潮の香りが鼻孔をついた。

 ・・・・・・えーと、どういうことだろう。

 営業中、謎の光に包まれて気を失って気が付いたら海の近くの砂浜で寝ていた。 

 意味が分からない。

 あ、そうか。

 

「夢か」

 

 きっと日々の社畜ライフに疲れて、こんな夢を見ているのだ。

 相当疲労が溜まっているから、こんな現実離れした夢を見ているんだ。

 夢だと分かれば、急に気分が楽になった。

 どうせ夢ならばもうちょっとゆっくりするか。

 そう思い、俺は二度寝の体勢に入った。

 普段は二度寝どころか一度寝すらちゃんと出来ない日があるしな・・・・・・

 目を細め、ぼんやりとした世界に墜ちていく。

 意識が飛ぶか飛ばないかになったところで突然、黒い影が俺の顔を被った。  

 なんだろう?

 そう思った瞬間、何かが顔を被った。

 べちゃりという効果音と共に、湿った何かが顔面に張り付いていく。

 息を吸おうにもピッタリと何かが顔面に張り付いて、全く呼吸が出来ない。

 何だか苦しくなってきた。別の理由で意識が朦朧としてきた・・・・・・

 

「だあああああっ! 殺す気か!」

 

 生命の危機に飛び起きると、顔から何かが離れた。

 よく見ると濡れたタオルだった。

 こんなもん顔に被せられるとか、完全に殺す気じゃねえか。

 

「きゃあっ!」 

 

 すると横から可愛らしい悲鳴が聞こえてきた。

 釣られて声がした方向に目を向けると、少女が一人、尻餅をついていた。

 俺の怒声で驚いてしまったのかもしれない。

 そう思い何だか申し訳ない思いに駆られた、その時だった。

 目の前の少女の姿を見て、俺はハンマーで頭を殴られたような衝撃を憶えた。

 清流を思わせるような美しく長い青髪。

 透き通るような純白の肌に、水晶のように澄んだ瞳。

 小ぶりな鼻に柔らかそうなほっぺ。

 清楚な雰囲気を醸し出す真っ白なセーラー服と、対照的な黒い長手袋とニーソックスが鮮やかなコントラストを描いている。

 現実離れをした美しさを持つ少女。

 そんな存在が目の前にいるのである。

 そして俺は彼女を知っている。

 ずっと前から知っていたのだ。

 

「・・・・・・五月雨?」

 

 俺の問いかけに彼女――五月雨は一瞬、きょとんとすると、はっとした顔になってそのまま敬礼した。

 

「はい、白露型6番艦、五月雨です!」

 

 何時もゲームで聞いた声だった。

 俺が艦これを初めて最初に手に入れた艦娘。

 初期艦と呼ばれる五人の艦娘の一人で、俺の秘書艦だった少女だ。

 だが彼女はあくまで画面の向こう側の存在、俺とは決して交わらない二次元の住人である。

 しかし目の前の五月雨はどう見ても、本物の女の子だ。

 ほのかな暖かさと微かな息づかいが聞こえてくる。

 

「提督? どうかしましたか?」

 

 五月雨はきょとんと首を傾げる。

 

「ていとく? 提督って俺の事?」

 

「はい!」

 

 元気いっぱい、一点の曇りなき瞳で五月雨はそう返事した。

 ・・・・・・えーと、確かに俺は提督だった。

 でもそれはゲームの話で俺は現実ではしがないサラリーマンだったし。しかし目の前の五月雨はどう見ても本物だし・・・・・・

 

「五月雨」

 

「はい」

 

「ちょっと俺を殴ってくれないか」

 

「え・・・・・・ええっ!? どうしてですか?」

 

「いいから思いっきりやってくれ。頼む」

 

 そうだ夢だ。

 きっと疲れ切った俺が現実逃避にめっさリアルな白昼夢を見ているんだ。

 そうに違いない。

 それを確かめて、現実に戻ろう。

 

「うう・・・・・・分かりました」

 

 釈然としない様子だがそれでも五月雨は俺の言うとおり拳を握りしめ、

 

「い、痛かったらごめんなさい! やぁーっ!」

 

 そしてそのまま俺の顔面をぶん殴ってくれた。

 

「ぐぶおっ!?」

 

 見た目は小さい女の子とはいえ艦娘。その渾身右ストレートの威力は凄まじく、俺は見事に吹っ飛んで砂浜の上を転がった。

 

「あああああっ! 提督っ! 大丈夫ですか!?」

 

 五月雨が心配そうに駆け寄ってくる。

 だが俺は殴られたこの感触をじっくりと味わっていた。

 

「・・・・・・痛い」

 

 本当に痛い。頬はじんじんするし、頭はクラクラする。

 夢とは思えないリアルな痛覚。

 さらにそんな俺の頬に何か冷たいモノが触れる。

 

「さあ、これで冷やしてください」

 

 五月雨が濡れた布で殴って腫れたほっぺたを冷やしてくれる。

 このひんやりとした感じが心地いい。それもまたリアルな感触だった。

 

「先程、倒れてた提督の額を冷やすために持ってきたタオルがあって良かったです。提督、痛くないですか?」

 

「ああ何とか大丈夫・・・・・・ってさっき俺の顔面に濡れた布置いたのって五月雨?」

 

「はい! 砂浜で倒れていた所を発見したので、急いで持ってきたのですが・・・・・・」

 

 そうかアレは俺を殺そうとしたんじゃなくて、俺を助けようとしてくれたんだな。

 結果的に窒息死しかけた訳だが・・・・・・まあこの際、水に流そう。

 何せ。

 

「五月雨・・・・・・ここは鎮守府だな?」

 

「え・・・・・・あ、はい」

 

「やはりな・・・・・・」

 

 俺は気が付いてしまったのだ。

 リアルな五月雨。提督という呼称。突然飛ばされた世界・・・・・・

 このいくつもの出来事から割り出される答え。

 ここが俺の・・・・・・俺が作り上げた鎮守府という事に。

 きっと俺の社畜地獄を見かねた神様が、艦これの世界に転移させてくれたのだ。

 そうに違いない。

 

「ならば! 早速、鎮守府に行こうじゃないか! 案内してくれ、五月雨!」

 

「あ・・・・・・はい! 五月雨にお任せ下さい!」

 

 そう言って元気よく敬礼した五月雨は俺の右手を取って歩きだした。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・ふふふふ。

 俺の人生。始まったといってもいい。

 何せ俺の作った鎮守府だ。メンバーは皆知っている。

 つまり金剛とか榛名とか鹿島とか巨乳でケッコンカッコカリした艦娘たちが大勢在籍しているはずなのだ。

 そして提督は俺・・・・・・これ以上は何も言うまい。

 これより俺の巨乳艦娘ハーレム提督ライフが始まるのだ。

 

「ふふふ、俺の人生これからだぜ!」

 

 足取り軽く、五月雨の後ろを歩いて行く。

 このとき俺は知らなかった。

 現実なんてそんなに甘くないことを。

 

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

  • 改二になったほうがいい
  • このままでいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。