流刑鎮守府異常なし   作:あとん

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遅くなって申し訳ありません……

最近、話が思いつかなくて……

子どもの日回です


チャイルド・デイ

「しれーかん! 今日はこどもの日だよっ!」

 

 ゴールデンウィークも、もうすぐ終わろうとする頃……尤も、軍人である俺に大型連休などは関係無く、普通に仕事をしているのだが。

 執務室で五月雨と一緒に書類仕事。

 そんな中、皐月がやってきた。

 演習が終わってから暇だったらしい。

 

「確かに今日は五月五日……端午の節句だな……」

 

「うわ、おじさん臭い……今時、そんな言葉使う人いないよ」

 

「そ、そうかな……」

 

 俺は確認するように五月雨へ視線を向けると、彼女は苦笑していた。

 恐らく、そうなのだろう……これがジェネレーションギャップってやつか。

 

「でも、俺達軍人には関係無いぞ。一応、この鎮守府だって最前線なんだからな」

 

「もう! ボクたちだってまだ子供だよ!」

 

 ぷんすか怒る皐月を見て、そう言えばそうだよな……と思った。

 艦娘とはいえ、駆逐艦である皆はまだ幼い。

 充分、子供といえる外見に精神年齢と言えるだろう。

 ……そういえば皆の正確な年齢は知らないな。俺なんてアラサーって煽られているのに。

 

「何か納得いかないな……子供なら子供らしく可愛くあれよ」

 

「何だよ! こんなに可愛いボクを前にしてさ」

 

 皐月は頬をぷくっと膨らませて怒りを表現する、と思えばニッコリと笑って可愛らしく首を傾げて見せた。

 

「はいはい、可愛い、可愛い」

 

「ちょっと~! 最近、ボクの扱い雑じゃない?」

 

 わしゃわしゃと皐月の髪を撫でる。

 確かに皐月は滅茶苦茶カワイイ女の子なんだが、それよりも悪ガキ感が強く感じてしまうからなぁ。

 

「じゃーん! テートク、Ciao♪ どう、GW仕様のあたし!」

 

 そんな時、グレカーレが勢いよく執務室に入ってきた。

 

「ほれほれ♪ ひーらひら♪」

 

 だが、どうにも珍妙な格好をしていた。

 グレカーレは金色の水着を身に着けていたのである。

 しかもかなり際どいデザインで、布面積が極めて少ない。

 少女特有の丸みを帯びた手足に、小麦色の肌も相まって妙に煽情的に見えるような気もする。

 五月雨も皐月も驚いたのか、言葉を失っていた。

 

「何でこの時期に水着なんだ。しかも金ぴかの……」

 

「ふふふ、GWだから金ビキニを着てみたんだよ! あ、今見た? 見たでしょ?」

 

 ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながら、グレカーレは煽情的に腰を振った。

 

「何て言うか……貧乳寸胴の着るビキニってのはこうまで存在価値が無いんだな」

 

「はぁ!? なにそれ!」

 

「つるぺたに金ビキニなど宝の持ち腐れだ。ほら、体が冷えるからさっさと服着てこい」

 

 あれはグラマーな美人のお姉さんとか、爆乳の黒ギャルが身に着けるからこそ、価値があるのである。

 ちびっ子が着ても、変に背伸びしたような感じになるだけだ。

 

「分かってないねぇ、グレカーレ。提督は秀吉の茶室より、信長の茶室に詫び寂びを感じるタイプだ」

 

「そうだぞ、谷風。なんだその破廉恥な姿は。まるで成金じゃないか」

 

「うお、谷風に長月。急に現れるなよ」

 

 グレカーレのインパクトに気を取られて気づけなかったが、二人はすぐ後に偶然やってきたらしい。

 ……いや、絶対グレカーレの後ろ姿見えてただろ、止めろよ。

 

「とりあえずグレカーレ、早く服を着なさい。それ以上は金ビキニへの冒涜にあたる」

 

「もう! 二度と着てあげないからね!」

 

 手でしっしと追い払う仕草をすると、グレカーレは頬を膨らませて去っていった。

  

「全く、何考えてんだアイツ……」

 

「あ、あはは……」

 

 五月雨も苦笑していた。

 真面目な彼女からしたら今のグレカーレの行動など意味不明だろう。俺もであるが。

 

「司令官、言いたいことは分かるけど、折角女の子がお洒落してきたんだから、あの態度は酷いんじゃないかな」

 

「皐月よ。あれはお洒落じゃないぞ。奇行だ」

 

 俺はそう言って溜息をつく。グレカーレの努力は……間違っているのだ。それを教えてやるのも、大人の仕事と言えるだろう。

 

「ビキニってのはね、おっぱいの大きいお姉さんが着ていなきゃあダメなんだ……ボインでエロくてぶるんぶるんで……」

 

「コイツ、サイテーだな」

 

 谷風の冷たい視線をひしひしと感じる。

 

「そ、そういえば、谷風ちゃんと長月ちゃんは、なんで一緒にここへ?」

 

 気を利かせた五月雨が二人に尋ねた。うーんいい子。

 

「おお、そうだった。柏餅とちまきが出来上がってな。味見をして貰おうと思ってな」

 

「谷風さんと長月が腕によりをかけてつくったぜぃ」

 

「おお、ありがとう。すまないな」

 

 どちらもこどもの日に食べる定番メニューだ。

 それを二人は作ってくれていたらしい。

 

「五月雨と皐月も共に行こう」

 

「こういうのは大人数の方がいいからねぇ」

 

「やった! 流石、長月谷風! かわいいね!」

 

「えへへ、ありがとう二人共」

 

 皐月も五月雨もすぐに味見の件を了承すると、皆で腰を上げて食堂へと向かった。

 

「あ、司令官!」

 

「五月雨さんに皐月さんも!」

 

 食堂では既に暁と清霜が柏餅を頬張っていた。

 手作りだけあって形にばらつきがあるが、それが逆に微笑ましい。

 

「ねぇ、司令官。グレちゃん見なかった? 探したんだけど、見つからなくて」

 

 餡子を口の周りにつけた清霜がトテトテやってきた。

 

「えーと、うん……もうすぐ来ると思うよ」

 

 先程まで際どい水着を着て執務室にいたとは言えない。

 

「わぁ、このちまき、美味しいね!」

 

「柏餅もとっても甘いです!」

 

 一方、皐月と五月雨は早くも試食を頬張っていた。

 かなり好評のようだ。

 

「俺も頂くとするかな」

 

「ああ、たんと食え。端午の節句といえば、男の子が主役だからな」

 

「ま、まさか司令官以外にその単語を使う人がいるなんて……」

 

「分かったか、皐月。これが教養ってやつだ」

 

 長月の言葉に俺は何となく溜飲が下がるような思いになりながら、用意されたちまきを口へ運んだ。

 

「……うまい」

 

 もちっとした食感に、さっぱりとした味。ほんのりと漂う笹の香りが、風流な気分にしてくれる。

 

「司令官、熱い茶もあるぞ」

 

「ありがとう、長月」

 

 渡された緑茶をずずずと啜る。

 全身に熱が伝わっていくようだ。

 続いて柏餅を一口。

 

「うん、旨い」

 

 こちらは餡子が入っているため、甘さがダイレクトに伝わってくる。

 当然、生地も柔らかくもちもちで、緑茶との相性も良い。

 

「……こういうものを食べると日本人に生まれてよかったって、気がするな……」

 

「分かる……」

 

「同感です……」

 

 俺の隣で皐月と五月雨もほっと一息をつく。

 温かいお茶を飲むと、どうしてこんな良い心地になるんだろうなぁ……

 

「ふふ、喜んでもらって嬉しいぞ」

 

「谷風さん達が腕によりをかけて作ったからねぇ」

 

 流石、料理の得意な長月と和食好きな谷風が作っただけはある。

 プロの作ったものといっても遜色のないクオリティだった。

 

「もう、このままこどもの日のパーティーをしましょうよ! グレカーレと不知火も呼んで!」

 

「わぁ、お姉様! ナイスアイデア! ねぇねぇ、しれーかん! みなさん! いいでしょ?」

 

 暁の提案を義妹の清霜が絶賛した。

 俺は他の艦娘を見渡し、皆も頷いたので、

 

「ああ、そうするか。二人を呼んできてくれ」

 

 すぐに了承した。

 暁と清霜は目を輝かせて、食堂から出ていく。

 不知火とグレカーレを探しに行ったのだろう。

 

「でも……不知火は兎も角、グレカーレは来てくれるかな? さっき、あんなことがあったばっかりだし」

 

「暁ちゃん達が呼べばきっと来ると思うよ」

 

 先程の金ビキニの件を思いだした皐月と五月雨が少し、心配そうに言った。

 あれくらいで拗ねるような性格では無いグレカーレだが、万が一もあるしなぁ……

 

「さっきは言い過ぎたかな。グレカーレが来たら、謝るよ」

 

「おお、なにがあったか知らんが、司令官が頭を下げるなら、グレカーレも許してくれるだろう」

 

「どうせ原因は提督だろうしねぇ」

 

 事情を知らない長月と谷風が言う……いや、やっぱり知ってるんじゃないか?

 下手をすると水着のグレカーレとすれ違った可能性すらあるぞ。

 そんな事を考えていた時だった。

 

「Buongiorno、おまたせテートク♪」

 

 グレカーレが食堂に入ってきた。

 どうやら機嫌は直ったようで、明るそうな声だ。

 

「おう、グレカーレ、さっきはすまな……」

 

 彼女に謝ろうとした俺はそこで言葉が止まった。

 暁と清霜を伴って現れたグレカーレは当然、先程のビキニ姿では無い。

 だがいつもの白いワンピース状の制服でも無かった。

 

「わ、かわいい……」

 

「綺麗だね……」

 

「ああ、よく似合ってる」

 

 皐月と五月雨が見惚れ、長月が感嘆の声を漏らす。

 俺も暫し、見惚れた。

 彼女が身に着けているのは浴衣だった。

 しかも正月の時に来ているピンクの振袖では無く、白い布地に桜の花が刺繍された、シンプルなデザインだった。

 いつもは派手めな外見なので、ファッションも結構過激なデザインをすることの多い彼女にしては、かなり抑えた出で立ちであった。

 

「テートク、皆さん、Ciao! ちょっとおめかししたみたけど、どうかな?」

 

 そう言ってグレカーレはひらひらと袖を振る。

 

「おお……まさに詫び寂びじゃねぇか」

 

 谷風の言う通り、派手さは無いが、グレカーレ本来の可愛さを際立たせるような浴衣である。

 

「へへ、さっきのリベンジだよ。ほら、テートク。こっち、こっち」

 

「お、おお……」

 

 お、落ち着け俺。

 平常心だ。相手はグレカーレ。

 自分より遥か年下の上、まだ子供だ。

 本来であれば、守るべき存在。

 そんな彼女に邪な気持ちを抱いては駄目だ。

 

「あー、もしかして、気にいっちゃった? やだ、本当かわいい♪」

 

「う……」

 

 俺の反応に手応えを感じたのか、グレカーレは勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

 なんか悔しいが、見惚れる位似合っていたのは事実なので、俺は何も言えなかった。

 

「こどもの日モードってやつだね、グレちゃん!」

 

「ふふふ、グレも中々和服を着こなすようになったじゃない。お姉様として、鼻が高いわ」

 

 義姉コンビも末妹の躍進が嬉しいのか、素直に姿を褒めたたえていた。

 一方のグレカーレはにやにやと俺を見ている。

 くそ……何か好みが割れてしまったというか、見透かされてしまったというか……

 

「ちょ、ちょっと、俺、不知火を探してくるわ」

 

 俺は紅くなった顔を誤魔化すようにして、食堂から出た。

 足早で部屋から出たが、やがて火照った体を冷ますように、足取りはゆっくりになっていく。

 出来るだけ鼓動を落ち着かせようと、何度か深呼吸してから歩いた。

 さて、ようやく落ち着いてきた所で、不知火の居場所である。

 彼女は真面目だから工廠で艤装の整備をしているか、娯楽室で読書。あとは運動場で自主鍛錬といった所だろうか。

 そう思って、まず娯楽室へと向かってドアを開いた。

 

「不知火、いるか? 今、食堂で――」

 

 そこで俺の言葉はピタリと止まった。

 娯楽室、その中に不知火はいる。

 しかし。

 

「……あ……」

 

 目の前に飛び込んできたのは、こちらを見て呆然とする不知火。

 口を大きく開けて、完全に硬直している。

 だが俺も完全に思考が停止してしまっていた。

 すぐ近くにる不知火。

 彼女はその白い肌を惜しみなく晒し、小さな肩や健康的な手足が露になっている。

 普段鍛えているだけあって、無駄な贅肉が無い。スマートでカッコよさすら感じる肢体だ。

 そしてなにより目を惹くのは慎ましやかな胸と小ぶりなお尻を覆う、黄金の布地。

 真珠のように白い地肌と相まって、まるで全身が輝いているように見えた。

 

「……そ、それ……グレカーレの金色ビキ――」

 

 瞬間、不知火の顔が真っ赤に染まり、瞬時に両目が鋭利に細まって、目の前に白い手刀が――

 

 …

 ……

 ………

 

「転んで、気を失った?」

 

「ええ、不知火の目の前で転倒し、気絶してしまいました」

 

「全く、何やってのかねぇ」

 

「でも提督ったら、何だか幸せそうな顔で眠ってるね」

 

「ふふふふ、もしかしてー倒れる前に何かいいモノで見たのカナ?」

 

「ぐ、グレカーレ。あまり憶測でモノを言うのはやめなさい」

 

 ……本日の教訓。

 信長の茶室もいいけど、秀吉の茶室も案外悪くない。

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

  • 改二になったほうがいい
  • このままでいい
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