次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く 作:ウィングゼロ
「可能って……そんなことどうやって……」
いきなりのメイドの提案に私達は驚いて若干詰め寄るとそれが迫力があったのかメイドは水色が掛かった白銀の髪をゆらゆらと揺らしながら慌て始める。
「アリサちゃん落ち着いて…怖がってるよ」
すずかに迫りきって怯えていることを指摘され、冷静になった私はごめんと謝った後、再びメイドの話を聞いた。
「えとえと、実はお姉様がアインス様の身の周りの世話を勤めておりまして…私がお姉様にお話しをお通ししてアインス様にお伝えすれば後日アリサ様達にお伝えすることが出来ます」
つまりはこの子の姉がリィンフォースさんと接触している一人でこの子が今回の件を姉に伝えてその姉の伝手でリィンフォースさんに話を聞いてそれを私達に教える。
確かにそれなら王国に怪しまれることなくパスワードに関して聞くことは出来るけど少し不信感はある。
「話はわかるけどどうしてそんな話を乗る気になったの?王国には内緒の話なんだけど」
最悪はこの子に口止めしなければならない内容だ。幾ら幼いとはいえ王国から雇われている身のはずなのにと当然の疑問を向けるけどメイドは至って普通に手を胸に当てて口を開けた。
「これも主のお導き、神の使いであるお二方のお役に立てるのでしたら喜んでお受けします」
あくまでエヒト神の導きってわけね 。別に私達が気にすることではないけど……こんな幼い子供でも神様を敬愛しているこの世界の歪さを改めて感じさせられるわ。けど、讃えている神の名前が出ているということは少なからずは信用は出来るということ…その上八方塞がりということもある。ここは少しの不安要素を鵜呑みにして頼むべきだろう。
「そうね、それじゃあお願いできるかしら?」
「はい!お任せください!」
そう頼まれたことに満面の笑顔で受け答えする。
正直こんな子を巻き込むのは気が引けるんだけどね
「ねえ、そろそろ戻らないと心配されるんじゃないかな?」
「え?あっ!そうでした!!それで失礼いたしまっ!?」
自分の仕事を忘れていたようで慌ててお辞儀をした後急いで仕事に戻ろうとしたがメイド服のスカートの裾をばたつく足に引っかけてしまいそのまま顔面から地面にダイブ。
私達は終始無言で心配して倒れたメイドを見ていると直ぐにむくっと顔を上げて起き上がり、失礼しましたっと顔を真っ赤にしてお辞儀すると部屋から逃げるように去って行った。
「さて…私達も部屋に戻りましょう。此処にいたら優花の安眠を妨げそうだしね」
「うんそうだね」
そうして私達も追うように部屋をでていき、当て振られた自室へと戻っていった。
NOSIDE
トータスと繋がりのある別次元の世界、その世界の傍ら傾いたビルのような高層の建物の真ん中ぐらいの場所に彼はいた。
「はぐっ!うん、ん、ん…」
彼はビルの外周で座り荒れている世界の残骸を見ながら手製のバーガー豪快に頬張り空腹の腹を満たしている。
「全く、前までは空腹すら感じない体だったのに…やっぱり本物は違うってことか」
頬張っていたバーガーを飲み込んだ後自身の思ったことを口にする彼。
彼…正人の体を乗っ取ったナハトヴァールは空腹に悩まされていた。
本来なら空腹という概念自体彼には存在しなかったのだが、正人の体を使っていることから体は人間というカテゴリーに当てはまることになり。何も食べなければ空腹になるし眠りたくなったら寝るとまるで人間のような行動を取るようになった。
「ならば、そんな体捨ててしまえば良いでしょう」
そんな正人の体に興味を持っているナハトの後ろから突如として声がかけられる。
ナハトはゆっくりと視線を後ろに向けるとそこには銀髪の修道服をきた絶世のシスターがいた。
「なんだ、お前か…」
「不躾なものいいですね。ナハトヴァール…貴方はエヒト様に救われたというのにその敬意すら感じられない。」
「いやいや、ちゃんと感謝してるって……そう感じない?……ああ、エヒト様の人形であるお前にはわからないか」
虎視眈々とした表情でシスターはナハトの不服点を指摘するがそれを軽く流しシスター自身の批判をするナハトだがそれを聞いたシスターの顔つきは何一つ変わらない。
「それに、エヒト様の要望通り、誰でも良かったとはいえ八坂正人を舞台から引きずり下ろしただろ?後は上手く世界をかき乱して戦争を助長させすれば自ずと人間族と魔人族は遠くない未来ぶつかり合う。その中で八坂正人は勇者側でのイレギュラーだった。そんな不確定要素を取り除いたんだ……その体を報酬で使っても罰は当たらないだろ?」
「まあいいでしょう。それでは私は次の神命があるので」
「その神命って例のエヒト様が召喚した覚えのない人間達のことか?」
そういって眉1つ変えないシスターはナハトに背を向けて立ち去ろうとするがナハトはその命令がどのようなものか憶測で訪ねると無言でシスターは無視して立ち去っていった。
「……全く、顔色1つ変えないな……エヒトによって生み出された真の神の使徒……いいや、都合の良いように動く人形か…なあ、どう思うよ」
誰もいなくなった後、ナハトは上の空を眺めながらそう呟く、勿論誰も答える人間は近くにはいない。しかしナハトは確実に返答してくるのを確信していた。
“どう言うつもりだ。ナハトヴァール、何故俺にこんな話を聞かせた”
「話し相手が居なくてな…八坂正人」
その声は外からではなく。ナハトの内側から響いてきた。
正人が意識を覚醒させていて、先程のやり取りを全て聞いていたのだ。
「どうだ?外側からボードの盤上を特等席で眺めている感想は……」
“……今俺達がいる状況が大体理解できた……信じるならな”
先程の情報を理解できないほど正人はバカではない。
元から今回のトータスに連れてこられた件が胡散臭いとは感じており。
そして今事実を知り、歪みの根元が見えたがそう簡単にナハトの話を鵜呑みにすることは出来なかった。
何故敵に塩を送るようなことをしているのかナハトに何のメリットがあるのか…そもそもナハトの真意は何なのか…疑問に尽きなかった。
「慎重だな…まあ、前のように目的のために突っ走る子供だった頃とは違うってことか…まあいい…くれぐれも変な気を起こさないことだ。この神域からはお前は出られないし万一お前が表に出てきたらあの人形達は一切の慈悲もなくお前を消しにするだろう」
“…だから今は大人しくしてろと?”
「ああ、現に今のお前じゃあ何も出来ない」
言い当てられたその言葉に正人は何も言えなかった。
話しは終わりとナハトはもう一つ用意されていたバーガーを手に取り食べ始める中。正人はただ、香織達のことを思う。
(香織…みんな…頼むから無事でいてくれ)
今の正人にはそう願うことしか出来なかった。