流刑鎮守府異常なし   作:あとん

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明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします!

新年一発目はいきなりパロディです。




流刑鎮守府大喜利 

 テンテケテケテケテンテン♪

 小気味よい音楽が鳴るのと同時に、舞台袖から小さな影が飛び出してきた。

 水色の着物を着た谷風が胸を張って。

 桃色の着物を着た五月雨が照れながら頭を下げて。

 黄色の着物を着た皐月が元気よく。

 黄緑色の着物を着た長月が礼儀正しくお辞儀し。

 紫色の着物を着た不知火が軽く会釈して。

 オレンジ色の着物を着た暁がちょっとむくれた顔で。

 最後に赤い着物を着た清霜が満面に笑みを浮かべて。

 色とりどりの着物に身を包んだ艦娘達が登場し、それぞれが綺麗に並べられた座布団に腰を降ろしていく。

 

 そして最後に紺色の着物に身を包んだ青年が、お辞儀して現れる。

 彼はそのまま艦娘達の後ろを一直線に進んでいき、一番端にある席へと腰を降ろした。

 

 ――パン!

 

「さて、お正月特別企画『流刑鎮守府大喜利』の時間がやってまいりました。司会の提督です。まずは晴れ着に身を包んだ、可愛い艦娘達の挨拶からどうぞ!」

 

 扇子で司会の台座を叩いて提督はそう言った。

 すると谷風が軽快に語り始める。

 

「笑点で青い着物といえば、三遊亭小遊三師匠。小遊三師匠が大月のアラン・ドロンなら、谷風さんは鎮守府のオードリー・ヘップバーンってか!? 陽炎型・谷風です」

 

 谷風が大きく頭を下げると、次に五月雨が軽く会釈した。

 

「えへへ、お正月スペシャルで笑点のパロディーです。皆で色とりどりの着物を着ると、何だかワクワクしますね。幸せ気分の五月雨です」

 

 はにかみながら五月雨がお辞儀すると、次に皐月が元気よく手を挙げる。

 

「かわいいボクが! 今回は黄色の和服で登場だよ! これからバンバン笑いも座布団も取るから期待していてね! スパースターの皐月でーすっ!」

 

 笑顔で挨拶を終えた皐月。だがその直後、長月が軽く溜息をついた。

 

「何がスーパースターだ、全く・・・・・・」

 

 そう悪態をつきつつも、長月は自己紹介を始めた。

 

「さて、皆様明けましておめでとう。皆で大喜利ということで、私は緑の着物を着ている。緑といえばかつては桂歌丸師匠。今は桂宮治師匠の着ている由緒正しき色だ。師匠方に少しでも近づけるように、頑張っていくつもりだ。長月です」

 

 長月が礼儀正しくお辞儀をすると、隣の不知火が静かに頭を下げた。

 

「昨年、六代目三遊亭円楽師匠が旅立たれました。不知火達にとって笑点で紫の着物といえば、楽太郎師匠もとい円楽師匠です。そんな偉大な紫色をパロディーとはいえ、着させて頂きました。偉大なる師匠に捧げる大喜利を目指します。不知火です」

 

 不知火が挨拶を終えると。暁がむっとした表情で口を開いた。

 

「ちょっと! 暁がなんでオレンジ色の着物なのよ! オレンジっていったらチャーザー村の田舎者とか、秩父の花火師じゃない! レディーのイメージじゃないわ!」

 

「へえ、じゃあここはレディーっぽい挨拶。一つお願いしようか」

 

 提督が意地悪くそう言う。すると。

 

「えっ・・・・・・えっと・・・・・・あの・・・・・・ちゃっらーんっ! 暁でーすっ!」

 

 ヤケクソ気味に万歳して暁は挨拶を終えた。

 

「さあ、続いては座布団の清霜の挨拶をどうぞ」

 

「ざっざっ座布団運びます~♪ 清霜は今回、座布団運びだよ! お姉様たちに負けないくらい頑張るよ! 横断歩道は手を挙げて! 清霜でーっす!」

 

 清霜は挨拶を終えると、そのまま袖へと戻っていった。

 

「えー、いい答えをすると座布団をあげます。悪い答えだと取ります。最後に座布団が一番多かった娘には素敵な商品をプレゼント。では第一問。清霜、皆さんに例のモノを配ってください」

 

「はーい! かしこまりましたー!」

 

元気いっぱいに清霜は返事をすると、大きなフリップを持って現れた。

そこには、

 

 ふ――

 ね――

 

 と書かれていた。

 

「えーと、艦娘とはいえば古の船の魂を受け継いだ存在。そこで問題。皆さんまずはヒントを言って、『ふ』と『ね』を頭文字にして一言申して頂きたい。はい、早かった長月」

 

「私の指標だ。

 

 ふ――不屈の闘志

 

 ね――熱血驀進」

 

「おお、キレイだね。清霜、長月に座布団一枚、やってくれ」

 

「よし!」

 

 長月はぐっと拳を握ると、立ち上がった。

 

「はい、次は不知火」

 

「はい。今の不知火の思いです」

 

 不知火は一息ついて答えた。

 

「ふ――不戦の誓い

 

 ね――願うは世界平和」

 

「うーん、そうだなぁ。最近、世界情勢がきな臭いからな。平和が一番だよ、ホントに。清霜、不知火に座布団一枚」

 

「はーい!」

 

「綺麗な答えが続いてるな。はい、では皐月」

 

「はいっ! 司令官です」

 

「ほう! 何ですか?」

 

「ふ――普段から酒浸り

 

 ね――年内に体壊しそう」

 

「余計なお世話だ! 清霜、皐月の座布団、取って!」

 

「そんな!」

 

「最近は休肝日もつくってんだよ! はい、気を取り直して谷風」

 

「おうさ! 谷風さんの心意気だね!」

 

「ほう、何でしょう」

 

「ふ――風林火山!

 

 ね――年功序列」

 

「何が心意気だよ、知ってる四字熟語並べただけじゃねえか。清霜、谷風の座布団持ってって」

 

「チクショウ!」

 

「はい、暁」

 

「はい! レディーの振る舞いよ!

 

 ふ――フランスでティータイム

 

 ね――熱っぽい、周囲の視線」

 

「うんうん、可愛いぞ。清霜、暁に座布団一枚」

 

「・・・・・・何か釈然としないわ」

 

 暁はちょっとむくれながらも、座布団を受け取った。

 

「よし、では五月雨」

 

「はい。えへへ・・・・・・流刑鎮守府の皆です」

 

「お、流刑鎮守府の皆。何でしょう?」

 

「ふ――フレンドリーで

 

 ね――根は優しい」

 

「ああ、いいねえ。五月雨に座布団一枚!」」

 

「ちょっと! 何かボク達だけ厳しくない?」

 

「谷風さん達と扱いが違うぞ!」

 

「最初に言っただろ。良い答えを言えば座布団を上げます。悪いと取ります。俺は公平に審査しているから。座布団欲しければもっとカワイイ答えをだしな」

 

 抗議の声をあげる皐月と谷風を切って捨てると、提督は次の回答者を差した。

 

「気を取り直して、暁」

 

「はいっ! カワイイモノよ!」

 

「ほう、なんでしょう」

 

「ふ――ふわふわな

 

 ね――猫さん!」

 

「あー、可愛いなぁ。暁も可愛いぞ。清霜、座布団一枚やって」

 

「はーいっ! さっすがお姉様!」

 

「ふっふーん、当然でしょ!」

 

 得意顔で座布団を貰う暁とそれを讃える清霜。その様子を提督は穏やかな笑顔で見つめていた。

 

「うんうん、姉妹が仲いいのはいいことだ・・・・・・はい、長月」

 

「ああ、昨年のワールドカップだ」

 

「なんでしょうか?」

 

「ふ――震える試合の連続

 

 ね――ねぎらう日本代表」

 

「おおーっ! 確かに日本代表は素晴らしい健闘だったな。清霜、長月に座布団一枚・・・・・・何だ谷風」

 

「へーん、べっつにぃ」

 

「そうか。じゃあ、はい。谷風」

 

 拗ねたようにそっぽを向きながら谷風は答えた。

 

「提督の司会です」

 

「ほう、なんでしょう」

 

「ふ――不平等な采配

 

 ね――根っこから依怙贔屓」

 

「何を! おい、清霜、う・・・・・・」

 

「へっへっへ、残念だったね提督! 谷風さんは座布団0だからノーダメージだよ!」

 

 扇子で床を叩いて谷風が得意げに言う。

 

「・・・・・・清霜。谷風に一枚やってくれ」

 

「おっ! くれんのかい!?」

 

「座布団無いと何言うか分からんからな。はい、次。不知火」

 

「はい。皐月と谷風です」

 

「お。何でしょうか」

 

「ふ――不真面目です

 

 ね――熱意が感じられません」

 

「なんだとぉっ!」

 

「あーっ! 言ったな!」

 

「あっはっは! こりゃいいや! お、皐月怒ったか、じゃあ皐月」

 

 激高する谷風と皐月に、爆笑する提督。すると勢いよく皐月が手を挙げたので、提督は皐月を差した。

 

「はい! 不知火です!」

 

「何でしょう」

 

「ふ――ふしだらな!

 

 ね――根暗!」

 

「な、何を言うの!」

 

「あっはっはっはっはっは! これは皐月の方が上手だわ!」

 

「司令、笑いすぎです」

 

「清霜ー、皐月に三枚やってくれ」

 

「っしゃぁ!」

 

「三枚!?」

 

「納得いかないですよ!」

 

 ガッツポーズを取る皐月に、驚く長月と抗議する不知火。

 ここで皐月が座布団数一番に躍り出たのである。

 

「ははははは・・・・・・あー笑った。さてと二問目にいきましょう。清霜、皆さんに例のモノを配って下さい」

 

「はい、かしこまりましたー!」

 

 清霜が次に持ってきたのはマイクだった。

 

「えー流刑鎮守府年始、発表会。皆さん、マイクを手に今年の抱負を発表して下さい。私が『頑張って』と応援しますので、さらに一言」

 

 マイクを渡された艦娘達はマイクを手に取って少し考えた後、続々と手を挙げ始めた。

 

「はい、では長月」

 

「はい。私、長月は今年こそ、この鎮守府で一番の艦娘になるぞ」

 

「頑張って!」

 

「・・・・・・もうなってるな」

 

「清霜! 長月の一枚持って行ってくれ!」

 

 周囲を見渡して言った長月に、提督から座布団没収の命が下る。

 

「駄目だぞ、長月。本当の事は言っちゃ駄目!」

 

「ちょっと、どういうことだよ!」

 

「提督、さっきから失礼じゃないかい!?」

 

「五月蠅いぞ、馬鹿コンビ。はい、五月雨!」

 

 皐月と谷風の抗議を無視して、提督は五月雨を差した。

 

「はいっ! 五月雨は今年、ドジをしないように頑張ります!」

 

「頑張って!」

 

「はい! そのためにみょわあう・・・・・・」

 

 ここぞの所で五月雨は噛んでしまい、そのまま真っ赤になって俯いてしまった。

 

「・・・・・・頑張ろうな、五月雨」

 

「はい・・・・・・」

 

「では気を取り直して、不知火!」

 

「はい。今年こそ不知火は提督に禁酒させます」

 

「誰か他に?」

 

「あーっ、逃げた!」

 

「司令、不知火はお体を想ってのことですよ」

 

「馬鹿言ってんじゃねぇ、俺の座右はノーアルコールノーライフよ! はい、暁!」

 

「はーいっ! 今年の暁は一人前のレディーとして、司令官にご飯を作ってあげるわ!」

 

「おお、頑張って!」

 

「・・・・・・そうでもしないと司令官、死んじゃいそうだもん」

 

「・・・・・・」

 

 これには流石の提督も絶句したようだった。

 

「確かに晩酌の量、ヤバいよね」

 

「日に日に多くなってるもんな」

 

「夕食の後、お酒と肴を痛飲しますからね、健康的に悪いにも程が・・・・・・」

 

「清霜ーっ! 皐月と谷風と不知火の座布団、一枚ずつ持って行ってくれ!」

 

 暁の答えた後に色々言っていた三人が一斉に没収を喰らう。

 

「全く、余計なお世話だってんだ、たく。気を取り直して、長月」

 

「ああ、今年は皆、笑顔で幸せに暮らしていきたいな」

 

「頑張って!」

 

「そうウクライナで心から言える日が来ると良いな」

 

「あ・・・・・・本当にそうだよな。何というか、真面目な木久扇師匠みたいな答えだ。清霜、長月に一枚やってくれ」

 

「はい、かしこまりましたー」

 

「はい、次は谷風!」

 

「おうよ! 谷風さんは今年! 第十七駆逐隊の皆を、鎮守府に連れてくるぜ!」

 

「・・・・・・マジ?」

 

「マジマジ」

 

「本当に? 約束する?」

 

「谷風さんに任せときな」

 

「清霜、谷風さんに座布団三枚やってくれ」

 

 問題ガン無視で提督は命じた。

 

「ちょっと谷風! おっぱいで気を引くなんて卑怯だわ!」

 

「お子ちゃまだなぁ、暁。勝てばよかろうなのだ!」

 

「司令官もこんな見え見えの嘘に騙されないでよ!」

 

「たとえ嘘だろうと・・・・・・可能性が0でなければかける価値はあるんだよ・・・・・・浜風・・・・・・浦風・・・・・・」

 

 まだ見ぬ第十七駆逐隊の巨乳駆逐艦に思いを馳せる提督に、長月が冷静に言った。

 

「多分、隣の孤島鎮守府から雪風を連れてきてお茶を濁す気だぞ」

 

「ばっ! あははは、長月よぅ。つまんねぇこと、いうんじゃないよ」

 

「清霜、やらなくていい」

 

「そ、そんなぁ!」

 

 長月に内情を暴露され、谷風は崩れ落ちる。

 

「危ないところだったぜ・・・・・・そういう手もあるよな。怖い怖い」

 

「おっぱいのことしか頭にないからそうなるんだよ、スケベ」

 

「清霜、皐月の座布団一枚持ってってくれ!」

 

「ちょ!? それは酷くない!?」

 

「上官侮辱罪だ。ほら、誰か次にいないのか?」

 

「じゃあ、はい!」

 

「おう、皐月」

 

「今年こそボク達は! この鎮守府一番の敵を倒すよ!」

 

「頑張って!」

 

「お前だよ、ばーか!」

 

「てめ、皐月、この野郎! 清霜! 全部持ってけ! 全部だ!」

 

「おちつけ二人とも! ここはマジの喧嘩する場所じゃないぞ!」

 

 長月に止められ、とりあえず提督と皐月の戦争は一旦落ち着きそうだった。

 

「全く・・・・・・はい、不知火」

 

「はい。不知火は今年こそ、この鎮守府の風紀を正します」

 

「頑張って!」

 

「はい。まず皐月と谷風とグレカーレの性根を叩き直します」

 

「おい、どういうことでぃ!」

 

「不知火、ボク達に上から目線過ぎない!?」

 

「観客席のグレちゃんも抗議してるよ」

 

 怒る皐月と谷風に、客席を指差す清霜。

 ちなみに人数があわないのでグレカーレは観客であった。

 

「えーと、これ以上続けると荒れそうなのでこの問題は終わりにします。さて、そろそろお時間がやってまいりました」

 

「もう!?」

 

「早すぎじゃねぇかい? 普通は三問だろ?」

 

「大喜利の問題と解答作るのすげー難しいんだよ! これを毎週やってる師匠方は化け物だと思う。というわけで、座布団が一番多いのは長月と暁かな・・・・・・」

 

「ふっ・・・・・・やはり私を凌駕する艦はいないようだな」

 

「えっへん! 暁が一番だわ!」

 

 積み上がった座布団の上で、二人は小さな胸を張った。

 

「というわけで、商品ですがお正月なので二人にはそれにちなんだモノをお渡しします。清霜、持ってきてくれ-」

 

「はーいっ! かしこまりましたー」

 

 清霜が商品を持って現れる。

 だがそれを見た暁と長月は随分と怪訝な顔をした。

 

「お正月と言えば、御神酒! というわけで、日本酒と言いたいところですが飲めない子もいるので御猪口と徳利をプレゼントだ! どうだ、粋だろ?」

 

「ちょっと、これのどこが豪華な賞品なんだよ!」

 

「何を言う皐月。最高の賞品じゃないか」

 

「暁お酒飲めない・・・・・・」

 

「大丈夫だよ暁ちゃん。ジュースを入れて一緒に飲もうね」

 

「五月雨に気を使わせてるじゃないか・・・・・・」

 

 呆れたように皐月と谷風が言う。

 

「・・・・・・これで司令官と二人で一杯・・・・・・悪く無いな」

 

 一方、長月は満更でもないようだ。

 

「はい。というわけで流刑鎮守府大喜利はここいらでお開きとします。本年もどうか今作をよろしくお願いします。それではまた来年!」

 

 ――テンテケテケテケテンテン♪

 

 テーマソングが流れ出し、皆が一斉に頭を下げる。

 

 今年も1年、よろしくお願いします。

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

  • 改二になったほうがいい
  • このままでいい
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