流刑鎮守府異常なし   作:あとん

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ヤマトナデシコ七変化

「ではこれより!」

 

 皐月が拳を天高く挙げた。

 

「第二十八回流刑鎮守府艦娘会議を始めます!」

 

『おーーーーっ!!』

 

 皐月の宣誓に谷風と清霜が全力で乗っかった。

 

「あまり五月蠅くすると司令が起きてしまいますよ」

 

 そんな彼女達に 冷ややかな視線を向ける不知火。苦笑する五月雨と長月。やる気満々の暁。

 流刑鎮守府における彼女達の立ち位置が如実に現れていた。 

 現在時刻は午後9時。場所は皆の共同寝室。

 ここで行なわれているのは流刑鎮守府に所属する駆逐艦たちの会議・・・・・・という名のパジャマパーティーである。

 

「と、言うわけで今回の議題は・・・・・・あのくそったれ馬鹿野郎(司令官)の事だよ」

 

 皐月が司令官の事を出すと、皆の顔が強張った。

 

「皆も分かっているとは思うけど・・・・・・この前、五十鈴さんが来た時の問題についてなんだけど・・・・・・」

 

「嬉々として覗きに行っていたな」

 

 長月が重々しく言った。

 

「谷風さん達のお風呂なんて一度も覗いたことねえからな、あの鈍感唐変木」

 

「の、覗いてほしい訳じゃ無いけど・・・・・・あれはレディー達に失礼だと思うの」

 

「あの変態は不知火達のことなど、眼中に無いといわんばかりですからね」

 

 不満がドンドン溢れてくる。

 皆、提督に女扱いされていない現状に、不満が溜まっていたのだ。

 

「このままじゃ不味い! ボクはそう考えたわけだよ!」

 

 拳握って力説する皐月。そんな彼女に皆の注目が集まったのを確認すると、皐月は一呼吸置いて言った。

 

「そこでボクは思いついた。司令官がボク達を女の子として見ないなら、見るようにしちゃえばいいじゃん」

 

「しちゃえばいいじゃんって、お前・・・・・・」

 

 長月が呆れたように言った。

 

「それが出来れば苦労しないわ。でも不知火達には難しいと思う」

 

 不知火も不満そうに続ける。そんな仲間に皐月はちっちっちと指を振った。

 

「そんなことは無いよ! ボク達だってそれなりにカワイイはずさ。後は、司令官がボク達を見る視点をちょっと変えるだけでいいのさ・・・・・・題して!」

 

 皐月は一瞬貯めて、皆の反応を窺っているようだった。

 うさんくさそうに見る長月と不知火。苦笑する五月雨と谷風。目を輝かせる暁と清霜。

 それを確認すると皐月は言い放った。

 

「『流刑鎮守府・キャバクラ大作戦!』だよっ!!」

 

「はぁ?」

 

 自信満々に言った皐月に対してすぐに反応したのは長月。その答えは辛辣だった。

 

「司令官といえば大の酒好き。そしてお酒と女の子が一つになる場所! それがキャバクラだよ!」

 

「スナックでもよくねえか?」

 

「古い。古いよ、谷風。それにスナックには美人のママさんが必要だけど、ボク達の仲でその役を出来る子いないし……」

 

「……キャバクラも古いイメージだが」

 

 長月に痛い所を突かれたのか皐月はゴホンと咳払いをすると、説明を再開した。

 

「つまり! 司令官を大好きなお酒で誘いだし、ボク達が全力でカワイイアピールをするのさ。そうすればさすがの司令官だって、多少はボク達の見る目が変わるはず!」

 

「でもカワイイアピールってどうやるの?」

 

 清霜に尋ねられ、皐月はふふんと得意げに言った。

 

「それにはボクの作戦があるのさ! それは……ズバリ、コスプレだよっ!」

 

「コスプレ……ですか」

 

 五月雨が困ったように言った。

 

「そう! カワイイコスプレして司令官にアピールするんだよ! まずはボク達がカワイイ女の子ってことを自覚させる! これが大事!」

 

「コスプレか! それなら谷風さんの出番だねぇ!」

 

『…………』

 

「な、なんでぇ皆! その怪訝な反応は!?」

 

「だって谷風のコスプレ、可愛くないし」

 

「時代劇とかそんなのばっかりだよね」

 

「そ、それのどこがいけねえんだ! 可愛いだろ!」

 

 暁と皐月にそう言われた谷風は怒って抗議するも、他の皆も同じ思いなのか苦笑するだけだった。

 

「まあ谷風の残念コスプレは置いといて、折角だし司令官にガンガンお酒飲ませて色々探ろうよ」

 

「探るって・・・・・・何をですか?」

 

「それは・・・・・・色々だよ。女の子の好みとか、理想のシチュとか・・・・・・今後の参考にするんだよ」

 

「お前と谷風はよく司令官と呑んでいるが、その辺は聞いたりしないのか?」

 

「・・・・・・そりゃボク達だってお酒飲むし・・・・・・そしたら司令官と馬鹿話しかしないし・・・・・・」

 

 長月と不知火が深い溜息をついた。

 

「と、とにかく! 司令官の好感度を上げつつ、攻略情報を引き出す! 流刑鎮守府・キャバクラ大作戦、発動だよっ!」

 

「おーっ!」

 

 元気いっぱいに同調したのは清霜だけだった。

 

「コスプレ・・・・・・コスプレですか・・・・・・」

 

「暁の美しい姿を司令官に見て貰うチャンスね・・・・・・」

 

「見てろよ畜生・・・・・・絶対にぎゃふんといわせてやるぜ・・・・・・」

 

「私はクリスマスの時に着た衣装でいいか?」

 

「うーん、新しい方が提督の受けがいいと思うよ」

 

 夜は更けていき、艦娘達の作戦会議は続いていった。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 

 仕事が終わった後の風呂は最高である。風呂上がりにキンキンに冷えたビールがあれば、なおいい。

 いつも通り提督の事務仕事を終えた俺は、流刑鎮守府入渠場という名の大浴場でのんびりと羽を伸ばしていた。

 基本的に我が鎮守府では風呂に入る順番は決まっていない。

 一番風呂は譲れないと豪語する谷風が最初に入るのは確定事項だが、後は自由である。

 少し熱めの湯加減な湯船にじっくりと浸かり、体の疲れを洗い流す。

 じっくりと体を温めてから風呂を出る。

 脱衣場から出てビールの入った冷蔵庫のある食堂に向かおうとした時だった。

 

「じゃっじめんとたーいむ!」

 

 後ろから皐月の元気な声が聞こえてきた。

 

「何だ、皐月」

 

 そう言って振り返った俺は思わず言葉を失った。

 白いブラウスと水色のネクタイ。青いジャケットを羽織り、紺色のタイトスカート。

 婦人警官。

 皐月は何故かそんな格好をしていたのだ。

 

「じゃんじゃじゃーん! セクシーポリス、皐月ちゃんだよ!」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「ふっふっふ、どーう? 司令官。刺激的すぎてフリーズしちゃった?」

 

 腰から玩具の拳銃を取り出すと、皐月は可愛らしくウインクする。

 そんな彼女に向かって、俺は辺りを見渡して口を開いた。

 

「・・・・・・セクシーポリス? そんなもの、どこにいるんだ?」

 

「はぁああああっ!? 目ぇ腐ってんじゃ無いの!?」

 

「う、すまんすまん。ちょっと驚いてな。似合ってるぞ」

 

 俺の言葉に憤慨する皐月。

 だが俺だって言葉通り困惑しているのだ。

 セクシーとは思わないものの、皐月の婦人警官姿はとても可愛らしい。

 だから俺もちょっとドキッとして、その照れ隠しとしてこんな言葉が出てしまったのだ。

 

「うう~っ! この唐変木! 司令官は逮捕! 逮捕だよ!」

 

 ガシャン! という金属音と同時に冷たい感触が手首を包んだ。

 

「な!? コレお前、本物の手錠じゃないか!」

 

「そうだよ! 司令官はこれからボクに連行されちゃうんだよ! さあ、こっちにくるんだよ!」

 

 そのままグイグイと引っ張られ、俺は無理矢理どこかへ連れていかれてしまう。

 暫くして辿り着いたのは、いつもの食堂だった。

 だが中に入ると通常とは違った内装に変わっていた。

 皆で食事を取るテーブルと椅子が無くなり、代わりにソファーと小さなテーブルが置いてある・・・・・・てこれ執務室のじゃないか。

 

「ささ、ココに座って!」

 

 皐月に促されソファーに腰を降ろす。すると彼女は俺の手錠を外してくれた。

 

「皐月、お前一体何を企んでいるんだ?」

 

「た、企んでるとは酷いなぁ・・・・・・今日はいつも頑張ってる司令官にボク達から、お・も・て・な・し、しようと思ってね」

 

「何を企んでいるんだ?」

 

 皐月のおもてなしとか裏があるように思えてならない。

 それに他の艦娘達も見当たらないし、一体何をする気なんだろうか。

 

「いいか、皐月。お前が一体何をしようとしているのかは知らんが、俺はここの指揮官として言うべきコトはハッキリと・・・・・・」

 

「まぁまぁ。ビールでも飲みなよ」

 

「ビールならしょうがないな」

 

 まずは相手の出方を見るのが兵法の定石だからな。

 皐月からキンキンに冷えた缶ビールを受け取り、プルトップを開ける。

 

「司令官、かんぱーい!」

 

「乾杯!」

 

 皐月と缶ビールをガチンと乾杯し、そのまま一気に中身を呷っていく。やはり風呂上がりのビールは最高だな。

 

「ねえねえ司令官」

 

「なんだ?」

 

「ボクのこの格好、どう?」

 

 皐月は小首を傾げて、尋ねてきた。心なしか不安そうでもある。

 

「ああ、似合っているぞ。かわいいな」

 

 酒も入ったからか素直に褒められる。

 

「そ、そう?」

 

「ああ。元気な皐月にピッタリだ」

 

 セクシーポリスというのには無理があるが、ちびっ子警官として凄く可愛いと思う。

 

「えへへぇ。そうかなぁ」

 

 嬉しそうに破顔する皐月をわしゃわしゃ撫でる。これはこれで微笑ましいのであるが、彼女の目的は一体何なのだろう。

 

「で、おもてなしってのは何だ?」

 

「うん。今日は皆で司令官に楽しんで貰おうと思ってね。こうしてコスプレしてるんだよっ!」

 

「・・・・・・そうか」

 

 おもてなしってそういうことか。しかしなんでそんなことをするんだろう。

 

「もしかして他の皆も?」

 

「うん! これから来るよ! 誰が一番か、司令官に決めてもらうよ!」

 

「俺が審査員か」

 

 もしかしてそういう勝負でも皆でやってるんだろうか。

 それなら話も分かるが。

 

「なら俺も全力で審査させてもらうか」

 

「ふふふ、そう言ってくれると信じてたよ・・・・・・じゃあ一番手! カモン!」

 

 皐月が勢いよくそう言うと、厨房から人影が一つ飛び出してきた。

 

「い、一番! 五月雨、参りました!」

 

 出てきたのは五月雨だった。

 白いフリルの着いたエプロンとカチューシャに、可愛らしいソックスと靴。

 所謂、メイド服という奴だった。

 

「おお、メイド服か・・・・・・」

 

「は、はいっ! 春雨ちゃんのを借りました!」

 

 そういえば春雨には限定のグラでメイド服があったっけ。そんな事を考えていると、五月雨はスカートの裾をちょこんと摘まんで微笑んだ。

 

「ご、ご主人様。五月雨がご奉仕しますね」

 

 恥ずかしそうに五月雨は言うと、そのまま俺の横に腰を降ろした。

 しかし清楚な五月雨に上品なメイド服はよく似合う。

 デザインはスタンダードなメイド服そのもので、スカートから伸びる太腿が健康的だ。

 

「で、では五月雨はこの持ってきた枝豆に魔法をかけますね」

 

 おつまみとして持ってきた枝豆。それをテーブルに置くと五月雨は顔を赤くしながら、何かポーズを取った。

 

「お、お・・・・・・美味しくなーれ! もえもえきゅーんっ!」

 

 両手でハートを作り、五月雨は魔法の呪文を唱えると両腕を大きく突き出した。

 よくメイドカフェでやっているというアレだ。

 恥ずかしいのかトマトように顔を真っ赤にして、ポーズを取る五月雨は何だか微笑ましかった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「ふ、ふぇっ・・・・・・ど、どうして頭を撫でるんですか?」

 

 うんうん。五月雨は可愛いなぁ。

 

「五月雨、ちょっと」

 

 皐月が何か手招きして、五月雨は彼女の方へと向かう。何やら耳打ちしているらしく、五月雨はやがて何か確信したように力強く頷くと、一旦厨房に戻っていく。

 少し経って、五月雨は黒い猫耳カチューシャと尻尾を着けて帰ってきた。

 

「猫耳メイドか、まあこれもスタンダードっちゃスタンダードか」

 

「ふっふっふ。いつまでそんな余裕を保てるかな? 五月雨、やぁっておしまい!」

 

「は、はい! て、提督の未来に・・・・・・ご奉仕するにゃん!」

 

 やはり頬を朱に染めながらポーズを決める五月雨。

 まだ恥ずかしさは残っているらしい。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「ああっ! どうしました提督!? 急に崩れ落ちたりなんかして!?」

 

「い、いや大丈夫。大丈夫だ」

 

 チラッと皐月を見る。皐月はグッとサムズアップした。

 

「本当に大丈夫ですか、提督。五月雨、何かいけなかったでしょうか?」

 

「いや君は悪くないよ。ただ五月雨の言葉が俺の琴線に触れただけさ」

 

 色んな意味で懐かしくて涙が・・・・・・猫耳にメイド・・・・・・確かにそうだったわ。

 

「五月雨、約束通りボクと五月雨で司令官の票を山分けね」

 

「う、うん・・・・・・ワンツーフィニッシュってやつだよね」

 

 二人が何か言っているが、きっと何か談合が行なわれているのだろう。

 

「それじゃあ、次に行こうか! 二番手、go!」

 

 皐月のかけ声と共に新しい人影が入ってきた。

 

「な、長月だ・・・・・・」

 

 少々恥ずかしそうにやってきたのは長月だった。

 彼女が身につけているのは、真っ赤なチャイナドレス。スレンダーな彼女にはよく映える。スリットから伸びる生足が美しい。

 

「な、何だ司令官・・・・・・この格好は変か?」

 

「変じゃないけど・・・・・・」

 

 長月の緑の髪に赤いチャイナとなると、某ゲームのアイドル志望なドラゴンでケンタウルスが頭に浮かぶというか・・・・・・

 

「うん。可愛いぞ長月。大人っぽくていい感じだ」

 

「そ、そうか」 

 

 長月は声を上ずりながら返事をすると、お盆に幾つか料理を置いて持ってきた。

 

「おお、これは・・・・・・」

 

 テーブルの上に置かれたのは、長月の手料理達。

 餃子、棒々鶏、酢豚。

 普段はお目にかかれない中華料理の数々。

 

「折角だからな。服に合わせて中華料理にしてみたんだ、どうだ?」

 

「どうだって・・・・・・最高だよ長月。食べていいか?」

 

「ああ、あんたのために作ったんだ。食べてくれ」

 

 はにかみながら言う長月に礼を言い、俺は餃子に箸を伸ばす。

 パリパリの衣に熱々の肉汁たっぷりの中身。ニラとニンニクの味が効いて、つまみにバッチリあう。すかさずビール。熱い口内を冷えたビールが潤していく。

 胡麻のきいた棒々鶏で口当たりをさっぱりリフレッシュしてから、酢豚を一口。これも適度な甘みが効いた餡が舌の上で蕩ける。これまたビールに合う。

 

「今日は特別に瓶ビールを用意したぞ」

 

 長月が瓶ビールとグラスを取り出して注いでくれる。

 ちゃんとグラスが冷やされているのが、素晴らしい。

 それにコレは俺の勝手な主観なのだが、ビールは缶よりも瓶の方が美味い。

 

「さぁ、グッといけ」

 

「ありがとな長月・・・・・・かぁーっ! たまんねえな!」

 

「提督、中華料理にはビールもいいですが、烏龍茶もいいですよ」

 

「ありがとう五月雨。でも酒飲んでいるのにお茶は・・・・・・」

 

「はい。ですので五月雨はウーロンハイを用意しました」

 

「・・・・・・ウーロンハイとなれば話は別だよ」

 

 口の中の脂をさっぱりと流してくれるんだコレが。

 右手にビールと長月。左手にウーロンハイと五月雨。

 チャイナ服の美少女とメイド服の美少女を侍らせて、酒を飲む。

 こう言うと何だけ変な店みたいだ。

 でも長月の美味い料理と酒を飲むのは、本当に楽しいしこのままでもいいか・・・・・・

 

「ちょ、何もう終わった感出してるの! まだまだメンバーは控えてるよ!」

 

 皐月が焦ったように言って、俺はようやく我に返った。

 

「続いての艦娘は……こちらだよっ!」

 

「じゃーんっ! 暁はうさぎさんよ!」

 

 皐月の号令と同時に暁が勢いよく入ってきた。

 そして彼女自身が言うように、暁は兎の格好をしている。

 兎といっても着ぐるみでとかではなく、バニーガールであるが。

 

「ぴょーん! どう? 司令官! レディーのセクシーバニーガールよ!」

 

 皐月といい暁といい、セクシーという言葉が好きだな。

 だが確かに恰好自体はセクシーである。

 黒いウサ耳の付いたカチューシャにレオタード。網タイツにハイヒールと典型的なバニーガールの格好である。

 きっと大淀さんとかが来たら滅茶苦茶色っぽいんだろうが、着ているのは暁である。

 とても可愛らしいのであるが、完全に微笑ましい目で見てしまう自分がいる。

 

「なあ暁、その衣装ちょっと露出が多くないか?」

 

「え、そうかしら?」

 

「ああ。女の子があんまり肌を出しちゃ駄目だぞ。それに体が冷えて風邪でも引いたらどうするんだ」

 

「で、でも、男の人はこの姿が好きって……」

 

「暁は普段から可愛いんだから、無理にそんな恰好しなくてもいいんだぞ」

 

 俺がそう言うと暁は少しだけ朱くなった。

 

「そ、そう?」

 

「ああ、早く着替えて来なさい」

 

「うん。司令官が言うならそうする」

 

 暁は元気よく頷いてから、そのまま奥へ引っ込んでいった。

 

「娘扱いだな」

 

「お父さんみたいですね」

 

「あなたしかみえなかった、父よ……」

 

 その様子を見て、三人が漏らす。

 確かにちょっと親父臭いのは否定できない。でも暁を見ていると庇護欲が湧いてくるのだから仕方ない。

 

「ま、気を取り直してビールでも飲め」

 

「おお、ありがとう長月」

 

 いつの間にか空になっていたグラスに長月がビールを注いでいく。

 上手い料理に可愛い艦娘。酒が進むなぁ。

 

「順調にお酒飲んでるね……」

 

「うん。予定通り」

 

 皐月と五月雨が小声で何か話してあるが、まあ特に変なことは言っていないだろう。

 

「さて、次は谷風の登場だよ」

 

「谷風か……」

 

 そういえば谷風は前からちょくちょくコスプレしていたな。

 どんな格好をしていたっけと考えてみる。

 

 ――木枯らし紋次郎。

 ――桃太郎侍。

 ――鎧伝サムライトルーパー。

 

 ……うん。過度な期待はしないでおこう。

 くノ一とか浴衣とかかな、などと思っていると奥から谷風が現れた。

 

「えへへ……どう……でい?」

 

 恥ずかしそうに谷風は小首を傾げる。

 だが俺は彼女の問いかけに答えられないでいた。

 谷風の格好はコスプレというより、私服といった感じである。

 いつもの制服ではなく、ゆったりとした白いワンピースに若草色のカーディガンを羽織り、茶色のショートブーツを履いている。

 余所行きの格好といった感じだ。

 そしてその姿はいつもの谷風とは違う魅力を放っていた。

 普段の谷風の活発な印象はなりを潜め、清楚でおしとやかな少女に見える。

 そんな彼女は恥ずかしそうに肩を震わせながら、上目遣いにこちらを見てくるのである。

 あれ……谷風ってこんなに可愛かったっけ?

 いや、谷風は確かに普段から美少女であるのだが、服装が変わるだけで雰囲気が大分変わったというか……

 

「て、提督。谷風さんの格好、変……かい?」

 

「あ……いや、そんなことないぞ。よく、似合ってる」

 

「そ、そうかい? えへへ……」

 

 気恥ずかしそうにはにかむ谷風に、不意に鼓動が高鳴り始める。

 おかしい。俺は巨乳のお姉さんが好きなはずなのに、谷風にドキドキしてしまっている。

 

「そっちに行ってもいいかな?」

 

「あ、ああ……」

 

 必死で平静を装いながら俺が答えると、谷風は嬉しそうにこちらに寄ってきた。

 

「提督に喜んで貰えて谷風さんも嬉しいよ」

 

「そ、そうか」

 

「……な、なぁ提督。よかったら谷風さんと酒を」

 

「はいストップ、ストーップ!! これ以上はNG! レギュレーション違反だよ!」

 

 間に皐月が突然割って入り、谷風をずるずる引きずって俺から引き離していく。

 

「な、なにしやがんでぇ皐月!」

 

「何がじゃないよ! なにガチで色仕掛けしてるのさ! 今回はコスプレって言ったじゃん!」

 

「これだって立派な仮装でぃ! 題して『谷風さん本気モード』!」

 

「本気で落としに行ってるって事じゃん! 終了! 強制終了だよ!」

 

 結局、谷風は皐月に連れられてフェードアウトしていった。

 

「はぁはぁ……全く、油断も隙も無い……」

 

 暫くして皐月が肩で息をしながら一人で戻ってきた。

 

「谷風ちゃん可愛かったですね……」

 

「ううむ。司令官はああいう清楚なのが好みなのか……」

 

 五月雨と長月もなにやらブツブツ言っている。

 しかし谷風はヤバかった。年甲斐もなくドキドキしてしまったぞ……

 

「気を取り直して……次は清霜だね」

 

「清霜か」

 

 暁が結構露出度の高い恰好をしていたが大丈夫だろうか。

 

「ふっふーん! 清霜登場!」

 

 元気よく出てきた清霜の姿はナース姿だった。

 ピンク色の生地にミニスカートから伸びる白いニーソックスが大変可愛らしい。

 

「どう、司令官? 清霜、可愛い? 強い?」

 

「ああ。強いかどうかは分からんが可愛いぞ」

 

 トテトテ歩いて寄ってきた清霜の頭を撫でる。

 

「えへへ……カワイイを極めれば戦艦になれるかな?」

 

「うーん、それは分からないかな……でも清霜は十分、今のままでも可愛いぞ」

 

「それはそれで悪い気はしないなぁ~」

 

 嬉しそうに笑う清霜を見て、俺の頬も自然と緩む。

 本当に娘みたいに可愛いなぁ。

 

「司令官ってロリコン?」

 

「いや、だったら私達も対象のはずだ。やはり暁と清霜は娘感覚なのだろう」

 

「……もう五月雨も司令官の子どもってことに……」

 

 周りが何か小声で言っているが上手く聞き取れなかった。

 

「さて! 最後に不知火の登場だよっ!」

 

「不知火か……」

 

 この鎮守府の中で最もコスプレからほど遠い艦娘だと思うけど、大丈夫だろうか。

 

「では不知火、ゴー!」

 

 皐月が大仰に言う。だが肝心の不知火が出てこなかった。皐月は神妙な顔をすると、そのまま奥へと入っていく。

 

「何やってんの、出番だよ」

 

「や、やっぱり駄目よ。こんな……こんな破廉恥な格好、司令官に見せられないわ」

 

「大丈夫だって! あまりのセクシーさに司令官も悩殺だよ!」

 

 やがて奥からそんな声が聞こえてきた。

 しかし皐月の言うセクシー程、当てにならないモノはないな。

 

「でも……でも……」

 

「ええい! 女は度胸! なんだってやってみるもんだよ! そぉれっ!」

 

 皐月に背中を押され、遂に不知火が登場した。

 

「あ……」

 

 思わずそんな声が漏れた。

 不知火の格好は何故かマイクロビキニであった。マイクロビキニだった。

 最低限の部分だけ隠した白い布地。

 健康的な不知火の肢体に可愛らしい小さなおへそは、破壊力抜群であった。

 

「し、しれい……」

 

 不知火と目が合った。

 いつも冷静な彼女の顔は羞恥により真っ赤に染まり、怜悧な瞳からじわりと涙が溢れて……

 

「はっ!」

 

「ぐばっ!?」

 

 瞬間、不知火から一撃を貰い、俺の意識はシャットダウンした。

 

 …

 ……

 …………

 

「申し訳ありません。全て不知火の落ち度です……」

 

「いや、ボクも悪かったよ。ちょっと悪乗りしすぎた」

 

「だが、分かった事も多い。司令官は清楚な服装が好きだ」

 

「五月雨たちのようなコスプレより、谷風ちゃんの方が受けが良かったですもんね」

 

「大体、一人だけ本気でお洒落してくる谷風が悪いよ! 卑怯だよ!」

 

「そうよ! それなら暁だって舞踏会用のドレスを着てきたのに!」

 

「だ、だまらっしゃい! 提督を誘惑するのが目的なんだから、あれでよかったんだよ!」

 

「確かに司令官、谷風さんにドキドキしてたよね。清霜も次はちゃんとお洒落してこよー」

 

「そうだ。司令官は谷風を異性として意識していた。つまり……」

 

 長月の言葉に皆がゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「私達は司令官に女の子として見て貰える可能性がある」

 

 皆の視線が提督に集まっていく。

 当の本人は彼女たちの気持ちなど知らぬ存ぜぬとばかりに、爆睡しているのだった。

 

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

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