リアルが多忙過ぎて全く書けていませんでした。
艦これイベントにも行けなかったし……
今回の話はファンタジーです
世間がGWに突入し、多くの人たちが大型連休を利用して羽を伸ばしている頃、我が流刑鎮守府は怠惰の極みを迎えていた。
そもそも俺たちは軍人であるからカレンダー通りの休みなんて無い。つまりGW中もバンバン軍務がある。たがかと言って流刑鎮守府自体が平和な海域そのものなので、俺たちはいつもと変わらない日々を送っていた。
割と税金泥棒に片脚突っ込んでると思う。
今日も午前中にあらかた任務を終えた俺は昼食をとると、午後から執務室でコーヒー片手に寛いでいた。執務室には秘書艦である五月雨と対面のソファーで読書をしている不知火がいるだけであった。
「しれーかんっ! 今日はこどもの日だよっ!」
そんな時、勢いよく扉が開いて執務室に清霜が入ってきた。見れば新聞紙で作った兜を被り、玩具の刀を腰に差している。よく漫画とかで見る、こどもの日にいる少年スタイルだ。
「そうか、今日は5月5日か」
普段、あまり気にしないから気が付かなかったが本日はこどもの日らしい。そして我が流刑鎮守府のこどもといえば清霜だろう。
「この兜ね、谷風さんが作ってくれたんだ」
「成程、谷風か。通りで」
上手いわけだ。ああ見えて意外と手先が器用だからなぁ。
「今、お姉様と谷風さんと皐月さんがこどもの日の飾り付けをしてるの! 司令官たちもいこっ!」
お祭り行事が楽しいのか、清霜はハイテンションで俺の手を取った。俺は立ち上がって、横にいる五月雨の方へ顔を向けた。彼女も苦笑して立ち上がる。チラリと不知火の方を見たが、彼女は動く様子がなさそうだ。
「それじゃーレッツゴー!」
そう言って勇ましく出発した清霜だったがそもそも狭い鎮守府内なので、ものの数秒で目的地である食堂へ辿り着く。そこには五月人形と張子の虎、そして鯉のぼりが飾られていた。
「す、すごい本格的じゃないか……どうしたんだこれ」
「へっへーんっ! ボク達が準備したんだよ!」
中へと入って驚いている俺と五月雨に、皐月が得意顔で近づいてきた。
「おお、それは凄い……でもこんな立派なモノ、ウチの鎮守府にあったっけ?」
「いえ、五月雨も記憶にありません」
俺は思わず五月雨に尋ねるも、彼女も心当たりが無いようで首を捻るだけである。
「ふっふっふ……それはねぇい……この谷風さんが用意したのよ!」
ねじり鉢巻きを巻いた谷風が皐月の後ろからドヤ顔で登場する。
「じゃあこれら、皆谷風が買ったのか?」
「あたぼうよ! 何せ清霜とグレカーレのためだからねぇ」
清霜とグレカーレ。
確かに二人とも、見た目も知能もみなと同じ位であるが、よく考えてみればこの鎮守府で生まれたばかりの艦娘である。こどもどころか実年齢は赤ん坊といっても差支えない。
「二人の親にはなれねぇが、せめて家族らしいことをしてやろうと思ってね」
谷風はそう言って照れくさそうに、鼻の頭を指でこすった。
「……確かにそうだな。ありがとう谷風」
本来、こういうことをしなければならないのは鎮守府の責任者である俺のはずだ。
だが俺はあまりそういった行事に無頓着であり、谷風にその役を押し付けるような形となってしまった。
本人にそのつもりはないだろうが、俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになって、谷風に頭を下げる。
「ちょ、ちょっとそんなにかしこまらなくていいって。谷風さんが勝手にやったことだしさ」
「いや、それでも申し訳ない。せめてこの五月人形の金は出させてくれ」
「いいっていいって。それよりも飾り付けを手伝って欲しいね。谷風さん達じゃ届かないとこもあるからさ」
「……勿論さ」
俺は大きく頷くと、谷風や皐月と飾り付けを始めた。
五月雨やいつの間にか来ていた暁もそれに参加する。
和やかな時間が暫し過ぎた時だった。
「しかし、今までこどもの日に何かするってことなかったな。意外といえば意外だよね」
皐月がそんな事を言い出した。
「まぁ、端午の節句といや男の子の祭ってイメージがあるからねぇい。谷風さん達艦娘は女だし」
「たんごのせっく?」
清霜がぱちくりと目を見開いた。
「清霜、端午の節句ってのはね。こどもの日の昔の名前なの」
横にいた暁が得意げに解説した。まあ、暁だって一応軍学校を出ているわけだからこれ位の常識は知っているか。
「昔は男の子の健康と成長を願ったお祭りだったんですよ」
五月雨も補足するように続ける。
「へぇーっ! じゃあ何でそれがこどもの日になったの?」
すると清霜は純粋にそう質問する。すると途端に暁の顔色が変わった。
「え、えーと……うーん……さ、五月雨……」
「ごめんね、暁ちゃん。五月雨も分からないの……」
「まあ、いいじゃないか。どっちにしろ皆が大きくなることを願ったお祭りなんだから」
二人の助け船を俺は出して、そのまま清霜の頭を撫でた。
「えへへ・・…そうだねっ! それにいつか清霜は戦艦になるんだから、ここでいっぱいお願いしておかないと!」
「うんうん。そうだな」
どんな成長を遂げようと戦艦には100%なれないと思うけど、そこは言わないでおこう。
「まあ男なんてこの鎮守府には一人しかいないしねぇ」
「しかも30手前のくたびれたおっさんが一人だし」
谷風と皐月がそう言って、ケケケと笑った。
「おい、俺はまだおっさんじゃないぞ。心は少年のままさ」
「それ、誇って言えることじゃないでしょ」
「腰痛に悩む少年は嫌だねぇ」
「それに少年はお酒を飲まないわ!」
「あ、暁、お前まで……」
確かに俺はもう三十路手前で体のあちこちにガタが出始めた成人男性である。
しかし目の前ではっきりと年寄り扱いされると、それはそれで不本意であった。
「まだまだ若いつもりだ……な、五月雨?」
「……あははは……」
俺の問いかけに五月雨は具体的な返答をせず、困ったように笑うだけだった。
「大丈夫だよ司令官! 清霜は司令官がおじいちゃんになっても大好きだよ!」
「……ありがとう、清霜。そうか……おじいちゃん……おじいちゃんか……」
清霜から見れば俺は彼女の三倍近く生きている大人。感覚的にはお父さんとかおじいちゃんなんだろうな……というか清霜が成人する年齢まで成長したら、俺五十路やんけ……
「……はぁ、年は取りたくないな……」
「そんなテートクに朗報だよ!」
「うおっ!?」
突然、グレカーレがにゅっと俺の前に現れた。その小さな手には何やら白い紙袋が握られている。
「ど、どうしたのグレちゃん。さっき探しに行った時にはいなかったのに」
同じく驚いた清霜がそう尋ねると、グレカーレはにやぁ~と不敵に笑った。
「ふっふっふ。それはね。通販で頼んだこれを探してたんだよ!」
そう言いながらグレカーレは袋から何かを取り出した。あれは……瓶だ。しかも小さい。市販で売っている栄養ドリンクみたいなサイズである。中身は液体らしい。
「これぞ! 若い頃の力が甦る明石さん特製・レインボーマムシドリンク! どう? いいでしょ?」
自信満々に紹介したグレカーレだったが、俺の体はその名前を聞いただけで警戒信号を鳴らし始めた。
「あ、明石さん特製?」
「うん、そーだよ。艦娘専用の通販で売っていたの」
……確かに軍人及び艦娘専用に作られた、独自の通販ネットワークが軍には存在する。そしてそこで本部にいる工作艦・明石が自作した怪しげな発明を販売しているという噂も、耳にしたことがあった。
「でもそれって確か、何があっても自己責任でしょ?」
流石の皐月も心配したように言った。
「大丈夫大丈夫! 飲むのはテートクだから」
「おいちょっと待て」
「確かにそうだね! ボクが間違ってたよ」
「おい皐月……」
瞬で掌を返した皐月に俺は突っ込みをいれるが、それと同時にグレカーレはその怪しげなドリンクをこちらに勧めてくるのである。
「いいでしょテートク。これを飲むだけで若さが取り戻せるんだよ?」
「いや、でもこれ怪しすぎるし……」
「確かに司令官は最近、肩と腰が痛いって言ってたわ!」
「もう夜更かしできないって言ってた!」
「あ、暁……清霜……」
「年齢による衰えをそろそろ隠しきれなくなってきたねぇ……」
「さ、五月雨は今の提督もす……好きですよ」
「谷風……五月雨まで……」
部下たちに面と向かってはっきりと『老いた』といわれる指揮官ってどうなんだろう。老兵は消え去れという意味だろうか。
でも確かに最近、自分でも体の衰えを感じ始めた。
もし若さが取り戻せるんなら、それに越したことはないが……
「これをぐぐっと飲み干せば、若い日の姿を取り戻せるって書いてあったよ! ……多分」
「多分!?」
「まぁまぁ、騙されたと思って飲んでみようよ! これさ、あたしがテートクのためお小遣いで買ったんだよ?」
「もっと有意義に使えよ……」
こんな出自の怪しい薬に使ってどうすんだ。
「ささ、ぐいっと!」
「飲んで飲んで飲んで!」
谷風と皐月も悪乗りしてくる始末だ。
だが俺としてはこんな得体の知れない危険物質、体内にいれるわけには――
「司令官、男なんでしょ? ぐずぐずするなよ」
――皐月の言葉に俺は思わず息を呑んだ。
「若さ、若さって何かな?」
「……ふりむかないこと」
「愛って何だい?」
「ためらわないこと……」
皐月の言葉に俺がそう返した直後。
「でででででででででで、でーでれってでれでれでーっ♪」
谷風が軽快な宙明節を口ずさみだしたのだ。
マズイ。非常にマズイ。
このままでは俺は……
「お姉様、あの三人は何を言っているの?」
「分からなくていいわ清霜。レディーには関係の無い事よ」
呆れたように暁と清霜が言う中で、グレカーレは俺の手にドリンクを渡してきた。
「司令官、ダイナミック……はっ!?」
そして俺はそのノリに流されて、うっかりそれを飲んでしまったのだ。
「て、提督! 本当に飲んじゃったんですか!?」
心配そうに五月雨が言った。
「ま、まさか本当に飲んじゃうとは……」
「相変わらず乗りやすい体質だねぇ」
煽った二人もそんなこと言い出す始末。だが……
「司令官、大丈夫?」
「ああ……味は別に……」
同じく心配するように覗き込んできた清霜に、俺は笑顔で返した。
「テートク、体に何か変わりは無い?」
「……いや、別に」
味もエナジードリンクみたいな味で不味くなかったし、体に異変もない。
「ホントに、何も無い?」
「無い」
「その……体が熱くなったり、何となくムラムラしたりしない?」
「……グレカーレ、まさかこれ精力剤の類じゃないだろうな」
「ぎ、ぎくっ……ま、まさかぁー。そんなことあるわけないじゃーん」
白々しくそう言って誤魔化すグレカーレ。だがその態度でバレバレであった。
「でも日中で皆がいる所で飲ませても意味ないじゃん」
皐月が至極真っ当な突っ込みを入れる。
「それは大丈夫! テートクは真面目だから、効き目が出てくれば平静を装ってこの場から離れずハズ! そして一人になったところをあたしが……」
「いでよ不知火!」
「はっ、ここに」
「え、ちょっ……何で不知火さんがここに……」
俺の言葉と共に現れた不知火に、グレカーレが驚愕する。
だが当の不知火は無表情のまま彼女の首根っこを掴んでいく。
「さ、グレカーレ。こちらで少しお話しましょうか」
「ちょ……ちょっと待って! これは別にそんな……ね、姉さん助けてっ!」
ずるずると引きずられていくグレカーレは咄嗟に視界に入った、暁と清霜に手を伸ばす。だが二人は気まずそうに視線を逸らした。
「全く、あいつは……」
そしてその様子を俺が苦笑しながら眺めていた時だった。
――ドクンっ!
心臓が大きく鳴った。
気のせいか? と思った直後に再び、ドクンっ! と動く。
やがてその鼓動は感覚を徐々に速めていき、たちまち俺の心臓は飛び出してしまうかのように大きく鳴動し始めた。
「ぐぅぅぅぅうううううっ!」
体が一気に熱くなり、俺は思わず地面に膝を着いた。
「て、提督! 大丈夫ですか!?」
五月雨が駆け寄ってくる。
俺は彼女を心配させまいと顔を上げたが、視界がぼやけて見えなかった。
これは熱による意識の朦朧か、それとも滝のように噴き出した汗のせいか。
体が熱い。焼けるようだ。
力が入らない。もう……
そこで俺の意識は途切れた。
…
……
…………
「……はっ」
気が付くとよく知る天井だった。
流刑鎮守府の廊下、俺のベッドが置かれている場所だ。
なんだか頭がぼーっとする、どうしてここに……
そんなことを思っていると。
「し、司令官!」
横から声が聞こえた。
見るとベッドのそばで清霜がこちらを心配そうに見つめている。
その大きな瞳は涙で潤んでいる。
よく見ればその隣には暁がいて、同じような表情でこちらを見つめていた。
「おお……俺は一体……」
「しれーかーんっ!」
俺が言い切る前に清霜が胸に飛び込んできた。
泣いているのか、身体を小刻みに震わせながら体を擦りつけてくる。
「よかった……本当によかった……」
暁も傍らで泣いていた。
「目が覚めたか……」
さらに長月がその奥で言う。
よく見れば鎮守府の皆が俺のベッドを取り囲むようにして、こちらを覗き込んでいた。
皆、心配そうにしているが同時に安堵したような表情も浮かべている。
「皆……どうして……俺は確かグレカーレの変な飲み物を飲んで……あ……
そこでようやく俺は自分が気を失って、ここに運ばれたことを理解したのである。
「ごめんなさい、テートク。あたし……こんなことになるなんて思わなくて……」
真っ赤になった両目を擦りながら、グレカーレは頭を下げた。
いつもの勝気で陽気な姿はなりを潜め、弱々しく萎れた彼女がそこにあった。
恐らく本気で心配してくれたのであろう。元々悪気があったわけじゃないし……いや邪な心があることはあったが、こんなに大事になるとは思っていなかったはずだ。
「……まあいいさ。たまにはこんなこともある。でももう二度と怪しげなものを買うんじゃないぞ」
俺はそう言って笑うとグレカーレは無言で頷いた。
これで一件落着……と思った時。
「…………」
猛烈な違和感を感じた。
何かがいつもと違う。
まだ頭が完全に戻っていないからか分からないが、とてつもない異変を感じる。
「ほ、ほんとに大丈夫なの?」
皐月がそういってこちらを覗き込んでくる。
ああ、大丈夫だよと俺が言おうとした時であった。
「……皐月……何か……大きくなってない?」
いや、皐月だけじゃない。
今俺に抱きついている清霜も、周りを囲む他の皆も。
明らかに以前より大きくなっている。
皆、俺の肩くらいしかないはずなのに、今は俺と同じ……いや少し高いか?
直近で抱きついている清霜は鎮守府で最も小柄であるが、一番背の高い俺と同じ目線であった。
「な、なんだ……何が起こってるんだ……」
自身の異変に俺が気付いたことを、皆は察したのか一斉に気まずい空気が流れ始める。
「て、提督。落ち着いて、落ち着いて見てくださいね」
その中から五月雨がスッと前に出てきて、俺に手鏡を渡してきた。
震える指先で俺はそれを受け取ると、ゆっくりと自分の顔をそこへ映していく。
まず目に入ったのは、あどけない少年の顔だった。
目は大きく、鼻は小ぶりでまだ思春期を迎えていない位であろうか。
でも何故少年がここに。
でもどこかで見たことある気がする……
そう考えながら、俺は自分の頬を手ですっと撫でた。
すると鏡に映った少年も全く同じ動きをしたのである。
「…………」
俺は茫然としたまま手鏡を置くと、目の前の清霜を見た。
俺より少し背が高い。
ちょっと見上げるようにして俺が清霜の目を見ると、彼女は悲しそうに頷いた。
「……皆がでかくなったんじゃない。俺が小さくなったのか……」
「正確に言うと、司令が若返って十代未満の子どもに戻ったというべきでしょうか」
気まずそうに不知火が言った。
「若い日の姿を取り戻せるってそういうことか……」
「まるで漫画だねぇ」
皐月と谷風も信じられないといった様子で、相槌を打つだけだ。
「……だが、現実だ。司令官、あんたは子供になってしまったんだ」
長月が言い聞かせるように言うと俺の肩をポンと叩いた。
「……嘘だろおい」
人間、本当に驚いた時は意外と取り乱したりしないものだ。
ただ状況に着いていけないだけかもしれないが。
「……どうしようコレ」
念願の若さを取り戻した俺は、ベッドの上で途方に暮れるのだった。
ショタ提督は賛否両論ありますが、私は嫌いじゃないですよ。
流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か
-
改二になったほうがいい
-
このままでいい