次元世界の魔導士は最弱の錬成師と仲間達共に行く 作:ウィングゼロ
ハジメSIDE
アインスさんが語った後、ホロウィンドウも閉じられる。今回は映像もなかった。
「映像はなかったんですか?」
《……ああ、その辺りの損傷が酷く……修復も不可能だ。重要な所なのだが……すまないな》
そう謝罪するアインスさんだが、その言葉が嘘であることは何となくわかった。
恐らくだけど、映像には僕達が想像だにできないことが巻き起こったんだろう。
そしてそれは見せられないほどの何かで、バニングスさんも月村さんも知らないことではないのだろうか
そんなことを頭の中で思っていると月村さんが口を開ける。
「この事件をきっかけに正人くんは第一線から身を退いた……多分だけど今も気にしてるんだと思う…自分のせいで世界を滅亡一歩手前まで追い込んだこと……」
「で、でもそれは正人くんだけの性じゃないわけだし……それに望んでやってるわけじゃないんだよね?」
「それでも…正人くんは他と一番責任感がのしかかってるんだと思う……この当時から正人くんはなのはちゃん達や管理局とは交友もあったし……もしかしたら…意地を通して蒐集していたけど……もしかしたら手に取り合う別の道があったかも知れないって……後悔しているのかも……」
確かに聞く限りだけど……それもありうる可能性なのだろう。だけど、あくまで可能性で、そうならない確率もあるためにそういった軽率な行動は出来なかった。
改めて考えると正人くんは僕らのことを確りと考えていたんだと実感もできる。
《本来、そのような業を正人が背負うこともなかった……その業を背負わせたのは紛れもなく夜天の魔導書である私のせいでもある…》
「リィンフォースさん」
正人を根本的に歪めた原因は自分にあると責める。
そんなアインスさんの言葉にそんなことないと言いたげな月村さんを眺めていると、僕はふとバニングスさんに視線を向ける。
そういえば、バニングスさんはあのレポートを読み終えた後一言も喋らなかったことに気付き、どうしてだろうと気になって向いたのは良いけど…直ぐに顔を引きつった。
バニングスさんは、なぜかイライラを募らせたのか、体を震わせてもうすぐ爆発寸前のように見える。
そしてくわっと目を大きく開かせ、ついに募っていたのが弾け飛んだ。
「あっの!大馬鹿がぁぁぁぁぁっ!!!」
その怒号は部屋全体どころが外にまで聞こえるような大声が響き、全員が驚いてバニングスさんの方へ顔を向ける。
「なのはもフェイトもはやても正人も!!なんでこんな重いものを1人で抱え込んで誰にも頼らないのよ!何!?魔導士って生き物は他人に頼らない生き物なの!?」
「あ、アリサちゃん?」
「確かに今までは私やすずかに相談したところで何も役には立てなかったわよ!だけどね!私達だってもう戦えるってのに正人のバカはこんだけ抱え込んで…!少しは私達にも相談しろぉ!!」
マシンガントークのように飛んでくる正人くんに対するバニングスさんの本音、始めは唖然としてたけど…僕も少し同感だと思えるものがあった。
「はぁはぁ…私決めたわ」
大声と矢継ぎ早に息を切らしたバニングスさんは、何か決意した表情で握り拳を作り口を開ける。
「意地でも正人を連れ戻して、あいつの顔面に1発ぶん殴る!もうそうしないと気が済まない!」
そう決意したバニングスさんの背後には燃え上がる炎と阿修羅のような背後霊が見えるのは、僕の錯覚だろう。
「あ、アリサちゃん、落ち着いて…でもアリサちゃんの言葉にも同意かな…私もちょっと許せないかも」
乾いた笑みを浮かべる月村さんも、僕と同じで正人くんの行動に思うことがあるのか、その表情に笑顔ながら正人くんに対する苛立ちが見え隠れているようにだった。
「僕も…少し嫌だな…」
そして僕もつい口を滑らせバニングスさんと月村さんに顔を向けられる。
僕も咄嗟に口を閉ざしたけどもう手遅れだ。
僕は乾いた笑みを浮かべながら正直な言葉をみんなに打ち明けることにした。
「僕もこのままじゃ納得できないかなって…僕が行ったところでどうにかなるとか思えないけど…」
「そんなことないよ!南雲くんの気持ち、確りと伝わってきたから!」
「あはは、ありがとう」
錬成師である僕ではやれることが限られる。行ったところで足手まとい……けど納得がいかないのは確かだった
「……っで、あんたはどうするの?」
少し一区切り間を開けてから、バニングスさんは白崎さんの方を向き訪ねる。
何を訪ねているかはもう言わなくてわかってる。
訪ねられた白崎さんは、頰に涙の跡が残る中「えっ?」と言葉を零し、バニングスさんを唖然として見ていた。
「だからあんたはこれからどうするかを聞いてるのよ。正人の残したものと過去を聞いて香織はどうしたいの?」
「わ、わたし…は…」
「確かにさ、正人の隠してたことがどんどんとわかって……その上その本人は嘗てのヤバイ奴に体を乗っ取られて私達の元から離れていった。香織にとってのショックはとんでもないと思う…けど」
此処で喋りを一区切りした後、バニングスさんは思い詰める香織を優しく抱きしめる。
「このままじゃ駄目なのよ……だけどあんたの選択を選ぶのは私じゃない……だから選んで欲しい……このまま現実から目を背けてこの部屋で待っているか……危険だと承知で私達と一緒に正人を助けに行くか……強制はしない……香織の意思を尊重するわ」
そういいながらバニングスさんは白崎さんから離れると、俯く白崎さんは「私は」と小さい声で呟いて顔を上げ、その瞳は涙が溜まっていた。
「正人くんを…助けたい!」
白崎さんの悲痛な心の叫びが木霊する。
「こんなの…絶対嫌だよ…」
「……そうよね……なら助けましょう……独りよがりで身勝手な行動をした正人を…そんで思い知らせましょう!私達は正人のお荷物じゃないってことを!」
「………うん」
涙声でバニングスさんの言葉に頷く白崎さん。その光景を見て僕達ももらい泣きしそうになる。
漸く止まっていた僕達の歩みもまた歩き出すってことでいいんだよね。
「………香織」
「雫……ちゃん……ごめんね」
「香織が決めたことでしょ?ならもう止められないわ……光輝のことは任せておきなさい。」
「うん……けど私のけじめだから私が光輝くんに言うよ」
少し落ち着いた後、八重樫さんが白崎さんに声を掛ける。これからは白崎さんは僕らと行動を共にすることになる。つまりは天之河くんのパーティーから離脱するということ…天之河くんは簡単に認めないだろうし、八重樫さんもそれは重々承知の上で何とかすると言ってくれたけど、白崎さんは自分でけりを付けたいのか決意した表情で八重樫さんを見ている。
その決意を組み取った八重樫さんも、少し驚きはしたけど「そう、わかったわ」と頷き、付け足すように「一応フォローはしておくから」というと、ありがとうと笑みを浮かべた。
「…………みんな……強いな」
「優花?どうしたの?突然」
そんな光景の中俯いていた園部さんが弱音を吐くと、自然にみんなの視線が園部さんに向く。そしてバニングスさんが気になって訪ねると、重々しく園部さんは口を開けた。
「私は……もう戦うのが怖い…みんなみたいにもう一度って……そんな勇気がないの」
体を震わせ、あの時のことを思い出しているのか園部さんの顔色は悪く体も震えていた。
それに気付いた月村さんは、震えている園部さんの手を握ると優しく声を掛けた。
「……仕方ないよ…怖いのは当たり前だし……それでも私達は前に進むって決めたの…だから優花ちゃんは優花ちゃんなりの答えを出して…ゆっくりでも良いから相談したいときは相談に乗るから…ね?」
「……ありがとう…すずか」
そういって優しくされた月村さんに弱々しくお礼を言う園部さん。
正直言って僕だって怖いし弱い…けど…何でかな…僕達ならやれるって、どこからかわからないけどそんな勇気が湧いてくるような、そんな気がしたんだ。
「さて、今日は解散ね……もう夕方になってるし…明日から色々と忙しくなるわよ……」
「あっ、すずかちゃん少し残って欲しいんだけど…いいかな?」
「え?うん別に良いよ」
バニングスさんは外を眺めるといつの間にか夕暮れ時になっていた。
時間がかなり経っていたことに驚きつつも、僕らはそれぞれの新しくした決意を胸に部屋から出て行き解散となった。なぜが白崎さんに月村さんが呼び止められていたけど……きっと白崎さんが前に進むための第一歩になることなのだろう。