流刑鎮守府異常なし   作:あとん

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ギックリ腰は実話です


ギックリするほどユートピア

 きっかけは些細な事だった。

いつものように俺と五月雨が執務室で事務仕事を行っていた時、棚の上にある資料が必要になった。五月雨が取ろうとしたが、思ったよりも高く手が届かない。なので俺がその資料が入った箱を取ろうとして、持ち上げた瞬間だった。

 

「ぐうあっ!?」

 

突然、腰に電流が走ったような感覚が襲ったのた。

 

「ど、どうしました提督!」

 

すぐに五月雨が駆け寄ってくる。

 

「あ、いや、一瞬腰が痛くなっただけだ。大丈夫だよ」

 

俺はそう言って箱を持ち上げて、下に置いた。確かに痛みはあったが動けないほどではない。なんだかビリビリするような感触はあるけど、暫くしたら元に戻るだろう。この時、俺はそう考えていた。

そのあと痛みは中々取れず、一日中腰は痛いままだった。それでも生活できない程ではないため、俺はいつも通り皆と過ごし、ちょっと長めにお風呂に浸かって、長月の作った美味しい晩御飯と晩酌を楽しみ、床についた。

 

翌日。

目覚まし時計の音で目を開き、ベッドから起き上がろうとした瞬間だった。

 

――ピギッ!!

 

確かに俺はそんな音を聞いた。そして直後、今まで経験したことの無い激痛が腰を襲ったのである。

 

「…………」

 

人間、本当に痛いと言葉も出ないものである。少しでも動かすと激痛が走るのだ。俺はただ仰向けのまま、ベッドの上で待機することしかできない。

不思議なことに動かなければあまり痛みはしなかった。だがベッドから起き上がろうと少しでも動けば、激痛が襲ってくる。これはまさか。

 

「ぎっくり腰、かな……」

 

30目前。腰の爆弾が爆発した瞬間であった。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

「司令官、大丈夫?」

 

 清霜が心配そうに言った。

 現在、俺は自室のベッドの上でうつ伏せになっている。

 

「ああ、動かなければ痛みはあんまり無い。あんまり無いんだ・・・・・・」

 

「典型的なぎっくり腰の症状ですね」

 

 不知火の冷静な分析に俺は大きく溜息をついた。

 

「くそ・・・・・・情けねえ。まさか俺がぎっくり腰なんてよ」

 

「まあもうおっさんなんだし、無理するなって事だよ」

 

「お、おっさん・・・・・・」

 

 皐月の言葉がナイフのように心を抉る。そうか、おっさんか・・・・・・28歳は艦娘達にとってはおっさんか・・・・・・

 

「て、提督! 五月雨はおじさんでも全然きになりませんよ!」

 

「暁だって! レディーにはミドルなおじさまがよく似合うんだから!」

 

 二人は俺を気遣ってくれているようだが、その優しさが逆にグサグサ刺さる。

 もう君たちにとって、俺はおじさんなのね。

 

「これでは仕事も無理だろう。今日はゆっくり休んだ方がいいぞ」

 

「スマン長月。後は・・・・・・頼む」

 

「任せておけ。おい皆いくぞ。司令官が指揮を執れないからといえども、私達は仕事だ」

 

 長月は敬礼すると皆を引き連れて部屋から出て行った。

 まあ俺がいなくてもやることは普段と変わらないし、大丈夫だろう。事務仕事も五月雨一人で何とかなるはずだ。

 さて・・・・・・

 

「何でお前はここにいるんだ、皐月」

 

 俺はベッドの横で俺を見下ろしている少女に尋ねた。

 

「何でって、ボク今日は休みだよ?」

 

「そういうことじゃないの。何で俺の部屋にいるんだよ」

 

「だってそこ。ボクの漫画スペースだもん」

 

 そう言って皐月は俺が寝ているベッドを指差した。

 確かに彼女はよく俺のベッドに寝っ転がりながら、俺の漫画を読んでることが多い。

 でもそれは俺が仕事とかでベッドから離れているときの話だ。

 

「そんなこと言われても、俺は今動けないんだ」

 

「そんなに痛いの?」

 

「想像以上に痛いぞ」

 

 昔、母親がぎっくり腰になって数日間布団から動けなかった事がある。当時はそんな痛いわけないだろと思っていたが、実際になるとヤバい。何せ体を少しでも動かすだけで激痛が走るのだから。

 お母さんごめんなさい。

 

「漫画は貸してやる。だからどっか別の所に行きなさい」

 

「大丈夫大丈夫。ここでいいよ」

 

 皐月はそう言うと本棚から横山三国志を数冊持ってくると、俺のベッドの横に腰を降ろした。

 

「・・・・・・まさかそこで読む気か?」

 

「劉備が死ぬまでは読むよ」

 

「・・・・・・まあ騒がしくしないならいいか」

 

 そう思い俺は横になった。不思議なモノで動かなければギックリ腰はあまり痛くないのだ。

 しかしそうなると新たな問題が出てくる。

 

「・・・・・・暇だな」

 

 寝たきりというのは非常に退屈なのである。

 かといってベッドからは動けないので、やれることは限られていた。

 

「あ、司令官。白馬陣が出たよ」

 

「めっちゃいいところじゃねぇか」

 

「司令官、このへん好きなの?」

 

「俺は劉備三兄弟が出るところは大体、大好きだぞ」

 

「司令官ってもしかして蜀派?」

 

「断然、蜀だな」

 

 そんな他愛もない話をしていて暫く経った時だった。

 

「しれーかん! だいじょうぶー?」

 

 清霜が元気よく入ってきた。

 

「おお、清霜。どうした。暁は一緒じゃないのか?」

 

「お姉様は遠征! 清霜は演習だから早く戻ってこれたの!」

 

 そう言って清霜はトテトテこちらへと寄ってきた。

 

「司令官、退屈してたんじゃない? 清霜がご本読んであげる!」

 

「ほ、本か・・・・・・」

 

 たしかに暇だったのは事実だが、幼女に本を読んで貰うのは大の大人としてどうなのか。いやむしろ、ちゃんと聞いてあげるべきなのか。一体何を読むんだろうか・・・・・・俺がベッドの上で戦々恐々しながら待っていると、清霜が漫画を持って近くまでやって来た。

 

「じゃーん! 聖闘士星矢! 司令官、好きでしょ?」

 

「好きだけど・・・・・・」

 

 それをどうやって読ませる気なんだろう。漫画じゃないか。俺が疑問を抱いた矢先、清霜は口を開いた。

 

「テケテケテケテケテケテケテケテケテーン! 聖域十二宮の戦いは切って落とされた!」

 

 アニメ版の前回の予告を頑張って真似する清霜。その様子は大変微笑ましいのだが・・・・・・

 

「なんでいきなり十二宮編から?」

 

「司令官、黄金聖闘士好きでしょ?」

 

「好きだけど・・・・・・うん、好きだよ」

 

 折角、清霜が好意でやってくれることだ。色々とつっこむのは野暮だろう。横で皐月が笑いを堪えているが、俺は嬉しいよ清霜。

 そんな感じで全CV清霜の黄金十二宮編を聞き始めて、暫く経過した時だった。

 

「司令官、腰の様子はどう?」

 

 今度は暁がやって来た。

 

「お姉様、おかえりなさい!」

 

 彼女の姿を見て清霜が立ち上がった。本当に慕ってるんだなぁ。

 駆け寄ってきた清霜の頭を撫でながら、暁は俺の方へ視線を向けた。

 

「ああ、良くは・・・・・・なってないかな」

 

 動かなければ痛みはない。だが動くときが地獄。俺がこの数時間で学んだことだ。

 

「ふふふ、司令官のためにレディーがいいものを持ってきたわ!」

 

 得意げに暁は言うと懐から何か小さなモノを取り出した。

 

「じゃーん! 湿布よ! 医務室の奥にあったの!」

 

「おお、それはありがたい」

 

 湿布を貼れば腰の痛みが和らぐかもしれない。この地獄の痛みが少しでも治まるのなら、贅沢は言えない。

 俺は何とか体を動かして、仰向けからうつ伏せへと体勢を変える。これだけでもかなり痛いが辛い。

 

「司令官、痛そうだねぇ」

 

 皐月が他人事のように言った。ちなみに彼女はずっと熱演する清霜をスルーして、ずっと三国志を読んでいた。

 

「痛いんだよ畜生」

 

 激痛に耐えながら、俺は何とかうつ伏せになった。

 

「暁が貼ってあげる!」

 

 そう言って暁が俺の寝巻きを捲っていく。背中が外気に触れ体が強張る。暁はペリペリとシールを剥がして、俺の腰に湿布を貼りつけた。ひんやりした感覚が何とも心地いい。

 

「これで・・・・・・よしっ!」

 

 そう言って暁は。

 

 ――バシン!

 

「があああああああああああああああっ!!」

 

 腰を叩いた!

 

「わっ! ど、どうしたの司令官!?」

 

「どうしたってお前・・・・・・」

 

 この状態で腰を叩かれるとか、拷問と何が違うのか。

 

「何故腰を・・・・・・叩いた・・・・・・」

 

「だ、だって・・・・・・よくドラマとかで、こんな風に・・・・・・」

 

 確かに湿布貼った後、そこを叩くシーンあるけど・・・・・・

 

「司令官、大丈夫?」

 

 心配そうに清霜が覗き込んでくる。

 

「あ、ああ・・・・・・まあ・・・・・・」

 

 とはいえ暁は悪気があってやったわけではない。強く責めるわけにはいかないだろう。

 

「ご、ごめんなさい司令官。暁・・・・・・暁・・・・・・」

 

「いや大丈夫だ。ありがとうな・・・・・・」

 

 泣きそうな顔になった暁の頭を撫でて宥めていく。

 それに湿布のおかげか腰の痛みは少しだけ和らいだ気もする。

 

「司令官、昼食の準備が出来たぞ」

 

 そんな時、長月がひょっこり現れた。

 

「なんだ。皐月たちもいたのか」

 

「うん。司令官も一人じゃつまんないだろうしね」

 

 皐月はそう言って三国志を置いて立ち上がる。

 

「食堂まで行けるか?」

 

 長月が尋ねてくるので、俺は首を無言で横に振った。

 

「すまん、無理。痛くて動けん」

 

「司令官、暁の湿布でも良くならないの?」

 

「いや・・・・・・痛みは少し和らいだけど、まだ大丈夫ではない・・・・・・」

 

 ギックリ腰の痛みは激しすぎるのだ。

 

「湿布?」

 

 そこで長月が首を傾げた。

 

「暁が見つけたの!」

 

 えっへんと小さな胸を張る暁だったが、長月は淡々と言った。

 

「ギックリ腰は冷やすより温めた方がいいんじゃなかったか?」

 

「え・・・・・・」

 

 その一言で暁は目をパチクリさせて固まってしまう。

 

「そ、そうなのか?」

 

「ああ、確かそんなことを聞いた気がするのだが・・・・・・」

 

 長月がそう言うと暁の顔がみるみると曇っていく。

 

「い、いや! 痛みは和らいだのは確かだぞ! ありがとうな、暁!」

 

 涙目になりはじめた暁の肩をポンポン叩いて慰める。

 それに腰を温めればいいのか、冷やせばいいのか俺には分からないからな。

 

「と、とりあえず、ご飯を持ってきてくれ」

 

「わ、わかった」

 

 長月も不味いと思ったのかそそくさと部屋から出て行った。

 

「司令官・・・・・・暁、駄目だった?」

 

「い、いやそんなことないぞ。ありがとうな暁」

 

「お姉様、泣かないで! お姉様は立派よ!」

 

 俺と清霜が暁を慰めていると、長月がお盆に昼食を乗せて戻ってきた。

 

「さ、ご飯だぞ。皆のは食堂にあるからそっちで食べてくれ」

 

 長月がそう言うと暁と清霜は「司令官、またね」と言い残し、食堂へと向かっていった。

 

「チャーハンにしたけど、大丈夫か?」

 

「ああ汁物よりはいいさ」

 

 今日のお昼はチャーハン。飲み物は麦茶だ。

 俺はお盆を自らの膝に置くとそのままレンゲでチャーハンを掬って口に放り込む。

 

「うまいな」

 

「ふふ、そうか」

 

 長月は嬉しそうに微笑むと、ベッドの傍らにいる皐月に視線を向けた。

 

「皐月の分も出来ているぞ」

 

「うん。ありがと。すぐいくよ」

 

 皐月は読んでいた三国志を閉じると立ち上がった。

 

「じゃあ司令官。またくるから」

 

 そう言うと皐月は長月と共に出て行った。

 ・・・・・・無言で長月特製チャーハンを食べる。

 そういえば一人飯は久しぶりだな。会社の時は出先で一人飯っていうか外食かコンビニ弁当が普通だったが、この鎮守府に来てからは艦娘達と一緒に食べていた。皆と食べるのが楽しかった分、一人で食べるのは何だか寂しいな・・・・・・と思っていたときだった。

 

「提督ー! 元気してるかー! 谷風さんが見舞いにきたよー!」

 

 谷風が元気よく入ってきた。

 

「谷風か。ご飯はもう食べたのか?」

 

「あたぼうよ! 提督はこれからみたいだね」

 

 谷風はそういうと俺の横に腰を降ろした。

 

「腰はもういいのかい?」

 

「全然だ。全く痛みがとれん」

 

「そりゃ大変だねえ」

 

 しみじみ言うと谷風はそのまま俺の腰を優しく撫でた。

 それだけでも背中に鋭い痛みが走る。

 

「ううう・・・・・・いででで」

 

「うおっ、ごめんよ。痛かったかい?」

 

「い、いや、大丈夫だ・・・・・・」

 

 申し訳なさそうにこちらを覗き込んでくる谷風に何とか強がってみせる。

 だが腰はまるで爆弾の如く、いつ爆発するかわからぬ危険物なのだ。

 

「くそ・・・・・・飯食うのにも一苦労だぜ」

 

「大変そうだねぇ、提督。あ、そうだ。何だったら谷風さんが食べさせてあげようか?」

 

 駆逐艦にご飯の世話をして貰う提督。傍目から見ると子供に介護されてるおっさんだな・・・・・・

 

「いや、気持ちはありがたいが止めておく」

 

「遠慮すんなって~ほれほれ、器とレンゲかしてみな」

 

「お、おい・・・・・・」

 

 動けない俺から谷風はチャーハンを引ったくると、そのままレンゲで掬い、俺の口元へと持ってくる。

 

「はい、あーん」

 

「う、あ、あーん」

 

 折角ここまでやってくれたので、俺はご厚意に甘えることにした。

 口の中にチャーハンの旨みと共に、何とも言えない温かい気持ちが胸に湧き上がってくる。

 

「よしよし。じゃあ、はい、あーん」

 

 俺が咀嚼し終わると、谷風が笑顔で次を出してくる。

 恥ずかしいけど何だか嬉しいな・・・・・・と思いながら口を開けた瞬間。

 

「そこまでよ谷風」

 

 突然出てきた不知火が谷風の腕をガシッと掴んだ。

 

「うおっ! いきなり何でい、不知火!」

 

「抜け駆けは禁止よ」

 

 不知火はそれだけ言うと俺から不知火を引き離した。

 

「不知火よぉ・・・・・・ちょっとばかし心が狭すぎやしないかい?」

 

「余計なお世話よ。司令官も落ち着かないだろうからいくわよ」

 

「あ・・・・・・不知火俺は別に・・・・・・」

 

「さ、谷風。陽炎型同士、ゆっくりとお話ししましょうか」

 

「そんなに無粋だと大好きな司令に愛想つかさむぐっ!?」

 

「司令官、失礼しました。では」

 

 何か言おうとした谷風の口を塞ぐと不知火は出て行った。

 

「何だったんだアイツ・・・・・・」

 

「何だったんだろうね」

 

「うおっ!?」

 

 いつのまにか皐月が戻ってきていた。

 俺が突然の皐月登場に驚いていると、彼女はそのまま谷風が離したチャーハンの器を手に取った。

 

「さ、司令官。今度はボクが食べさせてあげる」

 

「お、おい。大丈夫か?」

 

「大丈夫大丈夫。不知火は谷風が足止めしてくれてるからさ」

 

「足止めっていうか、生け贄では・・・・・・」

 

「はい司令官。あーん」

 

 皐月が笑顔でチャーハンを突き出してくる。

 俺は無言で口を開いた。

 今日、俺は誰かに食べさせて貰うって意外と悪い気がしないことに気づいたのだった。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

「提督! 今日のお仕事終わりました! 早速確認を・・・・・・あれ、皐月ちゃん?」

 

「お、五月雨。お疲れ様」

 

 夕方になり五月雨が書類を持って現れた。

 五月雨は部屋に入ってベッドの横で三国志を読む皐月を見つけてそう言うと、そのまま俺の側へ寄ってきた。

 ちなみに皐月はあの後、ずっとここで三国志を読んでいる。

 

「お疲れ様。すまないな五月雨」 

 

「いえ、腰は大丈夫ですか?」

 

「ああ、何とか・・・・・・」

 

 俺は五月雨から貰った書類に目を通していく。さすが長い間秘書艦をしてるだけあって、ちゃんと出来ている。

 

「うん、バッチリだ。ありがとう五月雨」

 

「えへへ・・・・・・」

 

 彼女に労りを込めて頭を撫でると、五月雨は嬉しそうに笑った。

  

「あ、それと提督がギックリ腰と聞いて妖精さんがいい人・・・・・・いえ、いい妖精さんを連れて来てくれたんです」

 

「おおそういえば五月雨は妖精さんと仲が良かったな」

 

 しかしいい妖精さんって何だろう・・・・・・と思っているとガラリと扉が開き、何かが現れた。

 

「紹介します。接骨妖精さんです」

 

 五月雨の紹介と共に現れたソイツはあまりに異形の存在だった。

 通常は掌サイズである妖精さんと比べものにならないほどの巨体。多分2メートル近くある上に、筋骨隆々。

 なのに顔は妖精さん特有の適当な顔。

 アンバランスの化身と言うべき存在だった。

 

「接骨妖精さんは普段は別の鎮守府にいるのですが、特別に来て頂きました」

 

「特別ってお前・・・・・・」

 

 あまりの衝撃に言葉が上手く出ない。

 というかこいつは本当に妖精さんなんだろうか。こんなのが侵入してきて他の艦娘は騒がないのだろうか。

 正直、妖精さんのコスプレをしたムキムキマッチョのおっさんという可能性も捨てきれない。

 皐月も驚いたのか目を見開いたまま動かない。多分、脳内で情報が処理できなかったのだろう。

 

「ではお願いします先生」

 

「先生って五月雨お前・・・・・・って一体何を・・・・・・」

 

 接骨妖精さんはズカズカ俺の側までやってくると、その丸太のような腕で俺の体を押さえつける。

 

「安心しろ。俺はプロだ。死ぬほど痛いが明日にはスクワットが出来る体にしてやる」

 

 普通の妖精さんからは考えられない野太くしっかりした口調でソイツは言った。

 

「ま、まって・・・・・・俺はまだ」

 

 瞬間、接骨妖精さんは俺の体を折り曲げた。

 激痛と共に鎮守府中に俺の絶叫が響き渡った。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

「司令官、大丈夫?」

 

「・・・・・・・・・・・・ああ」

 

 数時間後、俺はベッドに突っ伏していた。

 あの筋肉ダルマ、俺の体を散々弄びやがって・・・・・・痛いの何のって・・・・・・

 

「本当に直ったの?」

 

「直ってはないが大分、体はほぐれたらしい」

 

「そっか」

 

 皐月は俺を心配そうに見下ろしていたが、そう聞くと安心したのか腰を降ろした。

 

「・・・・・・なあ皐月」

 

「何?」

 

「・・・・・・ありがとうな」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 外は既に紅から黒に染まりつつある。

 もうすぐ日は暮れ、夕食の時間が始まるはずだ。

 

「今日一日、一緒に着いていてくれてありがとうな。おかげで元気が出たよ」

 

「・・・・・・べ、べつにそんなんじゃないよ。非番で暇だったから、三国志もあるし・・・・・・」

 

「・・・・・・そうか」

 

 照れたのか皐月は耳を朱くしてそっぽを向いてしまう。

 だが彼女が一日中、側にいてくれた事で俺は大分救われたのは確かだった。

 

「ふふ、皐月。お前って可愛いな」

 

「なっ・・・・・・なっ・・・・・・」

 

 恥ずかしさからか皐月は顔を真っ赤にして立ち上がった。

 

「も、もう! いきなり何言ってんのさ、もう!」

 

「はははは、すまない」

 

 珍しく狼狽える皐月に苦笑していると、長月がご飯を運んできた。

 もう日は暮れたようだ。

 

「司令官、また食べさせてあげよっか?」

 

 ある程度落ち着きを取り戻したのか、皐月は悪戯っぽく言った。

 

「またいつかな」

 

 俺はそう返し、皐月の肩をポンと叩くのだった。

 

 余談だが接骨妖精さんの腕は確かだったようで、俺は次の日には歩けるようになった。

 サスペンダーも作って貰い、俺は何とか提督業務に復帰したのであった。




自分も腰が痛いときに側に艦娘がいて欲しかった・・・・・・
ギックリ腰と接骨院の痛みは実話です。

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

  • 改二になったほうがいい
  • このままでいい
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