次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く 作:ウィングゼロ
王国に向かう馬車の中で私達はこの一ヶ月の地球とトータスの情報を交換した。
先にこれからトータスで過ごすことから私達から説明を喋ることにして
まずこの世界に何故呼ばれたのかの経緯、文化や歴史、魔法や現状など簡潔に纏めて話した。
「そっか……やっぱり此処って地球じゃなかったんだね。周りの景色やあの人が使った魔法を見れば否定も出来ないよね」
神崎さんは私達より年下なのに確りしているのかちゃんと現実を受け入れているし、気がまいってる織斑くんと鈴木さんのフォローも事細かくに目を配っているために私達よりかは問題はなさそう。
そして神崎さんから地球のことについて聞くこともできた。
まず私達がトータスに転移されたことはやはりテレビで現代のメアリー・セレスト号事件と大きく取り上げるほどになっているらしい。
一クラス丸々が忽然と消えたのだから騒ぎにならないという方が可笑しな気もするけど…神崎さんの話だとちょっと看過できない事態も動いていたらしい。
当初警察も私達の行方を追っていたけど何一つ手掛かりもなく。捜査は滞り…保護者達からの顔も暗くなる一方……それにはくしをかけるように何処かのテロリスト集団が私達の身柄を預かっていると嘘をついて身代金を要求。政府はそれに反発し鎮圧隊を向かわせてテロリストを殲滅、その折に私達は死んだというデマまで流したらしい。
何故助けなかったのだと保護者一同と今回の事を反発する人々のデモ隊が抗議する中。ネットである書き込みがされた。
それは政府が私達がテロリストに捕まっていたという嘘を言っていたという証拠。
それがネットにばらまかれ気付いた政府は慌てふためいて火消しに回ったけど…煙立ったものが元から無くなるわけがなく。保護者達は私達に対する不当な扱いに対しても追求。今も混乱が覚めないとのことだ。
地球側のことはこれぐらいで置いておくとして……
今、考えなければならないのは神崎さん達のその後のこと
難しい顔をして深く考えている
神崎さんの頭の中では既に今後のことを試行錯誤しているのだろう。
「……正直に言わせてもらって…仮に魔人族と戦争に勝ったとしても、確りと帰してくれる保証は何処にもないよね。話を聞く限りだと確約ではないみたいだし」
私の話の中でイシュタルさんが言った帰れるという言葉が曖昧であることを見抜き、私はそんな神崎さんの洞察力に驚きながらも今後のことを考え視線を織斑くんに向けた。
向けられたことに織斑くんは首を傾げるが、その織斑くんが今1番に問題となりそうだから。
「えっと。織斑くん、不快かも知れないけど、織斑くんに関しては苗字は伏せておいた方が良いわ…」
「え?どうしてですか?」
「もしかしなくても…天之河くん?」
私の言葉に戸惑う織斑くんにすずかは私の意図を理解したのか天之河の名前を出し私は頷き肯定する。
織斑くんの境遇は風の噂程度だけど聞いたことがある。
優秀すぎる姉と兄に比べられ肩幅狭い思いをしているという。
普通ならそんな織斑くんを守ってあげないとと思うのだけど…あの天之河は違う。
善意しか信じないあのいかれた思考持ちに悪意より質の悪い言葉が織斑くんを襲い心を傷つけるだろう。
ならば天之河に気付かれないよう…苗字を伏せてしまった方が安全な気がした。
勿論、私の勝手に決めるわけにもいかないから3人に天之河のことを説明…話し終えた後、3人とも物凄く驚き戸惑っている様子が窺えた。
「そっか…そんな子がいるんだね…うん、確かにいっくんを守るためにはそうするしか…でも名前だけ名乗るのは寧ろ不自然過ぎるし………あっ!それなら私の苗字を使えばいいんじゃないかな?」
「永和姉の?」
「うん、それならいっくんが蔑まれることもないし、姉って慕ってくれてるから違和感もあんまりないでしょ?」
「……確かにそうだな…神崎一夏…あいつと同じ苗字っていうのもなんか不思議な感じだな…」
織斑くんが何処か懐かしく感情に浸りながら目を閉じ、2人は知っているのか織斑くんのように思い当たるような表情を見せていた。
「アリサ!すずか!!勝手に外に行くなんて2人とも何を考えているんだ!?」
………最早語ることも無いだろうけど、王宮に無事戻ってきた私達に待ち構えていたのは天之河だ。
大方、城の誰かに聞いたのだろう…絶対伝えていた雫ではないのは間違いないから、内心止めに入れなかったのかと頭を痛くする。
「光輝、何も2人は勝手に付いてきたわけではない。俺も同意の上で同行させたのだ」
「メルドさん……2人ももう身勝手なことはしないで、あんなことがあったから不安なのはわかる。だけど俺が絶対に不安になんてさせない強くなって2人を守るから!」
………相変わらず的を射てない物言い…横目で見たら神崎さん達はめちゃ引いてるしメルドさんに関しては手を頭に当てて、項垂れてる様子。
「アリサちゃん…」
「もう私は何も言わないわよ。いったところで通じないのはわかってるし」
言い争うだけ無駄だというのはわかっているためこれ以上無駄な浪費はしたくなかった。
天之河の視線が私達に釘付けなのは不幸中の幸いの中、王宮の奥からパタパタと急ぎ足で昨日頼んでいたメイドが私達の元へやってきた。
「し、失礼します!」
「っ!?」
「む?どうした慌ただしく…何かあったか?」
「はい、イシュタル様が謁見の間でお待ちです。帰還次第、新たにこの地に舞い降りた神の使徒様を連れてくるように、申しつけられました」
メイドは息を整えるとメルドさんに神崎さん達を連れてくるようにと伝えるとメルドさんは頷き神崎さん達を見る。
突然有無も言われずに召喚され近場にいた山賊に襲われ、その表情には疲弊が目立っていた。
それを見てメルドさんも致し方ないと腹を決めるとメイドに顔を向ける。
「すまないが、神の使徒である彼らの心身が優れない…先に休ませるべきだろう。教皇様達には俺から説明しておく。そうだな…この3人を部屋まで案内を頼めるか?」
「よろしいのですか?……承知いたしました。神の使徒様方、どうぞこちらへお部屋にご案内させていただきます」
メイド服の裾をつまみ礼儀良くお辞儀をして、メルドさんに言われたとおり神崎さんを寝室へと案内をしようとするメイドだがまだ3人はメイドを見ていた。
流石にずっと見られているからか人前だというのにメイドは顔を赤くしてあたふたし始める。
「あ、あのその…」
「…ふー、全く…おい坊主確りしろ!」
「っ!!あ、ああ…ありがとうございます。いこう永和姉、榛名」
「う、うん、そうだね」
「…うん」
見かねたメルドさんが織斑くんに声を掛け正気に戻すとその織斑くんが神崎さんと鈴木さんに呼びかけて、先導でメイドに付いていく。
取りあえず。織斑くん達のことはメルドさん達に任せるべきよね。そんなことを考えていると今度はメルドさんは光輝に向けて口を開けた。
「光輝もそこまでだ。アリサもすずかも何分疲れ切っている。休ませてやれ」
そう優しくメルドさんに言われた天之河は何も言えず。ただ頷くしか出来ず。
私達も部屋へと戻っていくのであった
見た目に反して
王国の帰りの馬車にて
すずか「神崎さんって確りしてるよね」
アリサ「私も思った。織斑くんや鈴木さんを引っ張っていたり、冷静で物事を考えたり私達より年下だとは思えない」
永和「……………」
一夏「…あ、えっと…」
榛名「あははは…」苦笑い
永和「……です」
アリサ「神崎さん?何か言いましたか?」
永和「私…これでも…大学生…です」涙目で
アリサ「………」
すずか「………」
その後馬車の中では気まずい空気が長く続いた