次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く   作:ウィングゼロ

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25話

1日目

それは突然起きてしまった。

俺はいつも通り学校で過ごしていたのだが、お昼休みに突然見たこともない術式の転移に、同じく部屋にいた者達と巻き込まれて管理局も認知していない世界へと飛ばされたのだ。

転移した場所は聖教教会と呼ばれる宗教の総本山。そこで教皇イシュタルから何故俺達が呼ばれたのか説明をしてくれた。

 

この世界の名前はトータス、そして何故俺達が呼ばれたかと言えば人類が滅亡に瀕しているから、力のある俺達を彼らが崇めるエヒトと呼ばれる神が勝手に召喚したらしい。

全くもって身勝手な物言いだったがこの世界に召喚された男、天之河光輝の発言によりクラスの殆どが天之河光輝の言葉に釣られて賛同してしまった。

俺も言葉をきつくして反論して自分達が何をしようとしているのかの恐怖感を煽り、戦いに賛同するクラスメイトの意思を挫こうとしたが、反論途中で教皇イシュタルに遮られ…色々と有耶無耶にされた。恐らくイシュタルは俺が戦争に参加させる天之河光輝達の邪魔者だと判断し横槍を入れてきたのだろう

 

それから聖教教会から出て親しい間柄のハイリヒ王国に身を寄せることになったが、既に情報が早かったのか何人かの視線には良く思えない視線も混じっており、その上クラスメイトからも距離を置かれた。

どちらも自業自得だが致し方ないことだろう。俺個人の関係性がどうなろうと構わない。早く帰還する方法を手に入れなければならない…誰かが死ぬ前に

 

2日目

早朝起きた俺は直ぐに端末を確認したが着信を受信した形跡はない。

名前も聞いたことの無い世界なのだ。おおよそこの近海には時空航空艦が巡回していないのかもしれない。

まず訓練所に辿り着くと天之河光輝との関係は修復不可能なほどに亀裂を生じた。

元から天之河光輝と袂を連ねるつもりもなかったために対したことではないが、クラスメイトを止められなかったことは悔やみたかった。

 

 

15日目

もうこの世界に来て半月、すめば都という言葉もあるように王宮暮らしにも多少慣れてきた。

訓練前に檜山大介達との一悶着があったが直ぐに収拾し、メルド・ロンヌスから明日からオルクス大迷宮へと演習に出かけることになると伝えられた。

初めての実戦だというのに緊張感がなく……向けているように見える。

取りあえず、この演習が無事に終われば俺は信頼できる人物とトータスを巡り帰還する方法を模索する旅に出る。メルド・ロンヌスには事前に話を通し結果次第で認めるという約束をしていた。

この人ならばクラスメイトを残して俺は安心して調査することが出来る。

明後日は何があっても成功させなければ

 

16日目

 

早朝、予定通り俺達は王国からオルクス大迷宮入り口前の街であるホルアドへと向かう。やはりというべきか、メルド・ロンヌスからの提案であった臨時指揮官の件は、天之河を筆頭に殆どが良く思っていないような視線を俺にぶつけてきた。

そんな不穏な空気のままホルアドまで馬車で移動し…その日の夜。白崎香織が俺の元に訪ねてきた。

香織は俺のことを確認したくてやってきたようだ。

どうやら不安だったらしい。その日は久しぶりに香織と話した。今はこうやって密談のように話すことしか出来ないけど…いつからまた元通りに戻れるように頑張らなければ

 

 

 

「……此処でレポートが終わってるわ」

 

正人の残したレポートを読み終わった後、部屋の中の空気は重く、みんな言葉を詰まらせるように固く閉ざしている。

正人が残していた情報は自分達にとってやはり有益なものだった。

同じ日時をこの世界で過ごしたというのにこれだけの差があることに、この場にいる全員が正人の凄さを改めて再認識する中、ふと雫は香織の方を見るとあっと口を漏らした

 

「……正人…くん」

 

そう掠れた小さい声で呟き、瞳からは涙が流れ落ちる。先程何も反応を示さず壊れた人形のようななっていた香織だった。

 

未だ反応は鈍いものの、先程に比べれば明確な反応を示していることに、雫はやはり正人でなければ駄目なのかと誰にも気付かれないように表情に影を落とす。

 

「もう一つ音声データがあるみたい」

 

正人が書いていたレポート以外にファイルの中に音声データが入っているのを確認し、どうするか確認するすずか。アリサもここまで来たのだからと再生するように頷くと、意図をくみ取ったすずかが音声データを再生させた。

 

 

“このデータが流れているということは今俺はその場にいないのであろう。”

 

「っ!これって八坂の!?」

「保存日時を考えるとトータスに来て初日の夜に録音してるみたい」 

「……つまりこれは……」

 

正人にとっての遺言

そうアリサが呟く中、再生された正人の声は止まることなく続く。

 

“俺の名は八坂正人……第97管理外世界地球に住む。時空管理局の嘱託魔導士だ”

“このデータが再生されているということは、俺が持っていたこの端末は運良く管理局……もしくは魔導士としての俺を良く知る人物に渡ったということだろう”

“毎日身の回りで起きたことはきっちりとレポートには書き込んでいるが……改めて今の心境を言わせてもらいたい”

“状況はとても良い状況ではない…同じく召喚された殆どが、この戦争の意味も深く理解せずに賛成してしまったからだ”

“この世界に来て混乱して縋る気持ちになるのも無理はない。しかし縋った人間がまともでなければ……その先に待っているのは険しい茨の道……縋りつく手は何人もすり落ちて……最後には共倒れなんてケースもあり得る”

“なんとか回避できるよう出来るだけのことはするつもりだが……この声を聞いているということはそれすら叶わなかったと…そういうことだろう”

“せめて、俺の友達や大切な者が無事で…地球に帰ることが出来れば俺はそれだけで良い……7年…贖罪として前線からは引いていたブランクはあるが、俺の全身全霊を使って守るつもりだ”

“それでも………このデータを聞いた人達へ頼みがある。”

“トータスに未だ取り残されて居るであろうクラスメイトの生き残りをどうか…見つけ出して故郷へと帰してやって欲しい。願わくば俺自身がそうしたいのだが……それはもう叶わない……願い事だから……”

 

そこで正人の言葉は終わり、音声は途絶えた。

 

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