次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く 作:ウィングゼロ
香織の悲痛な叫びの後私達は無言のままその場で止まった後残り少ない階層を上がり、漸く迷宮から抜け出すことが出来た。
漸くホルアドまで戻ってこれた私達の中にはその場で座り込み生きている心地を噛み締めたり、お互い生き残れたことを抱き合って慰め合ったり。そんなことをする光景が多かったその後受け付けとやり取りをしているメルド団長、リィンフォースさんのことや正人のことでやっぱり気が重たいのか足取り重いように思えた。それと檜山も今の状況とメルド団長が離れた隙を見て逃げだそうとしたが私が直ぐに取り押さえた。
檜山からは恨み言葉をかけられたがこれ以上都合の悪い連鎖を広げないためにもこいつだけは逃がすわけにはいかなかった。
その後戻ってきたメルド団長に檜山を引き渡し、ホルアドで1泊した後、私達は王都へと戻ってきた。
それから言うもの私は空いた時間に自らの大剣を振るう日々が続いていた。
ただ我武者羅に…嫌なことを忘れたいために…というか
「いい加減にしつこいのよ。あのバカどもはぁ!!!!!」
恨みつらみをぶちまけた怒声と共に振るわれた一撃は訓練所の地面を抉った。
「はぁ…はぁ…何なのよ王宮の重鎮ときたら、気晴らしで振るっているってのに訓練に精が出ているなとか、部屋に引きこもる者とは大違いで流石は勇者様のお仲間とか、アリサがここまで頑張ってるんだ。俺達も負けていられないなとか、本当にふざけんじゃないわよ!!!」
訓練所で振るっていたら私を見かけた者はそういって去って行く。因みに最後のはあの
寧ろ、力を隠していた卑怯者と扱う始末だし、憤って本気で手を出しそうになったぐらい。
実際すずかがいなかったら間違いなくぶっ飛ばしてたと思うし、すずかがいてくれて本当に助かった。
「凄い鬱憤が貯まってたのね…それと光輝が本当に迷惑かけてごめんなさいね」
同じくじっとしているのが無理で気晴らしに剣を振るっていた雫が天之河のことで頭を下げてくる。
本当に損な役回りを務めてるわねっと思いながら私は雫に顔を向けた。
「別に雫が謝ることじゃないでしょ?」
「それでもよ…ねえ、アインスさんとは会えたの?」
「……残念ながら通してはくれなかったわ…この中は危険なのでお下がりくださいの一点張り、城の衛兵以上に私の方がリィンフォースさんのことは知ってるって言うのにね」
此処で少し今の現状を説明しておこう…
まず私達の状況なのだが、クラスの殆どが戦いへの恐怖から引き籠もっている状況で王宮はそんな状態を看過することが出来ず。ことあることに戦わせようとさせたけど、オルクス演習に参加していなくて、正人の離脱を深く後悔した畑山先生が猛抗議して、先生のレア天職と実績から王国や教会も無視することは出来ず自主性での参加という形をもぎ取り。取りあえずの強制参加は免れた。
そして、今現在私達のように自主練しているのは私やすずか、雫に天之河と坂上のたった5人だけで今や六分の一のメンツしかいない。
そして唯一行方不明扱いになっている正人はというと隠していた魔力操作等がバレ裏切り者、異端者と王国や教会からも罵声を上げる始末でその顛末をきいた私は胸くそ悪いと思ったのは言うまでもないだろう。
そしてそんな正人と同じ力を持つリィンフォースは危険人物と見なされて王宮の1室に完全に監禁状態…面会すらさせてくれないのが現状だ。
因みに檜山だけど今は神山の牢獄で幽閉されているらしい。
私達に対する見せしめ兼人質、下手なことをすれば命の保証はないと別に檜山に関してはどうでも良くなってきたけど畑山先生やあいつの家族のことを考えると迂闊には動けなくなった
「香織ちゃん…大丈夫かな?」
「正直、1番精神的にまいってるのは香織だからね…」
少し離れた場所で正人の端末を持ちながら私と同じ香織の心配をするすずか。
香織に関しては無理もない突きつけられた真実に正人の離脱…その上汚名まで背負わされたのだ。それで開き直れるほど香織は強くはない。
今現在は部屋に引き籠もっている状態が続いている。
「そろそろ光輝達も来ると思うわ。」
「天之河とあったら一悶着あるだろうしね…そろそろ切り上げるわ。行きましょうすずか」
「うん、またね雫ちゃん」
こちらも天之河と鉢合わせるのは避けたいため雫の言葉を聞いて私達は訓練所を後にする。
それから天之河達とはすれ違うことなく王宮の長い廊下を歩いていると少し離れた所で見知った人物が見えた。
「優花様!?お体がフラついてます。今すぐに誰をお呼びしますからその場でお待ちください」
「大丈夫って言ってるでしょ!?私に構わないで!私はだい…じょう…」
近くにカートがあるから部屋に食事を持ってきているメイドだろう。道端で見かけた優花を見て身を案じているみたいだけどそれを優花は声を荒げて突っぱねているようだ。
だけど離れている私達ですら優花がフラついているのが判るほど疲れているように見えて、その後案の定その場で倒れてしまった。
「優花様!?お気を確かに!?優花様!!」
「アリサちゃん」
「わかってる行くわよ!」
流石に見かねた私達も優花の元へ駆け寄る。
「あっ、アリサ様にすずか様」
「優花を部屋まで運ぶわ」
「は、はい!」
優花を抱き抱えた私は急いで優花の部屋へ。メイドも慌てて付いてきて、抱えた優花をベッドに安静に寝かせると私は一段落と息を漏らした。
そんな中暗い影を落とすメイドがポツリと語り出す
「優花様…あまりお眠りになられてなかったようで」
「なるほどね…無茶をといいたいけど…多分原因は王国の勧誘か…」
例え畑山先生が抗議して自主性ということになっていたけど…勧誘がなくなったわけではない。
上手く自分で参加するように巧みな話術で誘導をさせようとしたのは現に優花だけでなく引き籠もっている全員が受けている。
それによる過度なストレスにメイドが指摘したように睡眠不足が重なれば優花らしくない態度や倒れたことにも説明はつく。
これを出しに王国に抗議して止めさせようと思ったけどそれでなくなりそうにない。
「はぁ…どうすれば良いのよ」
現状を何が打開しないと私達に安息はないと溜め息を溢す私はふと正人ならどうするかと脳裏に浮かべた後、微かな呻き声が聞こえてくる。
「優花?」
「…ぁぁ……っ!」
何かに魘されているようで顔には汗が滲み出て苦しそうな表情を見せ流石にただ事ですまない光景に少し呆然としたが、優花は目を覚ますと同時ベッドから上半身を起こし上げ荒い息遣いで悪夢に魘されていたことは直ぐにわかった。
「優花、落ち着きなさい。悪いけど飲み物を淹れてくれない?」
「はい、ただいま」
優花に落ち着くように優しく抱きしめ、メイドには一息入れるためにあの紅茶もどきを淹れてせるように言うと慌ててメイドはお茶を淹れた。
次第に落ち着きを取り戻した優花…これなら話も出来ると思った私は優花に訪ねた。
「優花…魘されていたみたいだけど…良くない夢を見てたの?」
「……うん、あの日から…あんまり眠れないなって…ね……八坂が…血だらけになりながら私を責めてくるの…お前達のせいで俺はこんなにボロボロだ。足手まといだから合わせるのに苦労するとか…実際八坂が言ったわけじゃないけどさ…胸に突き刺さるものがあって……それはそうだよね……八坂は私達より強かった足引っ張ってて調子に乗ってた私達なんて迷惑だったに決まってるよね」
「優花ちゃん……それは違うよ…正人くんは迷惑だったんじゃない。きっと心配していたんだと思う」
「え?」
優花の言葉は確かに間違っていない。けど私達が知ってる正人はそんなこと一度だって思ったことはないはずだ。
だからこそすずかは違うときっぱり言えた。正人がみんなに向けていたのは苛立ちなんかじゃない。心配という優しさだったということを
「正人くんお人好しだから……きっと……優花ちゃんのことも責めてないよ」
「……そうなの……かな…」
「うん、そうだよ」
「……ありがとう…気が楽になったから」
少しは肩の荷も下りたわね。それから仰向けになった優花はそのまま眠りにつき…暫くしても魘されているようには見えないから漸く、安息に眠られるようになったのだと一安心した。私達だが現状は未だに八方塞がりだ。
「せめて、正人の端末が開けられればね」
そう愚痴を呟きながらすずかが持つ正人の端末を見る。
正人が管理局から支給されている端末で他世界への通信ができる。私達にとっての唯一の鍵。
あの日の翌日、言い方は悪いが遺品回収ということでメルド団長に見つかった端末は全員の前に晒された。
そして私は端末について洗いざらい話しそこで何故それを教えてくれなかったんだ!?っと勿論天之河は反発し騒動になった。
そしてこれは八坂が残した情報だと端末を使おうとしたが結果使うことは出来なかった。
「まさか、魔力識別で開くなんてね…まあ…セキュリティとしては万全よね」
「でも、それじゃあ正人くんしか扱うことが出来ないんだよね?」
「そうね…表向きは」
そういうとすずかが端末を起動し少し操作するとウィンドウが開かれる。
そしてそこに表示されているのは
ID ***********
PS
パソコンとかで見るログイン画面。
この端末は支給品なのだから当然魔力識別だけというわけではない。勿論他の人間でもアクセスすることは可能だ。しかし天之河達にはそれは教えてない。教えたら躍起になって端末を弄るだろうし、後々面倒だから…教えるつもりはない。
しかし私達もここで問題があった。
端末のパスワードを知らないということだ。
端末の登録は恐らく正人が管理局で手続きをして発行されている。
つまり正人がパスワードを登録しているはずだけど……思い当たるパスワードは全て打ち込んだのだが全て空振り。
あと1つだけ思い当たる節があるけど……
「リィンフォースさんならわかるんだけど……」
だけどリィンフォースさんは軟禁状態で会うことも出来ない。
何とかリィンフォースさんと会えればと考えていると意外なところから声を掛けられる。
「あの…」
「ってあっ!?ま、まだいたのね…」
「も、申し訳ございません。神の遣いであるお二人の会話を盗み聞きしてしまい…」
優花を運ぶときに連れて来たメイド。ずっと黙っていたから出ていったと思っていたが確りとまだ部屋にいた。
取りあえず口止めさせるべきよねっとメイドに声を掛けようとしたとき先にメイドの方が提案を持ちかけてきた。
「どのようなことかはわかりませんが…その…リィンフォース様に要件をお伝えしてその事がお分かりすればよろしいのですか?その…出来るかも…しれません」
メイドから出た提案はこの膠着を打開する言葉だった。