流刑鎮守府異常なし   作:あとん

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新年に投稿しようと思いましたが、仕事と艦これのイベントで忙しくて・・・・・・

今更ながら正月回です。


流刑鎮守府酒飲み音頭

「皆、新年明けましておめでとう! 昨年はなんと言ってもこの鎮守府に待望の司令官がやって来た。これまで指揮官不在でよくやってきた・・・・・・その苦労も遂に報われた・・・・・・」

 

 長月が力強く言うと残りのメンバーがうんうんと頷いた。

 本日は元日。時刻は夜の7時を迎えている。

 今年最初の大宴会のために流刑鎮守府の皆が食堂に集まっており、長月がマイクで乾杯の音頭を始めていた。

 

「ずっと待っていた司令官が来てくれた。それだけでも万感の思いだ・・・・・・では司令官、挨拶と乾杯のかけ声を」

 

「え、俺!?」

 

 長月に急にマイクをパスされた。

 俺はとりあえず立ち上がって一礼すると、皆を見渡した。

 

「えーと、この鎮守府に配属になった提督です・・・・・・俺もこの鎮守府に来れて嬉しい・・・・・・って丁寧な挨拶は柄じゃないな」

 

 皐月と谷風が吹き出した。

 

「皆、去年はお疲れ様! 今年も頑張ろうってことで、乾杯!」

 

『かんぱーい!!』

 

 七つのグラスが重なった。

 暁と五月雨がジュースで後は皆、ビールが入っている。

 テーブルには皆が作ってくれた料理やおつまみが並び、皆ワイワイと楽しそうだ。 

 俺もぐっと一口でビールを流し込む。今までで一番旨いビールだった。

 

「ささっ! 司令、かけつけ一杯!」

 

「お、流石、皐月! かわいいな!」

 

「それボクの台詞~まあいっか! 乾杯~」

 

「乾杯!」

 

 ガチンと俺と皐月のグラスがぶつかり、そのまま一気に中身を煽る。

 同時にぷはぁーと息を吐いて、グラスを置いた。

 

「いい飲みっぷりだねえ、提督! 次は谷風さんだぜ!」

 

「おお、谷風さん! いくぜいくぜかんぱーい!」

 

 ああ、美味い。酒が美味い。

 ずっと一人で酒を飲んでいたからか、誰かと飲む酒が美味い美味い。

 しかも相手が可愛い艦娘ならなおのことだ。

 

「あまりはしゃぐなよ、お前達」

 

 真面目な長月が釘を刺すが、彼女もほろ酔いなのか頬が緩んでいる。

 

「ほら、暁も飲め飲め」

 

「ありがとう司令官・・・・・・ってジュースじゃない! 暁だってお酒飲めるわ!」

 

「辞めとけ辞めとけ! あかつきぃ、本当のレディーは酒だろうとジュースだろうと、エレガントに飲むんだぜぇ」

 

「・・・・・・わ、分かっているわよ! この暁がエレファントにジュースを飲んであげるわ!」

 

「エレファントは象だぞ」

 

「うううう・・・・・・」

 

 涙目になりながら、暁がジュースを啜る。

 

「ふふふふ・・・・・・」

 

 それを見ていた不知火が笑う。珍しく彼女も上機嫌のようだ。

 まあ新年の最初くらい楽しくいきたいよな。

 そんなことを考えながら一杯、二杯と空けた時だった。

 

「さ、提督。五月雨のビールも受け取ってください」

 

 五月雨がビールを注いできた。

 

「ありがとな、五月雨! いい子いい子」

 

「えへへ・・・・・・」

 

 頭をワシワシと撫でると、五月雨はくすぐったそうに笑った。

 そういえば五月雨は飲んでないな。

 暁はともかく、五月雨は飲もうと思えば飲めそうだけど。

 

「五月雨、どうだ一杯?」

 

「え・・・・・・でも五月雨はあまりお酒が得意じゃ無いんです・・・・・・」

 

「まあまあ一杯くらい・・・・・・お、谷風が日本酒を用意してるな」

 

「あたぼーよ! やっぱりポン酒がサイコーさ!」

 

「これなら水みたいに飲めるぜ。ちょっと飲んでみろって」

 

 軽い気持ちでお酒を勧めてみた。

 酒瓶の蓋を開けてぐい、と差し出す。

 

「提督が言うのなら・・・・・・五月雨、いただきます!」

 

 元気よく五月雨はそう言うと俺から酒を引ったくった。

 ・・・・・・横に持っていたグラス出なく、酒瓶を。

 え・・・・・・と、俺が困惑しているのをよそに、五月雨は一気にそれをゴクゴクと飲み干した。

 大人しい彼女からは想像できない飲みっぷりに俺が呆然としていると、ドンッと乾いた音が響いた。

 いつの間にか空っぽになった酒瓶を五月雨が床に降ろした音であった。

 

「さ、五月雨、大丈夫か?」

 

 俺の問いに彼女は俯いたまま答えない。

 だが、肩が少し動いた。

 気分が悪くなったか、そう思った瞬間だった。

 

「あは・・・・・・あはははははははっ! あはははははっ!」

 

 勢いよく顔を上げた五月雨が突然、高笑いし始めたのである。

 顔は真っ赤に染まり、頬と眉は弛緩しきっていた。

 明らかにいつもの五月雨とは違う。

 

「うふふふ、てーとくー、てーとくのさみだれれふよー」

 

 明らかに出来上がっていた。

 

「お、おい、五月雨。ちょっと横になった方がいいぞ」

 

「だいじょーぶえふふぉーしゃみだれはぁーよってまへーん」

 

 いかん。完璧に悪酔いしている。

 これ以上何か起こす前に部屋に連れて行って寝かせないと、五月雨自身の体調も悪くなるだろう。

 というか一気に酔いが覚めた。

 流石に部下の少女を泥酔させるとかやばすぎるからな・・・・・・

 そう思って俺が立ち上がろうとしたときだった。

 

「おっ! 五月雨もいけるクチだったんだねえ! じゃあいっちょ、この谷風さんとと飲み比べでもするかい?」

 

 ほろよいの谷風が五月雨と肩を組んでそんなことを言い出した。

 その片手には一升瓶が握られている。

 

「いいいよ~じゃあまずはさみだれからーいきまーす」

 

「いいさいいさ! さてぐいっと・・・・・・」

 

 俺が止める間もなく、谷風と五月雨の飲み比べが始まってしまった。

 谷風は五月雨の異常に気が付いていないのか、コップに日本酒を注いで笑顔で相手に差し出した。

 だがその呑気な笑顔も、五月雨が差し出されたコップではなく、谷風が握っていた一升瓶を引ったくった事で凍りついた。

 

「しゃみだれーばつびょーしまーす!」

 

「よ、よせっ!」

 

 俺の制止も聞かずに、五月雨は再び一気に日本酒の入った一升瓶を傾けた。

 喉を鳴らしながら豪快に飲んでいく五月雨。さしもの谷風も唖然としている。

 

「・・・・・・ぷはぁー! 五月雨、呑みました!」

 

 空になった酒瓶を床に転がして、五月雨は高らかに言った。

 

「て、提督、こりゃひょっとしてやばくねぇか?」

 

「ああ、ひょっとしなくてもヤバい」

 

 戦慄する俺たちに気が付いていないのか、五月雨は新しい酒瓶を手に取ると、それを谷風に差し出した。

 

「じゃあつぎはたにかぜちゃんのびゃんだよー」

 

「ひっ・・・・・・な、なあ五月雨。普通一杯はコップいっぱぐぶっ!?」

 

 問答無用で谷風の口に酒瓶が突っ込まれる。

 

「ほらほらーがんばえー」

 

 笑顔で五月雨は酒瓶を傾け、谷風の中へ酒を注いでいく。

 いかん、止めないと。

 そう思って立ち上がった直後。

 

「ぱいるだぁ~」

 

 そんな声音と共に。

 

「おーーーーーーんっ!」

 

 頭上に皐月が墜ちてきた。

 

「ぐぼべっ!?」

 

 たちまち俺は倒れ込み、顔面を床に強打。

 さらに頭の上に何か重いモノがのしかかり、呼吸が一気に苦しくなった。

 

「ボクと司令~合体! ぱわーあっぷ~! ちかーらのーちからーの艦娘ますた~」

 

 楽しそうに歌いながら皐月はそのまま俺の頭に抱きついてくる。

 

「鉄の艤装にのぞみを乗せて! 放て正義の酸素魚雷! 勇者艦娘サツキシレー! 定刻通りにただいま出航!」

 

 俺の頭に乗っかって皐月がビシッとポーズを決める。

 いつの間にか、完全にこっちも出来上がっているようだった。

 

「は、離れろ皐月! 今はお前と遊んでいる時間は無い!」

 

「うふふ~司令官は本当に可愛いなぁ! うりうり。うりうり~」 

 

 猫みたいに頬を擦り付けてくる皐月は非常に可愛らしいのだが、今はそれどころではない。

 

「離せ皐月・・・・・・このままじゃ谷風が・・・・・・」

 

「駄目だよ、しれぇ~ボクと一緒にいるときに他の女の子の名前出しちゃ~」

 

「いでででででで! 頬を引っ張るな!」

 

 その時である。

 

「露と落ち、露と消えにし我が身かな・・・・・・でもやっぱポン酒イッキは無理でぃ・・・・・・」

 

 辞世の句と共に谷風が崩れ落ちた。

 

「た、谷風・・・・・・」

 

 五月雨によって一升瓶を強引にイッキさせられた谷風は、そのまま豪快に床に突っ伏してイビキをかきはじめた。

 

「あれぇーたにかぜちゃんねちゃったー」

 

 ぽわぽわしながら五月雨は谷風をツンツンしている。

 無邪気という名の恐怖・・・・・・やがてその矛先は次に暁に向いた。

 

「あーかつーきーちゃーん・・・・・・のんでるー?」

 

 大人しくジュースを飲んでいた暁に五月雨が絡んでいく。

 

「さ、五月雨? 酔ってるわよ、大丈夫?」

 

「ぜんぜんへーきぃーよってないよいぉー・・・・・・でしゃ、あかつきちゃん」

 

「な、何よ」

 

「・・・・・・れでぃーなのになんでジュースなのぉ?」

 

「う・・・・・・そ、それは・・・・・・」

 

「おとなのれでぃーなんだから、飲めるよねぇー? のめないのー?」

 

 五月雨は酔っ払い特有の絡み酒で暁に迫る。

 さすがの暁もこんな安い挑発に乗らないだろう・・・・・・

 

「ば、馬鹿ね! 一人前のレディーである暁が飲めないわけないじゃない! 貸して!」

 

 そうだよな! それでこそ暁だよな!

 

「あ、暁! 止せ! お前にはまだ早い!」

 

「司令官までそんなこと言って! いつも子供扱い・・・・・・今日こそ暁が大人ってこと見せつけてあげる!」

 

 暁は五月雨から酒瓶を引ったくると、そのまま口に入れた。

 

「・・・・・・きゅう」

 

 そして一口で轟沈した。

 

「し、不知火、長月! 五月雨を止めるんだ!」

 

 このままじゃヤバい。

 そう判断した俺は我が鎮守府きっての常識人二人に応援を要請する。

 

「かしこまりました」

 

 離れて飲んでいた不知火が、早速駆けつける。

 

「俺は皐月に拘束されているので、動けない! 頼むぞ、ぬいぬい!」

 

「ぬいぬいは辞めて下さい。さて・・・・・・五月雨、少々オイタが過ぎましたね。手荒いですが、眠って貰います」

 

「あーしりゃにゅいちゃんだー」

 

 いつもの五月雨なら不知火の迫力に怯んでいるだろうが、アルコールでビートしている今日の五月雨は違う。

 

「しりゃにゅいちゃん、のんでないんでしゅかー?」

 

 肩を組んできて、馴れ馴れしく喋りかける五月雨にさすがの不知火も、戸惑っているようだった。

 

「はい、しりゃにゅいちゃん、のんでー」

 

 日本酒の入ったコップを差し出す五月雨。いつもとは違いすぎるテンションに、不知火はドン引きしていた。

 

「い、いえ。不知火はお酒はあまり」

 

 確かに不知火は最初にビールを一杯飲んで以降は、アルコール度数の低いチューハイなどを飲んでいる。

 

「ええーいいのーてーとくはおさけだいしゅきー……おしゃけしゅきなかんむしゅもだいしゅきですよー」

 

「え……」

 

 不知火はそう言うとチラリと俺のほうを見た。

 

「司令官は……お酒が好きな子が好き……」

 

「そうだよーていとくはーおさけがしゅきー、おしゃけがすきなかんむすもしゅきー」

 

「…………」

 

 不知火は俺を見て、その後コップに入った日本酒を見て、また俺を見る。

 

「な、何してるんだ不知火!早く五月雨をぐぶっ!」

 

「だーかーらー! ボク以外の女の子の名前言っちゃ駄目! おーしーおーきーだべぇー」

 

 クソ! 皐月の悪酔いも酷くなる一方だ。

 駆逐艦とはいえ艦娘。何だかんだで力は俺より強い。

 皐月はそのまま体をずらし、背中にのしかかるような格好になる。

 

「離れろ皐月! な、長月! 長月はまだか!」

 

 不知火は何だか変だし、皐月は酩酊しているし、五月雨は暴走状態だ。

 もはや最後の頼みの綱は長月しかいない。

 

「うわっはっはっはっは! どうした司令官!」

 

 頼みの緑は酒瓶片手に大笑しながらやってきた。

 

「はっはっは! 司令官! 日本の夜明けは近いぞぉ!」

 

「ぶ、ブルータス! お前もか・・・・・・」

 

 長月もすでに泥酔していたのか・・・・・・

 

「あ、聞いてよー長月ー司令官がさー浮気してるんだよ浮気-」

 

「浮気? それはいかんな! この長月というものがありながら、許さん! あはっはっはは!」

 

 全く怒っているとは思えないテンションで、絡んでくる長月。 

 気が付いたら泥酔していない奴が俺しかいなかったとか、もはやホラーだよ。

 

 そんな睦月型二人に押さえ込まれているうちに、不知火が意を決したような表情で、日本酒が入ったコップを持って現れた。

 

「司令・・・・・・司令が望むなら・・・・・・不知火は・・・・・・不知火は、イキます!」

 

「逝くな不知火!」

 

 俺の言葉は不知火には届かなかった。

 彼女はコップに注がれた日本酒を一気に飲み干す。

 するといつも通りの無表情な顔に赤みが差した。

 

「・・・・・・全て不知火の落ち度・・・・・・」

 

 それだけ言うと不知火は倒れた。

 

「あーしりゃにゅいちゃんもしんじゃったー」

 

 ケラケラ笑う五月雨。

 

「しれぇーボクもみろよな-」

 

 絡みつく皐月。

 

「ぶわっはっはっは! 私わ凌駕する船などこの鎮守府にはいない! そうだろう司令官!」

 

 豪快に飲む長月。

 皆すべからく酒に溺れている。

 

「み、皆。落ち着け。一度頭を冷やしてチェイサーを飲むんだ」

 

「夢色チェイサー? いいねいいね! ボク大好きだよ! ばにはーばにはー」

 

「違う! とりあえず水を」

 

「ゆーめーだーけはー」

 

「ぐばっ!?」

 

 長月まで俺に乗ってきた!

 

「今夜はこの長月と皐月と司令官で! プラクティーズだ!」

 

「二人死ぬぞ! いいから離れろ!」

 

「みんななかよしれすねーさみだれもいれてぇー」

 

「不味い! 奴が来た! 二人とも早くどけ! 間に合わなくなっても知らんぞ!」

 

 酒瓶を持ってゆらりゆらりと迫ってくる五月雨。

 

「てーとくものみますよねーさみだれーまいりましゅー」

 

 まずい。流石の俺も日本酒一気飲みは無理だ。

 だが逃れようにも皐月と長月が絡みついて離れない。

 おれがどうにかしようともがいているうちに、目の前に五月雨が辿り着いた。

 

「ていとくーさみだれがのませてあげましゅねー」

 

「しれいーボクもーてつだってあげるー」

 

「ははは! みんなやるなぁ!」

 

 五月雨の持つ一升瓶の口が俺に向けられる。

 さらに皐月と長月がガッチリと俺の頭を固定した。

 

「・・・・・・・・・・・・神よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 直後、口に冷たいモノが突っ込まれた。

 それが俺の、最後の記憶・・・・・・

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

「提督? 大丈夫ですか? お水飲みます?」

 

「頼む・・・・・・頭が痛ぇ・・・・・・」

 

「はい。でも、提督。あまりお酒を飲み過ぎちゃいけませんよ?」

 

「・・・・・・・・・・・・ああ」

 

 翌日。二日酔いに苦しむ俺と残りの艦娘たちを看病する五月雨の後ろ姿をじっと見ながら、俺は決意した。

 もう五月雨に酒を飲ませるのはやめよう・・・・・・

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

  • 改二になったほうがいい
  • このままでいい
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