流刑鎮守府異常なし   作:あとん

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お久しぶりです
リアルで忙しくて中々書けなかった社畜です。
 
ウマと艦これの二刀流は結構忙しいです。


楽園追放

「わーいっ! ごろごろごろごろーっ!」

 

「清霜! はしたないわよ!」

 

「よっし、枕投げしよーよ!」

 

「やらいでか!」

 

「あんまりはしゃぐなよ、お前たぶぐっ!?」

 

「な、長月ちゃん大丈夫?」

「……くっそぉ! やるな!」

 

「ふふふ、そうこなくっちゃ!」

二階から聞こえてくる楽しげな声。部下である駆逐艦たちのモノだ。この前のリフォームで、彼女たちの寝室が拡張された。清霜とグレカーレが増えた分、必要なスペースが増えたため部屋を広げたのだ。そしてその判断は間違っていなかったのだと、聞こえてくる歓声を聞けば分かる。

 

「そう、俺は間違っていないのだ」

 

俺は人知れず、ベッドの上で呟いた。

その回りには様々な書類や備品が山のように積まれ、端の方には俺がこの鎮守府にやってきてから購入した嗜好品が寂しげに纏められている。

一階の端にある物置。そこが俺の新しい寝室だった。

いくらリフォームしたといっても、建物の面積は変わったわけではない。どこかの部屋を拡張すれば、別の部屋が煽りを受けるのは当然の事。皆の寝室を拡げた分、俺の寝室が消滅したのも必然の事なのだ。

でも俺は間違っていない。艦娘たちのためにやったこと。間違っていないのだ……

 

「なんか味気ねぇ……」

 

だが窓一つ無い物置暮らしは流石に気が滅入る。俺はベッドに転がってポツリと呟いた。

 

「暇そうだね、テートク」

 

すると横からそんな声が聞こえてきた。

 

「……なんだグレカーレ。こんな時間に」

 

時刻は夜9時を迎えていた。消灯時間も近づいてくる頃だ。

 

「ふふふふ、一人離れたトコにいるテートクが寂しくないかなって思ってさ」

 

グレカーレは妖艶に微笑むと、そのまま俺が横たわるベッドに上がってきた。桃色の可愛らしいパジャマがよく似合っている。

 

「もうすぐ寝る時間だぞ。早く部屋に戻りなさい」

 

「もー、そんなつまんないコト言わないでさ。この部屋って、あたし達の寝室から離れててさ。ちょっと大きな声出しても聞こえないんだよねぇ」

 

「へえ、そうなのか」

 

「うん♪ だーかーらーさぁ? 二人でイケナイこと、しちゃう?」

 

「出ろーっ! 不知火っ!」

 

「は、ここに」

 

シャイニングガンダムよろしく指をパッチンと鳴らすと、不知火がすぐにやってきた。やっぱり、部屋が離れたといっても壁が薄いから声は届くみたいだな。

 

「え、ちょ、不知火さんどうして……」

 

「戻るわよグレカーレ。司令、失礼しました」

 

「ああ、おやすみ」

 

「ま、待って不知火さん! これからテートクとぶべべべべっ!?」

 

「お仕置きは部屋に帰ってからにするわ」

 

グレカーレを抱えながら、不知火は速やかに部屋を出ていった。

 

「はぁ……」

 

一人残されると、途端に静寂が襲ってくる。騒がしいグレカーレでもいないよりはいたほうがマシだったかもしれない。今度来たら、酒盛りくらいはしてみようか。

そんなことを考えながら、俺はぼぉーと周りを見渡した。様々な資料や弾薬。どれだけここがのどかでも、本来の姿は軍事基地であることが分かる。しかしこれだけあっても使うことはほとんど無いからな……そう思ったときだった。

 

――あれ……そういえば庭に倉庫無かったっけ?

 

以前、清霜が間違って三連装砲の出来損ないを工廠で開発した時があった。我が流刑鎮守府では使い道の無いその巨砲を、外にある倉庫へと俺たちは封印したのである。

その時に倉庫の中も整理して大分スッキリさせたのであるが……もしかしたらこの物置部屋にある不要な物も、全部あっちに入るんじゃないか?

俺はそう思い、ベッドから降りた。そのまま部屋から出て、中庭の方へと進んでいく。倉庫はすぐ近くにある。ギシギシ音のする扉を開けると、それなりにスッキリした空間が広がっていた。

 

「中央に鎮座する三連装砲に目を瞑れば、中々広いな」

 

俺はそれを確認すると無言で部屋に戻り、要らない書類や使わない備品などを次々と倉庫へと持っていった。そして……

 

「おお……広い」

 

思いの外、我が寝室スペースは広くなったのであった。広さは大体、八畳くらいか?

一人で過ごすなら充分なスペースだ。そしてこうして見ると、俺の中の男の子成分がムクムクと沸き上がってくる。

物置を自分の部屋にするって、何か秘密基地みたいでワクワクするのだ。また以前の俺の寝室は執務室の真横にあり、艦娘たちの目がすぐ近くにあった。だがここは皆の生活スペースから少し外れた位置にあり、皆が立ち寄ることは少ない。さっきみたいにグレカーレが侵入するくらいだ。

 

「……ここに俺の城を創ろう」

 

その日から俺の部屋(仮)の大改造計画は始まったのであった。

 

 

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

「うーむ。中々いい家具があるじゃないの」

 

 翌日、俺は執務室でスマートフォン片手にそう呟いた。

 鎮守府の家具は家具コインと交換であるが、それはあくまで艦娘用。一般向けの家具は俺の給料から出さないといけない。だがそこは腐っても官軍。それなりの軍資金が俺の通帳には入っていた。

 

「小さいテーブルと椅子。テレビにエアコン、あと小型の冷蔵庫も欲しいな」

 

 結構な値段だがそもそもお金を使うことの少ないこの流刑鎮守府なら、この出費でも回復は可能だ。そんなことを考えていると。

 

「うふふ、楽しそうですね提督」

 

 五月雨がコーヒーを持ってひょっこり顔を出した。

 そういえば時刻はもう10時。

 五月雨がコーヒーを持ってきてくれる時間だった。

 

「ああ、ありがとう五月雨」

 

 俺はお礼を言ってからコーヒーカップを受け取った。今日もいい香りだ。

 

「何を見てらっしゃったんですか?」

 

 五月雨はソファーに腰掛けて尋ねてきた。

 

「ああ・・・・・・実はな・・・・・・」

 

 俺も自然にそう切り出そうとしたときだった。

 ・・・・・・あの部屋のリフォームのこと、内緒にしておいたほうがいいのでは? そう考えてしまった。

 何せ俺の秘密基地だ。

 内装や家具は全て俺の好みであることは勿論、皆に内緒でこっそり買ったお酒や、ムフフなDVDや写真の隠し部屋としても使う予定の場所だった。

 極力、皆には今の部屋に立ち寄って欲しくない。

 酒が見つかれば没収、R-18な商品が見つかれば私刑だ。

 ならばあの部屋のことは隠し通して平静を装うべきだと、俺は判断したのであった。

 

「実はな、とあるゲームで家の内装をやっていてな」

 

 とりあえず無難な言い訳で逃げることにした。

 まぁ五月雨なら本当の事を言ってもいい気がするが、彼女は残念ながら隠し事が苦手だ。

 もしポロッと皐月や谷風、グレカーレなどの悪ガキたちにバレたら滅茶苦茶にされそうだし、長月や不知火といった堅物に見つかるとモノを隠すのが難しそうだし・・・・・・

 俺はそんなことを考えながら、五月雨と他愛も無い会話をしてお茶を濁した。

 後日、いつもの定期便で食料に紛れて俺はいくつかの家具を部屋に密輸することに成功。

 今回の荷物は椅子とテーブルだ。

 テーブルはシックな感じの一人用ダイニングテーブル。椅子は木製のパーソナルチェアだ。

 それを夜中に組み立てて、部屋に置いた。

 んん・・・・・・いい感じだ。

 

「やっぱり木造建築だけあって、木の家具がよく似合うな」

 

 内装とか風水の話はよく分からんが、俺の好みにはピッタリ合っている。

 あと殺風景だった部屋が自分好みの内装に変化していくのは、秘密基地を改造しているみたいで楽しい。

 俺はとりあえず第一陣に満足すると、ベッドの下に隠していたブツを取り出した。

 

「あとはついでに買ったこのロックグラスとウイスキーだ」

 

「へぇ、中々いい趣味してるじゃん」

 

「だろ? あとはテレビと冷蔵庫とエアコンが揃えば完成だな」

 

「どうせなら他のインテリアもウッドでレトロな感じにしたら?」

 

「確かにな! そしたらもっと雰囲気がよくな・・・・・・る・・・・・・」

 

 俺はそこでようやく違和感に気が付いた。

 誰もいないはずの部屋に聞こえる少女の声。

 まさか幽霊の類いか・・・・・・いや、それならどれだけ楽だったか・・・・・・

 

「さ、皐月・・・・・・」

 

「やっほー司令官」

 

 いつの間にか部屋に侵入していた皐月がヒラヒラと手を振った。

 

「な、なんでここに」

 

「何でって、漫画読みに来たんだよ。ほれ」

 

 皐月はそう言ってずいっと片手に持ってきた単行本を突き出してきた。この前購入したキン肉マンの新刊だ。

 

「い、いや・・・・・・漫画は執務室に置いてるんだから・・・・・・何でここに来る必要がある・・・・・・」

 

 皐月や暁は俺の漫画を許可無く借りていくのが日常茶飯事のため、俺は部屋への侵入を回避するためにわざわざ執務室に多くの本を置いていたのだった。

 

「だって、ボクの漫画読みスペースがここに移動してるんだもん」

 

 そう言って皐月は俺のベッドを指差した。確かに皐月はよく俺のベッドで寝っ転がって漫画を読んでいたが・・・・・・

 

「しっかし・・・・・・最近、妙にコソコソしてると思ったらここのリフォームしてたんだ」

 

 キョロキョロと周りを見渡しながら皐月は感心したように言った。

 

「こんなに綺麗になるなんて、司令官頑張ったんだね!」

 

「・・・・・・あ、ああ。そうだな」

 

 落ち着け、俺。

 よく考えたら自室を整理して新しい家具を買う事なんて、別に変な事じゃ無いじゃないか・・・・・・

 

「これならボクの遊び部屋として、ちょうどいいかもね」

 

「ちょっと待て」

 

 聞き捨てならんことを口走った睦月型5番艦に、俺は詰め寄った。

 

「ここは俺の部屋だぞ。変な事を言うんじゃない」

 

「まぁまぁ、司令官の部屋ならボクの部屋みたいなもんじゃん」

 

「何を言ってるんだお前は」

 

「落ち着きなよ、提督。熱くなったって、何かが変わるわけじゃあるめぇ」

 

「そうそう! 一旦深呼吸して、リラーックスだよ」

 

 そんな俺の左右に谷風とグレカーレが突然現れた。

 

「いやお前達、今皐月はちょっと待った何でおまはいはい――」

 

「えっへへ~来ちゃった♪」

 

 まるで単身赴任している彼氏の元にやってきた彼女のように、グレカーレは言った。

 だが俺の心境は真逆で、ウルトラマンとブラックキングが戦っている最中にナックル星人がやってきたような思いであった。

 

「き、来ちゃったじゃないだろ。何で三人がこの部屋にいるんだ」

 

「可愛い女の子がやって来たんだよ? もっと嬉しい顔しなきゃ駄目じゃん?」

 

 グレカーレはそう言って俺の首に腕を絡めてくる。少女特有のミルクのような香りが鼻孔をくすぐるが、今はそれどころではなかった。

 

「可愛い女の子? 俺は三人の侵略者に見えるが」

 

「またまたぁ、テートクってば。美少女三人に囲まれるなんて、ハーレムじゃん」

 

「とりあえずテレビとゲーム機が必要だよね」

 

「ここにスペースがあるから谷風さんの鎧擬亜でも置こうかね」

 

「ほら! もう侵略が始まってるぞ!」

 

 勝手に俺の部屋の内装を相談している皐月と谷風の姿に、流石のグレカーレも目を逸らす。

 

「言っておくがここは俺が自分の部屋代わりに掃除して、ここまで綺麗にしたんだ。お前達がなんと言おうとここを明け渡す期は無いぞ」

 

「そんなぁ~。話くらい聞いてよぉ~」

 

「だーめーだ」

 

 縋り付いてくるグレカーレを俺は手で引き剥がしていく。

 

「まぁまぁ、司令官。ここは冷静に話そうよ」

 

「皐月、何を言おうと俺は・・・・・・」

 

「ちょうどお土産にビール持ってきたんだよね」

 

「話くらいは聞いてやろう」

 

 頭ごなしに決めるのは悪いからな。俺はそう思い、椅子に腰を降ろした。

 皐月たちはベッドに腰を降ろし、持ってきた缶ビールを渡してくる。

 

「・・・・・・ぷはぁーっ! さて、と・・・・・・この部屋の事なんだが・・・・・・」

 

「瓶ビール1本」

 

「っ・・・・・・」

 

「一ヶ月、瓶ボール1本。これでどうかな?」

 

「その話、詳しく聞かせてくれ」

 

「え・・・・・・ちょろっ・・・・・・」

 

「言うなグレカーレ。あれが提督でぃ」

 

 結局、谷風からは日本酒二合。グレカーレからはワイン1本を一ヶ月毎に献上することを条件に、俺は三人が部屋を使うのを受け入れたのだった。

 

 そして一週間後。

 

「・・・・・・何コレ?」

 

 俺の部屋を見渡しながらグレカーレはポツリと言った。

 

「よっしゃーっ! スコア更新ーっ!」

 

 皐月が部屋に置かれたテレビに繋がったゲームに熱中していた。

 専用の座布団に陣取り、傍らにジュースとスナック菓子を常備している。

 

「やっぱり鎧擬亜は烈火から水滸まで揃えないとねぇ」

 

 部屋の奥に鎮座する五つの鎧甲冑。

 さらにその手前には模造刀やDX日輪刀が並んでいる。

 それらを谷風がホクホク顔で眺めているのである。

 

「ふっふっふ、買っちゃったぜ・・・・・・ビール用冷蔵庫。長年の夢だったんだ・・・・・・」

 

 そして俺も届いたばかりのビール用小型冷蔵庫の前で、感慨に浸っていた。

 この中には俺がわざわざ取り寄せた瓶ビールや缶ビールたちが揃っている。さらにグラスも一緒に冷やしているのだ!

 

「・・・・・・ねぇ、テートク。この部屋、貴方の部屋よね?」

 

「そうだな。まあもう完全に俺たちの秘密基地みたいになってるけどな」

 

「いや、秘密基地って・・・・・・ちょっと・・・・・・」

 

 グレカーレは不満げにそう言うと、俺の体に寄りかかってきた。

 

「折角、あたし達の秘密の部屋なのに何もしないのおかしくない?」

 

「何もって・・・・・・何をする気だ?」

 

「そーれーはー、男と女。分かってんでしょ?」

 

 意味ありげにぐりぐり頭を押しつけてくるグレカーレに嘆息しつつ、俺は言った。

 

「俺とお前達がそういう関係になるわけなだろ。それに最初はお前達に秘密がバレて、ヤバいと思ったが・・・・・・」

 

 俺は皐月と谷風、そしてグレカーレの顔を見渡した。

 

「やっぱり皆でワイワイやるのが楽しいな!」

 

「テートク、酔ってんの?」

 

 呆れたようにグレカーレは俺から離れると、嬉しそうに烈火を磨く谷風に近づいていく。

 

「第一、谷風さん! このヘンな鎧は何? 意味が分かんないんだけど!?」

 

「てやんでぃっ! サムライトルーパーも知らねぇのか!」

 

「知らないよ! それにこんな大きいモノ、テートクだって邪魔でしょ?」

 

「・・・・・・そうだぞ。谷風。これは何か間違ってないか?」

 

「え・・・・・・そうかい?」

 

「ああ。この五つを揃えたのなら、輝煌帝も無いと駄目だろう!」

 

「何言ってんのテートク!? 頭、茹だったの!?」

 

「かーっ! 谷風さんとしたことが、やらかしちまったぜ! こりゃ頼んどかないとねぇ!」

 

「ちょ、ちょっと谷風さん! 折角テートクの部屋に自由に出入りできるんだよ! それなのに遊んでばかりで・・・・・・」

 

「ねぇ、皆! スマブラやろうよ!」

 

「おお、やらいでか! 提督もやるだろう?」

 

「・・・・・・おいおい。言っておくが俺は64時代からの古参だぞ? ベテランのテクニックってもんを見せてやるよ」

 

「あ、ちょっと・・・・・・」

 

「グレカーレもやるよね?」

 

 コントローラーをずいっと差しだした皐月にグレカーレは深い溜息をついて、

 

「遠慮します」

 

 とだけ言って出て行った。

 

「なんだよ。一緒にすればいいのに」

 

「おい皐月、折角だしビール賭けないか?」

 

「いいね! 言っとくけど賭け事ならボクも本気だよ? メタナイト使っちゃうよ?」

 

「ならば谷風さんも伝家の宝刀、勇者を使うしかないね」

 

「見せてやるよ・・・・・・初代からルイージを使ってきた俺の底力をよ!」

 

 というわけでゲーム大会になった。

 当初の俺専用プライベートルームという建前は崩れたが、結果的に楽しいので良しとしよう。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

「・・・・・・皐月さんも谷風さんもおバカだけど、テートクはもっと馬鹿ね。ていうかほとんど子供・・・・・・」

 

 頬を膨らませながらグレカーレは一人廊下を歩いていた。

 彼女からしてみれば折角、提督の部屋に入り浸れる権利を得たのだ。ならばこれを機に提督に接近するチャンスであるのに、遊び呆けている皐月と谷風が信じられなかった。尤も、一番馬鹿なのはそれに全力で乗っかっている提督であるが・・・・・・

 

「あ、グレちゃん! ここにいたんだ!」

 

 そんな声がかけられ、グレカーレは顔を上げた。

 

「き、清霜姉さん・・・・・・」

 

 姉貴分の清霜が手を振りながらこちらへやって来た。

 

「グレちゃん! 今から暁お姉様と一緒にお茶会するんだけど、一緒に行かない?」

 

「お、お茶会・・・・・・」

 

 お茶会、という名のおしゃべり会なのだが、暁はよく妹分である二人とよく行なっていた。

 本来ならグレカーレも喜んで参加するのだが・・・・・・

 

「うーん・・・・・・今はチョット・・・・・・」

 

「どうしたの? 何かあるの?」

 

 心配そうに清霜が顔を覗きこんでくる。

 

「グレカーレ! 最近、付き合いが悪いわよ!」

 

 さらに暁が清霜の後ろからひょっこりと顔を出してきた。

 

「あ、暁姉さん・・・・・・」

 

「確かにグレちゃん、この頃夜はずっと何処かへ行ってるよね。そういえばどこに行ってるの?」

 

 清霜が顔を覗きこんでくる。この純粋無垢な瞳が、グレカーレには眩しかった。

 

「う・・・・・・姉さん、それはね・・・・・・」

 

 目を泳がせてグレカーレが気の利いた言い訳を思案し始めた時であった。

 

「おーい、グレカーレ! 厨房から瓶ビールの追加持ってきてくれ!」

 

 そんな彼女の背後から気の抜けた声が聞こえてきた。

 

「あれ、司令官?」

 

「どうして司令官が?」

 

 ほろ酔いで顔を出した流刑鎮守府最高指揮官に暁と清霜が反応する。グレカーレは大きく溜息をついた。

 

「おう、二人とも。どうした、こんなところで?」

 

「今から皆でレディーのお茶会するの!」

 

 暁が小さな胸をえっへんと張って言った。

 

「お茶会! そりゃあいいや! 今俺たちもアルコールスマブラ大会してるんだわ!」

 

「何、その最低なパワーワード」

 

 思わずグレカーレは嘆息した。

 

「あれ、でもなんでそっちから?」

 

「そういえば、司令官の部屋ってこの奥の物置に代ったんだっけ?」

 

 あちゃー、とグレカーレは頭を抱えた。

 

「おう、そうそう! お前らも来い来い!」

 

「ちょ、テートク! あの部屋には極力人を近づけないんじゃなかったの!?」

 

「何言ってるんだ、グレカーレ! 宴は大人数に限るだろう!」

 

 そう言いながら暁と清霜の肩を抱いて提督は秘密の部屋への方へと歩いて行く。

 あ、この人、根っからのお祭り気質なんだ。騒ぐのが好きなんだ。

 グレカーレはそう悟り、諦めに近い気持ちを抱きながらその後を着いていくのであった。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

 そして一週間後。

 

「・・・・・・何コレ」

 

 グレカーレは提督の部屋で呆然としていた。

 一応、秘密だったはずの俺の私室は最初とは恐ろしい程、様変わりしていた。

 テレビに繋がれた幾つものゲーム機。

 部屋の奥に鎮座する和風の装飾品。

 戸棚に飾られた大量の酒。

 可愛らしい装飾の施された小物入れやぬいぐるみ。

 一体誰の部屋かそもそも何の部屋か分からない程、様々なモノが混在し、カオスな空間が出来上がっている。

 それはまるでアメ横の端っこにある多国籍他民族がごっちゃになった雑貨屋のようであった。

 

「テートク、いいの? もう完全に侵略されきって植民地化しちゃってるけど・・・・・・」

 

 グレカーレがそう尋ねると、最近購入したソファーにどっかり座ってビールを呷っていた俺はむむむと唸った。

 

「確かに俺のプライベートルームだったんだが、いつの間にか溜まり場になっているな・・・・・・これはちょっと・・・・・・」

 

「まぁまぁ、提督! ポン酒でも飲みねぃ!」

 

「おっ! さすが谷風! 気が利くじゃねえの!」

 

「て、テートク・・・・・・」

 

 何か分からないけどグレカーレはドン引きしていた。

 

「ぐ・・・・・・清霜、中々やるね!」

 

「ふっふーん! これでここら辺一体は買い占めたよ! 清霜、大商人!」

 

「ああっ! 暁にボンビーが!」

 

 桃鉄に興じている三人も楽しそうだ。

 まあ当初の予定とは変わってしまったが、結果的に楽しいからいいだろう。

 いずれ五月雨や長月たちにも・・・・・・と思った時だった。

 

「・・・・・・一体、何ですかコレは」

 

 背後から冷たい声が聞こえてきた。

 思わずぞくっと背筋に走る。

 

「し、不知火・・・・・・」

 

 ゆっくりと振り返ると、部屋ので出入り口に不知火が怪訝な顔で立っていた。

 その後ろには苦笑いする五月雨と呆れたように腕組みする長月が続いている。

 

「これ、あの物置ですか?」

 

「もはや原形を留めていないな・・・・・・」

 

「あ、いや・・・・・・これはな・・・・・・」

 

 俺はすぐさま立ち上がり、三人に弁明を試みる。

 

「不知火の知らない間に部屋の内装が大きく変わっていますね。見覚えのない私物も増えています。コレは一体、どういうことですか?」

 

 氷のような視線で不知火はずずずっと詰めてくる。

 いや、俺はおかしいことはしていないハズだ。自分の金で自分の部屋を模様替えしたに過ぎない。きっと大丈夫なはずだ。

 

「随分と皆で無駄使いしたようですね」

 

 駄目かもしれない。

 不知火の視線は俺が購入した冷蔵庫や酒瓶に向けられている。

 

「まーまー、落ち着きねぃ不知火。とりあえず駆けつけ一杯ぐえっ!?」

 

「谷風。あの珍妙な武者甲冑は何? また浪費したのかしら?」

 

「うううう・・・・・・」

 

「皐月も暁も清霜も・・・・・・ゲームは一日一時間のはずだけど」

 

 さらに不知火の怒りの矛先は皐月たちにも向いた。

 

「ひっ・・・・・・不知火・・・・・・」

 

「お、お姉様怖い・・・・・・」

 

「だ、大丈夫よ清霜・・・・・・暁が・・・・・・不知火落ち着いて・・・・・・」

 

 三人も後ろめたい気持ちがあるのか、不知火の視線から目を逸らした。

 

「司令官、これ全部あんたが買ったのか?」

 

「いや、皆が持ち込んできたモノもあるけど・・・・・・いや、そんな問題じゃないみたいッスね・・・・・・」

 

 無表情でずんずん来る不知火に俺は言葉を濁した。

 

「とりあえずこの部屋はとりあえず封印ね。こんな場所を野放しにしていたら、堕落する一方よ」

 

「なっ! そ、それは・・・・・・それは酷いだろ! 俺がここまで部屋を整理して・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・すいません」

 

 俺は不知火の怒気に屈した。

 情けないけど怖いんだもん。

 

「ほら撤収よ撤収。皆、準備しなさい。そのゲームや鎧も一旦預かるわ」」

 

「そ、そんなぁ~」

 

「後生でい! 堪忍してくれぃ!」

 

「酒は・・・・・・せめてビールだけは・・・・・・」

 

 鬼の執行官と化した不知火たちにより俺の部屋の物品が次々と差し押さえられていく。

 

「ま、待ってくれ! この部屋が使えないとなると俺はどこに寝ればいいんだ!」

 

 元の寝室は消滅。この物置も使えないとなると、俺が寝る場所はなくなってしまう。

 

「・・・・・・そうですね。今回の一件で司令は野放しにしておくのはいけない事だと、不知火は悟りました」

 

 不知火はそう言うと俺の肩をポンと叩いた。

 

「こちらで新しい寝床を用意します。今日からそこでお休みになってください」

 

 こうして俺のエデンは僅か一週間弱で崩壊したのであった。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

「・・・・・・なあ、ここは流石におかしくないか?」

 

「いえ、ここならばもし司令の身に何かが起こっても、すぐに不知火達が馳せ参じられます」

 

「でもでもでもさ、でもでもさ」

 

 俺は無造作に置かれたベッドの哀れな姿を見下ろして言った。

 

「廊下は流石に酷いんじゃないの?」

 

 不知火があてがった俺の新たな就寝スペースは流刑鎮守府の廊下。それも艦娘専用の寝室の前であった。

 

「寒いし・・・・・・部屋ですらないし・・・・・・酷く無い? 人権侵害じゃない?」

 

「・・・・・・司令、貴方にまだ人権があるとでも思っているのですか?」

 

「あっ、お前! それはさすがにいかんだろ! 仮にも上官だぞ!」

 

「落ち着け司令官。あの私物を片づけて、ほとぼりが冷めたら戻してやるさ。監視付きでな」

 

「長月、お前まで・・・・・・」

 

「ドアの向こうに提督が寝ているなんて、少しドキドキしますね」

 

 朗らかにいう五月雨だが、俺はそれどころじゃなかった。

 

「お、お前達も共犯だろ! 助けてくれ!」

 

 俺は不知火の後ろにいた皐月たちに助けを請うた。しかし。

 

「・・・・・・ごめん。ボク達も色々失ったし・・・・・・」

 

「谷風さんじゃ何も出来ねえ。すまねえ・・・・・・」

 

「司令官ごめんなさい・・・・・・」

 

「寒いなら清霜のお布団で一緒に寝る?」

 

 糞の役にも立たなそうだった。

 

「テートク、諦めなよ。もうアソコは無いんだよ」

 

 グレカーレが慰めるように肩を叩く。

 こうして俺は寝室を失い、新たな拠点も失い、最終的に廊下で寝るという悲惨な事態に陥ったのであった。

 ・・・・・・提督って何だろうか。

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

  • 改二になったほうがいい
  • このままでいい
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