流刑鎮守府異常なし   作:あとん

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節分回です。

日本酒飲んで書いたら、こんな感じになりました。


仁義なき戦い 節分死闘編

「節分の鬼役?」

 

「はい。お願いできませんか?」

 

 二月になったばかりの執務室で、五月雨が頭を下げた。

 節分・・・・・・そうか、もうそんな時期か・・・・・・

 

「今までは私達が交代でやっていたんだが、今年は司令官がいるからな」

 

「まあ、鬼役は大人がやる方がいいよな」

 

 皐月の言葉に全員がうんうんと頷いた。

 何だかんだ言っても皆、駆逐艦。豆を投げる方に廻りたいよな。

 

「大丈夫よ、司令官! 暁も一緒に鬼の役をやってあげるわ!」

 

 小さな胸をめいいっぱい張りながら暁が言う。

 

「そうか、それは頼りになるな」

 

「えへへ・・・・・・や、ちょ、ちょっと、頭撫でないでよ! まるで子供みたいじゃない!」

 

 そう言いつつも本気で嫌がってはいない。暁は可愛いなあ。こんな娘ほしかったなぁ。

 

「じゃあ2月3日は皆で節分任務! 提督、よろしくお願いしますね!」

 

「おう、まかせとけ!」

 

「ふふ、楽しみだね! ボクも全力で戦うよ」

 

「鬼退治となりゃあ谷風さんも腕が鳴るねえ」

 

「はは、負けないからな。二人とも」

 

 五月雨の言葉を俺は快諾した。

 思えばこの時、もうちょっと考えて判断していれば・・・・・・と、俺が後悔するのはずっと後の話だったりする。

 

 

 そして2月3日。節分当日。

 

「では私達は仕込みがあるから失礼するぞ」

 

「いつもすまないな、長月」

 

「ふふ、大丈夫だ。楽しみにしていろ司令官。最高に美味い恵方巻きと鬼除け汁を作ってやる」

 

「おう、楽しみにしてるぞ」

 

 俺がそう言うと長月と五月雨は厨房へと向かっていった。

 

「さて、と・・・・・・じゃあ鬼として鎮守府を練り歩くとするか・・・・・・」

 

「待って司令官! ここはこの暁が先陣を切るわ!」

 

 鬼の角を模したカチューシャを着けた暁が、胸を張って言った。

 

「大丈夫か? 相手は皐月や谷風だぞ?」

 

「もう子供じゃないから、鬼役だって出来るのよ! 見てなさい!」

 

 勇ましく暁はそう言うと、勢いよく外へと出て行った。

 

「ふぇぇぇぇぇん!!」

 

 そして数秒後、ベソをかきながら戻ってきた。

 

「しれかぇかん! さつきとぉたにかぜがぁ・・・・・・まめ・・・・・・ふぇええん!」

 

「はいはい。よしよし」

 

 呂律がまわらない位、マジ泣きしている暁の頭をなでなでして落ち着かせる。

 さすがにあの悪童二人に、暁じゃ分が悪いよな。

 

「よし、俺が敵をとってきてやる。暁はここで待っていてくれ」

 

 鬼の覆面を被り、俺はそのまま執務室のドアノブに手をかける。

 

「ぐすっ・・・・・・気をつけて司令官・・・・・・あの二人は本気よ! 本気で暁達を退治する気よ!」

 

「わかったわかった。安心しろ、そんなに柔じゃないさ」

 

 ガシガシ頭を撫でて、俺は部屋を後にする。

 廊下に出る。既に床には豆が散乱していた。

 

「さて・・・・・・悪い子はいねえがー」

 

 ってこれはナマハゲか・・・・・・そんな馬鹿な事を考えていると、

 

「大本命発見! これより迎撃を開始するよ!」

 

 背後から元気な声が聞こえてきた。

 この声は皐月だな。

 そう思って振り返った俺の目に映ったのは、何故か鎮守府ないで艤装を展開した皐月だった。

 

「ボクの鬼退治! 始めるよ!」

 

 瞬間、主砲から勢いよく弾が飛び出し、俺の腹部に直撃した。

 

「ぐばっ!」

 

 強烈な衝撃に体がぶっ飛び、床をゴロゴロと転がる。

 ようやく止まったと思ったら、激痛が全身に走った。 

 

「お、おま・・・・・・何を・・・・・・」

 

「安心して! お豆だよ!」

 

 そう言われ、よーく腹部を見ると確かに大豆だった。めり込んでいたが。

 

「さて、追撃戦だね!」

 

「ま、待て皐月。たしかに豆だけどそれは威力が強すぎて・・・・・・」

 

「問答無用! 鬼は外ー!」

 

 ダンダンダンと主砲(豆)を発射する皐月。

 

「ぶぼっ! がばっ! ぶべっ!」

 

 その度に俺にクリティカルヒットし、激痛が連続で襲ってくる。

 

「あはははっ! 司令官・・・・・・いや、鬼さん可愛いね! これは手加減できないね!」

 

 だ、だめだ・・・・・・完全に調子に乗ってる。

 逃げないとやられる。

 俺はボロボロの体に鞭打って、反対方向へと這いずっていく。

 あの曲がり角、そこまで行けば・・・・・・そんな時、その方向から皐月とは別の声が聞こえてきた。

 

「ひとーつ。人の世・・・・・・生き血をすすり・・・・・・」

 

 谷風の声だ。

 

「ふたーつ、不埒な悪行三昧・・・・・・」

 

 こちらに近づいてくる。

 

「みーっつ、醜い浮世の鬼を」

 

 やがて姿を現わした谷風は和装の上に腰に脇差しを差して、鬼のお面を被っていた。

 

「退治してくれよう・・・・・・あ! 桃太郎ぅ・・・・・・」

 

 俺と目が合った瞬間、谷風は着けていたお面を投げ捨てた。

 そのまま、懐から升に入った大豆を取り出すと、谷風はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「成敗!」

 

「がばぼっ!!」

 

 むき出しの顔面に容赦ない豆の嵐が降った。

 少女とはいえ、艦娘の力は強く、俺はそのまま勢いよくひっくり返ってしまう。

 

「さすが谷風! よーし、追撃戦だ!」

 

「おうよ! これじゃ手足も出るめぇ!」

 

 二人に囲まれ、容赦ない豆の攻撃が降り注ぐ。

 あれ・・・・・・豆まきって何だっけ?

 こんなに痛くて辛いものだっけ?

 俺は一体、なんでこんな目にあっているんだっけ?

 

「ふっふっふ・・・・・・司令官! もう降参かい?」

 

「ボク達に成敗されちゃったねえ、間抜けな鬼さん♪」

 

 勝ち誇った二人の声が頭上から響く。

 何だか腹が立ってきた。

 俺、提督だよ? 何で部下にこんなことされてんの?

 

「素直に参ったって言えば、許してやってもいいぜぇ」

 

「そしてボク達の言うコト何でも聞くんだよ、いいね?」

 

 こいつら完全に調子に乗っている・・・・・・

 もう許せん・・・・・・俺は地面に散らばった大豆を掴んで、二人の顔めがけて投げつけた。

 

「わっ!」

 

「げっ!」

 

 完全に油断していた二人は面喰らったようだ。俺はその隙にダッシュで執務室に戻り、鍵をかけた。

 

「あ、逃げた!」

 

「待ちな! 観念しねえか!」

 

 後ろから二人の声が聞こえてくる。

 

「し、司令官、大丈夫?」

 

 暁が心配そうな顔でトテトテやってきた。そんな俺は彼女を。

 

「え・・・・・・ふぁぁぁぁっ!?」

 

 抱き上げて、走った。進む先には窓。俺はガラス張りの窓を開いて、そのまま飛び出した。

 二階だがこの木造鎮守府はそんなに高くない。 

 さらに今の俺は怒りでアドレナリン全開。体は軽く、硬い。

 地面に着地し、そのまま厨房まで暁を抱え走って行く。

 

「あ、提督! 今、酢飯が炊き上がり・・・・・・ど、どうしたんですか鬼のような顔して」

 

 食堂の奥にある厨房に入ると、五月雨が迎えてくれた。

 

「暁、ここなら安全だ」

 

「あ・・・・・・お姫様抱っこ・・・・・・」

 

 暁は何だか名残惜しそうだったが、これから始まる戦いに彼女を巻き込むわけにはいかない。

 

「五月雨、長月。暁を頼む。ここならあの二人も襲ってこないだろう」

 

「た、頼むって、何があったんだ司令官」

 

 奥から長月も顔を出してきた。

 

「戦争だよ・・・・・・あの馬鹿二人には徹底的にお灸を据えてやる・・・・・・不知火!」

 

「はい、どうしました司令官」

 

 呼べば来てくれる。不知火は素敵な子だ。

 本当は彼女を味方に付けた方が有利なのが、それでは駄目だ。俺の力で戦わなければ。

 

「白兵戦用の武器を貸してくれ」

 

「はい、こちらに」

 

 おお・・・・・・サブマシンガンにロケットランチャー、そして煙玉に手榴弾か・・・・・・

 

「弾は訓練用のモノが入っています。当たっても痛いですが死にはしません」

 

「よしよし。これで・・・・・・」

 

「な、なあ司令官」

 

 完全武装した俺の背中に長月が声をかけてきた。

 

「なんだ長月」

 

「何があったかは知らんが・・・・・・節分は大事にしないといけない文化だ。しかし、やり過ぎはよくない。特に豆は何だかんだ言って食べ物なのだから、あまり無駄使いはするんじゃないぞ」

 

「ああ、わかっているさ。じゃあ行ってくる」

 

「本当に分かっているのか・・・・・・」

 

 嘆息する長月を尻目に俺は厨房を後にした。

 さあ、反撃開始だ。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

「こらー開けろー」

 

「神妙にしろぃ」

 

 執務室のドアをドンドン叩く二人の声が下から聞こえてきた。

 完全に油断しているな・・・・・・俺はニヤリと笑うとそこから飛び降りる。

 

「なっ!? 提督!?」

 

「う、上から!?」

 

「ふははははは! ブルースワット直撃世代を舐めるなよ! 喰らえ!」

 

 流石の二人も俺が天井裏から現れるとは思っていなかっただろう!

 驚く二人に向かって俺はサブマシンガンを乱射する。

 

「いたっ! いたたたたっ!」

 

「ああ゛っ!」

 

「さっきの痛み思い知れ!」

 

「ぐう・・・・・・こんにゃろう!」

 

「お、大人げないよっ! それでも司令官?!」

 

「何とでも言え! 勝てばよかろうなのだ!」

 

 報復とばかりに弾丸をぶちこむ! だが悲しきかな弾は有限。暫くして弾は切れた。

 

「っ・・・・・・今だよ、谷風! 豆を!」

 

「が、合点だ!」

 

 すかさず反撃に移ろうとする二人。だが俺は既に策は練ってある。

 俺は煙玉を床にたたき付けた。

 瞬間、白煙が周りを包み込み、俺はそのまま現場から撤退を図る。

 

「おっと! そうはいかない!」

 

 正面からの打ち合いは不利である。こうやって奇襲を繰り返しすしかないのだ。

 俺はそのまま廊下を疾駆し、角を曲がって一階へと撤退――

 

 ガシっ!

 

「なにっ!?」

 

 足首を掴まれた! 

 そのままバランスを崩し、俺は正面から廊下へすっ転んでしまった。

 

「逃がさねえよ提督~」

 

 谷風だった。その瞳に執念を感じる。

 

「皐月! 撃て! この谷風さんごと撃つんだ!」

 

「谷風・・・・・・ゴメン・・・・・・でもそうさせてもらうよ!」

 

 皐月が主砲を向ける。だが、

 

「いいのか・・・・・・俺の全身には・・・・・・これだ!」

 

「なっ!?」

 

 俺が上着のボタンを外すと、谷風の顔が真っ青になった。

 ふふふ、俺の軍服の下には手榴弾を巻き付けてあるのだ!

 

「さあ、どうする!? 今俺を撃てば道連れだぜ?」

 

 さすがにこれでは撃てまい。

 そう思ったが・・・・・・

 

「そんなものでボクが躊躇うとでも? こうなったら、道連れ上等だよ!」

 

 逆上して冷静さを失ったのか、それともヤケクソになったのか。

 皐月は躊躇いも無く引き金を引いた。

 

「ま、待て・・・・・・」

 

 瞬間、視界は真っ白に染まった。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 

「恵方巻き美味しい!」

 

「鬼除け汁も出汁が聞いて、美味しいですね」

 

「えへへ・・・・・・私と長月ちゃんの自信作だよ」

 

「遠慮せずにドンドン食べてくれ・・・・・・おい、貴様ら口が動いていないぞ」

 

「そ、そんなもう豆は飽きたよ・・・・・・」

 

「勘弁してくれぃ・・・・・・」

 

「せ、せめて水を・・・・・・」

 

「駄目だ。二階を豆まみれにした挙げ句、大爆発させたんだ。責任持って全部食え」

 

「せ、殺生な・・・・・・」

 

「司令官・・・・・・ゴメン、ボクちょっと調子に乗りすぎた」

 

「もういいさ・・・・・・俺も何で酒も飲んでないのにあんなことしたのか・・・・・・」

 

「無駄話をする暇があったら食え」

 

「はい・・・・・・」

 

 節分のごちそうを堪能する暁達の横目に、正座して大豆を食べる俺と皐月と谷風。

 口の中の乾きと単調な味に耐えながら俺達は誓った。

 来年は普通に豆まきをしようと・・・・・・

 

 最終的に俺たちは豆を全て処理できぬままダウン。

 余った大豆は後に煮物や大豆ハンバーグとなって、我が鎮守府の食卓を支え続けた。




完全にノリと勢いだけです

次はバレンタイン回が書きたい(願望)

流刑鎮守府の艦娘たちが改二になるか否か

  • 改二になったほうがいい
  • このままでいい
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