今回は割と真面目です
「いいかお前ら? この物語の原作は『艦隊これくしょん』なんだぞ? 男塾でもキン肉マンでもないんだぞ?」
ボロボロになった執務室で、俺は正座している部下の艦娘たちを見下ろしながら言った。俺の眼下には、五月雨を除く我が鎮守府の駆逐艦達が俯いている。
「・・・・・・タッグマッチをするのは構わない。外で好きなだけやればいいさ。でもここは所謂作戦本部だぞ?」
事の始まりは数分前、俺が本土に出張することを告げた後だった。この中から一人、本土に護衛として艦娘を連れていくことを話したことが発端である。
誰が行くかという話になったまではよかったのだが、何故か気づけば艦娘たちがタッグを組んで俺と一緒に行く権利を賭けて戦いだしたのだ。
長月・皐月の睦月型シスターズ。不知火・谷風の陽炎姉妹コンビ。そして暁・清霜の流刑地マシンガンズ。名前全部パクリじゃねーかというツッコミはさておき、何故か五月雨が審判に甘んじていた。一人あぶれたという。
まあその後は酷い騒動で、長月と皐月がマッスルドッキングを決めようとするわ、谷風が何故か事切れて不知火が棒読みでロビンの激アツシーンを真似しだし、最終的に暁と清霜が掟破りのクロスボンバーを決めたところで俺がストップをかけた。というか、五月雨も止めろよ・・・・・・。
「そもそも俺はもう連れていく奴は決めているんだ。なのにお前ら・・・・・・」
おかげで執務室はボロボロだ。まあ、それはそれとして。
「・・・・・・とりあえず連れていく者のことだが・・・・・・」
俺がそう言うと皆がガバッと顔を上げた。
「まず、俺がこの鎮守府を留守にするわけだから、代わりに流刑鎮守府の指揮に取る艦娘が必要だ」
俺はそこまで言うと横にいた少女の肩に手を置いた。
「五月雨、お前が留守中の鎮守府の指揮を頼む」
「え、ええええっ!? さ、五月雨ですか!?」
俺に指名された五月雨は素っ頓狂な声を上げた。
「お前はずっと俺の秘書艦をしていて提督業務にもある程度精通している。俺がいない間、鎮守府を頼む」
肩に置いた手を彼女の頭にポンと乗せる。
「は、はい! 五月雨、精一杯頑張ります!」
「その意気だ」
五月雨の頭をそのまま撫でる。サラサラの青髪が心地いい。
「だけど五月雨だけに責任を押しつけるのは酷だ。だから長月、お前が補佐してやってくれ」
「え・・・・・・私がか?」
「ああ、しっかり者のお前なら上手くフォローできるだろう。それに長月がいなかったら我が鎮守府の食卓は、大変な事になる」
流刑鎮守府のご飯は、そのほとんどを長月が作っている。他に料理が出来るのは五月雨くらいで、その五月雨も調味料などをちょくちょく間違えるのだ。
長月がいないと厨房がどんな惨状になるかわからない・・・・・・というわけで残ってもらうことにしたのだ。
「頼めるか?」
俺がそう尋ねると長月はふっ・・・・・・と笑った。
「・・・・・・了解だ。任せておけ。司令官が留守の間、長月が必ず鎮守府を守ってみせる」
「頼むぞ」
俺が笑って長月の頭を撫でると、彼女もニカッと笑い返してくれる。頼りがいのある奴だ。
「で、残りのメンバーから同伴する者を決めるわけだが・・・・・・」
「ボク・・・・・・だね」
「谷風さんの出番か」
「いよいよレディーが本土に行くときが来たようね!」
俺がメンバーの指名を匂わせると、皐月・谷風・暁の三人がわらわら立ち上がった。
どうしてこんなに自信満々なんだろう。
「・・・・・・不知火。一緒に来て貰ってもいいか?」
俺の言葉に皆が息を呑んだ。
そして当の本人は、
「えっ・・・・・・」
目をパチクリさせてただ驚いていた。
「し、不知火で、いいのですか?」
「ああ。一緒に来てくれるか? 嫌だったら無理しなくてもいいんだが・・・・・・」
「い、いえ! この不知火、選んで頂いたからには粉骨砕身の覚悟でお供致します!」
「そんなに堅くならなくても大丈夫だぞ。いつも通りのままで着いてきてくれればいいさ」
「そ、そうですか・・・・・・」
緊張しているのか、不知火はいつも以上に言葉数が少ない。
まあ大役と言えば大役かもしれないしな。それに普段は本土なんて行かないから、不安っちゃ不安だろうし。
「ちょ、ちょっと! 何で不知火なのさ!」
「そうだぜぃ! 谷風さんだってイケるだろう!」
「お前ら、遊ぶ気満々じゃねーか! 言っとくけど任務だぞ!」
この二人は邪な思いが透けて見えすぎる。
「ねーねー司令官。暁はー?」
俺の服の裾をクイクイと引っ張って暁が聞いてきた。
「暁はなあ・・・・・・」
連れていってやりたい気持ちはあるんだが、迷子になりそうだしな。
旅行とかだったらいいんだけど、仮にも任務だしなぁ。
「・・・・・・暁。五月雨と長月が中を護る。だがもし外から深海棲艦が攻めてきたらどうする? 一人前のレディーである暁しか、この鎮守府を護れる艦娘はいないだろう?」
「え……そ、そうかしら?」
「ああ、清霜と一緒にこの鎮守府を護ってくれ。頼めるか?」
「……も、勿論よ! 暁に任せて! 一人前のレディーとして、司令官の帰る場所を護ってみせるわ!」
「おう、任せたぞ! 暁! 清霜も頼むぞ!」
「うん! 清霜がんばる!」
「その意気だ!」
ちびっこ二人の頭をガシガシ撫でる。単純で可愛いなぁ。
「というわけだ。出発は週末。それまで頼むぞ皆」
俺がそう言うと皆はキッチリと敬礼で返してくれた。こういうところはやっぱり軍隊だな。
こうして俺の本土遠征任務の前段作戦が始まったのであった。
…
……
…………
流刑鎮守府はあっという間に出発の日の前日を迎えていた。
俺は荷物を用意し……といっても持っていく物は着替えくらいのもんだから、気楽なものだ。
ちゃちゃっと旅行鞄に衣服と少々の資料を詰め込んで、準備は万端。明日の出発を待つだけである。
「提督、コーヒーをお持ちしました」
準備を終えた俺が執務室でまったりしていると、五月雨がホットコーヒーが乗ったお盆を持って現れた。
「おう、ありがとうな」
俺がお礼を言うと五月雨はにっこり笑って、こちらに近づいてくる。
「慎重に慎重に……落ち着いて落ち着いて……」
おっかなびっくりで五月雨はゆっくりと歩いていた。多分、いつもみたいにコーヒーを零さないようにしているんだろう。
真剣な顔で体をプルプル震わせながら五月雨はコーヒーカップをテーブルに置いた。そして深く息を吐く。
「ふーっ……よかった! 無事に置けました!」
「おお、偉いぞ五月雨」
コーヒーを零さずテーブルに置くだけで、褒めてあげたくなる五月雨って得なキャラクターだよな。
「あの・・・・・・」
俺が漂ってくる芳ばしい香りに目を細めていると、五月雨がおずおずといった感じで口を開いた。
「さ、五月雨もご一緒させて頂いてもよろしいですか?」
顔を真っ赤にしながら五月雨は聞いてくるのだ。
「よろしいも何も、何時も一緒にお茶してるじゃないか。ほれ、座れ座れ」
おかしな事を言うもんだ。この鎮守府で俺にコーヒーを煎れてくれるのは長月と五月雨だけである。故にこの二人とはよく一緒にお茶をする仲のだが。
「あ・・・・・・はい! 失礼します!」
五月雨は頭をペコリと下げると、俺の横に腰を降ろした。
心なしかいつもより近い気がする。ノースリーブの袖から露出した白い肩が、小さく震えていた。
「・・・・・・うん。美味いな、今日のコーヒーは。五月雨が煎れたのか?」
「え・・・・・・あ、はい! 五月雨が煎れさせて頂きました!」
「そうか。ありがとうな」
素直にお礼を言うと五月雨ははにかみながらコーヒーを啜った。
「・・・・・・どんどん美味くなってるな」
「え?」
「いや、五月雨の煎れるコーヒーがな」
「えっ・・・・・・そ、そうですか?」
「ああ、いつも煎れてくれるおかげだ。ありがとうな」
いつもは言う機会が無いお礼を言って、頭を撫でる。
このコーヒーも一週間は飲めないと思うと悲しいな・・・・・・そう考えていると、五月雨がポロポロと涙を溢し始めた。
「なっ!? どうした五月雨!?」
「うう~だって・・・・・・だってぇ・・・・・・」
呂律の回らない言葉使いで五月雨は顔をぐしゃぐしゃにして泣き始める。
「しばらく提督に会えないと思うと寂しくて・・・・・・うぅ~」
びえーん、と泣く五月雨が何だか愛おしいので、頭をポンポンと軽く叩く。
すると「あうー」と両手を伸ばしてきたので、抱きしめて背中をさすってあげた。
程なくして彼女は落ち着いたようで、涙を拭いながら俺か離れた。
「俺がいない間は五月雨が流刑鎮守府の指揮官なんだから、泣いてばかりじゃ駄目だぞ。俺と不知火が帰ってくる場所をよろしく頼むぞ」
「はい! 五月雨、頑張ります!」
「ああ。帰ってきたら、またここで、一緒にコーヒーを飲もう」
俺がそう言うと五月雨は花のように笑ったのだった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「明日は司令官と不知火の出発日だ! 今日はその前祝いだ!」
夜、鎮守府の食卓に様々な料理が並んでいた。全て長月の手作りだ。
「おお・・・・・・凄いな」
「二人の晴れの日だからな! 奮発した!」
胸を張る長月だが、確かに並んでいるのは俺と不知火の好物ばかりだった。
「刺身・・・・・・枝豆・・・・・・唐揚げ・・・・・・」
「肉じゃがに煮付けですか・・・・・・」
俺と不知火は眼前に盛られた好物たちに、ゴクリと唾を飲み込む。
「ささ、司令官! ビールだ」
ご馳走に目を奪われている俺に、長月はグラスに入れたビールを持ってきた。
「おお、すまないな」
「なあに、気にするな。皆もグラスは持ったか?」
長月の問いかけに他の皆も飲み物が入ったグラスを頭上に掲げた。
「司令官、乾杯の音頭を頼む」
「え!? えーと今日は俺と不知火のために色々準備してくれてありがとう。明日から俺はここを留守にするが、帰ってくるまで頼むぞ・・・・・・では、かんぱーい!」
俺がそう言うと同時に皆のコップが重なり合った。
「よっしゃ、食うぞ食うぞ。長月の料理も暫く食えないからな」
「そうだな。だがあまり飲み過ぎるなよ? 明日も早いんだからな」
長月は苦笑しながら釘を刺す。
しかし、やはり長月の手料理は美味い。こんなに美味い飯を毎日食べられていたのは、すごく幸せだったんだぁなぁと思ってしまう。
「いつもありがとうな、長月」
「な・・・・・・どうした急に」
「いや、これから一週間。お前の料理が食べられないと思うと、寂しいだけだよ」
俺が素直にそう言うと、長月の頬が少しだけ朱色に染まる。
「うう・・・・・・い、いきなりそんなこと言うのは卑怯なんじゃないか・・・・・・」
消え入りそうな声で長月は呟いた。
何時も強気な長月も恥ずかしがることがあるんだな。
「さささ、提督! グラスが空だよっ!」
谷風が空になった杯にビールを注いでくれる。
こういう時、気が利く酒飲みはいいなぁ。
「今日は楽しもうよ! ぱーっとさ!」
皐月もそれに乗ってくる。
「そうだな! 暫くここで飲めない分、ぱーっとやるか!」
そこから先は無礼講だった。美味い肴と酒に酔い、艦娘たちと大いに語り合った。
いつもならそのまま深夜までドンチャン騒ぎするところだが、明日のことがあるので早めに解散となる。
俺は歯を磨き、明日持って行く荷物の確認をしているときだった。
寝室のドアがコンコンと叩かれる。
何だろうと開いてみると、寝巻き姿の暁と清霜が俺を見上げるように立っていた。
「どうしたお前達。こんな遅くに」
俺がそう尋ねると暁は上目遣いで言った。
「あの・・・・・・司令官。明日出発だから・・・・・・その・・・・・・」
暁はそこまで言ったが恥ずかしそうに俯いて黙ってしまう。
「司令官! 今晩、清霜も一緒に寝ていい?」
元気よく清霜はそう言うと俺の腰にぎゅっと抱きついてきた。
「え、一緒に?」
「うん! 司令官、駄目?」
「・・・・・・いや、一緒に寝よう。おいで」
艦娘とはいえど清霜はまだ幼い。それこそ生まれたばかりといってもいいのだ。寂しいと感じるのも当然だろう。
「暁はどうする?」
俺は清霜の後ろでもじもじしている暁に声をかけた。
「えっ・・・・・・あ、暁は別に・・・・・・き、清霜の付き添いだし・・・・・・」
「いや、俺が暁と一緒に寝たいんだ。駄目か?」
「・・・・・・し、司令官が言うならしょうがないわ! 暁が一緒に寝てあげる!」
「ああ、ありがとうな」
甘えたいけど素直になれないお年頃なのだろう。
でもこうやって後押しすれば、正直になってくれる所はやっぱり子供だなぁと思う。
ベッドの中央で俺が仰向けに寝っ転がり、右に暁、左に清霜が横になる。丁度俺が二人に挟まれるような格好だ。
「えへへ~司令官~」
嬉しそうに清霜が体をくっつけてくる。小さい子特有の柔らかい体と高い体温が心地いい。
「・・・・・・・・・・・・」
一方の暁は無言で俺にしがみついてきた。恥ずかしいのか、顔も伏せて俺に密着している。彼女の鼓動が体越しに伝わってきそうだ。
「・・・・・・二人とも、留守番を頼むぞ」
俺は何だか愛おしくなって二人の頭を優しく撫でた。
「うん! 清霜に任せておいて!」
元気よく返事する清霜に無言で頷く暁。
娘のような少女二人に挟まれたまま、俺は心地居眠りに着いたのだった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「さてと、作戦会議といこうか」
一方の艦娘達の寝室では寝巻き姿の皐月がベッドで胡座をかいてそう宣言していた。
「・・・・・・作戦会議とは。不知火は明日早いからもう寝るわよ」
「何言ってんの! 今回の作戦は不知火が主軸なんだよ!」
呆れたように言う不知火に皐月が拳握ってそう言った。
「そうだぜぃ! 何せ不知火と提督の本土デート作戦を立てるンだからよぅ!」
谷風が放ったその言葉に、不知火の動きがピクリと止まった。
「な・・・・・・何を言っているのです? で、デート? 不知火はただし、司令官と出張に行くだけですが・・・・・・」
「私達に敬語とは思ったよりもテンパっているな」
長月が言うように不知火は基本、艦娘同士ではため口である。それが敬語になっているときは、焦っている証拠なのだ。
「出張っていっても広島では自由時間があるんでしょ? 司令官と一緒に色々いけるじゃん」
「そうそう! 広島はいいよ~宮島、広島城、縮景園・・・・・・」
「随分と渋いチョイスだな谷風・・・・・・」
「いいなぁ、広島。不知火ちゃんは提督とどこに行きたい?」
「さ、五月雨まで何を言っているんですか・・・・・・これは任務です。不知火の仕事は司令官をお守りすること・・・・・・」
「もー堅いなー不知火は。折角、司令官と出かけるチャンスなんだから、これを機に一気に距離を近づけるべきだよ!」
皐月が力強く言うと、谷風も長月も五月雨までもがうんうんと頷いた。
「司令官は私達、駆逐艦に興味が無い。だが、きっかけがあれば変わるかもしれん。不知火、お前なら可能性がある。頼むぞ」
「な、長月・・・・・・貴方までそんなことを・・・・・・」
「不知火ちゃんなら大丈夫! 五月雨も楽しみに待ってるからね」
「落ち着きなさい五月雨。不知火はデートなんて」
「慣れない本土・・・・・・誰も知らぬ人がいない街で、男と女が二人・・・・・・何も起こらぬはずがなく・・・・・・」
「止めなさい、皐月! そんなふしだらな事、司令官がなさるはずないでしょう!」
「あれ? ボク、ふしだらな事なんて言ったけ?」
「うう~~~~」
珍しく皐月に言い負かされ、不知火は真っ赤に俯いてしまう。
「まぁまぁ。不知火も普段から真面目だからこういう事に弱いんだ。それよりも問題は・・・・・・」
谷風はそう言うと不知火の鞄に視線を移した。
「不知火、この色気もへったくれも無い旅行支度はなんだい?」
「な・・・・・・旅に色気など関係無いでしょう」
「甘い! 天津甘栗よりも甘い! 不知火よぉ、男女二人旅だぜ? もしもの時に色々準備するのは当たり前ぇだろ?」
「も、もしもの時って・・・・・・何よ・・・・・・」
「そりゃ司令官だって男だ。旅の雰囲気にやられて、普段は女として見てないあの娘が、急に色っぽく見えちゃうこともあるもんさ」
「そしてそのままお酒を飲んで、ホテルへ・・・・・・めくるめく夜を・・・・・・」
「止めなさい、二人とも! そ、そんな破廉恥なこと、絶対に無いわ!」
不知火がついに声を荒らげた。だがいつもの冷たい迫力が無いためか、谷風と皐月は動じない。
「せめて可愛い私服と勝負下着くらいは持って行かねえと。いつも制服しか入ってないじゃないか」
「しょ・・・・・・勝負下着なんて・・・・・・持っていないし・・・・・・」
ボソボソと不知火は言った。もう完全にペースは皐月たちに握られている。
「私服は持っていないのか?」
「・・・・・・普段、外に出ること何てないし・・・・・・」
長月の問いに不知火は恥ずかしそうに答えた。
「全く・・・・・・手のかかる姉だねえ・・・・・・そんな事だろうと思ったから、谷風さんのとっておきを貸してあげるよ」
谷風はそう言って、箪笥の中から服を引っ張り出してきた。
「どうよ、コレ! 買ったはいいけど着る機会がなくて、しまっといたんだけどさ。谷風さんより不知火の方が似合うんじゃないかと思ってね」
谷風が自信満々に差し出したのはグレーのパーカーとショートのデニムだった。
「あっ、この猫のファスナー可愛い」
五月雨がパーカーのファスナーに付けられた猫の飾りを見て言った。
「だろぉ? これなら活発な不知火にも似合うと思ってさ」
「そ、そんなこといわれても・・・・・・」
「まぁまぁ、遠慮せずに持っていきなよ! そんなかさばるものじゃないし」
「それにこの服を着た不知火を見たら、きっと司令官も可愛いって言ってくれるさ」
谷風と長月に言われ、不知火は強引に私服を鞄に詰め込まされる。
「不知火。ボク達駆逐艦だって女の子だってこと、司令官に見せておくれよ」
皐月に肩をポンと叩かれ、不知火は真っ赤になったまま閉口するのであった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
とうとうこの日がやって来た。
朝の流刑鎮守府。その玄関口とも言える波止場に、全員が集まっている。
「司令官、気を付けてくださいね」
「迷子になっちゃ駄目よ?」
五月雨と暁が心配そうに言った。
「不知火、司令官を頼むぞ」
「頑張ってくれよ、不知火」
長月と谷風が不知火を激励する。
当の不知火は緊張しているのか、無言で頷くだけだった。
「司令官の留守はボク達がバッチリ守るから、気楽に行ってきなよ」
「お土産、期待してます!」
皐月と清霜が笑顔で握手してくれる。
「おう、ありがとうな皆」
俺は皆の顔を一人ずつ見ながら、そう返した。
「・・・・・・皆、よろしくね」
不知火もようやく言葉を絞り出したようだった。
迎えの船が水平線の向こうに見えてくる。ここから船で大陸に向かい、そこから空港まで移動して、飛行機で日本本土へと向かうのだ。旅のほとんどの時間は移動である。
船が来るまで皆で他愛もない話をした。
お土産は何がいいとか、他の提督に舐められないようにしろだとか、広島はどんな所だとか。
話していてふと、気が付いた。
俺はこの世界に来てからずっと彼女達の一緒だったことを。
まだ俺が社畜だった頃、ずっと一人で生活をしていた。それが当たり前だった。
だがこの鎮守府に来てからは皆がずっと一緒にいた。それが新しい当たり前になって
今日から一週間、皆の顔を見ないのだ。
五月雨の笑顔も、長月の手料理も。暁の頭を撫でることも、谷風と酒を酌み交わすことも出来ない。いつものように皐月とじゃれ合う事も出来ないのだ。
当たり前の者が少しの間とはいえ、無くなる。急に俺は寂しさを覚え、皆をぎゅっと抱きしめた。
彼女達の暖かい体が直に伝わってくる。
皆も察してくれたのか、何も言わなかった。
船が寄稿し、俺たちは離れた。
「・・・・・・じゃあな、行ってくる。皆も気を付けてな」
「不知火も全力で司令官を守るので、皆も鎮守府をお願いね」
俺と不知火の言葉を聞き、皆はビシッと敬礼する。
船が出発する。
俺と不知火は皆の姿が見えなくなるまで、ずっと鎮守府の方を見つめていた。
六人の少女は黙って敬礼したまま俺達を見送ってくれる。
必ず、帰ろう。
もう流刑鎮守府は俺の家同然になっている。
俺は横にいる不知火の肩を抱きながら、そう決意するのであった。
流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か
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改二になったほうがいい
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このままでいい