流刑鎮守府異常なし   作:あとん

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クリスマスと聞くとブルービートとビーファイターカブトとカブタックが並んでいる姿が思い浮かぶ。
そんな世代です。


クリスマス大作戦!

 水平線の彼方に、ポツンと小さな島の影が見えた。流刑鎮守府である。あの絶海の孤島が、今や懐かしき我が家とは不思議なものだ。俺と不知火は小さな漁船の甲板の上で、近づいてくる鎮守府を見つめていた。

 

「……帰ってきたな」

 

「はい……」

 

七日間しか離れていなかったのに、まるで何年も留守にしていたような感覚だった。それほど、流刑鎮守府での生活が俺にとって当たり前になっていたということである。感慨深い思いを抱きながら、俺たちは流刑鎮守府唯一の波止場に船が着港するのを待った。

 

「しれーかん!!」

 

船から降りた瞬間、そんな声と共に小さなものがぶつかってきた。

 

「き、清霜か!」

 

清霜が俺に飛び付いてきたのだ。

 

「しれーかん、おかえりなさーい!!」

 

「ああ、ただいま・・・・・・ぐふっ!?」

 

 今度は鳩尾に衝撃。見ると暁が俺の体に抱きついていた。

 暁と俺の身長差だと、丁度この位置になるのだ。

 

「司令官、おかえりなさい」

 

 暁は顔を俺の腹に埋めて言った。

 

「た、ただいま暁」

 

 暁はぐりぐりと俺の体に頭を押しつけて、ぎゅっと抱きついてくる。

 恥ずかしいのか顔を上げずにいるのが何だか微笑ましかった。

 

「長旅ご苦労様、司令官」

 

「お疲れ様だね」

 

 皐月と谷風も駆け寄ってきてくれる。

 

「お帰りなさい、提督」

 

「お帰り司令官。不知火も無事で何よりだ」

 

 遅れて五月雨と長月も寄ってくる。

 久しぶりの流刑鎮守府、全員集合だ。

 

「ありがとう皆」

 

「ただいま、です」

 

 帰ってきたって感じがした。

 俺と不知火は皆の手を取って、鎮守府に歩いて行くのだった。

 

「おお、これは・・・・・・」

 

 鎮守府に入った俺は感嘆の声を上げた。

 狭くてボロい木製の大広間に、派手に飾り付けられたクリスマスツリーが飾られていたのだ。

 

「そういえばもうすぐクリスマスだったな」

 

「そうだよ。だからボク達で用意したんだよ」

 

 皐月が胸を張って言った。

 

「暁も手伝ったのよ」

 

「清霜もツリーの飾り付けしたの!」

 

「そうか、偉いぞ」

 

 暁と清霜も得意げに言ったので頭を撫でてやる。

 やっぱりまだ幼いから、こういうことをすると喜ぶのだ。

 

「司令官と不知火を驚かせようと思って、暁達頑張ったの!」

 

「ああ、ビックリしたよ。飾り付けでここまで変わるもんだなぁ」

 

 いつもは殺風景なこの流刑鎮守府もクリスマスツリーがあるだけで、何だか華やかに見えるものだ。

 

「去年は司令官が着任したばかりで、クリスマスを祝えなかったからな。今年はちゃんとしたいと思ってな」

 

「そういえばそうだったな」

 

 長月に言われ、俺は去年着任したばかりで色々忙しかったのを思い出した。

 

「それに清霜ちゃんは初めてのクリスマスですからね」

 

 五月雨がそう言うと、清霜が嬉しそうに頷いた。

 まあ確かに清霜は今年生まれたんだもんな。

 

「じゃあ清霜のためにもパーッとやるか!」

 

「うん! 清霜ね、サンタさんに戦艦にして欲しいってお願いするの!」

 

 満面の笑みで清霜は言った。

 

「清霜はずっといい子だったからきっとサンタさんも願いを叶えてくれるわ!」

 

 暁もそう言って清霜の頭を撫でている。

 

「・・・・・・二人ともサンタをまだ信じてるのか?」

 

「ああ・・・・・・まだ幼いしな」

 

 二人に聞こえないように小声で長月に耳打ちすると、長月も小声で返した。

 

「お姉様は何をお願いしたの?」

 

「うふふ、暁はね。オトナのドレスが欲しいってお願いするわ!」

 

 嬉々としてサンタさんへのリクエストを話す二人に微笑ましさを覚えつつも、少々重くなる。

 サンタさんを信じている二人の手前、欲しがっているプレゼントを用意してやりたい思いはある。だが暁のドレスはともかく、清霜の『戦艦になりたい』なんて物理的に不可能だしなぁ・・・・・・

 

「司令官! ボクはサンタさんにPS5お願いするんだぁ。ボク、いい子だったから余裕だよね?」

 

「谷風さんは日輪刀だね! DXじゃなくて高い方がいいなぁ」

 

「そうだな。サンタさんに頼んでくれ」

 

 サンタの正体を知った上で催促してくる子供ほどたちの悪いモノは無いな。

 

「ねーねー、司令官。清霜の所にサンタさん、来るよね?」

 

「・・・・・・ああ、きっとくるよ」

 

「本当! やったぁ!」

 

 無邪気にぴょんぴょん跳ね回る清霜に辛い現実を教えるのは酷な話だ。それに子供には夢を持たしてあげたい。

 さてどうしたものか・・・・・・

 

「皆、クリスマスも素敵だけど広島のお土産もあるのよ」

 

 不知火がそう言うと皆の顔色が変わった。

 

「そういえばそうだったな。とりあえずもみじ饅頭を買ってきたぞ。それに一人ずつ色々買ってきたし」

 

 これ幸いと話題を変える。皆も先のクリスマスよりも今のお土産だ。

 

「何かな何かな?」

 

「広島名物だよ。きっとそうだね!」

 

「では五月雨はお茶を煎れてきますね」

 

 皆で食堂に移動する。

 その間に俺はクリスマスをどうしようか、頭の中でぐるぐる思案するのだった。

 余談だが広島のお土産は清霜に戦艦大和のプリントされた帽子。暁には洋酒ケーキ。皐月には海軍ビール。谷風には熊野筆。五月雨には宮島のしゃもじ。長月にはオタフクソースとレモスコを贈りました。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

 そして迎えたクリスマス・イヴ当日。

 我が流刑鎮守府では盛大なクリスマスパーティーが開催されていた。

 

「メリークリスマスだぜー!」

 

 トナカイの格好をした谷風が元気よく音頭をとって、乾杯が行われる。

 サンタの格好をした長月がこの日のために豪華な料理を運んできた。

 グラタンにチキン、ケーキなどスタンダードな料理が並べられ、食卓が華やかに彩られる。

 

「司令官、シャンパン飲もうよ!」

 

 皐月がシャンパンとグラスを持ってやって来た。そういえばシャンパンなんてこんな時しか飲まないよな。

 

「暁も飲みたい! レディーは優雅にシャンパンなの!」

 

「いいけど大丈夫か?」

 

「平気だもん! 暁は一人前のレディーなんだから!」

 

 自信満々に言うので、俺は持っていたグラスを暁に向けてみる。暁は目を輝かせながらシャンパンをペロペロし、渋面を作って別のコップに入っているジュースを飲み始めた。

 シャンパンとは言え酒だからな。子供にはキツいよね。

 

「五月雨さん! ケーキケーキ!」

 

「はいはい、すぐ切りますからね」

 

 甘いケーキが待ちきれない清霜が催促し、五月雨が微笑ましい笑みを浮かべながらケーキを切り始めていた。

 

「ターキーなんて久々だわ」

 

「ああ。こういう時にしか食べないからな」

 

 不知火と長月も料理を楽しんでいるようだった。

 そして楽しいパーティーはあっという間に終わり、満腹になった状態で皆はベッドに入っていき、夜が明けた・・・・・・

 

 

「しれーかん! 見て! サンタさんが来てくれたわ!」

 

 翌日。

 俺が朝起きると興奮気味の暁が部屋に飛び込んできた。

 

「そうか、プレゼントを貰ったのか?」

 

「うん! 見て!」

 

 暁は嬉しそうに綺麗に包装された箱を取り出して、蓋を開けた。

 

「じゃーん! ドレスよ!」

 

 中から出てきたのは真っ赤なドレス。裾は長く、大人用のモノであった。

 

「ちょっと大きいけど、いつか暁が大きくなったらこれを着るの!」

 

 嬉しそうにぎゅうっとドレスを抱きしめると、暁は幸せそうに笑った。

 

「よかったな、暁・・・・・・と、ところで清霜の様子はどうだった?」

 

「うん、清霜はね・・・・・・」

 

 暁がそう言った瞬間、

 

「司令官! 見て見てーっ!」

 

 清霜が興奮しながら部屋に入ってきた。

 

「ど、どうした清霜?」

 

 驚く俺に清霜はプレゼントの入った箱をずいっと突き出してきた。

 

「これ!」  

 

 そう言って取り出した箱の中身は、小さな人形だった。

 艦娘は軍のプロパガンダとして本土ではグッズ展開をしている。その内の一つだった。

 

「清霜が戦艦になってる!」

 

 それは清霜のフィギュアに他の戦艦の艤装をくっつけたカスタム品であった。

 俗に言う戦艦清霜フィギュアである。

 

「これって清霜もいつか戦艦になれるってことだよね! ね!」

 

 目をキラキラさせながらそう言う清霜の頭を撫でてやる。

 本人はとても嬉しそうだった。

 

「司令官、サンタさんにありがとうって言っておいて!」

 

「暁からもお願い! 大人の司令官ならサンタさんに連絡できるでしょ」

 

「・・・・・・ああ、きっと伝えるよ。サンタも喜んでくれるさ」

 

 飛び跳ねながら部屋を出ていく二人を見送りながら、俺はふっと息をつく。

 

「司令官、いいのか?」

 

 不意に長月が横から尋ねてきた。いつの間に来ていたんだろう・・・・・・

 

「何がだい?」

 

「・・・・・・本当に皆がリクエストしたプレゼントを贈るなんて。高かっただろう?」

 

「何言ってんだ。プレゼントを贈ったのはサンタだぞ。普段頑張っている皆に、きっとご褒美をあげたんだろうな」

 

「・・・・・・そうか」

 

 長月はそれだけ言うと部屋を出て行くのだった。

 そしてその夜・・・・・・

 

「しかし高く付いたな・・・・・・」

 

 自室で俺は一人、預金通帳を見て呟いた。

 軍から出たばかりのボーナスが広島遠征と今回のプレゼントで吹き飛んでしまったのだ。 

 それでも暁と清霜の笑顔を思い出すと、自然と嬉しくなる。

 普段から頑張っている皆にクリスマスプレゼントをあげたいという気持ちもあった。

 だからこれは必要経費。必要経費なのだ。

 

「司令官、いるか?」

 

 不意にドアがコンコンとノックされた。

 長月の声だ。

 

「ああ、いるぞ。どうした?」

 

「入っていいか?」

 

「ああいいぞ」

 

 俺がそう言うとサンタ姿の長月が入ってきた。さらに谷風と皐月もいる。

 

「うお、皆どうした?」

 

「いや、折角の聖夜だし。飲まないか?」

 

 そう言う長月の手にはグラスが握られていた。

 

「知ってる、司令官? クリスマスには『性の六時間』って時間があるんだよ!」

 

 皐月がそんなふしだらな事を言いながら、身を寄せてきた。

 

「お前、女の子がそういうこと言うもんじゃないぞ。それに俺達には関係の無い話だ」

 

「だけどせいはせいでも清酒の『せい』だとしたら?」

 

 谷風が懐から一升瓶を取り出して言った。

 

「それは・・・・・・いいな」

 

「ふふふ、頑張ってくれた司令官・・・・・・いや、サンタさんへ私達からのプレゼントだ」

 

 長月と照れたように言う。

 俺も何だか照れくさくなった。

 

「さささ! 夜はこれからだよ!」

 

「おつまみも作ってきたぞ」

 

「谷風トナカイ、厳選の日本酒さ、うまいよっ!」

 

 三人の少女が周りに腰を降ろしていく。

 流刑鎮守府のクリスマスは始まったばかりだった。

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

  • 改二になったほうがいい
  • このままでいい
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