富樫勇太がマジモンのダークフレイムマスターだったら   作:ロベルトジョー

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第五話

先手は炎の怪物からだった。

怪物は自分の炎の体積を急激に増やして巨人となり、勇太に向かって巨大な両手を振り下ろす。

 

「ダークバースト!」

 

それに対して、勇太はその場を動かずに向かってくる怪物の両手に黒い爆炎を放つ。

爆炎を受けた怪物の両手は形を崩して単なる炎となるが、まるでロウソクの火が一瞬だけ揺れたように再び両手の形に戻った。

 

「ボルケーノブレス!!」

「ダークフレイム!」

 

怪物は次に口から広範囲の炎が吹き出して、勇太を焼き尽くそうと襲いかかる。

勇太も対抗して闇の炎をそれにぶつけた。

怪物が吹き出した炎を闇の炎が塗りつぶすように押し返すことに成功したが、怪物はそれを気にせずに吹き続ける。

そして、闇の炎が怪物に到達し怪物を燃やした。

しかし、怪物の全身を黒い炎が覆って焼き尽くしても、黒い炎が消えると再び怪物が再生した。

自分のダークフレムが全く通じていないことに勇太は若干の焦りが生まれた。

基本的には物理技が多い勇太にとって、不死身かつ実体の無い相手は対抗手段が少なく天敵である。

 

「チッ…不死身か。やっかいな…」

「クックック...それで終わりか。魔王を二人も倒した猛者よ。まだまだ、私は倒れんぞ!!」

 

怪物は巨大な拳を作り勇太に叩きつけた。

再び黒い爆炎で拳を吹き飛ばそうとするも、爆炎が当たる瞬間に拳から形が変化して細い無数の槍となり、数本の炎の槍が爆炎を突き抜けて勇太を貫く。

しかし、そこは歴戦のDFMだ。

勇太は苦痛に冷や汗を掻きながらも闇の魔力を引き出して自分の体に突き刺さっている炎の槍を魔力で消した。

 

「まだまだ、始まったばかりだろう?もう少し頑張れよ、ボルケーノブレス」

「ダークフレイム!」

 

同じような展開がまた発生して、勇太の闇の炎が怪物を燃やし尽くすが怪物を倒すには至らない。

 

 

ようやく人混みを抜けた智音は、勇太が向かっているであろう火の手が上がっている場所へと向かおうとしていた。

 

「ソフィア、あそこにいる闇の精霊について詳しく教えて!」

『う〜ん、どうしようかニャ〜』

「…今は私とソフィアは一心同体だよ。私が倒されたらソフィアも一緒だからね!!」

『チィ…まぁ、別に言ってしまっても、戦わない以外の方法はないけどニャ』

「戦わない以外の方法がないってどういうこと?」

『あの精霊は神様に呪われているニャン。呪われていて決して死を迎えることができない。だから、死ぬためにひたすら戦い続けている』

「…つまり倒せないの?」

『そうニャン。そして、あいつからは逃げられない。やつが最初に張る炎の結界には一体になるまで結界から出られない強力な制約がついてるニャン。だから、やつとは戦うことをおすすめしないニャン…いくら強くても休まず永遠に戦い続けることは同じく不死身で無い限り出来ない。そういう事で、あいつは魔王の中でも最強格の一つだニャン』

「そんな…じゃあ勇太は!!」

『う〜ん、もう戦っていそうだからアウトじゃないかニャン』

「ソフィア!!」

 

ソフィアは決して勇太達の味方ではないことを忘れていた智音だった。

勇太がいなければ使い魔の契約が切れてソフィアの体を乗っ取られてしまう智音にとって危機でもある。

 

「はやく、勇太と合流しないと…」

『まぁ、どうやら、そう簡単には行きそうも無いけどニャン』

「…ッ!?」

 

突如、智音に向かって斬撃が飛んできた。

智音は瞬時に魔法少女に変身して超反射能力で斬撃を躱す。

今の智音はミーナがいなくてもソフィアの魔力を使って変身ができるのだ。

季節はずれの長めのマフラーを着けた姿になった智音が、斬撃が飛んできた方向を注意深く見ると、さっきまで気配を察知できなかった存在が現れる。

 

「へぇ、今の躱すってことは、あなた結構できるんだね〜」

「...あなたは誰?」

『智音、気をつけてニャ。あいつ結構強い』

 

智音を襲ってきたのは巫女装束で狐の仮面をかぶっている女の子のようだ。

二本の刀を両手に下げていて、ゆっくりと歩くその姿は流麗であった。

 

「とりあえずカンナギでいいよ。あなたは?」

「カンナギ...私は智音。どうして攻撃してきたの!?」

「あなたからは最近起きた隣町の公園で暴れていた人と同じ気配を感じているのと、今絶賛騒ぎを起こしているからかな〜。ここらへんの異能関連での騒ぎの依頼はウチに来るから面倒だけどやるしかないんだよね〜」

「違うよ!犯人は向こうにいるーー」

 

一瞬で数メートルの間合いを音もなく詰めてきて、二本の刀身を使ってハサミのようにクロスさせてから智音の首元を切り裂こうとした。

智音は咄嗟に後ろに向かって飛んだが、完全に回避が出来ずに頬を軽く来られる。

 

『智音、あいつは聞く耳を持たないニャン。とっとと応戦するか私に変わるニャン』

『ソフィアって富樫くんがいないと私の体が使えないじゃない!』

「でも、しかたない…こっちも行くよ!!マジックサンダー!」

 

智音は手のひらをカンナギに向けて雷を放った。

しかし、音速の雷をカンナギは刀で切り裂いて、もう一方の刀を智音に向かって振って斬撃を飛ばす。

智音はまさか自分の魔法を切られると思っていなかったのか次の動作が遅れて、腕の表面を大きく切り裂かれた。

 

『あ〜もう、何やってるニャン!?次来るニャン!』

「ッ!?...早すぎるっっ!!」

「ほらほらほら!!!」

 

カンナギが繰り出した目で追うのもやっとの斬撃の嵐は、回避しきれない智音を傷つけながら徐々にその数を増やしていく。

そして、とうとう耐えきれなくなり智音は一旦防御をすることにした。

 

「マジックシールド!」

「風の型・かまいたち」

 

カンナギは二本の刀を鞘に収めるとすぐさま抜刀して、そこから無数の斬撃を繰り出しマジックシールドを一瞬にして切り裂いた。

さらに、防御しきれなかったため、マジックシールドの上からも智音の腕や足が切り裂かれて少なくない量の血が吹き出した。

 

「え…」

『智音!大丈夫かニャン!?』

「う〜ん。この程度の実力であの公園の大穴って空けられるのかな?やっぱり、この人の言う通り犯人ってあっちにいるのかな?」

「…っっっぐ」

 

智音は襲ってくる激痛に耐えられず、切られた場所をかばうようにして地面にうずくまる。

 

 

 

怪物によって、既にボロボロで体には重度の火傷がつけられた勇太は息を大きく荒げて怪物を見る。

怪物の方はもはや退屈になったのか、すでにやる気が見られない。

 

「オイ、オマエ。まだ隠している力はあるだろう?そうでないなら、魔王ソフィアリングは倒せないハズだ」

「…短期間での使用はしたくなかったが致し方ないか。ダークドラゴニアソウル、ドラゴニックフォース、ドラゴニックタフネス」

「それだ、それ。なんとも禍々しい闇を感じるぞ!!」

 

暗黒竜の力を引き出す勇太であったが、前回とは異なり腕から伸びる刻印が額まで伸びている。

まるで、使うたびに体を侵食するように。

だが、智音と戦った時以上の闇の魔力が漂う。

 

「ダークフレア!!」

 

どす黒い炎が勇太の手のひらから放たれて怪物の体の一部を燃やし尽くす。

すると、さっきまでとは違って黒い炎で燃やした箇所は再生していない。

 

「ほぉ!!?やるではないかオマエ。焼かれた断面からは再生できん!!」

「クソ…これでもまだ足らないか!!」

「もちろんだ。だが、私も久しぶりに本気を少し出したくなったぞ」

 

怪物の腹に位置する部分が割れて中から輝く炎が見えだした。

その炎に暗黒竜並の嫌悪感を感じた勇太は、すぐさま暗黒竜ディザナ・ゲルゾニアンサスと一体化して邪悪な竜神となり全力の詠唱を行う。

 

「さぁ、受けてみろ。これが私を蝕む原始の炎だ」

「爆ぜろリアル..,弾けろシナプス…パニッシュメント・ディスワールド!!!」

 

怪物は輝く炎を世界に解き放った。

その瞬間、勇太には世界が光に包まれたように見えた。

解き放たれた輝く炎は怪物がいる数十メートルを瞬時に燃やし尽くして大きな爆発が発生した。

その威力は河川敷だけに留まらずに、そばにあった住宅街の一部にも及んだ。

 

 

 

突然の爆発の余波を受けたカンナギだったが防御符を持ち出すことで難を逃れた。

しかし、あまりの巨大な力を感じ取ったため、体が拒絶反応を起こしているかのように嘔吐感がこみ上げる。

カンナギは目の間で起き上がる智音を警戒した。

智音からは先程までは感じなかった強者の圧をカンナギは感じたからだ。

 

「にゃーはっはっは!ようやく魔法魔王少女の出番だニャン」

「…あなた、雰囲気が変わっていませんか?」

「そうかニャ?気にするなニャン。さて…とりあえず、さっきまでのお返しをするニャン」

 

もはや、先程まで切り傷で倒れてうずくまっていた智音ではない。

序列でトップに位置していた魔王であり、現在は天才的な魔法適正を持つ魔法少女と一つになった魔法魔王少女ソフィアだ。

戦意を見せた智音に対してカンナギはすぐさま二本の刀を鞘に入れて抜刀して技を放つ。

 

「風の型・かまいたち!」

「どこに打ってるニャン?ブレイジングフィスト!」

「ッ!?ぐはぁーー」

 

カンナギの背後に瞬間移動した智音は、煌めく拳で狐のお面ごとカンナギの顔を殴り飛ばした。

カンナギは吹き飛びながらも空中で体制を整えて着地する。狐のお面は既に粉々になり口を切ったのか血を流しながら、幼さの残る可愛さだけでなく美しさも備えたカンナギの素顔が現れる。

しかし、智音の攻撃はまだ終わっていない。

 

「イグニッション!ブレイジングマジックアロー!!」

「っ!?剛の型・叩き割り!はぁぁぁぁーーー」

 

カンナギは襲ってくる魔力砲に対して、気を載せた刀で真っ二つに切り裂いた。

しかし、魔力砲が打ち終わるころには、二刀が魔力砲の威力に耐えきれずに砕け散った。

もはや武器がなくなったカンナギに対して、智音はニヤニヤ嗜虐的な表情を浮かべながら近づいた。

 

「さーて、どうやって料理をしようかニャン」

「っ…. !?」

『待って、ソフィア!勇太は!?』

『智音、今いいところだから見てるニャン』

『ねぇ、ソフィアが体を操っているってことは...勇太に何かあったんだよね?』

『分かりきったことニャン』

『…お願いソフィア。勇太を助けてあげて…』

『だから、行っても変わらニャイとーー』

『お願い…』

「…はぁーっ、しかたないニャン。今回は見逃してやるニャン」

「え、ちょっとーーー」

 

智音の必死の懇願に折れたソフィアがため息を吐いたあとで、カンナギを蹴り飛ばした。

転がったカンナギにはひと目もくれずに勇太が戦っている方へと向かう。

 

 

原始の炎の威力は川を蒸発させて大穴を作り溶岩を生み出した。

現場の凄まじさに智音は身震いをする。

勇太が見つからないかもしれないと最悪の場合を一瞬智音の脳裏を横切ったが、直ぐに勇太は見つかり安堵する。

 

『あれ、勇太だ!』

「へぇ、あいつを倒すとはさすが私を倒しただけあるニャン」

 

智音はボロボロの勇太に近づく。

素人目でも至るところに火傷を負っていて、これが一般人なら危険な状態だと分かった。

 

「勇太、起きるニャン。とっととずらかるニャン」

「うっ…っっ」

『ちょっと、ソフィア。もう少し優しく…』

 

ゆっくりと、勇太が目を覚ました。

焦点の合わない目で智音を見返す。

そして、ーーー

 

「…君は誰?」

『え….』

 

 

 

 




これで過去話が終わりました。
次からは原作なので、一旦アニメを見返します。

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