次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く   作:ウィングゼロ

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10話

 

転移トラップに巻き込まれた俺達は一瞬、足に地面が付かない浮遊感を感じた後、直ぐに足が地面に着いた感触を感じる。

眩い光も治まり始め、俺は直ぐに辺りを見渡す。

俺達がいるのはどうやら橋の中心辺りで、殆どのクラスメイトは尻餅を付いており前衛タイプの天之河達やメルド団長を筆頭に騎士団は既に辺りを警戒している。

先程以上に張り詰めている空気…それで此処は不味いと直感。直ぐさまにメルド団長に言おうとしたところ同じことを考えていた。メルド団長が直ぐさまに撤退を促す。

 

その号令にわたわたと慌て出すクラスメイト達。しかしこのトラップそれだけで終わらなかった。

撤退する上層に続く階段側に魔法陣から大量の魔物が出現、さらに奥に進む通路がある反対側からはそれとは比べものにならないほどの大きい魔法陣から巨大な魔物が一体出現。

 

その巨大な魔物を見てメルド団長は唖然とした声でその魔物の名前を呟いた。

 

「まさか……ベヒモス……なのか……」

 

 

状況は最悪と言って良かった。

退路である階段側は百を超える数え切れないほどの骸骨戦士…トラウムソルジャー達によって阻まれ…

反対側はメルド団長によるとベヒモス…書物で見た歴代最大階層である65層にいると言われる魔物が居座っていて。俺達はその橋の中心で板挟み状態という状況……予想はしていたケースだが……敵の強さまでは視野に入れて無かったことを悔やむと同時にベヒモスが咆哮を上げた。

この空間に響き渡るベヒモスの雄叫びにメルド団長は正気に戻り急いで指示を出した。

 

「アラン!生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ!カイル、イヴァン、ベイル!全力で障壁を張れ!ヤツを食い止めるぞ!光輝、お前達は早く階段へ向かえ!正人、後のことは全てお前に任せる!頼んだぞ!!」

「っ!」

 

矢継ぎ早に指示を出すメルド団長、最後に俺に向けて言った言葉に俺は顔を強ばらせた。

後は任すつまりは有事の際の指揮権の譲渡するという出発前にメルド団長が告げたあの言葉を意味する。

そしてメルド団長達は今……自らを捨て石にして俺達を救おうとしている……

考えていなかったわけではない……元々そういったことも想定してシミュレートの時もメルド団長達騎士団の数は入れていなかった。

分断され……もしくは囮となってたという前提条件で……

だが現実に直面してはいそうですかっと俺も割り切るわけにはいかない。

 

「っ……!!」

 

今すぐにでもメルド団長の元へ加勢に向かいたい……加勢してベヒモスと戦えるのは恐らく俺だけであるのは間違いないから

俺が全力でベヒモスに当たれば倒すことも出来るかもしれない。しかしそれはメルド団長はいい顔をしないだろう。

それは何故か…理由は俺が持つ魔力操作…またはリンカーコア保有者であることが起因だ。

この世界では魔力操作を使えるのは魔物だけという限定されていて、不用意にその力を使えばたちまち周りは俺のことを人間と見なくなるということだ。

別に俺1人が被害に遭うのであればそんな忠告も無視して全力で戦うのだが…そうも行かない。

その被害が俺だけではなくアリサやすずか、そして香織や他のみんなにも飛び火したら…そう思うと思うように動けない。

 

またあんなことは二度とごめんだ…

だからこそ俺は本心を殺し最善を打つ。

 

だがしかし現状は最悪と言って良い。

トラップによる挟撃にクラスメイトはパニック状態、まとめ役の天之河は情に流されて…未だにメルド団長の元にいてだだをこねている。

そんなことをしているうちにベヒモスは咆哮を上げて突進してきていた。

こんな狭い道幅では回避することも通常では困難。

だがベヒモスの方にはメルド団長と騎士団がいる。

 

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず 聖絶!!」」」

 

使い捨ての紙に描かれた魔法陣を触媒に発動する多重障壁、それによりベヒモスの突進を受けきるがその衝撃で俺達がいる石の橋が大きく揺れて撤退中のクラスメイト達もその振動で転倒する者達が相次ぐ。

前門に大群の魔物、後門には破格な魔物という逃げ場もない戦況、クラスメイトの殆どは恐怖心で訓練で身につけたものは何処へやらとパニックに陥っている。

 

どうするかと悩む俺に目先でクラスメイトの女子…確か、園部優花が転倒していて目の前にトラウムソルジャーが一体…

それを見てしまったとき俺は考えるより速く。体が動いていた。

恐怖で動けない園部とトラウムソルジャーの間に割り込み零距離で矢を放ち。撃破

思考で考えて動いたというより、体に染みついた技法で勝手に動いたと言ったほうがいい。

 

「……何、うじうじ悩んでいるんだか……俺は…」

「あっ……」

「無事か園部…」

 

そういって園部に手を差し伸べる。

園部も俺の手を摑み、手を引いて立たせると辺りを見渡す。

先程と変わらず。混乱しているのは変わりは無い。

その中で混乱せずに戦えているのは騎士団を除けばアリサとすずかぐらい…

そんなことを考えているとハジメがこっちにやってくるのがわかる。

 

「正人くん!」

「ハジメか…無事で良かった……」

 

この乱戦状態でも尚、未だに冷静さを保っていたことに驚く中、ふとベヒモスの居る場所を見る。

 

そこにはベヒモスの突進を死力で守るメルド団長率いる騎士団とわがままに残っているあの天之河(バカ)とそれに同調しようとして居るであろう坂上、その2人を止めようとする雫にどうすれば良いかわからない香織の姿がある。

 

こんなときに限ってリーダーがあんなわがまましてもらうと困る。直ぐにでも強引に行って連れ戻したいのだが生憎、階段の敵の対処でいっぱいいっぱいだった。

 

ならハジメに頼むかと矢を携えて放ち前方のトラウムソルジャーを風を纏った矢が何体か貫く中そんな考えをしているとハジメから意外な言葉が飛び出した。

 

「正人くんは天之河くんの所に行って!」

「ハジメ!?今の状況わかってるか!?とてもじゃないが……」

「わかってるよ、けど僕が行ったところで多分何も出来ないから…それなら正人くんが行った方が良いに決まってる」

「だがな……」

「何うじうじしてるの!」

 

ハジメの言葉に一理あると自分でも思うがそんな身勝手なことをするわけにはと自分を押し殺そうとしたが別の声に遮られた。

 

その声のする方を見ると、そこにはアリサがいた。

大剣を振るい何体もトラウムソルジャーを一気に倒す中、息の荒らくしながら目は俺に向けていた。

話している余裕などないのだがそこはすずかがフォローしてアリサに敵を寄せ付けていない。

 

「いつまでも守られてる側じゃないわよ!!正人の穴はあたし達でちゃんとカバーしてやるわ!!だから……行きなさい!!」

「……アリサ……」

 

そうだな…俺は何処かでこいつら全員を守らなければと自身に課せていたのかもしれない。

そうだ、アリサ達も今は自衛できる。

少しぐらい自分を優先しても…良いよな?

 

そう思うと意を決した俺はアリサ達に指示を出そうと口を開けた。

 

「アリサ、すずか、ハジメ俺から言う言葉は一つ……絶対に死ぬな…必ず誰も死なせずに生き残れ!!」

 

自分でも言っていて相当無茶な発言をしていることはわかっているのだが、3人とも苦笑いを浮かべて俺の指示に答えた。

 

「「「了解!!!」」」

 

迷うことのない言葉に俺は頰を釣り上げる中、未だに放心状態である園部を見た

 

「園部」

「ひゃ、ひゃい!」

 

声を掛けると何故か可愛らしい返事をする園部…此処が戦場であることを忘れているのだろう……なんとも間の抜けた声だった。

 

「園部は自分のパーティーを何とかしてくれその後上手く防戦しておけばいい、俺が天之河を連れてくるから問題ない」

「わ、わかった」

 

園部に手短に作戦の趣旨だけ伝えて理解してもらうと俺は全力で香織達の元へと走る。時間は余りない。

 

 

香織SIDE

 

私は……どうすれば良いのだろう…

頭の中は混乱と恐怖でいっぱいだった。

檜山くんの行動で罠にはまってとんでもない場所に転移させられ目の前には私達が戦ってきた魔物より比べものにならないぐらいに強そうな魔物が私達を襲ってきた。

今は団長さん達が守ってくれているけど多分時間は余りない。

この障壁も長くは続かない私にはそう思えた。

 

「ええい、くそ!もうもたんぞ!光輝、早く撤退しろ!お前達も早く行け!」

「嫌です!メルドさん達を置いていくわけには行きません!絶対、皆で生き残るんです!」

「くっ、こんな時にわがままを……」

 

自分も防御に参加し私達を逃がそうとする団長さん、だけど光輝くんはそれを拒む。

多分此処で逃げれば囮になった団長さん達は助からない。だけどこの魔物を野放しにすれば私達もただじゃ済まないのも目に見えていた。

 

「光輝!団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」

「へっ、光輝の無茶は今に始まったことじゃねぇだろ?付き合うぜ、光輝!」

「龍太郎……ありがとな」

 

雫ちゃんは状況がわかっているみたいで光輝くんの肩を摑み諌めようとするけど龍太郎くんの言葉に助長して戦うことへの気持ちを強くし雫ちゃんは舌打ちをする。

 

「状況に酔ってんじゃないわよ!この馬鹿ども!」

「雫ちゃん……」

 

声を荒げて叫ぶ雫ちゃん、わたしはそんな状況を見ていることしかできなかった。

こういうとき…正人くんならどうするだろう…

自然に自然は目の前から後ろへと移るとこっちに向かってくる人物を見て目を大きくした。

それは私が今思い浮かべた人物…正人くんだったからだ。

 

「天之河!!」

「なっ!?八坂!どうして君が!?」

 

予想外な人物の登場に光輝くんの意識も正人くんに向く。

そして付いた瞬間に正人くんは直ぐさまに私達に声を掛けた。

 

「直ぐに階段方に来い!お前らが来ないせいで戦線が押したくても押せない状況なんだよ!」

「っ!いや、こいつを倒してからだ。それから後ろの魔物も…」

「そんな悠長な時間があるか!!」

 

私達が此処にいるから押し切れないっと主張する正人くんに光輝くんは先ずは目の前の魔物を何とかしてからと言うがその途中で気迫に満ちた声で光輝くんは押し黙った。

 

「状況が見えてないのか!?後ろはガタガタいつ犠牲者が出ても可笑しくない状況だ。そんな状況でお前のわがまま一つで事態を深刻化させるな!!」

 

指を指し事態の深刻を認識させようとする正人くん、それには光輝くんもぐうの音も出ないようだが、それでも光輝くんは認められなかった。

 

「じゃあメルドさん達を見捨てろって言うのか!?そんなこと俺には……「ああそうだ」」

 

それは前で魔物を抑えてくれている団長さん達を見捨てると同じことだと主張する光輝くんだけど、そこでまた暗く重い声で光輝くんの言ったことを肯定した。

 

「忘れたか、天之河、俺はこの世界の命運なんて興味なんてない。俺はクラスメイトを元いた世界に帰すために動いているんだ。」

 

鋭くなった目つきと重い声、その二つで私は金縛りにあうように体が硬直し、

正人くんは利き手の右手を力強く握り締める。

 

「大体、メルド団長もそれを見越して有事の際の指揮権を譲渡したんだ。今回ばかりは俺の指示に従ってもらう」

 

横暴にも聞こえるそれは何処か正人くん自体にも言い聞かせているような気がしてならない。

そんな風に見える中龍太郎くんも雫ちゃんも何も言えず。ただ光輝くんはそれでも俺はっとまだ諦めきれないのか、反抗的な目で正人くんを見ていると団長さんから叫びが聞こえた。

 

「下がれぇーー!」

 

その叫びと共に遂に障壁が砕け散る。

暴風とも思える衝撃波が迫り来る中、正人くんが前に立ち、私を衝撃波から庇ってくれる。

衝撃波が収まると周りを見て思わず私は叫んだ。

 

「光輝くん!雫ちゃん!龍太郎くん!!」

 

衝撃波をまともに受け、起き上がれない友達の姿。

団長さん達も光輝くん達と同様動けない。

私は正人くんが守ってくれたから大丈夫だったけど、動けるのは私と正人くんだけとなっている。

こんなの……打つ手なんてない……

私の心は迫り来る圧倒的な脅威に絶望していた。

どうして……どうしてこんなことにっと少し前の楽観的だった私を怨みたくなるくらいだ。

もう私達は助からない……そう思うとふと私は正人くんの背中を見る。

死ぬぐらいならいっそ…

正人くんにずっと言えなかった私の心中を打ち明けようと口を開けようとしたとき、はあっと言った溜め息が溢れる。

溢したのは正人くんだった。どうしてと疑問が沸くが顔を私に向けると何処か寂しそうで困った顔をしていた。

 

「どうやら……生き残るにはこの選択しかないみたいだ。1番最善で……そして1番危険な選択を」

 

そういって立ち上がった正人くんは何処か覚悟を決めた顔つきで前に居る魔物を見据える。

 

「香織、俺が時間を稼ぐその間にメルド団長や天之河を回復して後退してアリサ達と合流退路を確保してくれ」

 

正人くんは淡々と指示を飛ばし持っている弓の弦と矢筒の中の矢の本数を確認。

そんな正人くんを不安がりながらも何処か安堵する気持ちが湧いてきた。

 

「メルド団長には後で色々と言われるだろうな……」

「え?」

 

どうしてそこで団長さんが?っと正人くんから口に出た名前に目を丸くするが雄叫びを上げた魔物が遂に突進してきた。

 

もう誰も守る人もいない、まず始めに死ぬのは私達だろうと思った矢先、正人くんが魔物に立ち塞がり右手を突き出す。すると無詠唱で見たこともないシールドを張って魔物の突進を防いで見せた。

突然のことで戸惑いを覚える私、しかし正人くんはまた私を名前で呼ぶと正人くんに任せられた指示のことを思い出し近くにいる団長さんのもとへと向かおうとする。

そんな最中、私は正人くんに声を掛けた。

 

「正人くん!死なないでね」

「…誰に言ってる…俺は死なないさ…死ぬわけにはいかないからな」

「?」

 

かっこつけているようにも思えるその言葉には何処か正人くんの悲痛な何かが見えたようなそんな気がした。

 

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