流刑鎮守府異常なし   作:あとん

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広島編です


おいでよ広島

 広島までの旅は長かった。。

 最初に流刑鎮守府から船で少し離れた場所にある島まで移動する。そこで船を乗り換え、次は大きい島へと向かう。そこでまた別の船に乗り継いで、本土へ向かうのだ。

 まあ本土って言っても日本ではなく東南アジアの某国なんだけど・・・・・・着任して結構経つがようやく我が鎮守府の大体の場所を把握できた。

 そこから空港に行き、日本行きの飛行機に乗る。ここまでで既に2日が経過し、俺と不知火はクタクタになって飛行機の中で眠りについた。

 別世界から来た俺にパスポートとかあるのかと不安にもなったが、軍人用として用意されていたので助かった。ちなみに不知火は艦娘なので大丈夫らしい。

 そんな感じで飛行機で成田に到着。そこから別の飛行機に乗り換えて広島空港に向かう。

 ここまで移動だけで3日以上。いかに流刑鎮守府が僻地か分かるな・・・・・・

 そしてそのまま広島空港から呉鎮守府へは、迎えの車が来てくれた。

 腐っても海軍。そして俺は軍人で提督。これ位は用意してくれるらしい。

 1時間弱ほど車に揺られ、外の景色を眺めるのに飽きてきた頃に俺たちは呉鎮守府に辿り着いた。

 車から降りると視界に飛び込んできたのは我が流刑鎮守府とは似ても似つかない、呉鎮守府の正門だった。

 正に軍施設とも言うべき巨大な鉄門と高い塀。そこをくぐると広い庭の奥に見える、赤煉瓦の洋風庁舎。俺が当初、思い描いていた鎮守府のイメージに近い・・・・・・。本当に同じ鎮守府なのかと思う位、流刑鎮守府と違うな。

 日本海軍の最重要地点の一つというだけあって、多くの海兵や憲兵さんたちが行き来している。

 しかし肝心の艦娘はどこだ、と俺が思っていたときだった。

 

「失礼します。他鎮守府からお越しの指揮官とお見受けしますが、よろしいでしょうか?」

 

 不意に声をかけられ、体が強張ってしまう。

 慌てて声の主を探すと、いつの間にか近くまで来ていた少女が丁寧に敬礼をして、俺たちの方を見つめていた。呉鎮守府の光景に圧倒されて、気が付かなかったみたいだ。

 

「あ、ああ・・・・・・そうだけど・・・・・・君は・・・・・・」

 

「はい。呉鎮守府所属、吹雪型駆逐艦二番艦・白雪と申します」

 

 俺の目を真っ直ぐ見ながら彼女――白雪は言った。

 

「あ、ああ・・・・・・えっと・・・・・・流刑鎮守府の指揮官をやっている者です」

 

「流刑鎮守府所属、駆逐艦不知火です」

 

「流刑鎮守府ですね、かしこまりました。来て頂いた指揮官と艦娘の皆さんは、こちらに集まっています。案内させて頂きますね」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 テキパキ受け答えする白雪に対し、どこかしどろもどろな俺。

 慣れない土地にやって来たカッペみたいな態度である。まあ、その通りではあるんだけど。

 そんな事を考えながら俺たちは白雪に案内され、そのまま呉鎮守府の庁舎へと足を踏み入れた。

 玄関はかなり広く、ホテルのロビーと言われたら信じてしまいそうなほど、洒落た内装で綺麗に手入れされていた。

 周りは階級の低い水兵や憲兵ばかりだが、よく見るとゲームで見たことがある駆逐艦が何人か歩いていた。

 やっぱり生で見ると妙に感動するな・・・・・・そう考えながら二階へと案内される。

 

「ここが指揮官と艦娘の待合室となっています。会議開始にはまだ暫く、かかりますのでお手数ですが、少々お持ち下さい」

 

 そう言って白雪が扉を開けた。

 俺と不知火は白雪に一礼すると、奥へと入っていった。

 

「おお・・・・・・うぉぉぉっぉぉぉぉおおおおおっ!」

 

 瞬間、視界に飛び込んできた光景に俺は思わず感嘆の声を上げた。

 そこにいたのは他の鎮守府の提督と艦娘達。予想できた光景である。

 だが予想以上だったのは、そこに集まっていた艦娘たちである。

 

「ブラボー・・・・・・おお・・・・・・ブラボー・・・・・・」

 

 戦艦、空母、重巡・・・・・・胸部装甲の厚い艦娘達が揃っていた。

 背は高く、大人の気品に満ちあふれた艦娘のお姉様たち。

 くびれた腰に長い足。なんと美しいことか。

 だがなんといってもやっぱり、おっぱい!

 動く度に揺れ、談笑する中で悩ましく震え、男の視線を一身に集める二つの果実。 

 普段の流刑鎮守府では見られない、たわなな艦娘達。

 なんと眼福! ああ、楽園はここにあったのか・・・・・・

 

「司令、緩みすぎです」

 

「いだだだだだだっ! 耳を引っ張るな!」

 

 横にいる不知火に思いっきり耳を引っ張られた。

 いつもは殴ってくるのに、今回は周りの目があるからか、制裁も弱めだ。

 

「いでで・・・・・・よく見たら、駆逐艦や海防艦もいるな・・・・・・」

 

 それでも痛いものは痛いので、視線を小っちゃい子に移して火照った体を落ち着かせる。

 しかしよく見ると駆逐艦を秘書艦にしている提督は見た目が若い。逆に戦艦や空母を連れている提督は、いかにも歴戦の勇者って感じだ。やっぱり、新米提督に強い艦娘は中々来ないのかもしれない。

 

「ぱんぱかぱ~ん!! 提督の皆さ~ん! 会議がまもなく始まりますので、こちらの第二作戦会議室に集合してくださ~い!」

 

 元気よく愛宕が作戦会議室から出てきて言った。

 いよいよ会議が始まるらしい。

 しかし・・・・・・凄いな。

 青い上着の越しでもその胸部装甲はしっかりと自己主張し、動く度にたゆんたゆんと揺れる。

 むしゃぶりつきたくなるような二つの双丘は、よくみると若干震えて・・・・・・

 

「いたっ! やめっ! 不知火っ! 顔はやめ・・・・・・」

 

 俺は愛宕の肢体を目に焼き付けることも出来ないまま、無言の不知火に殴られたのだった。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

「全く、司令は見境の無い・・・・・・」

 

 作戦司令室に入っていく司令官の背中を見送りながら、不知火は一人毒づいた。

 今回の会議は提督だけで行われるらしく、艦娘達は別室で待機するらしい。

 この呉鎮守府に所属する愛宕達が、艦娘は艦娘同士で、とお茶会の用意をしているそうだった。

 特に顔見知りがいない不知火は、とりあえず皆に流されて付いて行く。

 部屋の中には不知火が見たことも無いような高級茶菓子と、香りの良い紅茶が用意されていた。

 様々な鎮守府の艦娘達が集まっていたが、基本的に他所と関わりの無い流刑鎮守府にいる不知火に知り合いはいなかった。

 元来、前に出る性格ではないためか、暫く部屋の隅で一人お茶を啜っていた。

 このお茶菓子が美味しいので、皆にこっそり持って帰っていこうか。そんなこと考えている時に、別の艦娘の話が聞こえてきた。

 

「えっ? 提督同士で打ち上げ?」

 

「ええ、打ち上げっていうか、提督同士で親睦を深めるために、皆で飲みに行くらしいわ。うちの提督が言っていたの・・・・・・なんでも海軍御用達のキャバクラがあるって」

 

「そ、そんなぁ・・・・・・折角、ご主人様と二人で色々・・・・・・」

 

 落胆する艦娘の姿を、不知火は黙って見つめていた。

 

(親睦会にキャバクラ・・・・・・お酒好きで女好きの司令はきっとそっちに行っちゃうわね・・・・・・)

 

 何だか胸が痛んだ。

 さっきまで美味しかった紅茶とお菓子も何だか味気ない。

 不知火は無言でティーカップをテーブルに置くと、壁に寄りかかって俯いた。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

 どうして会議っていう奴はこうも眠たいものなんだろう。

 会議室の端っこに設けられた座席に腰を降ろした俺は、何度目か分からない程湧き上がってくる欠伸を黙って噛みしめていた。

 会議の内容は思ってた以上に簡素だった。

 深海棲艦の動向が主な議題だったが、肝心の敵は最近大人しいらしく、会議はゆるやかに進んでいた。

 呉や横須賀といった重要拠点はともかく、俺の所属する流刑鎮守府などの辺境地は本当に関係の無い話ばかりなのだ。

 横に座っている孤島鎮守府の提督は熱心に聞いている。俺より若いのに大したもんだ。

 そんなことを考えている内に会議は終わった。さっさと不知火の所に帰ろうと立ち上がろうとした時だった。

 

「さて、では今回も提督同士で親睦を深めるとしましょう!」

 

 えらく恰幅のいいどこかの指揮官がそう言うと、皆が一斉に浮き足立った。

 

「いつもの店を準備しています。参加する方はここに集まってください!」

 

 そう言う提督の周りに何人もの指揮官たちが集まっていく。

 

「・・・・・・おい、孤島の提督さん。あれは一体なんだい?」

 

「この後、提督同士で親睦を深めるために皆で飲みに行くんだとか・・・・・・専用のキャバクラがあるって話です」

 

「何、キャバクラ!?」

 

 キャバクラ・・・・・・それは俺にとって未知のエリアだった。

 前の世界にいたときは社畜で忙しかったこともあるが、オタクで童貞の俺はそのテの場所に行く勇気が無かったのだ。

 だが今は俺だって場末とは言え一鎮守府の指揮官。何だかんだで肩書きはある。

 軍人といえばモテるだろう。しかも海軍御用達の店とくれば、ぼったくられる心配も無いし、綺麗なお姉さんも揃っているだろう。

 

「おう、新入り! お前も来い!」

 

 集まっていた提督の中から一人、やんちゃそうな男が孤島鎮守府の提督の袖を引っ張った。

 孤島さんは見た感じかなり若い人だったし、先輩方からしたら誘ってやりたいのだろう。

 しかし、キャバクラか・・・・・・

 これは行かない理由が無いな! 

 そう思って足を踏み出したときだった。

 仲よさそうに談笑する提督達。そこに俺の知っている顔は無い。

 それはいい。俺は最近、この世界にやって来たのだ。知り合いなどいない。それでも男同士提督同士、話は合うだろう。

 だけど不知火はどうだ。

 他の鎮守府の艦娘に知り合いなんているだろうか。

 彼女を置いたまま、俺一人で飲みに行っていいものだろうか。

 

「お前さんも来るかい? 初めてだろう?」

 

 先輩の一人が俺を手招きする。俺は無言で立ち上がった。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

 艦娘がごった返す大部屋の端に、彼女の姿を見つけた。

 俺は大勢の提督と艦娘の間を縫うように移動して、一人で立っている少女の基へと足を進めていく。

 

「不知火、ごめんな。今、会議が終わった」

 

「・・・・・・あ、はい。お疲れ様です」

 

 何だか元気が無い。まあ、知り合いのいない場所に一人で待っていたんだから、疲れたのかもしれない。

 

「会議はどうでした?」

 

「ああ、田舎者の俺にはあまり関係無い話ばかりだったよ」

 

「そうですか・・・・・・」

 

「それでな。この後のことなんだが」

 

 不知火の肩がピクリと震えた。

 

「聞きました。提督同士で親睦会を・・・・・・」

 

「ああ、それは断ってきた」

 

「え・・・・・・」

 

 不知火が顔を上げた。

 

「折角、広島まで来たんだ。二人で呑みに行かないか?」

 

「ど、どうしてですか、司令? 他の鎮守府の人たちと親睦を深める絶好の機会ですのに」

 

「俺みたいな窓際提督にはあまり必要じゃ無いさ。それに不知火を一人、置いていけないだろう」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「あ、でも愛宕さんが何かするみたいだから、そっちに行ってもいいぞ」

 

 何でも艦娘達は艦娘達で集まって食事をするらしい。

 

「いえ、この不知火。お供させて頂きます」

 

 不知火はほんの少しだけ頬を緩ませて、そう言った。

 

「そうか。じゃあ呑みに行くか」

 

「・・・・・・はい」

 

 明日には帰路につく。不知火と広島を楽しめるのは今夜だけなのだ。

 俺たちは賑わう周りに背を向けて、二人で歩き出したのだった。

 




 今回、先輩作家で個人的に親交のある、画面の向こうに行きたい先生の作品である『孤島鎮守府の奮闘』から主人公と漣ちゃんをゲストとして登場させて頂きました。

 向こう先生、ありがとうございます!

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

  • 改二になったほうがいい
  • このままでいい
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