富樫勇太がマジモンのダークフレイムマスターだったら 作:ロベルトジョー
勇太と七宮さんとの出会いは、原作の勇太を構成する上でとても大切な要素であったのは間違いなく、DFMとなった勇太においてもそれは妄想補完してでも必要だと思った次第です。
中学校の期末テストが終わり生徒達はあと数日で夏休み。
浮き足立って各々が思う夏休みに胸を膨らませる。
そんな中、智音が所属しているグループでも夏休みの予定について話題になっている。
「へぇ〜、男子とプールに行くんだ!?いいな〜」
「そう言いながら、あんたもう付き合ってるじゃん。最近どうなの?」
「うーん、部活であまりかまってくれなくて…」
「確かにあんたの彼氏って野球少年だったよね〜」」
グループ内での智音の立ち位置としては、会話に参加せずに相槌をよく打っているようなキャラの印象だった。
しかし、今日はどうやら違う。
「ねぇそういえばさ、七宮さんは最近富樫くんと仲良いよね?」
「えっ、そ、そうかな〜...まぁ、よくどこかに一緒に行ったりすることが多いかな...」
「へぇ!七宮さん凄いじゃん。富樫って学年一位で運動が出来るし、顔は普通だけど雰囲気がカッコいいし!あ、でも静か過ぎるのがあれよね〜」
元DFM(ダークフレイムマスター)である勇太は基本的なスペックは高く、本人が闘争以外に興味がないような戦闘狂なので客観的にはクール系優等生のフツメンに見えている。
「...実は結構熱いタイプだったり...」
「えーそうなの!?全然見えないー。だってこっちから話しかけないとずっと窓から空見てるじゃん」
「あ〜、それは確かにね...」
ーー富樫くんって闇の精霊を倒す以外に興味なさそうだし...ーー
戦いの度にテンションを上げながらダークフレムをぶっ放している勇太のことを思い出して、内心は苦笑せざるえなかった智音だった。
「じゃあ、やっぱり夏休みは富樫とどこかに行ったりする?」
「うん、たぶんそうなるんじゃないかな〜」
ーーたぶん、闇の精霊を探しに…ーー
「七宮さんもやるな〜。じゃあ、そのうち付き合いたいと思ってるの?」
「うーん...」
ふと、気になった智音は勇太の席をチラッと見る。
そこには相変わらず窓の外を見ている勇太がいた。
「今はまだ無いかな...富樫くんもそう思ってる無さそうだし」
「えーじゃあ、今度富樫を誘って駅前のスタバに行こうよ!私、富樫の事気になるし〜」
「え!?」
「あんた彼氏は?」
「うーん、今は保留〜。それより、七宮さん良いよね?」
「う、うん。誘ってはみるよ...」
「じゃあよろしく〜」
「ちょっと、私も行くだけ行きたい〜」
「え、えーと、来てくれるか分からないよ...」
急に勇太をお茶に誘う流れになり智音からは若干の焦りが見える。
しかし、既に勇太の話で盛り上がってた女の子達には、智音の言葉が聞こえている様子はなかった。
学校の帰り道、最近は智音と勇太は一緒に帰っている。
勇太としては、闇の精霊の場所を察知できるのが精霊と繋がっている智音だけだから、いつでも直ぐに駆けつけられるようにとのことだ。
智音が魔王との戦いの後で聞いた話だと、智音と勇太が初めて戦った時も智音が何かと戦っていると考えて跡をつけてきたらしい。
しかし、別に友達でもなんでもない関係を考えれば、実はストーカー呼ばわりされても可笑しくないレベルで勇太は智音につきまとっていたりする。
もちろん、勇太としては智音を闇の精霊に対するレーダーとしてしか思っていなかったりするが。
「ねぇ、富樫くん」
「ん、闇の精霊か?」
「違う、違う。あのさ...今週末暇だったりする?」
「特に予定はないが」
「クラスの女の子が富樫くんも一緒にお茶でもどう?って言ってたんだけど....」
「それには闇の精霊もいるのか?」
「そんな物騒なお茶会じゃないよ!みんな、富樫くんとお話ししたいなーって感じ」
「そうか。まぁ、いいぞ」
「...やっぱり行かないよね...って!いいの?」
行かないとばかり思っていた智音は、勇太の予想外の答えに思わず聞き返した。
「あぁ、七宮の行く先には厄介事が待っているのが、この短い間でも分かったからな。多分、そのお茶会でも闇の精霊はやってくる可能性があると考えている」
ーー厄介事って...私に付いてくる富樫くんも含んでたりするのかな?いや、自覚無いよね...ーー
「じ、じゃあ、みんなに伝えておくね!」
勇太から返答をもらった智音はみんなが使っているメッセージアプリで女の子達に伝える。
「あ、そういえば富樫くんの連絡先って交換してないよね?LINEってスマホにいれてる?」
「LINE?あぁ、よくCMでやっているやつか。一応、スマホは持ってるが全く使ってないな。別に連絡を取り合うならテレパスのほうがイメージも伝えられるし便利だぞ?」
「テレパス?え、富樫くんって、もしかして超能力とかも使えたりするの?」
「あぁ、そうか。七宮が魔法を使っているから、つい別世界の常識を当てはめていた。そうだな…試して見るほうが早い。手を握れ」
勇太は右手を智音に差し出した。
智音は疑問に思いながらも、勇太の言う通りに勇太の右手を握る。
「これでいいの?」
『七宮、聞こえるか?』
「え、何今の声は富樫くん?頭の中に直接言われたような….」
『これがテレパスだ。確かに、この世界では超能力と呼ばれるようなものに似ているが少し異なる。このテレパスは、こうして魔力を混ざり合わせることで簡易の魔力パスを形成する』
「魔力パスって、私がミーナとしているようなもの?」
『それに近いな。簡易の魔力パスだからこそ、魔力の伝達までは無理だが思考の伝達は可能だ』
「これって、私から富樫くんにも何かのイメージとか送れたりするの?」
『もちろんできるぞ。イメージをした内容がそのままの状態で送られると思って良い』
「強くイメージした内容?」
『そうだな…例えば、昨日の夜のことを思い出せ…あぁ、今伝わって来ている。昨日の夜に冷やし中華を家族と食べて、その後で風呂に入って直ぐに寝た。ちなみに、寝る時はミーナが同じ布団に入っている』
「すごい!ちゃんとその時のイメージを送れてるんだ...これってどうやってテレパスを始めたり止めたりするの?」
『それは慣れがいるから最初は気にしなくていい。あと、魔力パスは一度繋げば切らない限りいつでもどこでも繋ぎ直せる。そして、イメージの代わりに魔力を送れば耐えられずに魔力パスは切れるという仕様だ』
「ふーん。って!?もしかして、私がお風呂に入ってるシーンを見た?」
「まぁな」
「ッ!?ど、どこまで?見たの!!」
「風呂場の鏡に写ってたものは全部だな」
「!!!!」
智音は恥ずかしさのあまり勇太にバッグを投げつけるが、勇太はそれを難なくキャッチする。
「と、とにかく、テレパスとかじゃなくて普通にメッセージのやり取りが出来た方がいいの!ほら、スマホ貸して!」
勇太がポケットからスマホを取り出すと、智音はそれをすぐに奪ってLINEを入れて友達登録をした。
智音から返されたスマホを見ると、そこにはミーナのアイコンを載せている智音のアカウントが1件表示されている。
「別にテレパスでも良いけど、私にはよく分かんないし何かあったらこっちで連絡するから!」
「あぁ、分かった」
智音はそう言うと勇太から早足で逃げる。
しかし、数メートルほど進んだ後でバッグを勇太に投げつけていることを思い出して、再び勇太の元に戻ってきた。
「...私のバッグ」
「ほら」
そして、週末になった。
智音が待ち合わせ場所に時間ちょうどに来ると、そこには勇太と女の子二人が話している。
「ごめん。私が最後だったね」
「ちょうど集合時間だから、謝ることないよ七宮さん」
「え!?えーと、富樫くんどうしたの?」
「なんのことかな?それより早くスタバに入ろうか!」
智音は、勇太の口調がいつも智音と話す時よりも柔らかいものになっていることに強烈な違和感を感じる。
そして何よりも、爽やかな笑顔をしている勇太がとても胡散臭くてしかたがなかった。
「私は抹茶ラテ!」
「私はカフェオレかな〜。富樫は何飲むの?」
「僕はコーヒーかなー。七宮さんは?」
「...私はキャラメルマキアート」
飲み物を取って席に着くと女の子二人は勇太を挟むように座って向かい側に智音が座る。
そして、勇太と女の子二人が楽しく会話しているところを、飲み物の上にトッピングされているクリームを時々混ぜながら飲んで眺めている智音だった。
しばらくして、もう一杯飲もうかなと席を立とうとした時に勇太から突然テレパスが飛んできた。
『七宮、助けろ』
『...楽しそうだからいいじゃん』
『俺は別に楽しくない』
『ふーん?でも、いつも私と話す時と口調とかが違うじゃん』
『これが学校というコミュニティの中のキャラだからな。別に本心ってわけじゃない』
『へーそうなんだ』
『七宮にもこっちのキャラで対応した方がいいか?』
『...今更感があるし、いつも通りでいい』
『そうか。とりあえず、何でもいいから一旦この状況から抜け出したい』
『...分かった。じゃあ、私に飲み物を奢って』
「もう一杯買ってくるね!」
「僕がお金出すよ七宮さん。じゃあ、ちょっと席を離れるね!」
「「はーい」」
そうして、智音と勇太は席を立って注文待ちの列に並んだ。
「それで、これからどうすればいいんだ?」
「トイレでも行けばいいんじゃないかな?私はキャラメルフラペチーノ飲みたい!あと、このスコーンも欲しいなー」
「...」
智音は目ぼしいものを直ぐに注文して、後は任せたと言わんばかりに勇太をレジに放置する。
勇太は呆然としたが、智音の案以外は特に思いつかなかったため精算だけ済ませて店から出て行った。
「あれ、富樫は?」
「なんか、体調が悪いって言ってトイレに行ったよ〜」
「ふーん、そうなんだ。ていうか、あまり話たことなかってけど結構富樫いいじゃん」
「そうそう。聞き上手って感じ?」
ーー聞き上手って、富樫くんから全然話してないじゃんーー
女の子二人で勇太について盛り上がってる中、智音はスコーンを一口サイズに器用にフォークで小さくして食べていた。
そんな時、智音は突然駅の方に闇の精霊の気配を感じ取った。
「ご、ごめん。二人とも。ちょうど急用を思い出しちゃって!また、明日!」
「え、ちょっと七宮さん?」
智音は残ったスコーンを一口で食べて、フラペチーノを勢いよく飲んだ後に女の子二人に断って店を後にした。