最初、何も思いつかず某特撮番組を見ながら書きました。
そのためがっつりパロディがあります。
早朝、目が覚めると何か柔らかいモノを感じた。
すぐ近く、温かい。
それに何だか甘い香りが鼻孔をくすぐった。
「…………」
ベッドの中に誰かがいる。
それはすぐに理解した。
問題は誰が潜り込んでいるかという事だ。
以前、グレカーレが不埒な考えでベッドに入ってきた時がある。
その時は彼女を叩き出したが……実は俺のベッドに潜り込んでくる艦娘はグレカーレだけではないのだ。
「清霜……」
俺の隣で気持ちよさそうに寝息をたてているのは、夕雲型駆逐艦・清霜だった。
水色のパジャマに身を包み、体を丸めてスヤスヤ眠る姿はとても可愛らしく、頬も緩む。
しかし何故、清霜がここにいるのか。
本来なら艦娘たちの共有する寝室で眠っているのだが。
「起きろ、清霜」
「……う~ん……むにゅ……あれ、しれーかん?」
俺が揺すると清霜は眠気眼を擦りながら目を覚ました。
「また、寝ぼけたのか?」
「ん……そーみたい」
清霜はのそのそとベッドから起き上がっていく。
現在、俺のベッドは色々あって廊下に置かれている。
そこへ夜トイレへ起きた清霜が、部屋に帰る途中に寝ぼけて入ってきたという訳だ。
「起きれるか?」
「……ううん、もう少し寝りゅ……」
それだけ言うと清霜はコテンと横になり、再び寝息を立て始めた。
「……俺も少し寝るか」
まだ起床の時刻まで結構時間がある。
それに清霜は基本、無害なのでこのままにしても大丈夫だろう。
俺はそう思って、再びベッドの上へと転がっていった。
…
……
………
「って、事があったんだよ」
「もー! 何でそこまでいって、テートクと何も無いの!」
その日の昼、朝の出来事をのほほんと話した清霜にグレカーレは声を荒らげた。
「折角のチャンスじゃんか! アタシだったら、絶対にテートクの胸に飛び込んじゃうんだけどナー」
「そんなんだから司令官にベッドから叩き出されんだろ」
谷風が辛辣に言った。
「そもそも皐月と清霜はよくベッドに入ってくるからな」
尤も寝ぼけて入ってくる清霜とは違い、皐月は勝手に俺のベッドでマンガ読んでお菓子食っているので害があるといえばあるのだが。
「それにお前らがベッドにいても、手を出すことなんて無いから安心しろ。胸の無いお前たちにこうふごふっ!?」
「幼い子もいるんですよ、司令」
不知火にぶん殴られて、俺は悶絶する。でも確かに暁や清霜の前ではセンシティブな発言は控えるべきだよな……
「ちょっと! 清霜もグレカーレも口だけじゃなく、手を動かしなさい!」
「ご、ごめんなさいお姉様……」
「う……ごめんね、姉さん」
清霜とグレカーレは申し訳なさそうに言うと作業に戻っていく。
二人はカラフルな折紙を輪っかにして鎖のように紡いでいた。
今日は12月24日。
クリスマス=イブなのである。
年に一度のイベントであり、クリスマスパーティーの準備を皆でしていたのだ。
基本的に料理は長月が行うため、俺達の仕事は専ら設備面である。
皆は飾りを作ったり、残った仕事を終わらせたりしていた。
俺はクリスマスツリーを運んできたり、イスやテーブルを揃えたりと基本、力仕事だ。
一年に一回のお祭りとだけあって、皆も準備の段階で既にワクワクしっぱなしである。
俺もいつもより体が軽く感じてしまう。
やっぱり日本人というのお祭り気質でイベントが好きなのかもしれない。
俺は今夜の催しに浮かれつつ、準備を進めていくのだった。
…
……
………
「じゃあ全員揃ったところで……乾杯っ! メリークリスマス!」
『メリークリスマス!』
ガチャンと9つのグラスが重なった。
夜になり、皆が入浴を終えてからクリスマスパーティーが始まったのだ。
場所はいつもの食堂であるが、カラフルな飾り付けやクリスマスツリーによっていつもとは違う雰囲気を醸し出している。
白いテーブルクロスのかかった食卓には長月の料理やお菓子が並び、シャンパンやワインが綺麗に置かれていた。
「わーっ、ピザだ! 長月さんが作ったの!?」
「ああ、手作りだ」
長月が持ってきたピザに清霜が歓声を上げた。
大人も子供も大好きなピザとあって、皆の反応も上々だ。しかしピザを作れる長月って改めて料理スキル高いな……
「チキンもありますよー」
「わお! 唐揚げじゃなくて本当にフライドチキンじゃん! どうやって作ったの!?」
「冷凍だよ、皐月ちゃん」
さらに山盛りのフライドチキンが入った大皿を持って五月雨が現れる。
どうやら本土から冷凍されたモノを仕入れたらしい。便利な世の中になったもんだ。
「落ち着いて、落ち着いて……ドジしないドジしない……」
慎重に慎重に五月雨は皿をテーブルへと置いていく。普段からよく転んで持ってる料理をぶちまけるからなぁ……最近はすぐフォロー出来るように皆、注視しているくらいだ。
幸い、今回は大丈夫だったようだけど。
「クリスマスといえばシャンパンだよね! salute、salute〜♪」
「おっ、粋だねぇい! じゃあ谷風さんからは……じゃんじゃじゃーん! チー鱈! これが意外と合うんだぜ」
実は酒が飲める勢であるグレカーレ。
しかし彼女が好むワインやシャンパンは普段、この鎮守府ではあまり飲まれない。
今夜はそれらが盛大に振舞われるとなって、テンションがいつもより高いようだ。
谷風から渡されたチー鱈を笑顔で頬張っている。
「司令、あまり飲み過ぎちゃ駄目ですよ」
「はい、司令官、お水! ちゃんと合間合間に飲むのよ!」
「ははは、ありがとう」
いつも通り深酒を注意する不知火だが今日は心なしか圧が少なかった。
クリスマスという事で少しは許してくれてるのかもしれない。
暁も義妹が二人もいるからか、前よりも大分世話焼きな性分になった気がする。
俺はありがたくチェイサーを受けとって、胃に流し込んでいく。
合間合間に水を飲むのが悪酔いを防ぐのだ。
そんな感じで料理を楽しみ、ケーキを皆で食べたところで今回のパーティーの目玉企画の時間がやってきた。
「プレゼント交換会の時間だ!」
「さぁさぁ! 皆、用意したプレゼントを出しねぇ!」
サンタクロースのコスプレをした長月と、トナカイ風の衣装に身を包んだ谷風が音頭を取ってそれは始まった。
皆が用意したプレゼントをランダムで交換する、クリスマス会ではお馴染みの行事である。
だがうちの鎮守府で行うのは初めてという事もあり、未知のドキドキ感に皆が浮足立たせていた。
「音楽に合わせて右隣にプレゼントを回していく。音楽が止まった時に手元にあったプレゼントがそのまま貰えるというルールだ」
「ちなみに曲は提督のリクエストで山下達郎の『クリスマス・イブ』だぜ」
「うわあ、ふっる……」
「すまん……歌えるクリスマスソングこれしか無くて……」
「司令官、『赤鼻のトナカイ』は知らないの?」
「最初の方しか分からん……」
「分からないなら、ノリと勢いでカバーだよ! さ、始めよう!」
皐月の言葉によって交換会はスタートした。
元気よく歌う清霜と皐月、五月雨のおかげで俺もハミングであるが何とか歌えていく。
プレゼントの手渡しは和やかに行われ、そして遂に歌が最後まで流れて交換が終わってしまう。
皆の手元には可愛らしくラッピングされたプレゼントがやって来ていた。
「じゃあ、早速開封式といこうか!」
ワクワクが止まらないといった感じで皐月が言うと皆が大きく頷いた。
何歳になってもプレゼントというモノは嬉しいものだ。
俺の元へやってきたのは、エメラルドグリーンの包装紙に包まれたプレゼントだった。
よく見ればリボンの端に三日月の飾りがあしらってある。
「長月のプレゼントだな」
「あ、ああ……」
長月は少しだけ恥ずかし気にこちらを伺ってくる。
俺は彼女に出来るだけ気を使いながら、封を開けていった。
「おお、スマホの充電スタンドか」
シンプルなデザインのモノで、いかにも実用重視といった感じの長月らしいチョイスであった。
「ど、どうだ、司令官? 誰でも貰って嬉しいものを選んだのだが……」
確かにスマホは今の時代、皆持っているからな。
「ありがとう、長月。大切に使わせて貰うよ」
「そ、そうか……よかった」
長月はホッと肩を撫でおろした。
剛毅な性格だが真面目だから自身のプレゼントが皆に喜ばれるかどうか心配な所もあったんだろう。
長月は安堵したようで、自分の所に来たプレゼントの封を開いた。
「おお、アロマキャンドルか」
「えへへ、すっごくリラックス出来るんだって」
五月雨が用意したプレゼントのようだった。
可愛らしいデザインのモノが数個纏めて入っており、使いやすそうだ。
「わぁーっ! カワイイね!」
その近くで皐月の歓声が上がった。
見れば、真っ赤なリボンを着けた熊のぬいぐるみを皐月が嬉しそうに掲げていた。
「凄いね。これ、不知火が選んだんでしょ?」
「え、ええ……小さい子もいるし、誰当たってもいいように……」
恥ずかし気に不知火は言った。確かにぬいぐるみは女の子は勿論、疲れきった成人男性でも癒してくれるしな……
「うんうん! いつも仏頂面の不知火にしては珍しいチョイぐえっ!?」
「一言多いわよ、皐月」
そんな風に皐月へ突っ込んだあと、不知火は自分の元に来たプレゼントを開けた。
「これは……コスメかしら」
「そう! イタリアで有名なブランドだよ!」
用意したのはグレカーレのようだった。
ブランドの化粧品というのが、普段から美容に気を遣う彼女らしい。
「ここの皆は可愛いのに全然オシャレに気を使わないんだもの! これを機にもっと美容に気をつけるべきよ!」
「……ええ、そうしようかしら」
不知火は優しい笑みを浮かべてグレカーレを撫でる。
二人も大分、打ち解けたなぁ。
「この戦艦大和の模型は清霜だな~」
「うん! 谷風さんなら作れるよね!」
清霜には谷風のプレゼントが。
「ボードゲームがいっぱい!」
「いいでしょ~。ボクのおすすめだよ」
暁には皐月のプレゼントが渡り。
「これは……扇子?」
「合点! 桜模様が綺麗だろう?」
谷風のプレゼントはグレカーレの手に。
「わぁ……可愛いハンカチですね」
「お、おう……あんまり女の子の喜ぶプレゼントが思い浮かばなくてな」
「……えへへ、大事にしますね」
俺の用意したハンカチは五月雨の元へ贈られた。
優しい彼女なら大事にしてくれるだろう。
そして消去法で清霜には暁のプレゼントが行くはずだが……
「……これは……お薬?」
プレゼントの包装を開いて出てきた中身に、清霜はキョトンとした表情を向けていた。
「ふっふっふ……そうよ! お肌を艶々にする薬! それとサプリメント! そしてこれは……お胸を大きくする薬よ!」
「な、なんか怪しいのが最後に出てきたな」
暁が用意したのは美用薬の詰め合わせだった。
ある意味、現実的と言えるがその中で一つだけいかにも怪しい薬が混じっている。
「へ、変な物は入っていないよな?」
「もう! 失礼しちゃうわね! ちゃんと薬局で調べたものよ!」
「い、いや、この胸の……」
ぷんすか怒る暁であったが、この『胸を大きくする薬』だけ何かデザインが異様にシンプルだった。
そのせいで怪しさが余計に増している。
「これは明石さんが作ったモノよ! 艦娘専用だから普通のお薬より効くはずよ!」
「一気に信用できなくなったな……」
長月がげっそりとして言った。
工作艦。明石は本土に配属されているが、何やら怪しいアイテムを作っては格安で各鎮守府に販売しているのだ。
その効果はモノによって違うが……その結果は自己責任という博打みたいな代物であった。
「えへへ、司令官はおっぱいが大きい方が好きだもんね」
そしてそれを貰った清霜もかなりの乗り気なようである。
「お、おい清霜。あんまり変な薬は飲まないほうが……」
「どすこい!」
俺が止めようとした矢先、清霜は一気に薬を口の中に放り込んだ。
「そしてジュース!」
さらには駄目押しとばかりに近く似合ったジュースを勢いよく呷っていくのである。
「ちょっと清霜! お薬をジュースで飲んじゃ駄目よ!」
姉貴分の暁が注意するも清霜は止まらない……っていうか、あれ? 何だか様子がおかしい。
清霜は普段から容姿に違わぬお子様な行動をするが、基本的には聞き分けの良い子である。
俺や暁の言う事には素直に従う性分なのであるが……
「あれ? 清霜姉さん、何だか顔が赤い……」
「ちょ、清霜! これお酒だよ!」
皐月が清霜の持っていたコップをひったくって叫んだ。
空になった器の中からは、ほんのりとアルコールの香りが漂ってくる。
「カクテルを飲んだみたいだな」
「しかもこれが一杯目じゃねぇな。ちょくちょく間違って飲んだみてぇだ」
谷風が空になったカクテルの缶をいくつか持ち上げている。
市販のカクテルの缶はカラフルでジュースと間違えちゃったのかもしれないけど……
「皐月、貴方が雑に飲み空けているから、清霜が間違えたのよ」
「ちょ、待ってごめぶべべべべっ!?」
この中で今、カクテルを嗜んでいるのは皐月だけだ。
彼女の雑な酒の管理が今回の失敗を招いた……と言えるかもしれない。
「ほら、清霜。水飲め水」
「二日酔い防止の薬、持ってきますね」
「うぅ~ん、何だか体がぽかぽかすりゅ……」
清霜の瞳が胡乱となり、全身から力が抜けていったので俺達はとりあえず彼女を横に寝かせた。
そしてこれが切欠でクリスマスパーティーは御開きになった。
俺達は清霜を寝室に運んで寝かしつけると、そのまま各々解散していく。
俺は皐月と谷風と長月の四人で酒を飲みながら『ホーム・アローン2』を見ることにした。
やっぱりクリスマスにはこの映画だわ。
…
……
………
深夜。
清霜の苦し気な声が聞こえてきた。
「あううう……」
様々な薬を取り込んだ清霜の肉体は、突然変異を起こして急成長し始めていたのである。
そして、アルコールを摂取した食い合わせによって、特別なパワーが発現したのだ。
明石特製成長剤に含有されていたヨウセイサングレタミン酸は、カクテルに含まれるアルコール成分と結合して、清霜の血液の中をかけ巡る。
そして、血液の中で練られていた血の第一物質が清霜の脂肪分によって分解され、タイロミンとデジタミンに分かれるのだ。
「からだが……あついよぉ……」
一方デターミンとは、リンパ液に結合してカチルダ酸とノヴァ粘液とサルマドンとマグールトドータミンを作り出す。
この際、ノヴァ粘液は体温によって分解され消滅するが、その残滓がカチルダ酸に結び付いて核カチルダ酸に変化するのだ。
「ぐうう……」
そして、核カチルダ酸とサルマドンによって生成されたカッサノ蛋白質により、清霜の身体は急成長するのであった……
…
……
………
早朝、目が覚めると何か柔らかいモノを感じた。
すぐ近く、温かい。
それに何だか甘い香りが鼻孔をくすぐった。
「…………」
ベッドの中に誰かがいる。
それはすぐに理解した。
問題は誰が潜り込んでいるかという事だ。
以前、グレカーレが不埒な考えでベッドに入ってきた時がある。
その時は彼女を叩き出したが……実は俺のベッドに潜り込んでくる艦娘はグレカーレだけではないのだ。
そういえば昨日は清霜が……と思った時であった。
――むにゅっ。
「っ……」
腕に何か柔らかい感触が押し付けられた。
女の子特有の暖かい身体。だがそれだけでは無い。
これまで俺が味わった事の無いような、極上の柔らかさ。
駆逐艦特有の小さな肢体とは違う、マシュマロのような感触。
普段では絶対味わう事の無いその柔らかさに違和感を覚えた俺は、恐る恐る目を開いていく。
「んん……」
すぐ近くに誰かがいる。
ほのかな吐息が聞こえ、ミルクの様な甘い香りが鼻孔をくすぐっていく。
間違いなく艦娘が潜り込んでいる。
お子様ばかりのこの鎮守府では別段、珍しい事ではない。
そのはずなのに俺は背中に冷たい感覚を覚えていた。
何故なら、今目の前で眠る少女の体格に見覚えが無かったからだ。
「ううん……」
色っぽい声を上げるこの少女、背丈は五月雨位か。
髪の色も青みがかった灰色でますます五月雨っぽい。
だがいつも近くで彼女を見ているからこそ、目の前の少女が五月雨では無い事が分かる。
そして何より、違和感が凄いのは今俺の腕に押し付けられているモノ。
ふにゅっとした感触と伝わってくる体温。
それはまさしく少女の胸……すなわちおっぱいに他ならなかった。
だが我が流刑鎮守府に所属する艦娘は全員駆逐艦。しかも皆、幼児体形のちっぱい達である。
少なくとも俺の腕で潰れているような大きさのモノをお持ちしている娘はいなかったはずだ。
「い、一体……」
俺が恐る恐るその少女を引き剥がし、顔を確認しようとした時だった。
「んんんん……」
少女が眠気眼を擦りながら顔を上げていく。
その可愛らしい顔に、俺は間違いなく見覚えがあった。
「……き、清霜?」
間違いない。
俺が彼女を間違える訳がない。
流刑鎮守府所属、駆逐艦夕雲型19番艦・清霜。
俺の可愛い部下に他ならなかった。
しかし顔は清霜であるのだが体格が大分変わっていた。
何というか……全体的に成長しているのである。
「え……ど、どういうことだ……」
困惑する俺と未だに寝ぼけている清霜。
互いに状況を飲め込めないまま、ただただ俺達はベッドの上で見つめ合うのだった。
そしてこの事が流刑鎮守府で起こる大事件の発端になるとは。
この時の俺は知る由も無かったのである……
今年の投稿はこの話でお終いです。
本年も『流刑鎮守府異常なし』をご愛読して頂き、本当にありがとうございます。
来年もよろしくお願いします。
流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か
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改二になったほうがいい
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このままでいい