流刑鎮守府異常なし   作:あとん

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遅くなってしまい申し訳ありません・・・

日常モノは書くのが難しいです


流されて、流刑鎮守府

 提督は誰もが心の中に自分の鎮守府を持っている。

 ゲームを始め、艦娘が増える度に組織が大きくなっていくことを夢想し、自分だけのオリジナル鎮守府のことを考えたもんだ。

 勿論、俺もそうだ!

 俺の鎮守府のイメージは獣戦機隊とかオーレンジャー基地とかみたいな、秘密基地のイメージ。

 なんだけど・・・・・

 

「なあ、五月雨」

 

「はい、どうました?」

 

「いや・・・・・・ここって鎮守府だよね?」

 

「はい。そうですよ」

 

「それにしてはこう・・・・・・緑多くない?」

 

 鎮守府っていろんな施設があって要塞みたいな感じなイメージがあったんだが、今俺の視界には人工物が一切映らない。

 ひたすら山や木々。青い空と白い雲ばかりが目に入ってくる。

 あれ、ここ本当に鎮守府? そう思えてしまうくらい、自然がいっぱいなのだ。

 

「なあここ何県・・・・・・・いや、どこの島だ? 驚くほど何もないんだけど・・・・・・」

 

「うふふ、提督は面白いことを言いますね。ここは本土から凄く離れているので、そう見えるのかも知れませんね」

 

「え、いや、そういう意味じゃ・・・・・・」

 

 その時である。

 金属の擦れ合うような不快音と共に、何かが空を切って頭上を飛んでいった。

 あまりの巨体に俺と五月雨へ同時に影を落とす。咄嗟に頭上を見ると、見たこともない巨大な鳥が風を切って飛んでいる。あの変な音は鳴き声だったのだ。

 

「え・・・・・・ちょ、ちょっ、な、何あれ!?」

 

「ああ、あれはこの島に生息している鳥さんですね」

 

 のほほんと言う五月雨だが、俺の見間違いじゃなければ、その鳥は全長10m位あるんだけど。

 そんなロプロスみたいなクソデカ怪鳥は悠々と空を滑空して、島の中央の方へと飛んでいった。

 

「おい大丈夫かよアレ。俺たちなんて簡単に鷲掴みにして巣まで持って帰っちゃいそうな図体なんだけど」

 

「はい! あのロック鳥さんはこちらから何かしない限りは何もしてきませんよ。安心してください」

 

「ロック鳥? 今、ロック鳥って言った?」

 

 伝説の化け物じゃん。

 

「この島の生態系はどうなってんだ・・・・・・」

 

「島の奥には私達も入らないようにしているので、詳しいことは分からないのですが、自然の宝庫になっているんですよ。この島にしかいない生物もたくさんいます」

 

「パプワ島かよ」

 

 何て場所だよ・・・・・・と思ってふと気が付いた。

 鎮守府って漫画とかアニメで見たときには、島を要塞化したような感じだったはずだ。

 しかし今、俺の視界に映るのは森・山・空。人工物らしき物が何も見えない。

 

「なあ、五月雨。ここは本当に鎮守府か? 俺は絶海の無人島としか思えないのだが」

 

「はい! ここは108ある鎮守府の一つ、第百八泊地。通称、流刑鎮守府です」

 

「待って、お前今何言った?」

 

 とんでもない名前が聞こえた気がした。

 俺が前の世界にいたとき登録していた艦これのサーバーはショートランド泊地だったはずだ。

 だから自然とここがショートランドなのだと考えていた。

 だがそれを根本から否定するような言葉を、五月雨はさらっと言ったのだ。

 

「りぴーとあふたみー。五月雨、この鎮守府の名前は?」

 

「はい! ここは108ある鎮守府の一つ、第百八泊地。通称、流刑鎮守府です」

 

 屈託のない笑顔で言い切った。

 ・・・・・・るけい? るけいって、あの、流される刑って書く奴か?

 あれってかなり重い刑罰だったはずなんだけど。

 

「しょ、ショートランドじゃないの?」

 

「はい。ショートランドはここからとっても遠くにありますよ」

 

「おふ・・・・・・」

 

 思わず片膝をついた。

 ここは俺が愛したショートランドではない。それだけでなく聞いたこともないような、僻地っぽい場所だ。しかも視覚的には完全に絶海の孤島って感じだ。

 クソ・・・・・・事故して転生して俺の鎮守府に行けるなんてやはり甘い話だったか・・・・・・

 いや、待て。

 確かに場所は僻地中の僻地かもしれんが俺が選んだ初期艦の五月雨がいたのだ。

 ならば場所自体は辺境の地でも、そこにいる艦娘は俺がゲームしてた頃のメンバーと同じ可能性は残されている。

 大丈夫。まだ希望はある。

 

「さあ、皆が待ってますよ提督! こちらです」

 

 五月雨に手を取られて砂浜を進んでいく。

 暫く歩いて柔らかい砂地がしっかりと硬い地面に変わる頃、ようやく人工物らしき物が見えてきた。

 遠くから見るそれは、学校の校舎のようだった。

 しかも田舎にあるような木造の建物。しかも近づけば近づくほど、そのチープさが鮮明になってくる。

 見た感じでは二階建て。大きさは大体普通住宅の三軒分ほどと、小さい。黒ずんだ表面は建てられてから経過した歳月を、如実に現わしていた。

 

「なんだこのボロ小屋は・・・・・・」

 

 夏休みに滞在した田舎を思い起こさせるようなノスタルジックな外観。どこからか井〇陽水の歌声が聞こえてきそうだ。

 とても鎮守府とは思えない建造物だ。

 だがそれ以上に俺が衝撃を受けたのは、このボロ小屋以外に人工物が何一つ見当たらないということだった。

 

「な、なあ五月雨」

 

「はい」

 

「これは何だ?」

 

「鎮守府ですよ」

 

 さも当然のように五月雨は言った。

 

「・・・・・・マジ?」

 

「マジです」

 

 屈託のない笑顔。俺はこれが現実であることを察した。

 

「ああっ! どうしました提督、膝から崩れ落ちて・・・・・・」

 

「いや、なんでもない・・・・・・なんでもないんだ・・・・・・」

 

 いや島の外観で察したけどさ、さすがにこれは酷いだろ。

 鎮守府として機能するかどうか以前に、ここで生活できるのだろうか。

 

「さあ。どうぞ。見た目は酷いかもしれませんが、中身は捨てた物ではないですよ!」

 

 誇らしげに胸を張る五月雨だが、どう見てもその鎮守府(仮)は見た目相応にしか思えない。

 

「というかこの小さい建物じゃ艦娘そんなに入らないだろ・・・・・・」

 

 そう言いながら扉を開けると、ギィィっと重い音がした。

 中に入ると、見た目に違わず、長年使ってきた建物の雰囲気が醸し出ている。何だかずっとしまってあった座布団みたいな臭いがした。

 そのまま一歩踏み出すと、バキッと言う音と共に足元の床が割れた。

 無言で五月雨に非難の視線を向けると、彼女は同じく無言で目を逸らす。 

 

「と、とりあえず執務室に行くぞ」

 

「はい、二階です」

 

 そう聞いて俺は、玄関の真っ正面に二階へと続く階段へ向かった。

 ギシギシと音を立てる階段を登り『執務室』と書かれた部屋を発見する。

 扉を開くと乾いた音がした。

 木造の机と椅子が中央に鎮座し、それ以外に目ぼしい家具は無い。

 最初に艦これを始めたときの鎮守府の内装をそのまま再現・・・・・・下手すりゃそれ以下だな。

 

「今まで提督はいなかったのか?」

 

「はい! 提督が初めてここに着任した軍人さんです!」

 

「おおぅ・・・・・・」

 

 絶句した。

 思い描いていたバラ色の鎮守府生活が早くも崩れ去りそうだ。

 

「そ、そういえばこういう時には大淀と明石が出てくるもんだが・・・・・・いないのか?」

 

 まあ任務娘とアイテム屋さんとしてだけど。

 

「ああ、大淀さんなら・・・・・・」

 

 そう言うと五月雨は部屋の奥にある机の方に歩いて行った。

 何をするかと様子を見ていると、五月雨は机の引きだしから何かを取り出した。

 黒くて四角い。大きさはランドセルくらい。

 見た目は鉄人28号に出てくるリモコンみたいな感じだ。

 

「えーと・・・・・・これを・・・・・・たしか・・・・・・こう!」

 

 謎の物体を弄くりながら五月雨がそう言ってスイッチらしきものを押すと、そこから光が放たれた。

 その光は一旦広がった後、また収束し、一つの形を作り上げた。

 人の形。それ俺がよく知っている人物のものだった。

 

「お、大淀か!」

 

 立体映像。

 こんな古びた場所には似つかわしくないテクノロジーだった。

 うおっ・・・・・・どうなってんだこれ。

 触ってみようと伸ばした手は空を切った。

 空間に投影しているのか、若干薄い。

 

『提督、作戦を実行してください』

 

 聞き慣れた何時もの声だった。

 

「すげぇ・・・・・・俺の時代にはこんなん無かった」

 

『どうしました?』

 

 この台詞。成程、『任務娘』としての大淀か。

 

「なあ五月雨、もしかして明石も出せる?」

 

「あ、はい、少し待ってくださいね」

 

 五月雨は慣れていないのか辿々しい手つきで機械を操作した。

 暫くすると大淀の映像が消え、代わりに明石が映し出された。

 

『いらっしゃいませ~』

 

 おお、これもよく聞いた声だ。

 

「これはアイテム屋か?」

 

「あいてむ・・・・・・? 明石さんは経費の発注ですよ?」

 

「ああ、そういう扱いなのね。ところでこれどうやって使うんだ?」

 

「はい、これはですね・・・・・・」

 

 そう言って五月雨は機械を持って近づいてきた。

 謎の物体はよく見るとカラオケのデンモクのようだった。

 大きなタッチパネルが真ん中にあり、液晶の中には様々なアイテムが並んでいる。

 ・・・・・・ここでふと一つ、疑問が浮かんだ。

 俺の鎮守府には大淀と明石が普通にいた。

 それとこれはどうなってるんだろうか。

 

「五月雨、ちょっと明石と大淀を呼んできてくれないか?」

 

「え、お二人はこの鎮守府にはいませんよ?」

 

「なんと・・・・・・?」

 

「明石さんと大淀さんはこの鎮守府に配属されていませんよ」

 

「マジ?」

 

「マジです」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 恐ろしい疑問が頭を過ぎった。

 俺がいたサーバーとは明らかに違う鎮守府。いたはずのメンバーがいない。

 ここは本当に俺が知っている鎮守府なのだろうか?

 金剛や榛名といった俺の嫁艦たちは本当にここにいるのだろうか?

 

「なあ、五月雨。話を変えて悪いんだが・・・・・・」

 

「はい、何でしょうか」

 

「今、この鎮守府に艦娘は何人いる?」

 

「はい、私を入れて、6人です」

 

「・・・・・・・・・・・・ちなみに聞くんだがメンバーは・・・・・・いや、その六人の艦種を教えてくれないか」

 

「はい! 私を含めて全員、駆逐艦です!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「ああっ! どうしました提督! 突然男泣きを始めるなんて!」

 

「だってよう・・・・・・」

 

 あんまりじゃ無いか。

 無味無臭で苦痛ばかりだった社畜生活を抜けて、夢憧れた艦これの世界にやって来たっていうのに、肝心の巨乳艦娘たちとのいちゃラブハーレム生活が出来ないなんて・・・・・・待てよ。

 

「五月雨。済まないが残りの五人。ここに連れてきてくれないか? 着任の挨拶がしたいからな」

 

「え・・・・・・あ、はい! 早速皆を呼んできます!」

 

 一瞬、怪訝そうな顔をしたものの、五月雨は頷いて部屋を出て行った。

 

 ・・・・・・そうだよ。駆逐艦=まな板というわけでは無い

 潮、浜風、浦風といった駆逐艦であるにも関わらず、実にけしからんおっぱいを持った艦娘だっているのだ。

 俺が育てていた駆逐艦達は初期艦であった五月雨を除いて皆、立派な胸部装甲を持っていた。

 まだ希望はある。

 そんな事を考えていると備え付けられていたスピーカーから、五月雨の声が聞こえてきた。

 

「提督が鎮守府に着任しました! 皆さん、執務室に集合をお願い致します!」

 

 そこで放送は終わった。

 どうでもいいけど昔の小学校のスピーカーを思い出すような音質だったな。

 そんな下らない事を考えていると五月雨が部屋に戻ってきた。

 

「皆、すぐに集まってくると思います! 司令官をずっと待っていたんですから」

 

「そうかそうか、よしよし」

 

 何だか気分が良くて五月雨の頭を撫でた。

 彼女は一瞬、驚いたものの、やがて気持ちよさげに目を細めた。 

 

「えへへ・・・・・・」

 

 うお・・・・・・めっちゃ髪がサラサラしてる。それに何だかいい香りがするな・・・・・・

 そんなことをしていると、バタン! と勢いよく開いて少女が一人、飛び込んできた。

 




島の動物とかはまた出ます。
多分

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

  • 改二になったほうがいい
  • このままでいい
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