流刑鎮守府異常なし   作:あとん

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クリスマス回です。

今回はグレカーレ視点で話が進みます


天使にラブ・ソングを・・・

 あたしの名前はGrecale。

 イタリア海軍マエストラーレ級駆逐艦の次女であり、暁型義三姉妹の末妹であり、流刑鎮守府所属の艦娘だ。

 今、所属している鎮守府では最年少。一番の新入りだけど、テートクと先輩の艦娘たちには凄く良くしてもらっている。

 特に暁姉さんと清霜姉さんは本当の妹のように可愛がって貰っているし、皐月さんと谷風さんとはもう飲み友達だ。

 長月さんと五月雨さんは面倒見がいいし、不知火さんはちょっと厳しいけどなんだかんだ言って優しい。

 あたしはこの鎮守府の艦娘が大好きだ。

 でも一つだけ皆に不満点がある。

 それは。

 

「皆、折角のクリスマスだってのに、何もしてなさ過ぎじゃない?」

 

 12月に入って驚く程、皆何もしていない。

 もうすぐ恋人同士が一番盛り上げる」クリスマスだというのに、テートクと何かするって話が無い。

 それどころか恒例のクリスマスパーティーの後には、映画見ながら飲み会をするらしい。

 いまもっとやるべき事あるでしょう! と思ったが、よく考えたらコレはチャンスだと思った。

 折角のクリスマス。聖夜、そして性の六時間……その時間を一緒に過ごせることが出来れば、いくら朴念仁なテートクでもあたしとそういう関係になる可能性だってあるはずだ。

 そうと決まればあたしの行動は早かった。

 聖夜、テートクとねんごろになるための計画を脳内で立てていく。

 夜に皆でクリスマスパーティーをするのは毎年恒例だから、勝負はそれが終わってからになる。

 いつも通りならテートクと何人かが、二次会と称してお酒を吞むはずだ。

 そこを狙う。

 あたしはそのまま計画を練っていった。

 

 …

 ……

 ………

 

『カンパーイっ!』

 

 5つのグラスが重なって、小気味いい音を奏でた。

 場所は談話室。

 時刻は既に午後9時を回っている。

 恒例のクリスマスパーティーが終わった後、二次会が始まっていた。今の所、予定通りだ。

 これから参加者が持ち寄った映画を見ながら、お酒を呑むというのがいつものコースらしい。

 既に清霜姉さんがDVDをセットして、準備万端って感じだ。

 

「よっしゃ、じゃあ早速一発目いくか!」

 

「清霜としれーかんの一押し! 『ビーロボカブタック クリスマス大決戦‼』」

 

「ビーファイターが出るやつだね!」

 

「二代目林家三平師匠のおかみさんも出るぜぇ!」

 

 一本目はテートクと清霜姉さんが用意した作品だった。

 なんでも20年近く前の特撮番組らしいけど……

 

「ブルービートだーっ!」

 

「ビーファイターカブトもカッコいいね!」

 

「ここで主題歌は燃える展開だねぇ!」

 

「これは……正座して見るしか無いな……」

 

 なんでこんなにも夢中になれるんだろう。

 しかも初めて見るんじゃなくて、今までに何回も見ている見たいだし……

 まあ、いいや。

 あたしもあたしで計画を遂行しよう。

 

「清霜姉さん。グラスが空になってるよ」

 

「あ、本当だ。グレちゃん、よく気がついたね」

 

「お代わりとってきたげる。ちょうどクライマックスだし」

 

「流石、グレちゃん! ありがとー」

 

 姉さんはペコリと頭を下げると、テレビの画面へ視線を戻した。

 あたしはそんな姉を尻目に、キッチンへ行ってお代わりを注ぐ。

 この時間、そこは誰もいない。つまりあたしの好き放題に出来るってわけ。

 あたしは清霜姉さんのコップにジュースを注いでいく。

 そして少し……ほんの少しだけ似た味のする缶チューハイを混ぜた。

 入念にコップの中身をマドラーでかき混ぜると、あたしは皆の所へと戻っていく。

 

「はい、姉さん」

 

「わぁ、ありがとう」

 

 何の疑いも無く、清霜姉さんはごくごくとジュースを飲んでいく。

 

「ん……あれ、何か味が……変?」

 

 首を一瞬、傾げたけどそれ以上姉さんは何も気にしなかった。

 だがその効果はすぐに表れる。

 清霜姉さんの目はとろんと緩み始め、ウトウトと船をこぎ始めた。

 

「ん、どうした清霜。おねむか?」

 

 テートクが聞くと姉さんは『んん……』と眠たそうに眼をこすった。

 元々、姉さんはアルコールに強く無いので、ちょっとの量のお酒で眠くなってしまうのだ。

 

「あ、じゃああたしがベッドまで連れて行くよ!」

 

 すかさずあたしは清霜姉さんの手を取った。

 姉さんも眠いのか軽く頷くと、そのままあたしの手をとって立ち上がっていく。

 

「すまんな。頼むぞ、グレカーレ」

 

 テートクも特に何も思わずに、清霜姉さんを送り出していく。

 すべては計画通りだった。

 

 あたしの立案した作戦……それは……

 

『艦娘全員、酔い潰し分断作戦』

 

 だった。

 

 我ながらそのまんまなネーミングだけど、結構頑張って考えた作戦でもあるんだよね。

 計画自体は簡単。

 二次会に参加している他の艦娘を早めに酔い潰して、最終邸にあたしとテートクの二人っきりになるというシンプルな作戦だ。

 この流刑鎮守府で最年少であるあたしは、お酒の配膳を自らかって出ても違和感はない。

 それを利用して、先輩方にアルコールマシマシの特製カクテルを飲ませて、酔い潰すのだ。

 つまり……

 

 ――二次会開始→最年少のあたしがお酒の給仕を担当→他の先輩方を酔い潰す→起きているのはテートクとあたしだけに→今宵もサルーテ!(意味深)

 

 という訳だ。

 勿論、その後は……むふふ。

 性の6時間、たっぷり楽しませて貰おう。

 

「清霜姉さん、寝かしつけて来たよ」

 

「おお、ありがとな。よし、座って飲め飲め!」

 

「次はボクのおすすめ、ターミネーター2だよっ!」

 

 聖夜になんてもの見ようとしてんだよ、ってツッコミは我慢した。

 いや面白いけどさ……クリスマスに男女で見る映画では無いでしょ……

 

「どうする……俺は洋画字幕派なんだが、シュワちゃんに限っては玄田さんの吹き替えが素晴らしいし……」

 

「今は酒に酔っているし、吹き替えでいいんじゃないかい?」

 

「そうそう! それより早く再生しようよ!」

 

 皆、映画に夢中で手元が疎かだ。

 上映時間が終わる頃には皐月さんと谷風さんも酔い潰れ、あたしとテートクだけになっているだろう。

 

「はい、皐月さん、ビール!」

 

「サンキュー! 今日は気が利いてるね、グレカーレ!」

 

 皐月さんは何の疑いも無く、あたしの持ってきた缶ビールを手に取った。

 

「どんどん飲んでね、皐月さん! 谷風さんも日本酒、どーぞ!」

 

「おう、悪いねグレカーレ! 遠慮なく、行かせてもらうぜぇ」

 

 皐月さんと谷風さんは元々お酒好きで、変な小細工をするとバレてしまう可能性がある。

 なので、どんどん飲ませて酔わせる作戦だ。

 

「あ、テートクもおかわり欲しいよね。ハイボールでいい?」

 

「おう、悪いな」

 

 そしてテートクのハイボールはいつもより薄っっっすく作る。

 最近、健康を気にしているテートクは、ビールよりカロリーや糖質低い、ハイボールを飲んでいるのだ。

 そしてそれは市販のモノではなく、ウイスキーと炭酸水を買って、わざわざ自分で作っている。その方が安くすむしね。

 

「ん……ちょっと薄――」

 

「はい、テートク! ワサビ味の柿の種!」

 

「おっ、気が利いているじゃないか」

 

 勘付きそうになったらこうやって、お茶を濁す。

 これでテートクをだらだら飲ませて、皐月さんと谷風さんを酔い潰せば、後は二人きり……

 計画は完璧だった。

 しかし。

 

「えへへ~しれーかーん」

 

「どうした皐月、今日は甘えん坊だな」

 

「だって~気分良くってさ~」

 

「て~とく~谷風さんも忘れちゃ駄目だぜぇ~」

 

「おい、谷風。くっつき過ぎだぞ」

 

 ちょっと問題発生。

 皐月さんと谷風さんがテートクに甘え始めた。

 いつも酔うとバカ騒ぎし始める二人だけど、今日に限って酔い方が違う。

 クリスマスだからだろうか。

 

「しかーれん、ボク、かわいい?」

 

「おお、可愛いぞ」

 

 猫なで声でテートクの胸元に頭をぐりぐりと押し付ける皐月さん。

 頭を撫でられて、気持ちよさそうに目を細めている。

 

「おうおう、てーとくぅ……谷風さんだって、めんこいだろ?」

 

「ああ、めんこいな。今日は珍しく甘えん坊だが……」

 

「谷風さんだってたまには、いちゃいちゃしたいよ。クリスマスだからねぇ」

 

 普段からは考えられない甘い声で、谷風さんもテートクに迫る。

 もしかしてあたしの予想以上に、二人ともクリスマスを意識しているのではないだろうか。

 

「おお、遂に最終決戦だ!」

 

「やっぱりシュワちゃん、カッコいいね!」

 

「ジョンとの関係も最高だねぇ」

 

 映画もいよいよクライマックスだ。

 三人は画面に注視しているけど、あたし的にはテートクにめっちゃ抱き着いている先輩方に注目がいってしまう。

 不味い。

 このまま放置したら延々といちゃいちゃしながら、映画鑑賞会が続いてしまう。

 何とか先輩二人をテートクから引き離し、クリスマスnightを決めないと。

 

「いや、やっぱり最高だな、シュワちゃんは!」

 

「あいるびーばっく!」

 

「よっしゃ、次は何行く?」

 

 ターミネーター2が終わった所で、あたしは動いた。

 

「あ、あたし、ジャパニーズ文化として『忠臣蔵』を見てみたんだよねー」

 

 忠臣蔵、その単語にテートクと谷風さんの目が輝いた。

 

「いいねぇ、グレ! やっぱり年末は忠臣蔵よ!」

 

「ああ、討ち入りの日はもう過ぎたけど、日本の冬は忠臣蔵を見ないとな!」

 

 時代劇大好きの二人は大盛り上がりだ。

 一方。

 

「ええー忠臣蔵もう何回見るんだよ」

 

 皐月さんは渋面を作った。

 彼女曰く、年末なると二人が色んな忠臣蔵を何度も見るから飽きてしまったらしい。

 だが一度盛り上がった二人の熱気は止められない。

 結局多数決で忠臣蔵が選ばれた。

 その結果。

 

「うーん……」

 

 皐月さんが途中からこっくり、こっくりと船を漕ぎ始めた。

 よし、作戦通り。泥酔の上でそんなに好きじゃない映画見てたら、そりゃそうなるよね。

 

「あ、皐月さん、ベッドまで送るね!」

 

「え……あ、うん……」

 

 有無を言わせず、寝室まで連行する。

 今までしこたま酒を呑ませただけあって、千鳥足だ。これで邪魔者は一人消えた。

 さて残りは一人。

 

「ううう、大石……」

 

「これも夫婦、家族を想うからこそ……」

 

 山科の別れで号泣しているテートクと谷風さん。

 あたしはそんな谷風さんに、日本酒をどんどんすすめていく。

 勿論、テートクにはうっすうすのハイボールだ。

 盛り上がった二人はどんどん杯を重ねていく。

 そして。

 

「うにゃぁ……」

 

 谷風さんがラストに行く前に落ちた。

 テートクの膝の上でスヤスヤ眠る姿に、あたしは小さくガッツポーズする。

 

「谷風さんも寝ちゃったね! あたし、寝室に寝かせてくるよ!」

 

「おおすまんな、グレカーレ」

 

 テートクはまだまだいけそうだ。

 谷風さんをベッドに寝かせると、あたしは一息ついた。

 色々あったけど計画通り。

 後はテートクのめくるめく性の6時間を……と思った時、ふと違和感を感じた。

 寝室は両側の壁に三段ベッドが置いてあり、そこで古参の6人が、そして床に布団を敷いてあたしと清霜姉さんが眠ることになっている。

 今はあたし以外、皆眠っているはずなのだが……

 

「あれ……いない」

 

 大いびきをかいて寝ている皐月さんと谷風さん。ベッドですやすや眠っている暁姉さんに、布団で寝がえりを打つ清霜姉さん。

 そこまではいいのだが……何故か五月雨さんと不知火さん、そして長月さんの姿が無い。

 

「……まさか」

 

 あたしはすぐに談話室へと戻っていく。

 そして自分の不安は的中した。

 

「駄目ですよ、提督。これ以上呑んだら、お体に悪いですよ」

 

「五月雨の言う通りです。さ、もうそれでお終いにしますよ」

 

 テートクを五月雨さんと不知火さんが両側から挟んでいる。

 二人とも、制服姿って事は寝間着から着替えたか、そのままで待機していたか……何にせよ、このままテートクが寝てしまう事は不味い。

 

「ま、待ってくれ……せめて忠臣蔵が終わるまで……」

 

 だがテートクはまだ映画が見たいとごねている。

 ならばあたしもそれに便乗しよう。

 

「ごめんなさい、二人とも! 実はあたしがこれを見たいっていって……」

 

「え、グレちゃんが?」

 

 五月雨さんは目を丸くして驚いていた。

 まあ、そうだよね。普段、あたし映画なんて見ないし……

 

「う、うん。いつもこの時期になるとテートクと谷風さんが口に出してるから、気になっちゃって」

 

「ああ、確かに提督も谷風ちゃんも忠臣蔵好きだもんね」

 

 いつものほわほわとした感じで五月雨さんは言った。

 その顔に変な下心は見えない。きっと本心からテートクを心配して、様子を見に来たのだろう。

 

「……本当かしら。何かいかがわしい事を考えているじゃないでしょうね」

 

 一方、不知火さんは怪訝そうな表情を浮かべている。

 普段からあたしがテートクにふしだらな事をしようと企んでいる、と思っている不知火さんだから、今のあたしも疑っているのだろう。

 まあ、企んでいるんだけどさ……

 

「まっさかー! そんなコト、あるわけないって。あ、じゃあ今から不知火さんも混じって3pぐべべべべべっ!?」

 

「聖夜になんてことを言っているの、グレカーレ」

 

 口をむにっと抓られる。

 不知火さんがいつもする制裁だ。

 これが出るという事は不知火さんのあたしへの疑念も解けたのだろう……と思いたい。

 ごめんね、不知火さん……あたし、もういい加減にテートクと先のステージへ行きたいんだ。

 

「何なら五月雨と不知火も討ち入りまで一緒に見ようぜ」

 

「い、いえ、五月雨は夜あまり強くないので……」

 

「不知火も夜更かしは……」

 

 テートクは皆でワイワイ遊ぶのが好きだから、五月雨さん達を誘うのも予想出来た。けど健康志向な二人は断るだろうし、すぐに二人っきりに……

 

「……で、でも今日はクリスマスですからね! ほ、ほんの少しだけご一緒しようかな……」

 

「し、不知火もたまには夜更かししてもいいでしょう……く、クリスマスですし」

 

 な、なんだとぅ……

 目を丸くするあたしを尻目に、二人はそれぞれがテートクの隣へ腰を降ろしていく。

 さっきまでの皐月さんと谷風さんが座っていた所に、五月雨さんと不知火さんが入れ替わった感じだった。

 

「五月雨は忠臣蔵見た事あるんだっけ?」

 

「い、いえ、お話は知っているんですけど、直に観るのは初めてです」

 

 五月雨さんは少し頬を染めながら、テートクと談笑している。

 いつもよりも何だか女の子って感じの顔だ……はっ! ま、まさか五月雨さんもクリスマスに、テートクと急接近しようとしているのでは……

 

「司令、深酒は体に毒ですよ。お茶にしましょう」

 

 やめて不知火さん! テートクの酔いがさめると、勢いで色々出来ないじゃん! 

 なんてこと、言えないあたしは黙ってワインをチビチビ飲んでいた。

 

 ……絶対、二人とも狙ってたんだ。

 クリスマスにテートクといちゃつこうと思っていたんだ。

 正直、油断していた。

 あたしと同じ野望を抱いている艦娘なんて、この鎮守府にはいないと思っていた。

 けどまさかいるなんて。しかもこの二人……あたしは思わず唇を噛んだ。

 そんな中で忠臣蔵はいよいよクライマックスを迎えた。

 

「ううう……やっぱり、いいな……忠臣蔵は……」

 

「最後のチャンバラは凄かったですね!」

 

「長年、日本で愛されているだけあって、今見ても面白く感じられますね」

 

 号泣するテートクと物語を褒めている五月雨さんと不知火さん。あたしは皆が気になって、話に集中出来なかった。

 

「さて、もう物語も終わった事ですし、寝ましょうか」

 

 不知火さんはそう言うとテートクの腕を掴んで立ち上がろうとする。

 五月雨さんもそれに続こうとしていた。

 

「俺まだ飲み足りないんだが……」

 

「駄目ですよ司令。健康に悪いですよ」

 

「そうですよ提督。お酒の夜更かしもお酒も、お体に毒ですよ」

 

 二人はテートクをさっさと寝させようとしている。

 彼女たちは聖夜に一緒に映画を観れただけで満足したようだ。

 

「ま、待って! あたし、まだ観たい映画あるんだ!」

 

 ここで映画好きのテートクを揺さぶり、五月雨さん達から切り離す!

 まだあたしのターンは終わっちゃいない!

 

「グレカーレ、もう遅いわよ」

 

 不知火さんが窘めるように言った。

 

「まぁまぁ、折角のクリスマスなんだし」

 

 しかし元来お酒好きのテートクはあたしの意見に賛同するだろう。

 そう思っていたけど、実際にすぐ乗ってきた。

 

「いけませんよ、司令。もう若くないのですから……」

 

「まあまあ、不知火さん! 折角のクリスマスなんだから!」

 

 強引に押し切る。

 あたしだってずっとチャンスを待っていたのだ。

 

「不知火ちゃん。今日はイヴですし、たまには提督にも羽を伸ばして貰いましょう」

 

 そんな時、五月雨さんがあたし達に賛同してくれた。

 

「何時も伸ばしているような気もするけど……」

 

 不知火さんも不満そうだが、クリスマスの雰囲気に充てられたのか、しぶしぶながらも許してくれた。

 

「グレちゃん。あんまり提督を困らせちゃ駄目ですよ」

 

 ただ去り際に五月雨さんが意味深気に言った言葉はちょっと焦ったけど……まあこれでテートクと二人っきり。

 早速、イチャイチャして――

 

「やあ司令官。まだ起きていたのか。お、グレカーレも起きているのか」

 

「おう、長月どうした」

 

「いや、目が覚めてしまってな。眠くなるまで、晩酌でもと思って……」

 

 なん……だと……

 

 ここにきて長月さんが襲来するなんて。

 正直、流刑鎮守府で一番テートクに近いのはこの人だと思う。

 長月さんが持っているお盆にはおつまみの盛られた小鉢と、日本酒とお猪口が5つ。恐らく皐月さん達も起きているかと思ったのだろう。そうなると結構前から準備してたっぽい。

 

「流石、長月! ほれ、ここ座れ! 呑むぞ!」

 

「ああ。失礼する」

 

 流石、長月さん。しっかりテートクの隣をキープした。

 あたしもすぐに反対側に腰を降ろす。

 長月さんが微笑みながらお猪口を渡してきた。

 

「さ、乾杯するか」

 

「おう、かんぱーい!」

 

 ご機嫌でテートクが音頭を取って乾杯する。

 あたし以外の二人はにこにこしながら、杯を重ねていく。

 

「何か観るか!」

 

「クリスマスだし『ホーム・アローン』はどうだ?」

 

「お、いいな! 1と2どっちにする?」

 

 不味い。このままだと普通に映画鑑賞して終わってしまう。

 けど相手は長月さん。皐月さん達みたいな小細工はたちどころにバレる可能性がある。

 どうしよう……

 そんなあたしを尻目に、テートクは楽しそうにDVDをセットしていた。

 こうなったら長月とサシ飲みで勝負して、先に寝させた後テートクと二人きり……かなり厳しい勝負になるけど、やるしかない。

 まずはホーム・アローンを最後まで観ないと……

 

「これはケンカ……そう、ケンカだ、ケンカ……」

 

 あたしの体力の気力を使った、耐久勝負だ。

 全てはテートクといちゃつくため……あたしは覚悟を決めて日本酒をチャンポンした。

 

「ううう……」

 

「大丈夫か、グレカーレ」

 

 何とか映画を最後まで観たあたしだったけど、かなり疲れてしまっていた。

 

「やはり名作は面白かったな」

 

「ああ、俺、二回も泣いちまったよ」

 

 母親との再会と、家族の帰ってくるシーンで号泣していたテートクは、楽しそうに日本酒を呷っている。

 この人アラサー目前なのに元気だな……

 ちなみに長月さんもいい感じに酔っている。

 

「さてと、後は短いやつでも観るか」

 

「まだ観るのか?」

 

「クリスマスだからな。この空気を楽しみたい」

 

「ふふ、あんまり遅くまで呑むなよ」

 

 テートクはまだ大丈夫そうだ。一方、長月さんは良い感じにほろ酔いだ。

 

「グレカーレも無理はするなよ」

 

 そう言って長月さんは去っていった。

 やった! これで念願の二人っきりだ。

 

「え、へへへ……テ~トク~」

 

 遂に……ようやく……あたしとテートクのターンが来たんだ……

 あたしはよろよろと立ち上がりながら、テートクの胸へ……

 

「しれーかん、まだ起きてるの?」

 

「おう、暁。こんな遅くにどうした」

 

「トイレに起きたら、灯りがついてたから……あれ、グレカーレもいるの?」

 

「…………」

 

「ああっ! どうしたの、グレカーレ! いきなり突っ伏して!」

 

「飲み過ぎだぞグレカーレ。もう寝た方がいいぞ。寝室まで連れて行こうか?」

 

 ……もう……どうでもいいや……

 

 この日、あたしは悟った。

 変な作戦を立てるとドツボに嵌まる。

 

 来年はもっとシンプルにテートクを誘惑しようと思いました。

 まる!

 




今年も『流刑鎮守府異常なし』をご愛読頂いてありがとうございます。

来年も遅いでしょうが続けていきますので、よろしくお願いします。

もっと更新速度上がるように、アイデアポンポン出たらいいなー

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

  • 改二になったほうがいい
  • このままでいい
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