流刑鎮守府異常なし   作:あとん

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お待たせして申し訳ありません……

リアルで忙しかったのと、話が思いつきませんでした……

まだ終わりはしないのでこれからもよろしくお願いします……


今ここに四人の艦娘が

 その日、流刑鎮守府では緊急会議が行われようとしていた。

 場所はミーティング部屋。

 集まっているのは俺と流刑鎮守府所属の艦娘たち。

 暁と清霜以外の皆が揃って円形に並べた机に向かっていた。

 

「と、いうわけで会議を始めたいんだが議題は」

 

「清霜の事だろう」

 

 長月の言葉に俺は大きく頷いた。

 

「朝起きたら清霜が急成長した。な、何を言っているのか分かんねーと思うが……」

 

「改二になっていたもんね」

 

 皐月の言葉に俺は小さく頷いた。

 

「本来であれば改二になるには充分な練度が必要だ。しかも清霜の場合は改装設計図もいる」

 

「どちらも清霜には無かった筈よ」

 

 長月と不知火が冷静に分析している。流石にこの二人は落ち着いているが、よく見ればその節々に混乱を感じられた。

 

「今、妖精さんに診て貰っています。見た感じだと体に悪い異常は無いようですが……」

 

 五月雨が心配そうに言った。だがそれも無理は無いだろう。

 長月たちの言った通り、艦娘が改二になるには充分な練度や特殊な物品が必要である。

 だが清霜はどちらもその基準に達していなかった。

 それなのに改二になっていたから、問題なのである。

 

「清霜は元々誕生経緯が特殊だから、こんな事が起きてもおかしくないのかもな……」

 

「確かにそれは考えられるな」

 

「そう言えば清霜って建造で生まれてきたんだったね」

 

 皐月が懐かしむように言った。

 本来なら建造では生まれてこないはずの清霜だったが、色々……色々あって建造で誕生したのである。

 

「とりあえず本部には連絡してある。あまりにも前例がないから本人を詳しく調べたいと連絡が来ているが――」

 

「じゃーん! 改夕雲型の最終艦、超強い清霜でっす!」

 

 俺の言葉を遮るように清霜が勢いよく現れた。

 どうやら検査と着替えが終わったようだ。

 夕雲型の改二制服と特注のロングコートを羽織っており、ビシッとポーズを決めている。

 

「うお……」

 

「ふぁ……」

 

「……かっこいいな」

 

 その洗練されたデザインの衣服とキレの良いポーズに、谷風と皐月、そして長月も感嘆の声を上げた。

 でも確かに気持ちは分かる。

 清霜が身に着けている指ぬきグローブ。

 あれに心惹かれる男子は少なくないはずだ。

 

「それにおっきくなったね」

 

「ね、清霜、おっきくなったよ」

 

 そして何より、一番の変化ともいえる胸部装甲。

 背が伸びて全体的に大きくなったのもあるが、以前の幼児体形からは考えられない程、成長しているのだった。

 その事を本人も分かっているのか、時折胸を両手で強調するようなポーズを取ってくる。しかも、チラチラとこちらを見ているのだ。

 

「どう、司令官? 清霜、おっぱい大きくなったよ」

 

「う、うん、そうだな」

 

 俺は彼女から目を逸らしながら答えた。

 すると清霜はトテトテとこちらにやってきた。

 

「どう司令官? 清霜、カッコいい? カワイイ?」

 

「う、うん。かっこかわいいぞ」

 

 魔神英雄伝ワタルの次回予告のような返し方をしてしまう。

 どうやら俺は結構狼狽えているらしい。

 その理由は単に彼女が可愛らしく成長したからだけはない。

 

「えへへ、じゃあ司令官、約束憶えているよね?」

 

 そう言って下から覗き込んでくる清霜に胸が痛む。

 以前、俺は清霜と約束したのだ。

 

 ――胸が大きくなったら結婚する。

 

 清霜の改二が発表された時に行った飲みの席で、そんな約束を。

 それはあくまで飲みの席。

 しかも俺はその時、清霜の胸が大きくなるなんて微塵も考えて無かったのだ。

 

「あ、えーっと……どうだっけ……」

 

「ちょっと酷いわよ司令官! 清霜と約束したじゃない!」

 

「そうだよ、、テートク! あたし達、ちゃーんと憶えているからね!」

 

 姉妹分である暁とグレカーレが詰めてきた。

 グレカーレは半分、冗談っぽいが暁は割とマジで非難してきている。

 確かに酔った上で冗談というのはあるも、一応約束は約束だ。

 それを勝手に反故するのは大人として、提督として不味いだろう。

 だが、かといって清霜と結婚するのは倫理上、いけないし……

 

「しれーかん、清霜との約束、守ってくれないの……」

 

 不安そうに見上げてくる清霜の顔を見ると、凄い罪悪感に襲われる。

 でも生まれてから一年くらいしか経っていない少女と結婚するのは倫理的に不味いだろう。

 

「……いいか清霜。確かに君は改二になったが……それは正当な方法でなったモノか?」

 

「あ……」

 

 清霜は目を真ん丸にしてそう言った。

 

「本当なら改二になるためには修練と設計図が必要だ。でも清霜はそれら無しで改二になった。それは本当に改二になったと言えるのか?」

 

「うう……」

 

「見た目だけは改二になっても、それは本当の意味で改二になったとはいえないんじゃないか?」

 

「た、確かに……」

 

「俺は本当の改二になった清霜なら結婚を申し込んでいたと思う。でも、今の清霜は違うよね」

 

「うん……うん……そうかも……」

 

「言いくるめられちゃったね」

 

「でもまぁ、筋は通ってる」

 

 皐月と谷風がちょっとうるさかったが、何とか清霜を説得出来た。

 まあ正味な話、何で改二になったのかも分からないし、もしかしたら元に戻る可能性だってある。

 何もかも、調べてみないと分からないのだ。

 

「とりあえず俺と一緒に外部の施設に診て貰いにいこう。本部には連絡している」

 

「成程、婚前旅行だねぶべべべべっ!?」

 

「ややこしくなるような事を言わないの、グレカーレ」

 

 不知火がグレカーレに制裁しているのを横目に、俺は旅支度を始めるよう清霜に言った。

 一体、どれくらいの期間を外で過ごすか分からないから不安であるが、これも清霜のためだ。

 俺も席を立ち、急いで旅支度を始めるのであった。

 

 そして三日後、本部からの使者が来ることになった。

 といっても日本本土では無く、国外に設けられた大日本帝国海軍の施設から来たのであるが。

 

「お久しぶりです、司令官」

 

 俺が不在の間、流刑鎮守府は五十鈴さんが指揮を執ってくれることになった。

 いつもなら彼女の豊満な両胸に釘付けになるところだが、今日は清霜の事もあるので流石に俺も抑えている。

 もしかしたらある日突然、元にも戻るかも……そんな安易な考えは通じず、清霜は改二のままであった。

 

「五十鈴さん、申し訳ありません。急にこんな遠い所まで」

 

「いえ、大丈夫よ。むしろ大変なのは清霜だわ。前代未聞の事に本部も頭を抱えているみたい」

 

 本部直属の彼女がわざわざ流刑鎮守府まで来たという事は、やはりそれなりの大問題なのだろう。

 清霜も不安げに俺達を見上げており、俺は彼女の頭を優しく撫でた。

 

「本土まではいかなくても大丈夫だろうけど、結構長くなりそうですね」

 

「ええ、その間は私が流刑鎮守府を守らせて頂きますね」

 

「五十鈴さんなら、安心です」

 

 元々、皆の教官だった人だし信頼できるだろう。

 

「清霜、頑張ってね」

 

「気をつけてね姉さん」

 

「うん、ありがとう二人とも」

 

 暁とグレカーレに励まされ、清霜は皆と暫しの別れを惜しんでいく。

 そのまま俺と清霜は用意された船に乗り込んだ。

 

「清霜、頑張れよー」

 

「達者でなー」

 

「おい、俺達はちゃんと戻ってくるんだぞ」

 

 皐月と谷風に突っ込みつつも、俺達は手を振って別れを惜しんだ。

  

「しれーかん、清霜大丈夫だよね?」

 

 やはり不安なようで清霜は俺の服をクイクイと引っ張って尋ねた。

 見た目は大きくなっても精神年齢は変わっていない。

 まだ幼い清霜なのだ。

 

「ああ、大丈夫さ。皆も俺もついてる」

 

 彼女を優しく抱きしめながら俺は言い聞かせるように言った。

 船はまだ出港したばかりであった。

 

 …

 ……

 ………

 

「さてと、じゃあ始めましょうか」

 

「え、五十鈴教官。何をするんですか?」

 

 五月雨が尋ねると五十鈴を皆を見渡していった。

 

「皆、清霜のように改二になりたいって言っていたわよね」

 

 ニコニコと笑顔を浮かべながら五十鈴は言ったが、その笑みに皆は言いようもない恐怖を覚えていく。

 

「清霜の改二は特殊だけど、皐月・谷風・暁は鍛錬を重ねれば改二になれるのよ」

 

「い、五十鈴さん。何でそんなに嬉しそうなの?」

 

「うふふ、皐月。この流刑鎮守府だと中々演習出来ないでしょう?」

 

「ど、どうしたの五十鈴さん、目が爛々としてるよ……」

 

「うふふふふ……皆で久々に演習と行きましょうか。安心しなさい。ちゃんと改二になるまで付き合ってあげる」

 

「ひっ……」

 

 五十鈴の指導を受けた事の無いグレカーレを除き、皆が仰け反った。

 

「ね、姉さん? 皆さんもどうしたの?」

 

「ぐ、グレカーレは知らないだろうけど……五十鈴さんは訓練が厳しい事で有名だったの……」

 

 暁がブルブル震えながら小声で言った。

 

「し、不知火はどんなに修練を重ねても改装設計図が無ければ改二には……」

 

「ふふ……じゃーん♪」

 

 五十鈴が懐から取り出した設計図に不知火の顔が真っ青になった。

 本部直属のエリートだけあって、この辺は抜かりないようだ。

 

「さ、提督と清霜が帰ってくる前に改二になって二人を驚かせちゃいましょう」

 

 こうして残った流刑鎮守府メンバーのデスロードが始まったのであった。

 

 …

 ……

 ………

 

「結局、何も分かんなかったな……」

 

「疲れたー」

 

 二週間ほど経過し、ようやく俺と清霜は解放された。

 現在は流刑鎮守府に向かう船の中で揺られている。

 何か色々精密検査とかをやったのだが、何も分からなかった。

 そもそも誕生経緯すら特殊な清霜なので、今回の検査で普通と違う事が何か分かるかと思ったが、吃驚する位何も判明せずに終わったのである。

 まあそもそも艦娘という存在自体が科学的にはまだ解明されていない、不思議な存在なのだ。

 結局、よく分からん突然変異として結論着けられた。

 あと今回の清霜の変化を応用して、他の艦娘も一気に改二へ……みたいなことが出来ないのも大きかっただろう。

 

「皆、元気かな……」

 

 心配そうに清霜が呟いた。

 二週間もの間、鎮守府の皆に会えていなくて寂しいのだろう。

 

「まあ、何も連絡が無いって事は元気だろう。皆、清霜の帰りを首を長くして待っているさ」

 

「うん……」

 

 ――むにゅっ。

 

 柔らかいモノが腕に押し付けられる。

 これまで流刑鎮守府では味わえなかった感触だ。

 

「……………」

 

 清霜は真面目で優しい子だ。

 決して故意で胸を押し付けている訳じゃない。単純に不安なだけだ。

 だから俺がこのむにむにの肉まんを意識してはいけない。

 意識してはいけないのだ……清霜は守るべき存在……娘なのだ……

 そんな風に俺が鋼の意志で煩悩と戦っていた時だった。

 

「報告します! 前方に正体不明の機影を発見! 深海棲艦と思われます!」

 

「何だと!?」

 

 普段はあまり深海棲艦が出ない海域であるため油断していた。

 だが今の海は何時敵が現れるか分からない魔境なのである。

 

「司令官、清霜艤装無いけど、出るよ!」

 

「落ち着け清霜! まずは冷静になれ。船頭さん、流刑鎮守府に緊急連絡を。それから進路を変更して一旦敵から離れよう」

 

 流石に丸腰の清霜じゃいくら艦娘でも戦うのは難しいだろう。

 そう思った時、轟音と共に船体が揺れた。

 

「ぐおっ……もう来たのか!?」

 

「は、早い……お二人とも、どうかここで待機して下さい」

 

 船頭さんはそう言って戻っていった。

 残された俺達は彼や皆を信じて待つしかない。

 そう思い清霜と共に待機したのである。

 

「だ、大丈夫かな……」

 

「この距離ならきっと流刑の皆が来てくれるさ。大丈夫」

 

 俺は自分に言い聞かせるように清霜の手を握った。

 我ながら情けないが、所詮生身の人間である俺は深海棲艦相手ではどうしようもないのだ。

 

 ――ドンっ!

 

 そんな時、轟音と共に船体が大きく揺れた。

 

「き、清霜っ!」

 

 俺が清霜を咄嗟に抱きしめた時であった。

 さらに大きな音が幾つも聞こえ、船体はさらに揺れていく。

 俺も清霜も声すら出せず、ただひたすら揺れに耐えていた。

 一体外では何が起きているのだろうか。

 

「て、提督さん!」

 

 船頭さんが慌てて入ってきた。

 

「ど、どうしました!? 敵は?」

 

「そ、それが……と、とにかくこちらへ!!」

 

 船頭さんに言われ、俺と清霜はおっかなびっくりながらも船室を出た。

 まず視界に飛び込んできたのは青い空と果てしなく続く水平線。その中に黒煙を上げて燃える何かがある。

 それが深海棲艦の残骸だと気づいた時、その周りに四つの影が現れた。

 

「皐月改二!」

 

「谷風、丁改!」

 

「暁改二!」

 

「……不知火改二」

 

 燃える海面をバックにビシッとポーズを決める四人の艦娘。

 ……不知火だけどことなく不服そうだが、それでもちゃんとポーズを取っていた。

 

「お姉様! みんなも!」

 

 清霜が歓声を上げる。

 どうやら皆が深海棲艦を倒したみたいだが、それ以上に驚いたのは彼女たちの姿だった。

 

「み、皆……その姿は一体……」

 

「ふっふっふ……ボク達は改二になったんだよ!」

 

「清霜とお揃いね!」

 

 どや顔で決めポーズを取る皐月と暁だったが、俺は困惑の方が勝っていた。

 

「い、一体どうやって改二になったんだ。そんな練度無かっただろう」

 

「おいおい、先に言う事がそれかよぅ。助けてあげたのにさ」

 

「あ……すまん、ありがとう皆。助かったよ」

 

 谷風に言われた俺はすぐに頭を下げた。

 彼女たちに助けて貰ったのは間違いないようだ。

 

「……五十鈴さんのしご……演習によって改二になるまでに経験を積みました」

 

 俺の質問には不知火が答えてくれたが……今『しごき』って言いかけたな。

 真面目な不知火が不満を言いかけるって事は相当だったのだろう。

 

「あれ、グレちゃんや五月雨さん達は?」

 

「鎮守府を空にするわけにはいけないから、残ってるよ」

 

 皐月はそう言うと、じっと俺の方へ視線を向けた・

 

「で、どうかな? 改二になったボク達は」

 

「あ、ああ……とにかく……ありがとう……カッコよくなったな」

 

「もう、そこはカワイイって言ってよ!」

 

「お、おう……」

 

 駄目だ。急展開過ぎて脳が追い付かない。

 いきなり敵が襲ってきて、改二になって皆が助けてくれて……

 

「……とにかく皆が改二になったって事で良いな」

 

「谷風さんは厳密に言うと改二じゃないけどな」

 

 照れ臭そうに谷風が言った。

 しかし彼女は少し背が伸びた気がする。

 いきなり皆の見た目が変わって、結構戸惑ってしまうな。

 

「清霜だけじゃなくなったね!」

 

 でも清霜は自分以外の改二が増えて嬉しそうだった。

 もしかして彼女の疎外感を埋めるために、五十鈴さんが気を使ってくれたのかも……

 

「いや普通に地獄だったよ」

 

「もう……演習は嫌……」

 

 俺の心を読んだように、皐月と暁がげっそり言った。

 

「不知火たちはいいですけど……五月雨たちは本当にとばっちりだと思います」

 

「し、不知火がそこまで言うのか……」

 

「しれーかん、皆で帰ろうよ!」

 

 久々に皆に会えたのが嬉しかったのか、清霜は楽し気に言った。

 こうして我が流刑鎮守府は一気に改二が増えたのだが……この先どうなるのだろうか。

 俺は今後の艦隊運営を思案しながら、流刑鎮守府へと戻るのであった。




次の話からまたドタバタ路線に戻ります

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

  • 改二になったほうがいい
  • このままでいい
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