流刑鎮守府異常なし   作:あとん

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新メンバー登場です。

よろしくお願いします


独走! 褐色のニューフェイス

「Buongiorno! あたしがマエストラーレ級駆逐艦、次女のグレカーレ! テートク、あたしも可愛がってよね? あ、かーわいっ♪」

 

 暁と清霜によって鎮守府にやってきた艦娘が、元気よく挨拶した。

 褐色の肌に、ウェーブの掛かったプラチナブロンドの髪。

 勝ち気な印象を与える吊り目に、エメラルドグリーンの瞳が特徴的な可愛らしい少女だった。

 赤の緑のラインが入った白いワンピース調のセーラー服がよく似合っている。

 

「が、外国人・・・・・・」

 

「外人さん・・・・・・」

 

「なる程、海外艦か」

 

 皐月・谷風・長月がそう呟いた。

 まあ今まで我が流刑鎮守府には海外艦がいなかったし、皆にとっては新鮮だったのかもしれない。

 俺自身、前の世界で艦これをプレイしていたから海外艦を知っていたが、本物を見るのは始めてだからな。

 それはそうと・・・・・・

 

「また駆逐艦か・・・・・・おぶっ!?」

 

「司令、失礼ですよ」

 

 思わず心の声が出てしまい、不知火に脇腹を小突かれる。

 痛みに耐えながら、俺は彼女の耳元で囁いた。

 

「あの子ってさ。もしかして前のヲ級が・・・・・・」

 

「分からないですが・・・・・・もしかして」

 

 不知火は小声で答えた。

 深海棲艦が轟沈し、代わりに艦娘が生まれるドロップと呼ばれる現象。

 未だによく分からない原理であるが、彼女はあのヲ級の生まれ変わりである可能性があるのだ。

 もしも本当にそうだったら、ヲ級も救われたのかもしれない・・・・・・まああくまで仮の話ではあるけど。

 

「よろしくね、グレカーレ!」

 

「お姉様も清霜も大歓迎だよっ!」

 

「ありがとーございまーす! 皆さん、ciaoっ♪」

 

 暁と清霜は自分たちの後輩が出来たのが嬉しいのか、とても嬉しそうだ。グレカーレも歓迎されて気を良くしたのか、二人と楽しそうに絡んでいる。

 ・・・・・・暁と清霜はヲ級に優しかったのも影響があるのかもしれない。

 

「よろしくね、グレカーレちゃん!」

 

「これから一緒に頑張ろうな。グレカーレ」

 

「はーいっ! よろしくおねがいしまーす!」

 

 五月雨と長月に元気よく挨拶するグレカーレ。

 正直、俺はグレカーレを艦これプレイ時代に持っていなかったから、どんな娘なのかイマイチ分からない。

 そんなことを考えている時であった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 グレカーレが一瞬、こちらを流し目で見てきたのである。

 幼い少女とは思えない妖艶な視線。思わずドキリとして、彼女の方を見てみるがグレカーレは何事もなかったように談笑していた。

 

「・・・・・・むぅ」

 

 隣の不知火がそんな声を漏らした。見るといつも無表情の不知火が、むすっとした顔で立っている。何か感じたのだろうか。

 

「テートク! 今日からよろしくね!」

 

 するとグレカーレは俺の手を取って、ぎゅっと抱きついてきた。

 柔らかい感触と共に甘ったるい香りが鼻孔を突き、少女特有の暖かい体にちょっとした背徳感が漂ってくる。

 

「あっ! ひょっとしてドキドキしてる? やぁだ、かわいい♪」

 

 俺の心を読み取ったようにそう言うグレカーレに、俺は言った。

 

「言っておくが俺は駆逐艦に欲情する事は無いぞ」

 

 まぁ浜風とか浦風とか潮なら話が別だが。

 

「むー、そんなこと言わず、ちゃんとこっち見てよ!

 

 不満そうに言うグレカーレ。そんな彼女に俺は自身の信条を語った。

 

「最初に言っておく。俺は女の子に一番求めるモノ。それはな、おっぱぶふっ!?」

 

「すまんな、グレカーレ。うちの馬鹿が失礼した」

 

「この馬鹿はボク達で始末しておくから、グレカーレは鎮守府の中でも見てきなよ」

 

 長月と皐月にぶん殴られた挙げ句、そこに不知火と谷風もやって来た。きっとこれから凄惨な私刑が始まるのだろう。

 俺は自分の行く末を予感して、目を瞑る。

 俺の耳には楽しそうに話すグレカーレと暁達の声が聞こえてきた。

 そしてすぐに俺の意識はシャットダウンした。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

「それではグレカーレ、流刑鎮守府にようこそ! カンパーイ!」

 

『カンパーイ!』

 

 夜、流刑鎮守府の食堂。

 皐月の音頭によって9つのグラスが重なり合った。

 現在、グレカーレの歓迎パーティーがささやかに行なわれているのである。テーブルの上には色とりどりの料理が並び、グラスにはグレカーレがイタリアの艦娘であることにちなんで、赤ワインが注がれている。

 

「えへへっ、皆ありがとう!」

 

本日の主役であるグレカーレは、照れくさそうに笑っている。こういうところは年相応といった感じだ。

 

「グレちゃん、いっぱい食べて一緒に戦艦になろうね!」

 

「ありがとう、清霜姉さん!」

 

「グレカーレ、この唐揚げも美味しいわよ」

 

「暁姉さんもありがとー」

 

暁と清霜がグレカーレのお皿にどんどん料理を盛っていく。その光景はとても微笑ましいのであるが……

 

「いつのまに『姉さん』になったんだ?」

 

知らない間に暁と清霜を姉さん呼びしているグレカーレに尋ねると、彼女は食べていた料理をごっくんと飲み込んで答えた。

 

「えーと、鎮守府内を案内して貰ってるウチに。なんとなく」

 

「なんとなくって、お前・・・・・・」

 

 そんなアバウトでいいのだろうか。

 

「いいじゃんいいじゃん。あたしも先輩よりはお姉さんの方がいいし」

 

「まぁ・・・・・・そうか」

 

「えへへ~グレちゃんはやっと出来た清霜の後輩だからねっ! これからはお姉様である清霜に何でも頼るといいよっ!」

 

「勿論、この暁も一緒よ! お姉様になんでも相談しなさい!」

 

 えっへんと小さな胸を張る二人に、俺とグレカーレは苦笑する。まあ暁も清霜も流刑鎮守府では末っ子ポジションだったから、妹分が出来て嬉しいのだろう。特に最年少扱いだった清霜は余計に。

 

「Grazieっ♪ よろしくね、お姉様方♪」

 

 でも精神年齢的に二人よりグレカーレの方がずっと上そうなのは黙っておこう。

 

「すご・・・・・・グラッチェって本当に言うんだ」

 

「ケーシー高峰以外で聞くのは初めてだねぃ・・・・・・」

 

 皐月と谷風はまだグレカーレの『外人っぽさ』に慣れないようだ。かといって二人がグレカーレから距離をおいているということは無く、色々と話しかけている。

 元々陽性である皐月と谷風に、イタリアの艦娘特有のラテン系なノリはかなり親愛性が高かったようだ。

 

「ほーら、グレカーレ! ルネッサ~ンスっ!」

 

「Grazie~っ♪ ところでなんでルネサンス?」

 

「ルネッサンス情熱・・・・・・谷風さんのこの手はぁ・・・・・・まあいいか、細かいことは気にせずに宴だぜぃ、カンパーイ!」

 

「谷風さんもありがと~。ま、そうだよね。細かいことは気にせずにGrazie、Grazie~っ♪」

 

 ワイングラスで三人が乾杯する。確かにワイングラスを重ねるとなると、某男爵を思い出すのはしょうがない。でもそんな事知るわけもないグレカーレは気にせずに乾杯していた。

 

「グレちゃんお酒飲めるんだ・・・・・・」

 

「お、大人だわ・・・・・・」

 

 平気な顔をして赤ワインを嗜む末妹に暁と清霜が驚愕の表情を浮かべていた。二人は飲めないからな・・・・・・。

 

「まぁまぁ! 姉さん達も楽しければオッケー! はーい、Salute!」

 

「さ、猿?」

 

「さるげっちゅ?」

 

「サルーテはイタリア語で乾杯という意味なんだ」

 

 長月がフォローを入れた。それを聞いた暁と清霜は意味を理解して、笑顔でグラスをグレカーレと重ねていく。

 ただ二人のワイングラスに入っているのはブドウジュースである。

 こういうところも、グレカーレの方がお姉さんっぽい。

 

「んん~っ料理も美味しいっ! ねぇねぇ、コレ全部長月さんが作ったの?」

 

「ああ。グレカーレの歓迎パーティーだからな。奮発したぞ」

 

 様々なお酒のおつまみにグレカーレは舌鼓を打ち、長月はそれを嬉しそうに眺めていた。

 

「わぁ、凄い! でもこれだけ食べたらバルジっちゃうかなぁ~」

                                                                                                                                                                     

「ば、ばるじ・・・・・・!?」

                                                                                                                                                                                                                          

 なお俺は勿論、長月・皐月・谷風は基本的に感性が古いのでこういった言葉は苦手だった。

 

「んふふふふ・・・・・・ココは楽しいねー。アタシ、気にいっちゃた」

 

 皆から歓迎されて嬉しかったのか、グレカーレはどんどん杯を重ねていく。

 可愛らしい頬が紅く染まり、瞳のとろんと胡乱になっている。

 彼女は楽しそうにゆらゆら揺れながら、ワイングラス片手にこちらへ寄ってきた。

 

「テートク、ciaoっ♪」

 

 グレカーレはそう言うとそのままストンと俺の膝へ腰を降ろす。

 女の子特有のどこか甘ったるい香りが鼻腔をくすぐり、温かく軟らかい感触がくっついてきた。

  

「楽しんでいるみたいでなによりだよ」

 

俺がグレカーレの肩をポンポンと叩くと、彼女は上目遣いで妖艶に微笑んだ。

 

「テートク、こっち、こっち。Ciao! Ciao! やだ、本当かわいい♪」

 

ほろ酔いの上機嫌でグレカーレは俺に甘えてくる。大人びた所もあるが、やはり駆逐艦。年相応な部分もあるのだろう。

 

「テートク、あたしも皆みたいにちゃーんと可愛がってよね? 可愛がってくれないと、知らないよ?」

 

「ああ、わかってるわかってる。よしよし」

 

「ちょっ……雑じゃない!? こっちよこっち!」

 

構ってほしかったのか、グレカーレは頬を膨らませてくいくい袖を引っ張ってくる。結構余裕そうに見えるけど、やっぱり子供だなぁと思っていると。

 

「ぐ、グレカーレ。司令が困っているわ。その辺りで止めておきなさい」

 

珍しく不知火が間に入ってきた。

彼女はグレカーレの肩を掴むとぐいと、強引に俺から引き離していく。

 

「ど、どうしたんだ不知火」

 

「い、いえどうにもこうにも。ほら、グレカーレ。離れなさい」

「ええー何でですかぁー……あっ」

 

するとグレカーレは何か気が付いたようにニヤリと不敵に笑うと、不知火の頬をつんつんとつついた。

 

「大丈夫ですよー。不知火さんの大好きなテートクを盗ったりしませんから」

 

「なっ!?」

 

すると不知火は顔を真っ赤にして、突然あたふたし始めたのだ。

 

「グレカーレ……中々やるねぇ」

 

「グレカーレ! 恐ろしい子!」

 

谷風と皐月が何やら言っている。一方、不知火は沸騰してるのかと思うほど赤面し、グレカーレはニヤニヤとその様子を楽しんでいた。

 

「ぐ、ぐれ、グレカーレ……貴方、一体どういうつもりですか……」

 

「えーどういうつもりっていうかー。あたしは不知火さんの心の声を代弁してる感じかな。つまりテートクのこと」

 

「っ~~!!」

 

不知火はグレカーレに一撃を放つが、そこはさすがに艦娘同士。紙一重で避けて、グレカーレは暁と清霜の方へと移動する。

 

「姉さん、不知火さんが怖い!」

 

二人の後ろに隠れたグレカーレがそう言うと、頼られた姉たちは勢いよく立ち上がった。

 

「駄目じゃない、不知火! グレカーレはまだ鎮守府に来たばかりなのよ!」

 

「たとえ不知火さんが相手でも、グレちゃんを苛めるなら清霜が許さないよ!」

 

妹分のピンチに立ち上がった二人は、両手を広げてグレカーレを不知火から庇うように立ちはだかる。

うん、二人は純粋だな。きっと後ろで小悪魔のように笑うグレカーレが見えないのだろう。

 

「あ、暁。清霜……」

 

さすがの不知火もチビッ子コンビには手が出せないのか、困ったように佇んでるだけであった。

 

「やめろ不知火。グレカーレもちょっと落ち着け。ほら、餅で作ったピザだ」

 

二人の間に長月が入って、大皿を置いて言った。

 

「何これ、んん~美味しっ!」

 

早速グレカーレがそれを口に入れ、感嘆の声を漏らす。長月の餅ピザを口に放り込み、赤ワインをごくり。いい飲みっぷりである。

 

「はい、テートクもSalute!」

 

「おう! サルーテ!」

 

ガチン! とグラスを重ねて一気に赤ワインを呷る。嗚呼、普段は飲まないワインだがやっぱり上手いなぁ。

長月の肴も合うしなおいい。

 

「はい、不知火さんも飲みましょー! あっ、そうかお酒飲めないんだ~」

 

「っ! 司令、一杯お願いいたします」

 

グレカーレに煽られた不知火は俺からワイングラスを引ったくると、一気に飲み干した。そして。

 

「……むきゅう」

 

一撃でダウンした。

 

「し、不知火! 大丈夫か!?」

 

不知火は酒にあまり強くない。なのに一気に飲んだら、そりゃこうなるだろう。

 

「も、申し訳ありません司令……全て不知火の落ち度……」

 

不知火はそこまで言って、そのままダウンした。

 

「……ベッドまで運んでやるか」

 

俺は彼女を抱き抱えると、そのまま皆の共同寝室へと向かった。

 

「しかし、不知火も難儀な性格だねぇ」

 

「しょうがないよ。それにグレカーレも意外に曲者だしね」

 

谷風と皐月が何やらコソコソ言っていたが、俺は無視してそのまま進んでいった。

 

「テートク!」

 

背中から声がかけられた。

 

「ちゃーんと、あたしも。皆と同じように可愛がってよね」

 

グレカーレのそんな言葉を聞きながら、俺は彼女の加入で流刑鎮守府に巻き起こる騒動を思い、ため息をつくのだった。

 

流刑鎮守府に8人目の仲間が加わった。

これからただでさえ賑やかな我が鎮守府が、さらに賑やかになるなることを感じながら俺は不知火を運んでいくのだった。

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

  • 改二になったほうがいい
  • このままでいい
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